「大体、何があってそんなに死にたいんだよ!!」
護堂は骸の顎を狙って蹴りを放つ。
「別にお前にゃ関係無いだろ?」
骸は蹴りを受け止め様とするが、駱駝の権能により強化された蹴りは受け止めた腕の骨を砕く。
しかし、現在の骸はクドラクの権能によって再生力と身体能力が跳ね上がっている。
砕けた腕は護堂が距離を取った時には再生していた。
「ここまでしといて関係無くは無いだろ!!」
タイミングを計り、今度は突進していく。
「それは喰に言え!!」
突進してくる護堂の頭部を狙って、ナイフで突く。
「あいつも、お前も同じだろ!!」
護堂はナイフを上半身を退けぞらせて避ける。
鼻先を掠めるが怯まずに蹴り上げる。
「ガッ!?」
顎を下から蹴り上げられ、骸は宙に浮く。
そして背中から地面に落ちていくが、両手で着地し、それをバネとする事で護堂の腹に蹴りを入れる。
「グハァ!?」
「あれと俺を一緒にすんなよ………ダリィから!!」
そのまま追撃しようとするが、護堂は駱駝の権能を使用中である。
すぐに体勢を建て直し、追撃する骸に蹴りを放つ。
「何よりあいつと俺の目的は相容れねぇ!!」
骸は叫びながら、護堂の足に平手を放つ。
骨が砕け、肉が潰れるが構わず押し込む。
再生速度は破壊されるのに負けてはいるが、相殺する事に成功する。
そして、護堂の頭を頭突く。
互いに額から血を流すが、骸の方は再生していっている。
「そうかよ!!なら、お前はい生きる理由が見付からず、死ぬ理由ばかりあると言ったよな!!」
「言ったが何だよ!!」
そこから先はただの殴り合いである。
互いの手を読み、避け、受け止める。
拳、足、武器、土その場にある物を駆使していく。
「お前は生きたいと思った事は無いのかよ!!」
「ねぇよ!!」
「死ぬ事を恐れたりとかしないのかよ!!」
「いい加減しつこい!!」
「死ぬ理由があるという事はそれだけ後悔して来たって事だろ?死ぬんじゃなくて、もっと別の選択肢は無いのかよ!!」
「ねぇよ!!もう“取り戻しようが無い”からな!!」
「それでも別の何かがあるはずだ!!とりあえず一回落ち着いて考え直せ!!」
ぶん殴られた。
気を抜いたわけでは無い。
でも、何故か骸は拳を食らった。
「あ?」
「稲妻よ」
殴り飛ばされ、起き上がると護堂は天に向けて言霊を唱えていた。
山羊の権能を発動しているのだ。
「まだ使う元気があるのかよ………」
否、そんな事は無い。
よく“視る”と護堂の周囲、そしてエリカ、万里谷から生命力を吸い取っている様だ。
とはいえ、骸にはそれを止める様な力は残っていない。
クドラクの、吸血鬼の力も弱まり始めていた。
おそらく飲んだ量が少ない故に力が続く時間も短いのだろう。
「稲妻よ、稲妻よ!!我は百の打撃を以て千を、千の打撃を以て万を、万の打撃を以て幾万を討つ者なり。義によりて立つ我のために、今こそ輝き、助力せよ!!」
護堂の周囲には雷が現れ、雷鳴を轟かす。
「ハッ、こりゃダリィ。俺の完敗だ」
「人と悪魔__全ての敵と敵意を打ち砕く。それこそ我なり!!」
護堂が言霊を唱え切り、雷が槍となり、骸を貫いていった。
もはや、立ち上がる体力も無く。
クドラクの力も今の一撃を耐える事により使い切られた。
髪は白から黒に戻り、意識は闇に沈んでいった。
◆◆◆◆◆
意識の闇の中で骸は静かに考える。
「俺の別の選択肢ねぇ…………」
思い起こすのは炎の中、泣き叫ぶ“彼女”を遺言に従い連れ出す光景。
そして、崩れ落ちる建物。
自分の横で項垂れる“彼女”。
泣きながら憎々しそうに“彼”を睨む“彼女”の瞳。
「…………やっぱり駄目だ。どうやっても俺が“生きる”だけの意味が見付からねぇ」
「……違うな。お前は逃避しているだけだ」
「どういう事だよ?」
振り向けば喰の姿がある。
「お前は“あの出来事”に向き合いたく無い、自身の存在を認めたく無い、他にも色々とあるさ。つまり、お前は“この世”から逃げ出そうとしてるだけなんだよ」
「そうかもな。でもだからどうした?俺に何が出来る?」
「“逃げず”に“向き合って”、“苦しめ”って言ってんだよ。それにお前は言ったろ?“因果を断ち切る”って。それは充分生きる理由なんじゃねぇか?」
「………………………………………………………………………………………」
しばし、無言で思考する。
自身の奥に眠っていた物を思い出す。
女神、神殺し、そして抱える“何か”。
砕く前に見えた破片を思い出す。
例えどんな“想い”だろうが“知らず”に背負う気は無い。
それだけは確かだ。
かと言って、放っておけるかと言うとそうでも無い。
中途半端なままにしておくのは気に入らない。
どんな方向であれ、決着はつけないと気がすまない。
だが、それが生きる理由になるかと言うとそうでも無い。
「…………喰。“契約”しようぜ」
「“何を”だ?」
“彼ら”にとって“契約”だけは絶対に裏切らない物である。
逆に言えば、それ以外は信用出来ない。
そういう物である。
“契約”という重い物にでもしないと“信用”が出来ない。
それが“彼ら”なのである。
「俺は“因果を断ち切る”。だから、力を貸してくれ」
「その末に自殺すると言うならお断りだぜ?」
「だからこその“契約”だ。俺は“因果を断ち切る”過程で“生きる理由”とやらも探る。見付からなかったら、この“体”は永遠にお前の物だ。それなら文句は無いだろう?」
つまりは見付からなければ体を空け渡すという事だ。
そして、骸は人格として消滅する。
つまりはそういう“契約”である。
どう転んでも喰には得はある。
“生き残る”のが最優先の喰にはちょうどいい条件なのである。
それを聞いた喰はニッと口元を歪ませる。
「いいぜ………そういう事なら“契約”してやる。力を貸してやろうじゃねぇか」
「“契約”成立だな」
喰が骸に手を伸ばし、その手を骸が掴む。
“彼ら”の対立は一応は決着が着いたのだ。
◆◆◆◆◆
骸が目を覚ますと、護堂は治療されてる最中だった。
どうやらそこまで時間は経っていないようだ。
護堂は骸が目を覚ました事に気付くと、立ち上がりフラつきながらも警戒する。
「どうする?まだ戦うか?」
「いいや、俺も限界だし俺の敗けだ」
「これからどうするつもりだ?」
「ちょっと用事が出来てな。それを終わらせなくちゃいけねぇ」
「終わらせたら死ぬ気か?」
「どうだろうな?」
本当に分かって無い様な感じで首を傾げる。
目的は決まった。
とはいえ、先は見えて無いのだ。
「まぁいいや。とりあえず、縁があれば“また会おうぜ”、同類。」
「遠慮しておく」
「そうかよ……」
うんざりした様子での返しに苦笑し、骸はその場を去った。
“また会おう”。
彼は無意識に、常に死ぬ気でいる為に、滅多に使わない言葉を使っていた。
護堂との戦いにて彼の中で何か微々変化したのかもしれない。
◆◆◆◆◆
「よぉ」
“彼ら”は車の上に立っていた。
そして、その状態で車の窓を覗く様に上半身を倒す。
車内には、正史編簒委員会のエージェントの甘粕が困った様な表情をしていた。
「あの距離で気付きますか………」
「俺の情報くらい掴んでるだろ?今までの環境を考えれば、これくらいは出来るって想定してそうなもんだが」
「あまり買い被られても困りますよ。それで、何の御用でしょうか?」
「はっきり言って、あんたが何者かは知らねぇんだが、ちょっと交渉しようぜ」
「私ではあまり期待通りの答えは返せないと思いますよ?」
「なぁに、簡単だ。俺の正体を、八人目のカンピオーネの事を隠して貰えばそれでいい。あんたの一存じゃ決めかねるなら、多少上に相談してもいい。だが、知る人間は出来るだけ少なくしろ」
「交渉と言うにはそれだけでは無いのでしょう?」
「まぁあとは少し“仲良く”しようぜって事くらいだ。あんたらの得は秘匿された八人目と協力体制になれる事だ」
勝手な言い分に苦笑しながら、甘粕は上司の沙耶宮馨に連絡する準備をする。
とはいえ、どういう形であれど大多数に認識されてないカンピオーネと関係を持てると言うのは正史編簒委員会としても確かに得だろう。
何はともあれ、“交渉”は多少長引く事であろう。
vs護堂終了です!!
次回より新章です。
骸と喰の権能は、
ルシファーの赤い竜
ミカエルの四元素の火及び気配偽装
クドラクの吸血
です。
それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。