自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

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女のぶつかり合い(G)/偶然の禁句(C)

 

「クソッ!!」

 

ヴェーラは左手で顔を押さえながら牽制の為に引き金を引く。

半月は投げ付けた“蜘蛛切丸”を手にして後退する。

ヴェーラの仮面は左半分の上半分が砕け、青い瞳が露になっていた。

半月の放った銃弾は仮面を砕き、額を掠めていった。

ギリギリ避けたはいいが掠めた額から血が溢れ、左目分の視界が紅く染まる。

 

「どれだけ武器を仕込んでいるんだい、君は?」

 

「無尽蔵に銃器召喚してくるあんたに言われたか無いわよ」

 

半月はまだまだ余裕と言った感じである。

それも当たり前である。

まだ地脈関連の力を使って無いのだから。

身体能力の強化に魔術などを使い、本調子を出す為に修道服になっているとはいえ、切り札は取って置いてあるのだ。

それに“疑似土地神化”は一度使ったらしばらくは使えない。

必要無い時は温存しておくべきなのだ。

それ以外もまだ温存である。

 

「チッ……“召喚”煙玉」

 

ヴェーラは手元に煙玉を召喚し、地面に叩き付ける。

周囲一帯が煙に包まれる。

半月は周囲を警戒しながら、“鬼切丸”と“蜘蛛切丸”を構える。

 

「逃げた……?」

 

中々仕掛けて来ない為に首を傾げる。

直後に物陰からナイフが投げ付けられる。

右の刀で普通に弾く。

 

「っ!?」

 

直後に左肩が熱くなる。

そして、激痛が襲ってくる。

血が溢れ、左腕から力が抜けかける。

撃たれた。

左肩を撃ち抜かれた。

しかも背後から銃声がしなかったのは気にしない。

だが、気配がしなかったのは予想外だった。

 

「そういえば、気配を消すのが得意だったわね…………」

 

周囲を警戒しながら呟く。

すると、何処からともなく声が響く。

 

「悪いけど、君と正面から戦う気は無いよ」

 

「(そりゃそうでしょね…………)」

 

ヴェーラは見た所は中遠距離を得意とするタイプである。

それに隠密や暗殺などから分かる様に正面から直接戦闘するのは避けたいのだろう。

半月の様な近接、中距離を得意とするタイプをまともに相手にする気は無いのだろう。

 

「ったく面倒ね。“四元素を司りし妖精よ。我に答えよ”」

 

言霊を唱える。

 

「“風を司りしシルフよ。濁りし空気を払え”」

 

風が吹き荒れる。

視界を悪くしていた煙が払われる。

基本的には風を起こしただけである。

そうたいした事では無い。

 

「みーつけた!!」

 

「っ!?」

 

ヴェーラの姿を見付けた直後に懐へと飛び込む。

もちろん銃弾を放たれるが慌てて放った弾くらい避ける事は容易い。

避けて距離を詰める。

 

「ハァ!!」

 

最初に爪先から刃を出した足で蹴りを放ち、ヴェーラの手にある銃器の銃口を歪める。

 

「っ!?」

 

次に踵の銃口から発砲。

ヴェーラは首を捻って回避する。

 

「“召喚”リボルバー!!」

 

召喚し、即座に引き金を引いてくる。

もちろん牽制的な意味しかない。

追撃さえ防げれば充分である。

が、半月はヴェーラの予想の外に出る。

半月は避けずに突きを放つ。

銃弾を弾き、そのままリボルバーも貫き、左肩を刺し貫き、背後の木に縫い付ける。

 

「っ……ぐぅ!?」

 

「さて、捕まえたわよ」

 

「それはどうかな!!」

 

半月の目の前に何かが投げられる。

ヴェーラと半月の顔の間でそれは激しい閃光を放つ。

 

「目潰しってわけね」

 

「そういう事だよ!!」

 

ヴェーラは半月に蹴りを入れ吹っ飛ばす。

その間に左肩から刀を抜く。

 

「がっ………」

 

激痛が襲うが耐える。

適当に布を巻き付ける。

そして銃口を半月に向けようとした時にぶん殴られた。

 

「いつの間に!?」

 

「布を巻いてる隙があれば視力を回復させる暇くらい出来るのよ!!」

 

今度は後ろ回し蹴りを放ってくるがギリギリ防ぐ。

そのまま足を掴んで動きを止めた上で撃とうとする。

 

「は!?」

 

「でりゃぁぁぁ!!」

 

逆に足で胴を掴まれる。

半月は両手を地に付けてヴェーラを地面に叩き付ける。

 

「がはぁ!?」

 

「だぁ!!」

 

フラフラとヴェーラが立ち上がった所に頭突きを打ち込む。

先程の拳と銃弾でヒビの入っていた仮面は砕け散るのだった。

 

「ようやく仮面を剥がせたわね」

 

「仮面を砕いたくらいで何だって言うんだい?」

 

互いに間合いを計りながら話す。

半月の手には刀が、ヴェーラの手には拳銃とナイフが構えられてる。

 

「私はあんたの本音を聞きたいのよ」

 

「は?そんな物を聞いてどうするつもりだい?」

 

「本音も一切分からない奴なんて相手にしててもつまらないでしょう?」

 

「何が言いたいのさ」

 

「あんたの言葉には一切自分の意思ってのが感じられないって言ってるのよ。“監視”だの何だの依頼された事を淡々とこなしてるだけであんたの意思ってのが全く感じられ無いのよ」

 

「別にそれで問題無いだろう?」

 

互いに左肩を負傷している。

それ以外にも細かい傷は存在している。

これ以上大きな傷を負えば不利になる故にどちらも迂闊には動けない。

 

「自分の意思の無い人形を相手にしてもつまらないのよ。事情とかそういうのに全く興味無いけど、あんたの表情も、口調も、何も感じられない。まるで依頼も何もどうでもいいのかの様に聞こえるのよ」

 

「だって、本当にどうでもいいだろ?僕は依頼をこなす。それだけでいいじゃないか」

 

「それがつまらないって言ってるのよ」

 

半月が動く。

ただ真っ直ぐにヴェーラに向かって突っ込んで行く。

ヴェーラは銃口を向けて三発放つ。

一発目、二発目は左の刀の一閃の元に斬り飛ばされる。

三発目は首を捻って頬を掠める様に避けられる。

そのまま、右の刀によって斬り掛かられるがナイフによって受け止める。

重ねる様にして銃口を向けて引き金を引く。

半月はしゃがんで避けると肘打ちをヴェーラの腹に放つ。

肺から空気が絞り出される。

 

「かはっ!?」

 

「ちょっとは自分の意思って物を見せてみなさいよ。転校してきたのは気紛れと言ったわね。その気紛れの原因を見せてみろっての」

 

「うるさいよ。君には何も分からないさ」

 

ヴェーラはあくまで無機質な冷たい声で言う。

ナイフを振り降ろす。

半月はヒラリと避ける。

そして、斬り上げる様に刀を振り上げる。

ヴェーラは後退して避けるが、一瞬遅く、ロングコートの前部分が裂かれる。

皮膚には到達していない。

あと一瞬遅ければ危なかったであろう。

裂かれるながらも銃を構えて引き金を引く。

半月は身を捻るが一発脇腹を掠めて行く。

 

「分からないに決まってるでしょうが。表に出さなきゃ誰も分かるわけが無いでしょ」

 

「あっそ。僕には本当にどうでもいい話だよ」

 

半月は傷の具合を確かめながら言い、ヴェーラは本当にどうでもいいかの様に言う。

 

「悲しい話ね。誰にも自分を明かせないなんて。よくこんなのを信頼してるわね、依頼主も」

 

それはただ思った事を呟いただけだった。

それでもヴェーラは初めて表情を変える。

 

 

「信頼?信頼だって?あるわけが無いだろう、そんな物!!あいつらはどうせ僕の事は道具としか思って無いよ。いらなくなったら捨てればいいだけのね!!そこに信頼なんて無い!!あいつらは僕を信じて無いし、僕も誰も信じちゃいないんだよ!!」

 

 

いきなり声を荒げた事に半月はキョトンとするが、すぐに満足した様な顔になる。

無機質でも、冷たい物でも、作り物でも無い。

それはヴェーラの本音であった。

禁句に触れられたヴェーラは思わず叫ぶのだった。

 

「あるじゃない。言いたい事が。そういう事をもっと表に出せばいいのよ。そうすりゃあんたもそんな所に縛られ続ける事も無かったでしょうに」

 

「分かったような事を言わないでくれるかな?言っただろう?君には僕の事なんて分かるはずも無いって」

 

「そりゃそうね。さて、聞きたい事も聞けたしそろそろ決着と行きましょうか!!」

 

「そうだね。僕も少しイラついて来たからね。さっさと決着をつけようか」

 

互いに武器を構える。

最後の激突に備え、間合いを計る。

次の激突が本当に最後となる。

片方、もしくは両方が倒れる事になる。

そんな激突が始まろうとしていた。

片方は獰猛な笑みを浮かべ、もう片方は静かに怒っていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「見付けた。強き魂を見付けた」

 

日本の上空。

“彼女”は天馬に股がりながら漂っていた。

そして、目的の物を見付け、オーロラを纏いながら空を駆けて行く。

強き魂を主に捧げる為、“彼女”は戦場に現れるのだった。

 

 

 





主人公不在回でした。
ほぼバトル及び言い合いでした。

ヴェーラの禁句は“信頼”などのワードです。
理由は次回以降に。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

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