fate/Tiba-si night   作:d d

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そして別れは突然訪れる

あまり大人数で押し掛けるのまずいということで、欠席した分のプリントを届けるという名目で、俺と雪ノ下が向かうことになった。

渡された地図を頼りに歩くとどこにでもあるようなアパートに辿り着いた。

「見た感じはどうだ?」

「特に結界がはってあるという訳でもないわね」

「とりあえず行ってみるか」

俺達は地図に書いてある番号の部屋まで行くと呼び鈴を鳴らした。

ガチャ。

扉が開く。すると短い髪を横に纏めた小さい幼女が出てきた。

妹だろうか?

「こら茜、勝手に出ちゃダメじゃないか」

今度は奥から中学生位の男子が出てきた。三人兄弟なのか。

「俺達、プリントを届けにきたんですけど、お姉さんは居ますか?」

「ああ、えーと、すみません、姉はまだ帰ってなくて」

「学校に行かずに何処かへ行っているの?」

雪ノ下が問い詰める。

うわー、男の子びびっちゃってるよ。

しどろもどろになりつつも、目の前の男子はなんとか弁解を試みる。

「あ、あの、うち、貧乏で、姉ちゃんは働いてて、親も止めてるんですけど…」

成る程、これが学校にこれない理由というわけか。

「お姉さんの勤め先ってわかるか?」

できるだけにこやかに応対する。雪ノ下が怖い分、その方が効果がある筈だ。

「すみません、ちょっと、わからないです」

ダメか。

「あ、そういえばエンジェルなんとかって電話で言ってたような」

エンジェル?店の名前かなんかだろうか?

「ちょっとあんたら、何やってんの」

すると後ろから声がかかる。振り向くとそこには青みがかった黒髪を後ろで留めた同い年位の女の子が立っていた。

「姉ちゃん」

こいつが川崎沙希か。

「貴方が最近学校を休んでる様だからプリントを届けに来てあげたのよ」

「あんたが…?へえ、教養科のお嬢様の癖に教師の使いっぱしりやってんだ?」

「貴方こそ、届けも出さずに働いているってことはばれたらまずいって事かしら?」

「!?、大志、こいつらに話したの?!」

「ご、ゴメン」

「ふん、あんたみたいな金持ちにはわからないさ」

「そうねわからないわ、けれど校則は校則よ」

二人の間には火花が散っていた。

雪ノ下さん、目的忘れてないですよね?

「どいて」

すると川崎が雪ノ下を突き飛ばして無理矢理進もうとする。その拍子に雪ノ下はバランスを崩してしまう。とっさに手を伸ばして彼女を支えた。

「おい、川崎」

俺が呼び止めると彼女が睨み返してくる。しかしセイバーの眼光に比べたら大したことはない。

「貧乏だったら突き飛ばして良いのか?」

「…悪かったよ」

そう言って部屋に消えていった。

そんなわけで俺達は帰りの道をいく。

「で、これからどうするんだ?」

川崎が貧乏なのはわかった。だが魔術師なのかはわからない。

「突き飛ばされた時に発信器をつけたわ、これで働いてるのが本当か確かめるわよ」

まじかよ、やられたまんまじゃ終わらないと思ってはいたがこんなこと現実で言う奴いるんだな。

とりま川崎が動くまで自宅待機となった。

俺はだらだらとリビングでmaxコーヒーをすすっている。隣ではセイバーと小町が何やらゲームで白熱していた。

「む、むむ、やー、あー」

「ふ、ふふ、うし、何」

存在がばれてしまったので小町の前ではもう普通に姿を見せているセイバー。

後ろからちらっと覗いて見ると、レース系のゲームをやっているらしい。

「だー、負けたー」

するとセイバーが声をあげながら後ろに倒れ込む。

サーヴァントの動体視力と反射神経で負けるのか?

それとも小町が強いのか?

「ふっふっふ、まーだ勝ちは譲りませんよ」

「くっそー、もっかいだ」

「お前手加減してんのか?」

それとなくセイバーに聞いてみる。

「む、どういう意味、お兄ちゃん?」

いや、純粋な探求精神だよ小町くん。

「壊さないようにやるのがむずいんだよ」

ということだった。今セイバーが使ってるのは俺のやつなので気を付けて欲しい。

待てよ、ということはゲームなら俺でもセイバーに勝てる?

「おい、俺も混ぜろ」

「いいよー」

というわけで改めてゲームを開始する。

そして勝負は最終ラップ。

セイバーも慣れてきたのか、そのスペックをフルにいかし始める。

レースはデットヒート。

三人は横一線で最終コーナーを曲がる。

勝負は最後の直線に託された。

オオオオオオオオ。

その時セイバーの持つゲーム機から嫌な音が響いた。

ミシミシミシ。

「わーい、お兄ちゃんがビリ!」

いや、せこいだろ今のは!

そんなことを続けていたら雪ノ下から連絡がきた。

急いで向かうとそこは駅の近くに陣取るビル群の一角だった。

そして雪ノ下は何故かドレスに着替えていた。

夜の闇に溶け込むような黒をベースにしたミニスカートのドレスは深窓の令嬢のような清楚さを醸し出しつつ、彼女の白い肌をより印象付ける。

「どうしたの…?」

「あ、いや、ちょっと見とれてた」

「…そう、まあ、貴方のような下々の人間には見慣れない格好でしょうし、目を奪われても仕方ないのではないかしら?」

「ああ、で、何でそんな格好なんだ?」

「これから行く店はドレスコードがあるのよ。貴方もこれに着替えなさい」

俺も近くに停めてあった車の中でそれに着替える。

やはり着なれていないからかこういった服は動きづらいように思える。

「馬子にも衣装と言うところかしら」

「うるせーどうせ似合わねぇよ」

「あら、似合ってないとは言ってないわよ?」

「…そらどうも」

そう言いながら彼女は柔らかく微笑む。

それは夜を照らす町の光のせいか俺には俺には眩しく見えてつい顔を反らしてしまう。

「…」

「どうかした?」

「いや、あの車、どっかで見た気がしてな」

そんな会話で誤魔化しつつ俺達は目的の店に向かった。

そこは隠れ家的な、いかしたバーだった。

マジで川崎はここで働いてんのか?

店にはいるとカウンターの一角に通される。

「あっ、二人ともおそーい」

そこにはやはりドレスアップした、キャスターと何故かライダーがいた。

しかしセイバーの姿はない。まああいつはドレスとか着なさそうだからな。

「おー、似合ってるじゃん、比企谷君」

「あ、どうも」

「姉さん、こういったところであまり騒ぐのはどうかと思うわ」

「雪乃殿、美しいでござるよ」

「…」

俺達は二人の隣に座った。

「ご注文は何になさいますか?」

メニューを渡されるが全てカッコいい感じの英字で書かれていて読めない。

「沙希、ここ頼めるかな?」

何も言えずに黙っているとバーテンが奥に引っ込む。その代わりに川崎が扉から出てきた。

俺達の顔を見るとぎょっとしたような顔を見せる。

「あんたら、こんなとこまで追ってきたの?」

「どうやら、年齢を偽って働いているみたいね」

「っ、それはあんた達もいっしょでしょ、未成年」

やはりここでも勃発する二人のバトル。雪ノ下相手に果敢に挑んでいく川崎も大したものだ。

「注文しないなら帰ってくれる?」

「未成年なら注文はできないでしょう」

「あんたら何しに来た訳?」

そうだ、俺達の目的は川崎がマスターかどうか見極めることで、学校に来させることでも仕事をやめさせることでもない。

「おい、雪ノ下、もういいんじゃないか?」

川崎が働いていることは確認できた。

「そうね、特に用はないわ」

「なんなんだ、いったい」

そう言うと川崎はまた奥に引っ込んでいった。

しかし川崎がマスターでないなら俺に呪いをかけ、雪ノ下を襲おうとした犯人は誰なんだ?

葉山はライダーがボコったらしいし。

ん?葉山?

なんだろう、あと少しなんだが全く思い出せないような気もするもどかしい感じは。

何かが頭の端に引っ掛かっている。

いったい何が気になっているんだ、俺は。

「危ない!!」

その時、聞き覚えのある叫び声が聞こえた。

これはセイバーの声だ。

この場に来ていたのか。

しかし危ないって何が?

誰が?

直後俺はものすごい衝撃に突き飛ばされる。

そして目の前でセイバーの首が胴体から切り離されていた。

「姉さん!」

雪ノ下の叫び声がする。

俺は突き飛ばされて壁に頭をぶつけた衝撃で気を失ってしまった。

 

………………

 

血濡れた岡に響く慟哭。死屍累々の果てに辿り着いたのはそんな光景だった。

彼女は対峙する。

その岡に佇む精悍なる騎士の王と。

その身を汚す血痕が彼女の生気を吸い取っているのかその瞳に既に光はないが、憤怒にかられる彼女もまたそんなことには気づかない。

こうして二人の騎士はあいまみえる。とある神話の終わり。主人公とそれに終止符をうったもの。

凄惨な大団円。全ての物語がハッピーエンドを迎えるわけではない。

お互いにそれを目指した筈なのに。結末はこんな惨事だった。

そして二人は刃を交わす。その瞬間、彼女の姿は跡形もなく消え去った。

 

………………

 

「ん、んん…」

「比企谷君」

目が覚めると綺麗な女の人が俺の顔を覗いていた。

それは雪ノ下だった。まあ、綺麗な女の人ではあるが。

「ここは?」

「私の部屋よ」

確かに仄かに彼女の匂いがする気がする。

あまりいつまでも借りているわけにはいかない。

俺はさっさとベッドから降りようとする。

「まだ横になっていなきゃダメよ、頭を強く打ったのだから」

言われてみると確かに後頭部がずきずきと痛んでいる。

仕方がないのでもう少し借りていることにした。

はて、どうして頭なんか打ったんだろう。

俺はぼやけた頭で気を失う前の事を思い出そうとする。

確か、川崎が働いているバーに入って…。

そうして思い出したのは胴体と頭が切り離された彼女の姿。

すぐさま右手を確認する。そこには彼女との主従の証である令呪がきれいさっぱり無くなっていた。

「雪ノ下、セイバーは?」

彼女は答えない。だが少し伏せられた目が事の結末を示していた。

俺はセイバーに守られたのだ。その衝撃で気は失ったけれど心臓は確かに脈動している。

「敵は、どうなったんだ?」

「川崎さんはライダーが追ったけれど既に店からいなくなっていた。アサシンはその場で自決したわ」

「自決?何の為に?」

「わからない、そう見せかけてまだ生きているのかもしれないわ」

生きていれば情報が抜き出されると思ったのか?ということは仲間がいる?でも聖杯だけが望みのサーヴァントがそんな事…。ここで自分を守って消滅した彼女を思い出す。確かにそういう奴もいるのかもしれない。

あるいは令呪を使ったという可能性もある。

「…これから、どうするんだ?」

「川崎さんを追うわ、遠くには逃げられないでしょうし」

「俺は…?」

セイバーがいなくなった今、俺はもうマスターではない。

なら雪ノ下との契約はどうなっているのだろうか?

「…残念だけれど、貴方は元の生活に戻りなさい」

最後通告。解雇勧告。仕方がない、こうなった以上、俺は足手まといでしかないのだから。

「そうか…、ベッド、悪かったな」

俺はベッドから立ち上がる。

「待ちなさい、まだ…」

「もう仲間じゃないんだ、いつまでもここにはいられないだろ」

そう言うと雪ノ下も何も言わなくなる。

俺は足早に部屋を後にした。

「比企谷!」

ドアを開けると平塚先生が声をかけて来た。

「すみません、心配かけて…もう大丈夫ですから」

「そうか、例えマスターでなくなってもお前と私は教師と生徒だ。困ったことがあったら言え」

「ありがとうございます」

俺はそのまま家を出る。その間際、彼に視線を送った。マンションの階段を下りる。

「ライダー、いるなら出てこい」

そう言うと隣にでかい半裸の男が出てくる。

「んだよ、おりゃー男に興味ねぇぞ」

こいつと話すと面倒なのでさっさと本題を口にする。

「お前の銃、貸してくれないか?」

「何に使う?」

「それでできることなんて、お前の方がよくわかってるだろ?」

そう言うとライダーはその髭に覆われた口を大きく反らせる。

「ほらよ」

そう言って銃を投げ渡してきた。

「魔力を込めて引き金をひきゃあ玉が出る」

そのままライダーは消えていった。

俺はそれを内ポケットにしまい帰り道を行く。

俺は人に借りを作るのが苦手だ。

誰かを頼りにして、一人で立っていないとむずむずする。

だから今回も彼女に借りた物を返しに行く。

命を助けられて、命をかけるなんて馬鹿げているかもしれない。

だが何の事はない。彼女が救ったものに、いったいどれ程の価値があったのか。

これから見定めに行くだけだ。

 

 

 

 

 

 

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