fate/Tiba-si night   作:d d

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別ルートスタートです。同じ流れの所は飛ばして、第7話の、説明が終わりゆきのんがセイバーを引き抜こうとしたところからスタートです。


night snow
かくして彼は彼女と歩み始める


「なら、手を組むっていうのはどうかしら?」

すると当然雪ノ下の隣に女性が姿を現す。

その隣にぼや~っとゲーム画面のようなものが見える。これがステータスだろうか?

ということはこの女性が雪ノ下のサーヴァントなのか?

「はぁい、雪乃ちゃんのサーヴァント、キャスターこと、雪ノ下陽乃です!」

本来であれば隠さなければならない筈の正体を堂々とばらすキャスター。しかも雪ノ下だと。

これはブラフっぽすぎてブラフじゃないと見せかけてやっぱりブラフなパターンか?

「姉さんは引っ込んでいてくれるかしら?」

そのキャスターを姉さんと呼ぶ雪ノ下。ブラフだとすれば大した周到さだが…。

セイバーやランサーと違い、その格好は現代の服を着こなしている。

容姿も何も無ければ雪ノ下の姉だと納得していただろう。雪ノ下と違いだいぶ表情豊かだが。

「そのげひた男と手を組むなんて背中から撃ってくれと言っているようなものよ」

酷い言われようだがわかってしまう自分が悲しい。

いや、俺が雪ノ下を裏切るという意味ではなく要は信頼の問題だ。

手を組むということは相手の成果を前提にしなければならない場面もある。そうでなければ手を組む意味がない。

しかし俺も雪ノ下も相手を信頼することなどとうてい不可能だ。今までそう生きてきたのだから。

「酷いなー雪乃ちゃん、君もそう思うよね?」

するとキャスターがこっちに歩いてくる。

その眼前にセイバーが剣を突き立てた。

「それ以上近付けば斬る」

か、かっけー。俺の言ってみたいセリフランキング第6位のやつじゃん。これは惚れてしまう。

「かっこいー!ねぇ雪乃ちゃん、やっぱり手を組みましょう!」

それでもキャスターは今自分を脅した相手を仲間に引き込もうとする。

「彼はともかくセイバーは最優のクラスよ?私は近接戦闘が苦手だし、だからこそ雪乃ちゃんもセイバーを勧誘したんでしょ?」

「姉さん…」

雪ノ下の顔が険しくなる。さっきからキャスターが言ってはならないことを言っているからだ。

ていうか俺はともかくなのかよ。事実だけどよ…。

「セイバーも手を組むならOKでしょ?素人のマスターに雪乃ちゃんが色々教えてくれるよ?」

「勝手に話を進めないでくれるかしら」

「それはそいつが決めることだ」

キャスターの視線が俺に向けられる。

本当にこの人は雪ノ下の姉でサーヴァントなのだろうか。

その性格は対照的で明るく朗らかだ。であれば、雪ノ下とも上手くやっていけるのかもしれない。

それに色々と教えて貰えるのなら俺も心強い。

「良いのか?雪ノ下」

すると彼女はこっちを睨み付けてきた。怖えよ、あと怖い。

その後溜め息をついてからようやく俺の質問に答えた。

「仕方ないわね」

俺と雪ノ下は晴れて手を組むことになった。

 

………………

 

そして俺は今雪ノ下のマンションに来ている。

学校からここまで直接連れてこられた。

「ちょっと性急過ぎないか?」

「私の下僕になるなら中途半端は許さないわ。夜までにできることはやっておかないと」

「いや下僕じゃなくてせめて味方といえ」

「きゃーっ、雪乃ちゃん、だいたーん」

後ろではなんか騒いでいた。

こうして俺は雪ノ下の部屋へと上がった。

そこは予想外というか予想通りというか、物が少なくすっきりとした内装だった。

まあ、雪ノ下らしいといえばらしい。

「もー、そんなにジロジロ見て、もしかして比企谷君って彼女いたことない?」

「まーそうっすね、今は」

今はの部分を強調しておいた。

「ふーん、じゃあ雪乃ちゃん何てどう?」

「姉さん、ちょっと黙っててくれるかしら。そんな不遜で常識のない男と私が釣り合うはずないでしょう。せいぜい召し使いが妥当だわ」

「てへ、怒られちゃった」

そう言ってキャスターは消えていった。

「騒がしいお姉さんだな」

「…そうね、昔からそうだったわ」

昔…か、そういえばキャスターの他にも現代の姉がいるはずだよな。その人もマスターの一人なのだろうか。

しかし俺は何となくその事を尋ねることができなかった。

「で、まずは何するんだ?」

「そうね、とりあえず魔術回路を通さないと…」

すると雪ノ下は俺の体をペタペタ触り始めた。おおう、これは…。

「変なこと考えたら殺すわよ」

殺すって言ったよこの人。あれは本気の目だった。

俺にはわかる。

「とりあえずこれを呑んでみて」

そう言って丸いあめ玉を渡された。どういうことだ?

「噛まずに一呑みするのよ」

とりあえず言われた通りにする。わりと大きめのやつで少し喉が苦しい。

次の瞬間体が燃えるように熱くなった。

「あああああああ!」

まるで身体中の神経がげいきしたように熱い。

しかしそれも乗り終わったブランコのように少しずつ収まっていく。

「はあはあ」

「貴方の魔術回路を無理矢理起こしたわ。今の感覚を覚えておいて。次はそれをオンオフするだけで良いから」

まだ体に違和感を感じるがだいぶましになってきた。

そしてまた雪ノ下が俺の体に触れる。

「おかしいわね…そんなことは…」

しかし何やら納得がいっていないご様子。おいおい勘弁してくれ。これで繰り返すことになったらもう家に帰るぞ。

「そういうこと…」

ようやく雪ノ下が俺の体から離れる。

「ごめんなさい、貴方の回路数が少なすぎて見つけづらかったの」

「少ないってのはつまり弱いということか?」

「そうね、私を100とするなら貴方は1かしら。ちなみに後から増えることは無いわ」

雪ノ下は俺に哀れみの表情を向けてくる。

残念でしたー、魔術が使えるだけでうれしいでーす。

「それじゃあ、次は貴方の属性を調べるわ」

「属性?ってなんだ?」

「その人の起源からくる魔術師としての方向性ね。当然それからそれれば効果は薄くなるわ」

はーん、タイプ一致技は威力が上がるみたいなことか。

「さっきを思い出してこれに魔力を通しなさい」

渡されたのは5枚のカード、絵柄はなく全て真っ白だ。

俺はその内一枚を手に取ると目を閉じあやふやな記憶を頼りにそれを再現する。

次第に体はぼやっと暖かくなり、それがカードに伝わっていくようだ。

次の瞬間カードはボロボロに崩れさってしまった。

「まて、俺は悪くないぞ」

「はあ、それは使い捨てだから。そのまま続けなさい」

なんだよ驚かせやがって。

俺は同じようにして次々にカードを取っていく、しかしどれも同じように塵へと還ってしまった。

「やっぱり基本の5属性ではないのね」

「やっぱりってなんだ。まるで俺が非常識な奴みたいじゃないか」

「当然でしょう、余り物君」

「余り物には副があるんだぞ」

それに一人少ないとこに入るから余りはしない。うちのクラスに余り物はいません。

「それじゃあ、別のを持ってくるから、少し待ってなさい」

そう言って雪ノ下は部屋を出ていってしまう。後には俺一人が残された。

それにしても本当に質素な部屋だ。おしゃれともいえるかもしれない。

あまりに女の子してると緊張してしまうので俺はその方がいいが。

「あれ?比企谷君一人?」

するとキャスターが現れる。

「なんか補充のカード取りに行きました」

「あー、やっぱり基本の属性じゃなかったんだ」

あんたもか。そんなに俺って特別に見えるのかしら?

「比企谷君って他とは違いますって感じだもんねー」

なんか言い方に含みがあった気がするがここはあえてスルーする。

「キャスターの属性はなんなんだ、ですか…?」

「あはは、普通にタメで良いよ、今はサーヴァントなんだし」

しかし見た目は年上のお姉さんなので何となく気楽に話しづらい。しかしキャスターさんというのも変な感じだ。

「どうせなら、雪乃ちゃんみたいに姉さんって呼んでも良いんだぞ?」

「俺の兄妹は愛しの妹だけなんで」

えー、とキャスターは横でぶーたれている。しかしこれだけは譲れない。

「私の属性はね、全部だよ」

すると不意にそんな事を言ってくる。

全部、といわれても魔術に疎い俺にはよくわからない。

「雪乃ちゃんは基本の五つ全部、らしいよねー」

「そうですか?」

どちらかというと雪ノ下も俺と同じはぐれものの一匹狼に見える。

「ふーん、君にはそう見えてるんだ?」

「違うんですか?」

「さあ、属性はあくまで根っこの部分。どんな花かは咲いてみないとわからないからねー」

よくわからないが、どうやら俺とキャスターでは意見が別れるらしい。

まあ、俺より実の姉である彼女の方がよく知っているだろうし、特に言い返す気もない。

そうこうしている内に雪ノ下が戻ってきて、キャスターは消えていった。

「姉さんと何を話していたの?」

「魔術の話、俺にはよくわからねぇけど」

「そう」

雪ノ下は追加の2枚のカードを俺に渡してくる。それらに俺は魔力を通す。

すると片方に反応があった。

「これは…」

「なんかわかったのか?」

これが俺の属性ということだろうか、しかしカードは真っ白のままで何も読み取れない。

「貴方は無属性よ」

「は!?」

無属性!?って属性はないってことか!?

「勘違いしないで、属性が無いのではなくて、「無」の属性という意味よ」

無の属性ってなんだ、ノーマルタイプってことか?

「それは、何ができるんだ?」

たいあたりとかづつきとか言われても困る。

しかし雪ノ下は何かを言い淀み、なかなか俺の質問に答えない。

「…正直に言うと、実はまだあまり研究が進んでいないの。あまりに人が少なすぎて」

まじか、やはり俺は生まれながらに選ばれし者だったというわけだ。選ばれたのは八幡でした。

「大っぴらに知られると研究材料にされる可能性もあるわ」

こっわ、魔術師こっわ。もう家から出ないようにしよう。

「それで、結局俺は何をすればいいんだ?」

「そもそも魔術の研鑽には多くの時間がいるの。元々一般人の貴方が聖杯戦争中にまともな魔術を覚えるのは困難よ」

「ええ…、じゃあ今までのはなんだったんだよ」

「他のことに使うのよ。貴方ランサーに体当たりをきめたらしいわね?」

「ああ」

確かにその通りだが、まさか本当にポケモンになるの、俺?

「普通サーヴァント相手にそんな事できないわ。貴方は極端に気配が、影が薄いのよ」

今、言い直す必要ありました?雪ノ下さん。

「なので貴方にはアサシンになってもらいます」

続いて雪ノ下の口から飛び出したのは、そんな突拍子もないことだった。

サーヴァントのクラスの一つ。その名の通り暗殺術を得意とする英雄。それって英雄と呼べるのか?

「隙をみて、サーヴァントかマスターを殺しなさい」

果たして、俺にそんな事が可能なのか。

すると雪ノ下は俺の正面から立ち上がった。

「話は以上よ、晩御飯にするからそれをかたづけておきなさい」

そう言って部屋の奥に消えていった。

俺は塵に還ったカード達をまとめゴミ箱に捨てる。

「雪乃ちゃんの手料理だぞー、喜べ少年」

するとまたキャスターが現れ俺をからかってくる。

まああの雪ノ下なら料理も完璧にこなすのだろう。その姿は容易に想像できる。そして自慢げに笑うのだろう。

しかし既に俺は掃除を終え手持ちぶさたなのでそれを阻止しに台所へ向かう。

「何か手伝うことあるか?」

「別にないわ、貴方は先に座っていなさい」

しかし雪ノ下はそっけなくそれを断る。

その姿は制服の上にエプロンをつけていて調理実習のようだった。

「安心しろ、これでも料理は小学生の中ならトップクラスだぞ」

「それを聞いて何を安心しろというのかしら」

雪ノ下は深く溜め息をつく。

いやいや、お前小学生がやってる夕方の料理番組見てないのかよ。あれおんなじの何度もやるから飽きるんだよな。

「仕方ないわね、貴方は切った野菜を炒めてくれるかしら」

そう言ってコンロの前を空ける雪ノ下。

「二人の共同作業を邪魔しちゃ悪いから、お姉ちゃんは向こうで待ってるねー」

「姉さんの分は無いわ」

「えー!?」

姉妹のそんなやり取りを横に俺はせっせと仕事をこなす。

はあ。

すると何度目かの溜め息が聞こえてきた。

雪ノ下でもあの姉の扱いは苦労しているようだ。

「そういえばあの人属性は全部っていってたけどどういうことなんだ?」

「言葉通り全部よ、基本の地、水、火、風、空と特異な虚数、貴方と同じ無」

まじか。その規格外差は魔術に疎い俺でもよくわかった。

「それならサーヴァントになっちまうのも頷けるな」

「…そうね」

それからは一言も発さずもくもくと調理を続けた。

それを食べ終えると時刻は8時半。そこからは延々と物に魔力を通す練習をさせられた。

そしていざ出発の時間になると雪ノ下が声をかけてくる。

「さすがにすぐには無理だから今日はこれを被ってついてきなさい」

そう言うと雪ノ下は何かを手渡してくる。

それは強盗犯が被っているような目出し帽だった。

「何、これ?」

「貴方はいずれアサシンになるのだから、素顔を知られると厄介でしょう?」

いや、こんなん被った奴が夜中出歩いてたら、別の意味で厄介なことになるだろ。

「本当は顔の皮を剥ぎたいのだけれど…」

雪ノ下は真剣な顔でそんな事を言う。いや猟奇的過ぎんだろ。そこまでしないといけないの!?こいつが言うと本当にやりそうだから怖い。

「厚顔無恥な貴方ではそれも無理ね」

「無恥は関係ないだろ無恥は」

要するに面の皮が厚いと言いたいのだ。雪ノ下はうまいこと言った、みたいな顔をしている。ハイハイ、うまいうまい。

そうして俺達は夜の町に繰り出した。

 

 

 

 

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