「我は身を捧げたり、捧げし身を代価に顕現せよ!!天に歯向かいし、その力を我の手に!!地を裂きし爪よ、我が元に現れよ!!」
左手の爪を剥がし、言霊を唱える。
右手には岩融を握り、ヴァルトラウテと打ち合っている。
そこへ龍の爪が顕現する。
ヴァルトラウテの槍を上に跳ね上げる。
そして、左手を振るい、龍の爪でヴァルトラウテを貫く。
「ぐばぁ!?」
「ハッ、だから言っただろうが!!」
喰が爪を引き抜いて、岩融でトドメを刺そうと突きを放つ。
しかし、それはヴァルトラウテには届かなかった。
突きを二本の槍が阻んだのだ。
新たに二人のワルキューレが槍を構えていたのだった。
「チッ数が多いとこういうのがめんど……がばぁ!?」
二人のワルキューレの顔の合間を通り抜ける様に槍が飛んできた。
ブリュンヒルデが投げた物だろう。
槍は喰の胸を完全に貫いていた。
体勢を建て直す前に目の前のワルキューレ二人が首を跳ね様と槍を構えていた。
顔をひきつらせた直後に、
「“召喚”RPG」
そんな呟きが聞こえ、数瞬後に爆音が響く。
そして左側にいたワルキューレが何かに当たって吹っ飛ぶ。
そして爆発が起きた。
何やら爆弾の様な物を受けたらしい。
もう一人のワルキューレと喰が背後を見る。
そこでは黒いフード付きロングコートを狐面の人物が構えていたRPGを投げ捨てていた。
そこへ人喰い鴉達が押し寄せる。
「“召喚”M1894、“召喚”M1897」
右手にウィンチェスターのライフル、M1897が、左手にウィンチェスターのライフル、M1894が現れる。
どちらも銃身が切り詰めてある、ソードオフタイプである。
人喰い鴉に右手のライフルを向ける。
ほぼ0距離での発砲。
受けた人喰い鴉は肉片に変貌する。
右手のM1897からは00バックショットという散弾が放たれている。
ソードオフした銃で散弾を放った場合、普通の銃とは違い発射された直後にばら蒔かれる為に殺傷能力は跳ね上がっている。
人間の頭部を吹き飛ばすくらいなら簡単である。
それが魔術で強化されているのだ。
人喰い鴉くらいは肉片になる。
左手のM1894からは45口径ロングコルトという拳銃弾と410ゲージショットセルという散弾が使い分けられている。
410ゲージショットセルは00バックショットより威力は低い。
射程距離などはソードオフによって落ちているが確実に当てている。
レバーアクションを駆使して次々と人喰い鴉を肉片にしながら喰へと近付いていくのだった。
一方の喰は目の前のワルキューレ二人の相手で手一杯だった。
胸の槍は既に引き抜いている。
「(やっぱ一人でも欠ける事を気にしてるな。何が目的か分かれば楽なんだがな)」
完全に謎解きが終わらなければそこらへんはどうしようも無い。
「全く何をしているんだい、君は」
いつの間にか近付いて来ていた。
ワルキューレ二人が銃撃で怯む。
その隙に岩融を振るう。
ワルキューレを斬り飛ばし鮮血が舞う。
とはいえ、そこまで傷とは言えないだろう。
手応えからして致命傷という感じでは無い。
その間にヴェーラの方を見る。
「お前、動いて大丈夫なのか?」
「見ての通りさ」
「つーか、こんな所でRGを放ってるんじゃねぇよ」
「別にそこまで被害は出てないだろ?君たちに比べたら」
「それはそれだ。問題はそうじゃねぇ」
ハァと溜め息を吐く喰。
そんな喰を見ながらヴェーラは見る人が見れば分かるくらいの微笑みを見せる。
「ねぇ」
「何だ、ルーシャ?」
「あの“契約”の話はいいかい?」
一瞬、喰は何故このタイミングと固まる。
その間にワルキューレ二人は立ち上がろうとしていた。
◆◆◆◆◆
“疑似土地神化”した半月はシュヴェルトラウテと斬り合いをしていた。
とは言っても相手は神獣クラス。
しかもかなり上位のである。
敵わない可能性のが高い。
なので下手に攻めはしない。
「ハァァァ!!」
「ハッ!!」
半月は二刀でシュヴェルトラウテの剣をひたすら受け続ける。
時折隙を見付けて斬り込むが全て避けられている。
「(しかし何で籠手だけ出てくるかな!!)」
こんな中途半端に顕現するくらいなら必要無い。
半月としても自分が未熟だからだろうと思っている。
そんな事を考えながらも剣を受け続ける。
◆◆◆◆◆
「何だ?もう答えを出したのか?」
「そうだよ。決めたよ。それで一つだけ“契約”に加えていいかな?」
「別にいいが」
一つくらいなら変な内容では無いだろうと承諾する。
何故かヴェーラは狐面を外して、真っ直ぐ喰を見る。
「じゃあ、“僕より先に死なないでね”。それが追加内容さ。それでこうだ」
「むぐぅ!?」
ヴェーラはいきなり密着してきたと思ったら、唇を重ねてきた。
喰は困惑した表情になるが特に離れさせようとはしない。
「「戦場で何をしt……がぁぁ!?」」
復帰してきたワルキューレ二人は龍の尾によって弾き飛ばされる。
その間もキスは続いている。
互いの唾液が混ざり合う。
少ししてヴェーラから離れる。
「ふふ、これが“契約”の証という事で“契約成立”だよ。よろしくね、“喰”」
頬をほんのり紅くし、唇を押さえながら言ってくる。
その姿に喰は一瞬ドキッとする。
“喰”の部分がやたらと強調された様にも聞こえる。
「け、“契約成立”はいいとして何でき、キスなんだよ!?」
「その方がそれっぽいだろ?」
かなりシンプルな理由だった。
確かにそれっぽくはあるが。
◆◆◆◆◆
一方、近くにいた半月もその光景を見ていた。
そして、ワナワナと怒りに震えていた。
「…………私の目の前で何をしてんのよ、あいつはぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぐばぁ!?」
怒りに身を任せた様にシュヴェルトラウテに斬り掛かる。
ほとんど八つ当たりである。
しかし、それでもシュヴェルトラウテは防戦一方になっていた。
半月の気迫に気押されているのだ。
「あいつ………後でぶん殴って蹴ったくって斬り刻んでやる!!」
「な、何のはな……がぁぁ!?」
右手の“鬼切丸”と左手の“蜘蛛切丸”は神獣クラスだろうが斬れる代物である。
前者は茨木童子の腕、後者は土蜘蛛を斬った名刀だからだ。
シュヴェルトラウテは防ぎ切れなくなって斬り傷が増えていく。
「おのれぇぇぇ!!」
「今はあんたを相手にしてる気分じゃ無いのよ!!」
シュヴェルトラウテの剣が蹴り上げられる。
斬撃を防いだ瞬間に柄を狙って蹴りを放ったのだ。
そしてがら空きの胴を右肩から左腰に袈裟斬る。
◆◆◆◆◆
「くっ……」
一先ず“契約”はした二人はワルキューレ二人の相手をしていた。
直接的には喰が戦い、ヴェーラが後方からサポートという感じである。
はっきり言ってヴェーラには神獣クラスとまともに戦えるだけの装備が無い。
魔術で強化しているとはいえ、銃器で相手するのはキツい物があるのだ。
そんな状況であれ苦戦しているのは変わり無かった。
主な原因は喰の失血である。
血を利用などしてはいるが、流血しているのには変わりないのだ。
輸血パックを飲む事によって何とかしのいではいるが輸血パックが切れればかなりマズイ。
「そろそろ決めましょうか、姉様」
「そうですね、七女ジークルーネ」
ヘルムヴィーゲとジークルーネが別々の攻撃を放とうとしてくる。
ヘルムヴィーゲは槍を構え、突進。
ジークルーネは槍に何かを纏わせ何かを放とうとしている。
「……ったく、しょうがねぇ。これを飲むしかねぇか」
溜め息を吐きながら懐から他の輸血パックとは絵柄の違う物を取り出す。
これは半月の血液である。
他の輸血パックは病院などからくすねた物であり、質が悪く、鮮度も低いので量が必要な上に発動時間も短かった。
しかし、半月は体は普通の人間で魂の半分は神、言ってみれば四分の一神。
質としてはかなりいい。
鮮度が問題にならない程度にはだ。
この血ならば少量で済むし、長持ちするのだ。
(あまり気は進まないが使うしか無いだろ)
「(まぁしょうがねぇか。これで今日最後の血だ)」
質のいい血を飲むのには多少デメリットがある。
質がいい血を飲めば発動する力は大きいが、しばらく質の悪い血を飲んでも力が出なくなるのだ。
約24時間、大体一日はこれ以上の吸血を望めなくなるのだ。
しかし喰は躊躇無く飲む。
骸も止めはしない。
戦闘には口を出さないのだ。
瞳の真紅が更に濃くなる。
右手に大薙刀を構え、左手に力を込めて龍の爪を維持する。
そのまま迎え撃つ様に突進していく。
「ハハハハハハハハハハハハハッ!!」
笑いながら擦れ違う。
互いに振り返ろうとした時に多量の血が舞う。
「あちゃー姉様やられちゃったか。でも、私のは当たったようね」
倒れたのはヘルムヴィーゲだった。
岩融と爪によって斬り裂かれ血を溢れさせる。
倒れてはいるが息はまだあるようだ。
喰もジークルーネの“勝利の神聖文字”が組み込まれた一撃を受けて腹に風穴を開けていた。
岩融を杖に何とか立ってはいるが口から血がたれていた。
無傷で立っているのはジークルーネだけだった。
だが、腹の風穴はみるみる小さくなっていく。
再生し切り、再び向き合う。
そこに、
「喰、伏せろ!!」
護堂が“猪”の化身を放ってきた。
慌てて範囲外へと回避する。
そのまま猪はブリュンヒルデへと突進していく。
おそらく標的には背後の山を設定したのだろう。
ブリュンヒルデを守る為か、動ける残りのワルキューレがブリュンヒルデの元へと集まる。
その間に護堂が近付いてくる。
「一分間、任せていいか?」
任せるとはワルキューレ全員の相手をするという意味だろう。
理由もおそらく“戦士”の化身を使う為であろう。
「いいぜ、任せろ」
「あぁ頼んだ!!」
言って護堂は万里谷の方へと走っていく。
おそらく万里谷が“視た”のだろう。
喰の背後に半月とヴェーラが並ぶ。
「色々と言いたい事は後回しにして聞くけど、どうするつもり?」
「僕に出来る事はあるかい?」
「とりあえず時間を稼ぐ。まぁ俺が戦うからサポートを任せていいか?」
「……“サポート”ね。…………分かったわ。任せときなさい」
「僕としては背中を安心して任せてくれると嬉しいよ」
そう言って三人はワルキューレ姉妹の方を見る。
稼ぐ時間は二分。
短いようで長い。
特に相手が相手である。
三人は覚悟を決めるのだった。
引き続き戦闘です。
ヴェーラが色んな意味で参戦です。
ヴェーラは基本的にキスに抵抗は無いタイプです。
骸があまり口出ししないのは邪魔しないとかそういうのでは無く、ただ喰に丸投げしてるかんじです。
それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。