fate/Tiba-si night   作:d d

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戦いは始まり、けれど日々は終わりを告げず

教室から出ると俺は右側へ歩きだした。目的地は一番近い自動販売機だがここからだと二つあり俺は何となく右を選んだ。道すがらさっき聞いた事を反芻する。どれもこれも胡散臭いが、そのどれも恐らく事実だ。

自販機の前に来ると淀みない手つきでmaxコーヒーのボタンをおす。出てきた缶をとりだし蓋を開け、口をつける。かくして喉を潤すのに不適切な強い甘味のする液体が食道を通りすぎていった。

「ふー」

知らず息をはく。

聖杯、神秘、サーヴァント…。

聞き馴染みのない単語が浮かんでは消えていく。混みあった頭にmaxコーヒーはよく染み渡ってくれた。

そうして暫く味わっていると横から声をかけられた。

「それ、上手いのか?」

この声は俺のサーヴァント様だろう。

つられて俺はそちらを振り向く。

ぶっっ!?

思わず口の中身を吹き出しかける。

そこに立っていたのは俺の使い魔であるらしい彼女だったが、その格好は朝の鎧姿ではなく、小町の中学の制服を着ていた。

「何だお前、豚みたいな顔しやがって」

「お前っ、その服どうしたんだ!?」

「鎧だと目立つからな、適当に持ってきた」

適当に持ってきたのがそれなのか…。

「そんな事よりそれ、上手いのか?」

再度問うてくる。それとはmaxコーヒーの事だろう。

上手いか不味いかといえば…。

「飲みごたえのある一品だな」

「そうかじゃあそれを買うのと、その機械から強奪するのとどっちが良い?」

素直に買ってくれとは言えんのか?まあ、俺の命運はこいつにかかってると言っても良いしこれぐらい大した出費でもないか。

俺は先程と同じ行程を繰り返し、出てきたマッカンを投げ渡した。

それを彼女は淀みなく片手で受けとる。

俺は自分のを飲みながら横目で彼女を監察した。

小町に同じことをすれば慌てて、ややもすると落としてしまうかもしれない。中学高の制服だったからか彼女が本当に普通の人間ではないのだと、そんなことで考えてしまう。

そんな彼女がmaxコーヒーを手にしていることが何だかおかしく思えてくる。

ふと疑問に思うことがある。それは彼女の正体。あの容姿と鎧はヨーロッパのものに見える。けれど小町の制服が入るほどの小柄な少女の有名人というと思い至るものがない。

ひょっとすると彼女はあまりメジャーな人物ではないのかもしれない。

目の前の彼女に聞いてしまえば良いのだがなぜだか聞いてはいけないような気がする。実を言うとまだ彼女とどんな風に付き合えば良いかわからない。他のやつならわかる、付き合わなければ良いのだ。

けれど今回はそういう訳にはいかない。

ボッチにとって『二人組作ってー』は死を意味するが、強制的に作られた二人組も居心地が悪いものだ。特に今はとんでもなく軽い御輿として担がれている状態な訳だから俺としては非常にやりずらい。

と、そこで彼女が手に持つマッカンを見つめるだけでいっこうに飲もうとしないのに気がついた。

「どうしたんだ?」

しかし彼女は応えない。

そこで俺はその理由に思い至った。

余計なお世話かもしれない、ただの勘違いかもしれない。

けれどこのままではらちが開かないので俺は彼女にそっと手を伸ばした。

すると彼女が俺にマッカンを渡してくる。俺はプルタブを剥がすと、今度は手伝いにそれを渡す。その瞬間二人の手が触れた気がするが、その熱は直ぐに消え去ってしまう。少女は缶を受けとると俺とは反対側を向いて口をつけた。窓に映った彼女の顔が上気しているように見えたのは、落ち始めた日が見せた幻だろう。

「ん…、なかなかいけるな」

ほう、この味がわかるとはきっと味のわかる伝説の持ち主に違いない。

「プルタブは知らないんだな、日本語は話せるのに」

「必要な知識は聖杯から与えられるようになってる」

戦いには娯楽も必要だろうに聖杯とやらは気がきかないらしい。

「何だ比企谷とセイバーじゃないか。話はもういいのか?」

するといつのまにかいなくなっていた平塚先生が通りかかった。

「比企谷、サーヴァントを趣味の捌け口にするのはよくないぞ」

「いや、別に俺が着せてる訳じゃないんで」

あらぬ誤解を受けていた。

まるで俺が妹趣味の変態みたいではないか。

いや妹は好きだが変態ではない、変態紳士だ。

「まあ、サーヴァントとうまくやれているようで良かったよ」

「コーヒー一つ貢いだだけっすけどね」

「コーヒーの一つ位安いもんだ。はっはっは、…はは、…はぁ」

いったい何があったのか先生の高笑いは次第に小さくなりついにはため息へと変わってしまった。

「んじゃ、そろそろ戻りますんで」

「私も、一緒に、行く…」

そう言って先生は俺の後をとぼとぼとついてきた。

「あんなに…あんなに尽くしたのに」

誰か!早くこの人を見つけてあげて!

いつのまにかセイバーと呼ばれた彼女はいなくなり、俺は先生と二人で教室を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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