自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

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観察する者(O)/獰猛なる本能(F)

半月はエリカとリリアナが劍に操られる清秋院恵那と戦う様を眺めていた。

助太刀はしない。

する気も無い。

しても面倒なだけである。

あまり自分から関わるべきでは無い。

互いに別の王の勢力に属する者である。

日常ならともかくこういう事件の時は関わるのは避けた方が今後の為である。

本人達は勢力とか、そういう関係を否定するかもしれないが周囲はそうもいかないのだ。

それに半月は別の目的があった。

 

「あれが神がかりね…………その技術、しっかり観察させて貰うわよ」

 

神がかりは己を空にして、神の御霊をたくわえる器にする物だ。

その力は半月の“疑似土地神化(仮)”に近い性質だ。

(仮)は骸と喰が勝手に名付けただけなので(仮)である。

とはいえ、半月の力は地脈に干渉して吸い上げる様な物である。

体も魂の半分が“神”故に吸い上げた力と掛け合わせて体を“神”に近い物に変えてるのだ。

厄介な点は発する気配が“まつろわぬ神”に近い物になるのと、自己流である為に不完全なのだ。

故に半月は精度を高める為に別の技術を観察して、取り入れ様としているのだ。

 

「でも、方向性として逆なのよね…………」

 

骸に自分の(魂の)誕生経緯を聞いて力の正体を理解して、精度が上がっている。

だからこそ、神がかりと方向性が逆だと思えるのだ。

神がかりが自身を空にして器とするのに対して、半月の力は自身の色に染め上げる物なのだから。

エリカやリリアナの方も見てはいるが、取り込めそうな物が無い。

正直に言えば、半月は魔術が苦手である。

身体強化や地脈を利用する類などならまだしも“ゴルゴダの言霊”などの高等な物は手が出しにくかった。

それなら神がかりも同じくであるかもしれないが、半月としては仕組みと実際に発動している様を観察出来ればそれでよかった。

何もそのままコピーするわけでは無いのだから。

 

「もう面白そうな物は無さそうかしら?」

 

そろそろ見付かる前に立ち去ろうかと思った時に変化は起きた。

 

 

「我が魔力の淵源たる<赤銅黒十字>の印に請う。我に栄誉ある騎士の武勲を約束し給え!!」

 

 

エリカの纏う紅と黒のバンディエラが、長いマント状の上衣となる。

獅子の鋼は、形状を槍に変え、左手には鉄楯が収まる。

その姿はまさに聖騎士だった。

 

「あの力はウルスナグナ!!」

 

半月の口が獰猛に歪む。

彼女は血の気が多いと言うよりも本能的に強い相手に反応する。

さすがに“カンピオーネ”や“まつろわぬ神”クラスとなると身の危険を感じてその面が出ないが“神獣”なり、高位の魔術師が相手になると、その面は顕著に現れる。

おそらく魂のもう半分の部分、骸の前世でもあるカンピオーネの魂に影響されているのだろう。

暴走状態には興味が無い。

しかし、純粋に強化された状態のエリカは獲物にちょうどいい。

物陰から飛び出そうとした時、

 

 

「何をしようとしてんだ、お前は………」

 

 

背後から呆れた様な感じの声が聞こえる。

そして、体が動かなくなる。

 

「観察に熱中し過ぎだっての」

 

「なるほど、“糸”に縛られてるわけね」

 

半月はすぐに察する。

“彼ら”の使う“糸”はよほど目が良くない限りは視認する事はほとんど出来ない。

そして、触れても気付かない事すらある。

工夫すれば肉片を簡単に生み出す物ではあるが気付かれぬ間に拘束する事すら出来るのだ。

 

「乱入はやめとけ、見学ですませろ。手を出したら笑えねぇから」

 

「分かってるわよ」

 

「どの口が言いやがる」

 

「にしても、来るのが大分遅かったわね」

 

現在は深夜一時過ぎである。

二人が分かれてからかなり時間が経っている。

 

「こっちも色々あったんだよ」

 

主に馨が押し付けてきた物が多数。

 

「そろそろ骸に変わってもいいかもしれないけどな」

 

(やめろ、ダリィ)

 

「どんだけ休めば気が済むんだよ、お前は」

 

喰と骸が言い合いをする中で、半月はエリカと清秋院恵那の戦闘を眺める。

ちょうど決着は付いた。

勝敗はエリカの勝ちではあるが、状態からして引き分けだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

だが、天叢雲劍は終わっていなかった。

巨大化し、形を変え、巨人となる。

問題は清秋院恵那がその刃の巨人に取り込まれている事だった。

 

「こりゃ助太刀した方がいいか?」

 

「やめといた方がいいんじゃない?正史編纂委員会の連中にも干渉は出来るだけするなとか言われてるんでしょ?」

 

「…………………まぁ、そうだな。そうではあるな。まぁいいや。護堂の奴に丸投げしとけば」

 

「丸投げも何も、何一つとしてあんたは関わってないけどね」

 

「どうせ上手くやるだろうし、お前も見たいもんは見れただろ?」

 

「確かにね~満足する程度には収穫あったしね~」

 

「干渉出来ないなら用は無いし帰るか。暴走した神刀くらいは大丈夫だろ」

 

用は済んだので帰るという結論に達した。

適当に口実も用意しておけば、後々文句を言われる事も避けれるだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

翌日。

喰は事後報告を聞いていた。

今日はどの道、休みである。

 

「つまりは清秋院恵那は無事、暴走した神刀も退治されたって事か?」

 

『そういう事になるね。とは言ってもまだ事後処理も残ってるし、確認する事はまだまだあるけどね』

 

「で?俺に仕事はあるのか?無いなら切るぞ」

 

『今は特に無いね。あとで一気に来るかもしれないけど』

 

「今、無いならいいよ。じゃあな」

 

喰は通話を終え、携帯をしまう。

 

「しっかし桜の名所を大破壊とは中々やるな、あいつも。さーて、冷やかしに行くか!!」

 

喰は着替えを済ませると、護堂を探しに街に出るのだった。

その後、エリカ達に殺気を向けられ、追い返されるのは語るまでも無い。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

数日後。

一年六組。

半月は欠伸をしながら自分の席に座っていた。

朝のホームルームが始まる少し前と言った所だ。

欠伸の原因は、最近少しエリカの真似事をしていたのだ。

顔を広めるとは少し違う。

此方のカンピオーネは正体を隠して、認識されない存在となっている。

だからカンピオーネとしての名は使えない。

だから地道に関係を作る作業をしていた。

土台を作るのは大事だ。

もし、正体が広まった時の事を考えると味方は多い方がいい。

邪派では無い。

しかし、表には出にくい。

そういう類いのを中心に関係を作っていっている。

 

「(そっちの方が繋がりはバレにくいし、“切りやすい”からね)」

 

方針として、彼女は切る事前提で進めていた。

資金源や、人材として使うには使うが切る時は切る。

味方は多い方がいいが、逆に裏切りなどの危険性も出てくる。

カンピオーネと明かして作った関係では無いとは言っても万が一がある。

深く繋がりは過ぎず、切るのは容易い位置を保つ。

黒に近い灰色と言える連中との関係はこのくらいでちょうどいいのだ。

 

「眠たそうですが何かありました?」

 

万里谷が声を掛けてきた。

半月は組織の繋がりは軽いが、友人などの繋がりは大事にする傾向にある。

 

「ちょっと夜更かししただけだから大丈夫よ。別に裕理が心配するほどじゃないわ」

 

「そうですか……」

 

そこで万里谷は席へと戻って行った。

教師が入ってきた様だ。

ホームルームが始まる。

そこで今日はどうやら転校生が来るらしい。

しかも六組にだ。

転校の頻度が疑問に思えるくらいだが全てカンピオーネ関連なのだから、もしかすると今回はまともな転校生かもしれない。

 

「それでは入りなさい」

 

「はい」

 

入ってきたのは雪の様な白に近い銀髪に青い瞳に、白い肌の女子であった。

外国人とは一目で分かる。

 

「ヴェーラ・イヴァーノヴナ・エリン、と言います。日本に来たのは初めてで不馴れな事もありますがよろしくお願いします」

 

大人しそうな声に笑顔を浮かべ、頭を下げた。

それ自体は普通であった。

しかし、何か半月は引っ掛かっていた。

 

「(何か違和感あるのよね~口調も、表情も、まるで…………)」

 

まるで作り物の様に感じたのだった。

薄っぺらい何かに。

仮面を付けている様な。

席は窓際だった。

席に向かっている途中で偶然、目が合う。

 

「……フッ」

 

「っ!?」

 

目が合った瞬間に嫌な気配がした。

彼女の表情からも冷たい何かを感じた。

そして、口元に浮かんでいたのは冷たい笑みだった。

 

「(やっぱり何かありそうね………)」

 

改めて警戒する半月だった。

とはいえ、確証があるとは言えないので骸と喰には黙っておくのだが。

 

 




視点がほぼ半月でした。
半月は観察して吸収して応用するタイプです。
吸収するのに無理な物もありますが。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

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