自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

28 / 53
決闘に乱入する“乙女”(M)/死を求める不吉(U)

 

もはや策は必要無い。

というよりもどちらも策をねる事をやめた。

次の手で決着をつける。

それだけなら迷う必要は無い。

ただ、真っ直ぐ相手を打ち倒す為に力をぶつけるだけである。

二人は同時に互いに向かって駆け出す。

 

 

「「ハァァァァァァァァァ!!」」

 

 

ヴェーラが引き金を引く。

半月が銃弾を刀で弾きながら斬り掛かる。

数撃避け、刀を蹴り上げる。

そして、発砲。

数発は避けられるが一発は左腕を掠める。

半月が突く様に蹴りを放つ。

慌てて避ける。

半月のブーツの爪先には刃が出ている。

その刃はヴェーラの脇腹を掠める。

避けられはしたがそこから回し蹴りに変える。

 

「ぐっ………」

 

ヴェーラが蹴り飛ばされ、転がる。

蹴り飛ばされた刀を拾う暇は無い。

修道服のスリット部分に手をやり左右の太股のホルスターから拳銃を取り出してヴェーラに向けて構える。

ヴェーラは体勢を整え、手元に拳銃を召喚し、半月に向けて構える。

 

「「…………っ!?」」

 

互いに拳銃を突き付け合う形になる。

しかし二人共躊躇い無く引き金に指をかける。

同時に銃弾が放たれた直後、

 

 

「見付けた」

 

 

一本の槍が半月とヴェーラの間に突き刺さる。

しかも銃弾を全て弾く形で。

 

「槍?」

 

「一体何が?」

 

二人同時に槍の飛んできた方を見上げる。

そこにいたものは鎧を着込み、天馬に股がり、オーロラを纏う“乙女”の姿だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

少し時を遡る。

骸は半月を探していた。

 

「ったくダリィ…………半月の奴、何処にいやがる?」

 

そこらへんの鳩などに[666]を刻み込んで探してはいるが中々ひ見付からない。

何やら嫌な予感しかしないのである。

携帯が震える。

誰かから電話が掛かってきたようだ。

 

「こんな時に誰だ?」

 

誰からかを確認すると馨だった。

面倒そうな顔をして喰に話しかける。

 

「変わっていいか?」

 

(ったくしょうがねぇな。そっちは俺の担当だしな)

 

一瞬、頭が下がる。

再び頭が上がった時には髪が一房白くなっていた。

そのまま通話に入る。

 

『やっと出たね』

 

「悪い悪い。こちらは別事があってな。それで用件はなんだ?」

 

『異常な現象が確認されてね。“まつろわぬ神”が現れたんじゃないかと君に確認を取っているのさ』

 

「どんな現象だ?」

 

『東京のあちこちでオーロラを見たという目撃談だね』

 

「オーロラ?こんな時期にこんな場所でか?」

 

『だから異常なんだよね。君の周りではどうだい?』

 

「ここらへんは……」

 

言われて上を見回す。

空は青空と思いきや、オーロラが広まっていた。

しかも移動しているのが見えていた。

 

「今広がってる所だ」

 

『出来れば正体を探って欲しいんだけど、頼めるかな?』

 

「任せとけ。ちょうど嫌な予感がしてる所だ。お前らは後始末の事を考えておけ」

 

『分かった、じゃあ任せたよ』

 

通話を終える。

ここまで広範囲に広まったオーロラとなると揉み消し大変だろうなと思いながらオーロラの正体を探り始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

この異変はもちろん護堂達も気付いていた。

エリカ、リリアナを中心に彼らも探り始めていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

半月とヴェーラはその“乙女”を見た直後に後退する。

半月は即座に“鬼切丸”と“蜘蛛切丸”を確保する。

ヴェーラもその手に機関銃を構える。

 

「こりゃヤバそうね」

 

「ヤバいも何もってレベルじゃないよね」

 

半月とヴェーラはボソボソと相手に聞こえない様に話す。

とは言ってもあの“乙女”の聴力がどれだけは分からないが。

“乙女”はただただ不気味だった。

今も何かをブツブツと呟き動く様子は無い。

 

「とりあえず一時休戦と行かない?」

 

「行くしかないだろ?“あれ”を相手にしたら」

 

あの“乙女”は確実に“まつろわぬ神”だ。

そんな物を前に争っていたら確実に死ぬ。

二人は背を合わせる様にしながら“乙女”を見る。

両方共、息切れはしていないが体としては限界に近い。

止血はしてあるとはいえ出血が多い。

少しでも動けば傷が痛み出すくらいだ。

特に左腕は力が抜けかけていた。

それでも気力で立ち、“乙女”を睨む。

一方の“乙女”はいまだにブツブツと呟いている。

その声が少しずつ大きくなっていた。

 

 

「………けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた。見付けた」

 

 

壊れたビデオの様に同じ事を繰り返している。

その表情はまさに狂った様な顔である。

それから感じるのはただただ不気味という事である。

この隙に逃げれそうではあるが次にどう出るか分からない為に動くに動けないのだ。

 

「何あれ?狂ってるの?」

 

「間違い無いだろうね。僕としては相手にしたくない類いだよ」

 

警戒しながら話す二人。

“乙女”は連呼を止めると二人に視線を向ける。

 

「………貴女達、強い魂ね。強い魂を主に捧げるのが私の役目…………強い戦死者の魂を……………戦死者?死者………はいない。いないなら作ればいい。強い魂を得る為に作れば…………殺せば!!」

 

狂った様に、壊れた様に呟く。

否、“様に”では無い。

まさに壊れて狂っている。

何が原因かはさっぱり分からないが“乙女”は狂っていた。

 

「しかし……ただ殺すじゃ駄目……………手順が必要………………それまでは生かす?………………面倒………………拘束すればいい………………それがいい!!」

 

狂った笑みを二人に向ける。

二人は寒気を感じながら警戒を強める。

 

「大人しく………してね?」

 

「「な!?」」

 

二人は一瞬も目を離していなかった。

にも関わらず、この“乙女”は一瞬で姿を消し、更に一瞬で背後に回ってきた。

二人が振り返る前に槍が横薙ぎに振られる。

 

「がはぁ!?」

 

「ぐぬぁ!?」

 

刃の部分には当たって無い。

しかし刃で無くても威力は桁違いだ。

二人の体はくの字に折れ、吹っ飛ばされていく。

木々に激しくぶつかる。

吐血する。

骨も砕けているだろう。

二人とも身動きとれる様な状態では無かった。

 

「あとは…………回収」

 

「そんなダリィ事はさせるかよ」

 

髪の半分を白く染め、左目も紅くなった骸が乱入してくる。

“乙女”の頭を掴んで、投げ飛ばす。

髪が白くなっているという事はクドラクの権能を使って血を飲み、身体能力を上げているのだろう。

 

「万里谷、リリアナ。悪いけどそいつら頼んでいいか?」

 

「は、はい」

 

「貴様の様な奴に協力するのは不本意だが、“まつろわぬ神”の前では仕方無い」

 

骸は四元素の火を使ってこの場所を探った。

実は半月が髪飾りとしている“鈴”には骸の血を染み込ませてある。

四元素の火は血を発火点とし、命を司る。

命の欠片とも言えるそれはある程度の範囲なら感知する事が出来るのだ。

それでここに向かう途中で万里谷とリリアナに出会い協力して貰っているわけだ。

投げ飛ばされた“乙女”はまたブツブツと呟いていた。

 

「あれは……神殺し?神殺しは邪魔。邪魔。邪魔。邪魔。邪魔。邪魔。邪魔。…………邪魔者は排除。排除。排除。排除。排除。排除!!」

 

「ぐがぁぁ!?」

 

いきなり目を見開いたと思うと槍を投げ付けられる。

骸は避ける間もなく腹を貫かれ、そのまま吹っ飛ばされる。

 

「骸!!」

 

「…………排除……完了。………次は回収……………」

 

「がっ!?」

 

“乙女”は半月と、半月を運ぼうとしていた万里谷の近くまで移動すると、半月の意識を飛ばし、天馬へと乗せる。

強い魂以外は興味が無いのか、万里谷には視線も向けず、リリアナとヴェーラの方を見る。

 

「さ…せ…るかよぉぉぉ!!」

 

いつの間にか表に出ていた喰は腹の槍を引き抜き、懐から輸血パックを取り出して飲み干す。

髪が全体の七割程白くなる。

回復速度を上げ、腹の傷をほぼ再生させる。

そのまま槍を持って“乙女”に投げ飛ばす。

“乙女”はそれをヒラリと避ける。

それでも構わなかった。

狙いは半月の確保である。

喰が半月へと向けて駆け出した時、リリアナは目の前に現れた“乙女”に斬り掛かっていた。

“乙女”は鎧で斬撃を弾き、剣を掴み取る。

そのまま肘打ちを腹に打ち込む。

 

「くっ………」

 

リリアナの意識を刈り取ったのを確認すると“乙女”はリリアナを担ぎ、槍を手に取る。

 

「予定………変更……………こちらの方が上質…………貴女はいい……………いらない」

 

「……………ったく、笑えねぇ!!」

 

“乙女”とヴェーラの間に喰が割り込む。

“乙女”は構わず槍を振り降ろす。

喰は右肩から左腰までを深く袈裟斬りにされる。

鮮血が舞う。

背後にいたヴェーラにも大量の血に濡れる。

 

「ちょ、何してのさ、君は!?」

 

「しょうがねぇ………だろうが……………体が動いた物はよう」

 

実際の所は違う。

喰はヴェーラを見捨てる気で半月へと駆けていた。

最優先は半月。

これは骸も、喰も変わらない。

しかし、意地で意識を取り戻した半月が視線でヴェーラを助ける様に訴えてきた。

意図は察せれ無かったが半月に訴えられたならやるしかない。

ヴェーラは目の前で起きた事に軽く困惑して喰に叫び掛ける。

“乙女”は全く気にせず、トドメを刺そうとしてくる。

 

「邪魔者は……完全に……………排除……………」

 

“乙女”が二人纏めて刺し貫こうとした時、

 

「やめろ!!」

 

護堂とエリカが現れる。

“乙女”は手を止めてそちらを見る。

そして周囲を見回す。

 

「新たなる脅威を確認…………続行は不利…………撤退………」

 

周囲を確認すると、“乙女”は即座に天馬に股がる。

そして、リリアナと半月を連れたまま去ろうとする。

 

「待てよ………この野郎!!名乗るくらいはしたらどうだ!!」

 

 

「……………我が名は“ブリュンヒルデ”」

 

 

「は?」

 

予想外の名前が出てきた。

こんな壊れて狂った様な感じとはかけ離れた名前だった。

だが、名を聞いただけで終わらせない。

 

「逃が……す…かよ!!」

 

喰はふらつきながらも立ち上がり、ブリュンヒルデが去ろうとするのを防ごうとする。

 

「………“我の化身…死を象徴する不吉なる鳥よ。我の元に現れる地肉を喰らえ”」

 

ボソリとブリュンヒルデが言霊を呟く。

同時にブリュンヒルデの背後に黒い闇が広がり、闇は鴉に変わって襲い来る。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

その後、喰、護堂、エリカで鴉を片付けるがブリュンヒルデの姿は何処かへ消えていた。

 

 






乱入者出現!!
というか、戦乙女参戦です!!

リリアナと半月が誘拐されました。
戦乙女って事で強き魂を求めてますが色々な要因で狂ってます。
そこらへんは次回以降にて。

骸&喰は半月最優先です。
基本的に渋々とはいえ、半月には従います。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。