自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

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絶望的な数の差(D)/炸裂する鮮血(B)

「さて、僕もそろそろ行くとしようかな。リリアナだっけ?彼女に発信機つけて場所も分かってるし」

 

骸、喰の住処にてヴェーラは助太刀の為に準備を進めていた。

黒いロングコートを纏い、砕けた仮面を手に取る。

修復しようとするが思い留まる。

 

「元のままも何か喰のせいで引っ掛かるし…………狐辺りが僕にはちょうどいいかな」

 

狐の面へと仮面の欠片を作り変える。

狐の面をつけ、ヴェーラは戦場へと向かって行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

「がばぁ!?」

 

喰は斬り刻まれ、吹っ飛ばされていた。

まつろわぬブリュンヒルデに加えて神獣クラスとはいえワルキューレが八人もいるのだ。

分が悪いにも程がある。

岩融で攻撃を防ぐが背後から別のワルキューレに攻撃される。

呪符も、“糸”もこの格の相手がここまで集まっていると意味が無いに等しい。

結局頼れるのは権能である。

しかし、吸血鬼の権能は身体能力と再生力を上げるくらいである。

身体能力はいくら上げようとワルキューレに勝るはずも無いし、天馬に股がる彼女達の機動力の相手にはならない。

再生も修復された所から削られている様な物である。

赤い竜の権能も、龍尾を振るっても剛力を持つブリュンヒルデには真っ正面から受け止められる。

先程は不意討ちだからこそ効いたのだろう。

護堂も似た様な状況である。

“雄牛”の権能の怪力で何とか対応してはいるが、敵の数が数である。

体は傷だらけである。

エリカも、リリアナもブリュンヒルデが召喚した人喰い鴉の相手で手が一杯でサポートする余裕は無い。

万里谷は元々戦力外。

半月は治療中である。

手詰まりもいいところだった。

喰と護堂は背中合わせになって周囲を警戒する。

 

「何か手はありそうか?」

 

「致命傷を避けるのに手が一杯だ」

 

「だろうな」

 

喰の権能も、護堂の権能も今の状況を打開するにのは難しい。

護堂の“戦士”の権能は切り札ではあるが、まだ万里谷も視えて無いだろうし、正体は掴めていない。

喰としては赤い竜の他パーツを顕現させた所で状況がどうにかなるとは思ってない。

最近得たラームの権能は戦闘用とははっきり言って言えない。

 

「“猪”は使えるか?」

 

「標的に設定出来そうな物が無い」

 

「まぁそうだよな」

 

こうなったら仕方ない。

やりたくは無いがやるしか無いかと喰が諦めかけた時、一人のワルキューレが剣を構えながら突進してくる。

確かシュヴェルトライテだったか。

剣の扱いはブリュンヒルデ以上と思えるワルキューレである。

 

「ハァァァ!!」

 

「チィィ!!」

 

岩融で何度か打ち合うが徐々に劣勢になる。

はっきり言えば打ち合えたのは三十秒程である。

岩融を上に弾かれる。

長い得物であるが故に戻りは遅い。

隙だらけの所を斬られる。

脇腹をばっさりいかれ、血が溢れる。

龍の尾で牽制して距離を取る。

見れば護堂も二人のワルキューレ相手に押されていた。

脇腹の斬り傷は吸血鬼の再生力と赤い竜の再生力を掛け合わせ既にくっついてはいる。

だが出血自体はしているのだ。

血が足りなくなって来ている。

周囲を警戒しながら輸血パックを取り出して飲もうとする。

そこへ一人のワルキューレが背後から襲い掛かってくる。

 

「っ!?」

 

「覚悟!!」

 

気付いた時にはもう遅い。

既に槍は回避出来そうにも無いし、反撃のしようも無い。

ならばしょうがない。

 

「あぁぁぁぁ!!」

 

「な!?」

 

素手で受け止めた。

カンピオーネの体と二つの権能による再生強化があればこそ出来る芸当である。

掌は貫かれ、切っ先は肩に刺さっている。

 

「捕まえたぜ!!」

 

「くっ!!」

 

動きを止めてる内に殺る。

空いてる右腕を使い、岩融でワルキューレの喉元を狙う。

 

「がぐぁ!?」

 

「一人に気を取られ過ぎでありますな」

 

背後から声がする。

そして喰の腹からは槍が生えている。

つまり背後から貫かれた。

前後の二人のワルキューレは喰を貫きながらニヤリと笑う。

 

「「さあ、五女シュヴェルトライテ!!この男にトドメを!!」」

 

「分かりました、姉様!!」

 

先程のワルキューレ、シュヴェルトライテが剣を構えて向かってくる。

この状況では避けようが無い。

 

(あぁこりゃ死んだな)

 

「(まだ諦める段階じゃねぇよ!!)」

 

心中で口論する。

そんな間にシュヴェルトライテは目の前であった。

 

「何をやってるのよ、あんたは!!」

 

直後に鮮血が舞う。

ただし、喰のでは無い。

シュヴェルトライテの天馬からだ。

シュヴェルトライテの天馬の首には日本刀が突き刺さっていた。

シュヴェルトライテは天馬が倒れる前に飛び降り、状況を確認する。

周囲を見渡すと此方へ半月が歩いて来ていた。

どうやら完全にでは無いにせよ傷は治った様だ。

半月は倒れた天馬の首から日本刀を引き抜く。

指で刃から血を拭き取ってから鞘に納める。

 

「ったく何をやってるのよ、あんたは。私を守るとか言っといて先に死ぬ気?」

 

「死ぬ気はねぇよ」

 

「そんな姿で言われても説得力無いわよ」

 

「悪かったな」

 

「まぁいいわよ。これの相手は私がしとくから」

 

「無茶するなよ」

 

「あんたと違って死にかけたらすぐに逃げるわよ」

 

言って半月はシュヴェルトライテの方を向く。

喰も止めはしない。

止めても無駄な事は分かっている。

それに相手は神獣クラスである。

それならば半月にも相手に出来る余地はある。

 

「「私達抜きで話を進めてないでくれる?」」

 

「忘れちゃいねぇよ!!」

 

「ぐはぁ!?」

 

喰は背後のワルキューレを龍の尾で振るって吹っ飛ばす。

槍を握って動きを止めさせていたので今回は直撃である。

しかし龍の尾を動かしたと同時に前方のワルキューレも動いた。

肩に刺さっていた槍を更に深く刺し込む。

そして、そのまま左腕を千切る。

喰の左腕は体から離れ、ワルキューレの槍に突き刺さったままダラリと下がる。

 

「が……ぐぁ!?」

 

「ふん」

 

しかし傷口を押さえたりはしない。

むしろ、血をぶちまける。

ワルキューレは返り血をもろに受けるが特に気にする様子では無い。

その隣に先程吹っ飛ばしたワルキューレが並ぶ。

 

「四女ヴァルトラウテ、トドメを刺しますよ」

 

「えぇ分かりました。速く殺ってしまいましょう、次女ゲルヒルデ」

 

「悪いがそうはいかねぇぜ、【散】」

 

二人のワルキューレが槍を構え、喰にトドメを刺そうとした時に喰はニヤリと笑う。

そして指をパチンと鳴らす。

直後にゲルヒルデの槍に刺さっていた左腕に光の線が浮かび上がる。

そして破裂した。

肉片と化し、血肉を周囲へとばら蒔く。

勿論近くにいた二人のワルキューレはもろに受ける。

 

「何のつもり…………」

 

「これで準備は出来た。あまり使いたくないんだが仕方ねぇ!!火よ。我が司りし四元素の火よ。創造と破壊、生命力と死、相反する物を司りし火よ!!我の生命を種火とし、燃え上がれ!!」

 

喰が言霊を唱える。

それはミカエルから奪った権能、四元素の火を発火させる言霊だ。

四元素の火は喰の血液を種火とする。

それは例え離れていても喰が認識していれば発火する。

つまり喰の血をかなり浴びた二人のワルキューレは全身が燃え上がる。

 

「「ぐあぁぁぁぁぁ!?」」

 

「くぅぅ……………」

 

最初から狙いであった。

返り血を浴びさせて燃やす為に腕を千切らせたのだ。

しかし、この策にはデメリットもある。

現在の喰は吸血鬼の権能の力を最大限解放している状態である。

ミカエルは太陽神ミスラの属性を多少は持っている。

吸血鬼の力で身を染めている時に太陽の属性を持つ権能を使ったのだ、体が耐え切れずに悲鳴を上げる。

現に喰の体からは煙が上がり、全身に激痛が走っている。

破壊と再生が繰り返され続けているのだ。

破壊された直後に再生。

それを繰り返している結果が全身の激痛である。

だが、このチャンスを逃すわけにもいかない。

 

「だぁぁぁぁ!!」

 

「がぁ!?」

 

躊躇無くゲルヒルデの心臓を岩融で貫く。

そしてゲルヒルデの命の炎を吸い上げる。

ゲルヒルデはみるみる内に干からびていく。

対して喰は槍で貫かれた傷は回復し、千切れた左腕も再生していく。

この行為は吸い上げるというよりはむしろ染めてるに近い。

異なる命の炎を自分の色に染め上げる事によって自分の炎へと変えているのだ。

染められた相手は当然その分命の炎が減る事になる。

人間ならば寿命が減るくらいだが、神獣やまつろわぬ神は違う。

奪われれば存在そのものが危うくなるのだ。

ヴァルトラウテが止め様と動くが全身に燃やされながらでは動きも鈍い。

その間にゲルヒルデの命の炎を喰い切る所であった。

しかし、ギリギリの所で中断される。

ブリュンヒルデが槍を投げ付けてきたのだ。

喰は慌てて回避する。

ゲルヒルデはべシャリと地面に落ちる。

今にも崩れて行きそうな様子である。

喰は奇妙に思いながらブリュンヒルデを見る。

 

「(今、何で助けた?あの狂い女が姉妹を助けるとは思わなかったが。まさか一人でも掛けると何か不都合でもあるのか?)」

 

そこまで推察して思考は中断される。

ヴァルトラウテが炎を振り払って槍で突きを放ってきたのだ。

 

「よくも姉様を!!」

 

「姉妹思いだな。だが、お前一人じゃ相手にならねぇぜ!!」

 

そう言って槍と大薙刀を打ち付け合うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「人間ごときが私に敵うとでも?」

 

「さぁ?やってみなくちゃ分からない物よ」

 

一方、半月はシュヴェルトライテと対峙していた。

神獣クラスを前にしながら半月は笑っていた。

それは獰猛な笑みとも違う、ニッとした笑顔だった。

 

「しかし、“範囲内”で助かったわ。もっと遠くに行かれてたら危なかった」

 

「何を言っている?」

 

「此処なら私も全力を出せるという事よ!!貴女には再調整を加えた技の実験台になってもらう!!」

 

「人間ごときが何を言う!!」

 

「あんまり人間なめるんじゃないわよ!!(これだけ神格が集まっていればバレる事は無いでしょ)」

 

“アレ”を使った時の問題点は気配がまつろわぬ神に近くなる事だ。

肉体は人間、魂の半分が神。

そんな奇妙な存在である事が知れ渡るのは避けたい。

だが、今ならば九体もの神格が集まっている。

一つくらい奇妙な気配が増えた所で誤魔化し様はある。

半月は“鬼切丸”と“蜘蛛切丸”を抜き、構える。

流れの上にはいる。

半月は自分の周囲に円を描く。

 

「龍の如く地を流れる力よ。我は土地を守護する者なり。我の魂に答え、その力を我に貸し与えよ!!我が肉体を染め、我が身を相応しき姿へと塗り変えよ!!」

 

円が輝き、半月を光の柱が包む。

柱を構成する光は半月の体へと飲み込まれて行く。

半月の黒髪が光を放つ銀色となり、瞳が碧眼へと姿を変える。

何時もとは雰囲気すら違う。

両腕に籠手の様な物が現れる。

そして、顔に刺青の様な光の紋章が刻まれる。

 

「何だ、その姿は!?貴様、人間では無いのか!?」

 

「さぁ?どうだか?」

 

はぐらかす様に半月は答える。

“疑似土地神化”を発動し、半月はシュヴェルトライテへと斬り掛かっていく。

 

 




大苦戦という感じです。
半月は能力が強化されています。
神がかりを観察して使い方を変えた結果という感じです。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。

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