自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

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怪しい転校生(S)/気配を断つ者(C)

 

放課後。

半月は転校生の事は一先ず置いておいて先に済ませる事があった。

 

「貴女が清秋院恵那さんでいい?」

 

「そうだけど、そういう貴女は誰?」

 

「私は神宮 半月。裕理の友人で草薙護堂とは別の王の女、とでも思っておいて貰えばいいわよ」

 

「その半月さんは恵那に何の用かな?」

 

「友人になりにきたじゃ駄目かしら?」

 

「友達になるのはいいけど、別の何かを企んでそうなんだよね~」

 

「まぁ確かに手合わせとかして技術盗みたい部分はあるけど」

 

そこは正直に言う。

そんなところで嘘をついても意味は無い。

そもそも友人になりにきたのは本当なのだから。

 

「でも、友人になりに来たのは本当よ?裕理の友人とは仲良くしておきたいし、何より貴女とは仲良く出来そうだし」

 

「恵那としても構わないんだけど………別の王さまの女って事なら敵対する事もあるかもしれないよ?」

 

「その時はその時よ」

 

かくして二人は友人関係になった。

とはいえ、恵那は謹慎があるので中々会えなかったりするのだが。

月二くらいのペースで通ってもいいかと計画する半月であった。

彼女の剣も、我流で磨き上げた物だ。

恵那の様な腕の物と腕試しくらいはしたいのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

翌日。

骸と半月は通学路を歩いていた。

骸は欠伸をしながらダルそうに歩く。

半月は全く気にしない様子で歩いている。

そんな二人はばったり“彼女”に出会う。

雪の様な白に近い金髪、青い瞳に、白い肌、転校生のヴェーラだった。

 

「あ、おはようございます。こんな所で会うとは偶然ですね、神宮さん」

 

大人しい印象を与える笑顔に穏やかな口調で挨拶してくる。

 

「おはよう。確かに偶然ね、こんな所で会うとは」

 

半月と骸は徒歩とはいえ、それなりの距離を歩く。

そんな通学路でばったり転校生に会うとは偶然にしては出来すぎである。

骸の方は興味が無さそうではあった。

半月はますます疑いを向けるのだった。

 

「えーと、そちらは………」

 

「上月 骸。隣のクラスだ」

 

適当な調子で答える。

本当にこういう時は面倒である。

半月はヴェーラに見えない様に骸の足を踏みつける。

 

「お二人は仲がいいのですね」

 

「そりゃそうよ」

 

半月は半月でまともに答える気があるのか疑問な答え方である。

その後、たわいも無い話をしながら三人は学校へと向かうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

昼休み。

半月は購買で適当に昼飯を買っていた。

購買は人の山ではあるが、その隙間を抜けるくらいは簡単である。

半月は料理は出来るが、たまに忘れてこうして購買で買う時がある。

 

「(“ヴェーラ”ねぇ………何か怪しいのよねぇ………)」

 

購買で買った昼飯を腹に入れ、図書室に向かう。

高校の図書室にたいした本は置いてない。

しかし、各国の“人名図鑑”程度ならあるだろう。

 

 

◆◆◆◆◆           

 

 

骸は屋上へと続く階段の上層部分に寝転がっていた。

屋上は他に人がいるし、護堂達がいたりするが、此処なら普通は登って来ないし風にも当たれる。

仰向けになって、このまま寝てしまいたかったのだが、寝たら確実に放課後まで起きない。

既に何度かやってるが、全て半月に長々と文句を言われた。

今日は文句を聞いてる気分では無いので授業には出る。

携帯を確認すると、もうすぐ昼休みも終わる。

 

「ダリィけど、そろそろ教室に戻るか~」

 

下を確認すれば屋上からも人気が消えていた。

それを確認して降りる。

そして階段を降ろうとした時、

 

「おや、偶然ですね」

 

「っ!?」

 

背後から声を掛けられて慌てて振り向く。

屋上の扉の死角に彼女はいた。

雪の様な白みを持つ金髪の少女、ヴェーラはそこに立っていた。

 

「あんたも屋上で飯を?」

 

「えぇ、そうですね。私も屋上で食べていました」

 

彼女を手元を見ると購買の袋と思える物にパンの袋が幾つか詰められていた。

料理出来ないんだろうか?

ちなみに骸は自作の弁当である。

 

「そろそろ教室に戻らねぇと遅れるぜ?」

 

「そうですね。少し急ぎましょうか」

 

そう言って彼女は小走りで階段を降りて行った。

 

「あいつ…………いつの間に背後を取った?」

 

骸の気付かぬ間に背後を取る。

それは結構難しい。

気配を消し、足音を消し、“糸”に触れない。

それらが出来なければ背後は取れない。

 

「何なんだ、あいつ?」

 

骸は首を傾げるが、特に分かる事も無いので保留にするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

放課後。

半月はヴェーラを呼び出していた。

学校から少し離れた人の近付かない様な林に。

ヴェーラはこんな所に呼び出されて困惑した様子だ。

 

「上手く演技が出来る物ね」

 

「な、何の事ですか?」

 

呆れた様な呟きに更に困惑を深める様な態度のヴェーラ。

 

「とぼける必要は無いわよ?“ヴェーラ”………いや、“ルーシャ”と呼んだ方がいいかしら?」

 

「っ!?………何の事ですか?」

 

一瞬だけ驚いた様子をして、また困惑した様に戻る。

 

「だからとぼけ無くていいって言ってるでしょ?バレバレなのよ。わざわざ本名を名乗るとは思わなかったけど」

 

「ふぅ、まさか君が気付くとはね」

 

息を吐き、口調が変化する。

穏やかな物から冷たい物に。

 

「馬鹿にしてるの?“ルーシャ”はロシア語で“ヴェーラ”の愛称って事くらいは少し調べれば分かるのよ」

 

「そうだね。やっぱり気付くよね。それが君とは予想外だけどさ」

 

同じ様な事を呟く。

まるで自分を調整する様に、調律する様に。

表情が無機質な物になる。

冷たい視線に、冷たい口調。

まるで何かに冷めきった様だった。

 

「それでこんな所に呼び出してどうするつもりだい?」

 

「別に確認作業をしたかっただけよ。正体の確認と………転校してきた目的の確認を」

 

「転校の目的?そんな物を訊いてどうする気だい?」

 

「どうせあんたの目的は骸の監視か何かでしょ?それならば転校する必要は見当たらないじゃない」

 

「そういう事ね。僕としてはただの気紛れさ」

 

「あっそ。まぁ目的としてはもう一つあるけどね」

 

答えなんて正直興味が無かった。

そういうのは建前である。

 

「これ以上、骸の周りをうろちょろするというのなら、排除しておきたい所なのよね」

 

「へぇ、意外に気が合うね。僕も君を排除したかった所さ」

 

睨み合う。

互いにまだ武器を手に取ってすらいない。

どちらかが動けば始まる。

林の中の何処かで鳥が飛びたつ。

それが合図だった。

 

「「っ!!」」

 

二人は同時に後退した。

互いに素手でやり合うのは得策では無いと考えていたのだった。

半月は髪飾りにしている“鈴”を鳴らす。

半月の周囲に呪力が舞う。

左足を基点に一回転する。

呪力を纏ったかと思うと服装が変化する。

制服から修道服へと変わる。

同時に刀も召喚する。

“鬼切丸”と“蜘蛛切丸”、抜き身で召喚した二本を手に取り、構える。

 

「やっぱり修道服じゃないと調子が出ないのよね」

 

「つまり全力という事かい?なら、期待しておくよ」

 

嘘だと言うのが分かる口調で言ってくる。

ヴェーラの姿もいつの間にか変化していた。

無地の白い仮面に黒いフード付きロングコート。

つまりは“ルーシャ”としての何時もの格好であった。

片手に拳銃、片手にナイフを持って構える。

互いに準備は完了した。

二人は地面を蹴り互いに向かっていきぶつかりあう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

互いに向かって行った、とは言っても互いに戦闘スタイルが違うのだ出る行動も違っている。

 

「タァァ!!」

 

半月は思いっきり距離を詰めて、横薙ぎに刀を振るう。

ヴェーラは後退して避ける。

そして、即座に拳銃を向けて発砲。

半月は首を捻って頬を掠める様に銃弾を避け、左の刀で二発目が来る前に拳銃を斬り落とす。

 

「っ!?」

 

怯んだ隙に右の刀を振り降ろす。

ヴェーラは慌ててナイフで防ぐが刃にヒビが入り、砕ける一歩前と言った所だ。

 

「“召喚”機関銃」

 

空いている手に機関銃を召喚する。

狙いは付ける必要は無い。

目の前にいるのだから引き金を引くだけでいい。

 

「だぁぁぁ!?何を出してきてんのよ!?」

 

「ただの機関銃だよ。もちろん弾は魔術で強化してるけどね」

 

「隠密が専門ってわけじゃないようね」

 

半月は必死に射線上に入らない様に走る。

魔術で身体能力を強化し、修道服に色々仕込んでるとはいえ、肉体は生身である。

銃弾は普通に効く。

 

「僕の仕事は暗殺、潜入が基本だよ。武器は念の為にだね」

 

「もっと魔術師らしい武器じゃ駄目なのかしら?」

 

「別に魔術師だろうが人は人。眉間に銃弾撃ち込めば死ぬんだから銃があれば充分だろう?」

 

「まぁそれには同意だけど!!」

 

あくまで無機質な冷たい声で答える。

機関銃の射撃は止まらない。

現在のヴェーラは両手に機関銃を持っている。

しかし片手分しか引き金は引いて無い。

どういう仕組みかは知らないが、ヴェーラは武器を呼び出せる。

片手分の弾が切れたら即座に逆の手に切り替える。

その間に機関銃を召喚。

その繰り返しで弾切れによる隙を無くしていた。

このままじゃ埒が明かないと半月は判断し、左手に持っていた“蜘蛛切丸”をヴェーラに向けて投げ付けた。

いきなりの事にヴェーラは慌てる様に投げ付けられた刀を避ける。

その隙に距離を詰める。

 

「貰った!!」

 

“鬼切丸”で機関銃を斬り落とす。

更に左手で太股のホルスターから拳銃を取り出し、ヴェーラの顔面に向けて発砲。

 

「っ!?」

 

ヴェーラは上半身を背後に倒し、かなりギリギリに銃弾を避ける。

同時に両手にリボルバーを召喚し、半月に向け発砲する。

半月も上半身を背後に倒して避ける。

倒した後からがヴェーラとは別だった。

そのまま両手を地面に付け、逆立ちの格好に成りながらブーツの爪先の先から隠し刃を出す。

 

「な!?」

 

そのまま蹴りでヴェーラの拳銃を弾き、続いて取り出してきたナイフも蹴りを連続で入れ、腕ごと弾く。

そして、踵部分から銃口を伸ばし迷わず発砲。

 

「がっ!?」

 

仮面の砕ける音が響き、血が舞うのだった。

 

 





半月vsヴェーラが始まりました。

ヴェーラ・イヴァーノヴナ・エリン
ロシア名です。
ヴェーラの愛称がルーシャとなります。
半月はそれで気付きました。

修道服に着替えたのはそっちの方が戦いやすいからです。
早着替えはアニメのエリカの変化的な感じです。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。

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