そして、一週間後。
予定通りに骸は城楠学院に転入してきた。
クラスは一年五組。
そう、護堂と同じクラスである。
「上月 骸。日本人ではあるが色々と世界を回っていた時期もあるから馴れていない部分もあるけどよろしく」
一応真面目に自己紹介をした。
とはいえ、見る人が見ればやる気の欠片も無い事も、欠伸を我慢しているのも分かる。
おそらく喰が心中で台本代わりをしているのだろう。
態度に関しては後で半月がうるさいのもあるだろう。
そんなこんなで骸の自己紹介はエリカやリリアナとは違い目立つ事無く終えた。
席も指定された窓際にキチンと座る。
エリカとリリアナが疑わしい視線を向けて来るが骸は特に気にする事は無かったのだった。
◆◆◆◆◆
そして、昼休み。
「いや~脱出を手伝ってくれて助かったぜ、同類」
「お前が無理矢理手伝わせたんだろうが!!というか、その呼び方やめてくれないか?」
「分かったよ、護堂。これでいいだろ?」
「あぁ」
二人は人目を気にしつつ、屋上へと向かっていた。
休み時間になった途端に骸は女子達に囲まれた。
今日は伸びっぱなしの髪に変わりは無いがボサボサでは無くなっている。
それに加え、それなりに整った顔の骸は女子達の注目の的であった。
男達の嫉妬の視線は無視しつつ、無気力な骸は即座に護堂に助けを求め二人で教室を脱出した。
そして、昼食を食べる為に屋上に向かってる途中である。
人目を気にするのは念の為である。
「さて、半月も屋上にいるらしいが……お前の愛人と絡んでたりしてな」
「愛人言うな!!あいつらは友人だ!!」
「またまた言いわけを」
適当に絡むのが目的の様に骸は話す。
実際に無気力な骸が楽しみを感じるのは人をからかってる時もある。
そんな言い合いをしている間に二人は屋上に辿り着く。
そこで見た光景は、
「いや~裕理は意外にいい体してるわね~」
「ちょ、神宮さんやめてください!!」
半月が万里谷に絡んでいる物だった。
半月は万里谷の背後から体を確かめる様に触っていた。
こういう面もあるのか~と骸と喰は適当に眺めている。
結局は護堂が止めに入り、何時ものメンバーに骸と半月を混ぜて昼食を食べるのだった。
以後は一緒に食ったり、バラバラだったりした。
ちなみに半月が近くにいる事により、骸も男達に護堂と似た様な目で見られたりするのだが、本人達は気付いていない。
◆◆◆◆◆
数日後。
骸も半月も高校には馴れ始めていた。
半月は万里谷以外にも友人を結構作っている様だ。
骸は授業中はほぼ寝ていた。
現在は体育の時間だ。
とはいえ、体育教師は不在で三バカを中心に変な盛り上がりがあった。
女子の水泳を覗きと言う、まさに学生というようなイベントである。
そして、護堂は体育用具室に閉じ込められた。
骸も同じ目に合いそうな雰囲気ではあったが、体育館の隅で寝ている光景を見て放っておかれた。
「やっとバカ共が消えたか」
(ゆっくり寝れるとか考えてねぇよな)
「騒がしいのが消えて、教師もいない。こんな昼寝に最適な環境で寝ないでどうする」
とはいえ、現在の環境は九月ではあるが夏本番の天気に近しい。
普通ならとても寝れた物では無いのだが骸にとっては気にする事でも無かった。
しかし、寝て意識を手放せば喰が表に出てくるだけである。
髪が一房白くなる。
喰は白くなった部分を他の髪と合わせて目立たない様にしておく。
「ったく、笑えねぇ。やる気の欠片もねぇじゃねぇか」
と呟きつつ、喰は体育用具室の鍵を探し始める。
◆◆◆◆◆
五組、六組合同の体育授業。
女子は水泳である。
半月はプールサイドに座り、辺りを見回していた。
「ん~エリカやリリアナ辺りもいいけど、あの子やあの子辺りもいい体をしているわね~」
他の女子を観察していた。
主にスタイル面を。
半月の胸は貧乳とも、巨乳ともいい難い大きさであった。
本人もそこは気にしていない。
大事なのは全体のバランスである。
そして、女の命は髪である。
半月の黒髪は水に濡れても輝きを放つ程には綺麗であった。
そのまま観察を続けていると、万里谷の様子が少しおかしいのに気が付く。
そして、視線の先にエリカ達がいるのも気付く。
「裕理はスタイルなんか気にするタイプだっけ?それとも他に悩みでも?」
色々と考える。
半月としては悩み事なら修道女(紛い)としては聞きたい所ではあるが、互いに別のカンピオーネの陣営に所属という感じなので聞きにくい。
しばらく考えていると、万里谷が委員長の澤や小柄な宮間に絡まれているのを見ていいものを見た様にほっこりする。
先程から視線の気配を感じているのだが、そこらへんはエリカ達が何とかするだろう。
骸に言わせれば、中距離型対人必殺という戦闘スタイルの彼女は人の視線に敏感である。
現在はプール故につけてないが喰から渡された“鈴”は普段は髪飾りとしてつけている。
“鈴”は様々なサポート的な効果を発揮する。
その一つが気配感知の強化である。
しかし、覗きくらいに動じる半月では無いので構わず立ち上がる。
「そろそろ私も泳ぐかな」
立ち上がり、プールの方へと歩いていく。
ここは高校で周囲に敵はいないと油断していた半月は、背後から近付く澤に気が付いていなかった。
「神宮さ~ん♪」
「ちょ、いいいいい、いきなり何するのよ!!」
いきなり胸を揉まれて動揺する半月。
自分がやられるのには耐性が無い様だ。
◆◆◆◆◆
「開けてやったからには貸し一つな」
「今はそういう事どうでもいいだろ……」
隠した鍵を見付けた喰はすぐさまに体育用具室の護堂を解放した。
貸し云々は冗談ではあるが、使える時には使おうと企んではいる。
「それで全体の三分の二が、あの三バカにつきあってるがどうする?」
「止めるに決まってるだろ!!」
護堂としては三分の二もつきあってる方が驚きだ。
「じゃあ、俺も手伝うぜ」
「何が目的だ?」
「何か面白そうだから付き合うだけだ」
「好きにしろ!!」
どうやら遊びたいだけのようだ。
何はともあれ、止めるのは変わり無い。
二人はプールへと急行するのだった。
◆◆◆◆◆
二人が駆け付けた時に見た物は崩れ行く旧校舎とそれに巻き込まれるバカ達だった。
そして、辺りを見回すと侮蔑する表情のエリカ、裁きを喰らわせてやったという感じのリリアナ、心配そうにしている万里谷、そして顔を真っ赤にして息を荒げている半月がいた。
喰は主犯はエリカ達だろうと決め付け、そちらは護堂に任せて半月と話す。
「一体どうした?」
「いや、ちょっとプールで色々あってね」
あの後、澤やその他諸々の女子にいじられそうになった所を逃げてきたのだが、それは“彼ら”には絶対に言わない。
「しかし水着似合うな」
「そう?ありがと」
違う意味で頬を紅くしながら礼を言う。
喰としては思った事をそんまま言っただけではある。
その時、背後で万里谷が走り去るのを見る。
「護堂が何かやらかしたか?」
「どっちかと言うとエリカやリリアナ辺りが何か言ったんでしょ。向こうの王様が誤魔化した事を台無しにする感じの事を」
「ありそうだな。男女関係は難しいねぇ~。笑えねぇが」
「まぁあんたが言うかって感じもあるけどね」
半月の言葉に首を傾げる喰。
他人(骸を含む)の事には気付く癖に自分の事には鈍感の様だ。
半月としては骸も喰も両方気にいってはいるのだが。
「それよりさっきから妙な視線を感じるんだけど」
「気にするな。護堂の男女関係を気にする奴らくらいいるだろうからな」
言って二人は同じ方向を向く。
その時、高層マンションの一室から清秋院恵那と共に護堂達を望遠鏡で見ていた甘粕が冷や汗を流したのはまた別の話である。
時系列としては四巻入ってます。
骸転入話でした。
今後の方針は護堂達に絡みつつ、本編絡みやオリ絡みなどをやってく感じです。
それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。