自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

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探し当てた“宝”(T)/果たす“契約”(C)

翌日。

骸は昨夜の戦闘後を歩いていた。

とある物が無いか探しているのだ。

まつろわぬ神が体を失った時に極稀に残っているあれを。

 

「しかし…………ダリィ…………」

 

(お前が始めた事を面倒がってどうする……)

 

「お前が暴れたせいで体がダリィんだよ!!」

 

(………知るか)

 

「お前な…………」

 

それ以降、喰は返事をしなくなった。

意識の奥の方で眠りについた様だ。

昨夜、意識を失った後は特にこれと言った事は何も無かった。

喰が奥の方に引っ込んだだの、半月にかなりの金を請求されたとか、ヴェーラが意味深な視線を向けてきたとか、護堂は護堂で休養が必要だからかさっさと帰ったとか、そのくらいである。

骸としては大変なのは“後始末”である。

喰がヴェーラとした“契約”のせいでやる事が増えたのである。

 

「お?」

 

“白馬”の作ったクレーターの中でかなりの呪力を感じてしゃがむ。

懐から呪符を取り出して探査する。

そして、発見する。

それは白鳥の羽の様な“石”だった。

 

「これが“竜骨”か。やっと見付けたぜ」

 

“石”を手に取りながらそこから発せられる呪力を感じとる。

 

「ドニの所にでも現れてたら仇討ちくらいは出来てたかもな」

 

呟いて“石”を懐にしまうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方の半月は湯船に浸かっていた。

 

「は~身に染みるわ~」

 

半月は半月でかなりの疲労がたまっていた。

“疑似土地神化”はそれなりに体を酷使する物なのだ。

一度使うと改めて土地に体を馴染ませる必要も出てくる。

 

「さて、骸もそろそろ見付けてる頃かしら?」

 

風呂からあがり服を着ながら呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ねぇ、それで“君”としては僕を一体どうするつもりなんだい?」

 

ヴェーラが骸に尋ねる。

喰とは契約したが、それはあくまでも喰との契約である。

骸との契約では無い。

骸はインスタントコーヒーを淹れながら答える。

 

「俺としてはどうでもいい。多少様子見しておくかってくらいだ。俺がする事としたら、その呪符くらいだ」

 

ヴェーラの手首にある呪符を指差す。

この呪符はヴェーラを一定範囲から出さない為に仕掛けた物だ。

一定範囲を出ると手首が千切れる様になっている。

 

「まぁそれはともかく“俺達”は今夜から国外に飛ぶから」

 

「何処に行くつもりだい?逃げるつもり?」

 

「なわけがねぇだろ。ダリィがちょっとやる事があるからな…………クッ」

 

そこで人格が変わる。

髪の一房が白くなる。

 

「お前との“契約”を果たす為の行動だ。だから特に気にするな。それとルーシャ、これを持ってろ」

 

「?」

 

喰は懐から“石”を取り出してヴェーラに投げ渡す。

当然ヴェーラは首を傾げる。

 

「何これ?」

 

「“竜骨”だ」

 

「は!?」

 

基本的に冷たい表情のヴェーラが驚きの声をあげる。

それほどに竜骨は貴重だ。

だが、ヴェーラの驚きはそれだけでは無い。

 

「“竜骨”なんて渡してどうするつもりだい?」

 

「まぁお守りとでも思っておけ。それにお前なら“扱える”だろ?」

 

多少含みを持たせて言う。

それに対してヴェーラは小さく笑う。

 

「君の意図は大体分かったよ。僕が持っていればいいんだろ?」

 

「そういう事だ」

 

そのやり取りの後、ヴェーラは“彼ら”の住処から出て行くのだった。

そして“彼ら”も飛行機に乗って“ロシア”へと飛びたつのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一週間後。

 

「だー!!広いんだよ、ロシア!!」

 

(うるせぇな!!確かに笑えねぇ広さだったが終わった事を一々愚痴るな!!)

 

「元はと言えばお前がやることだろうが!!」

 

(だから俺が八割やっただろうが!!たかが二割で文句言うんじゃねぇよ!!)

 

「ダリィ物はダリィんだよ!!」

 

……………一週間振りに日本に帰ってきたはいいが言い合いをする骸と喰であった。

端から見ればただの独り言である。

ロシアでとある目的を果たしてやっと帰ってきたという感じである。

住処に戻る途中で半月が宿にしている教会の前を通りかかる。

中を見てみるとちょうど半月が修道服で庭の掃除をしている所であった。

 

「あら、帰ってきた所?」

 

「そんな感じだ。お前の方は大丈夫か?」

 

「もう一週間よ?“ただの人間”じゃないんだし大丈夫よ」

 

「俺からしたら“そこらへんの体質”は関係無いんだがな」

 

「何々?その言葉格好いいとでも思ってる?」

 

「なわけがねぇだろ」

 

少しの間、くだらない雑談を続ける。

そして、骸から喰に切り替わる。

 

「ん?喰に変わった?何か用?」

 

「ル……ヴェーラを知らねぇか?」

 

「あいつなら…………………そこ」

 

半月が後方を指差す。

そこには疲れ果てた様にベンチに座っているヴェーラの姿があった。

そして何故か修道服である。

半月の様な改造された物ではなく、真っ当な修道服である。

 

「何をしてるんだ、ルーシャ?」

 

「……………ムニュ、見ての通りバi…………………………っ!?」

 

どうやら昼寝していたらしいヴェーラは寝惚けた状態で起きたと思うと喰の姿を認識するや否や顔を赤くする。

 

「………………何でいるの?」

 

「それはこっちの台詞だ。何で修道服を着ている?」

 

「…………バイトだよ」

 

話を聞いてみると、どうもどうやら半月に無理矢理修道服を着せられ、無理矢理バイトさせられているらしい。

 

「それで君の方も何かあるんじゃないの?」

 

「あぁそうだったな」

 

何かを思い出した様に喰は懐からとある物を取り出し投げ渡す。

 

「ほい」

 

「何これ……………って、はぁ!?」

 

ヴェーラが驚愕という反応をする。

喰が渡したのは書類である。

それもヴェーラの所属していた魔術結社が壊滅したという書類である。

 

「これはどういう事だい?」

 

「そのままさ。俺が壊滅させた。これでお前は晴れて自由だ。お前を縛る物は無くした。だからこれからは好きにやれるぜ?」

 

「いや、いきなりそんな事を言われても……僕は…………………」

 

何やら困惑した様子のヴェーラを置いておいて喰はその場を後にする。

そして背後から声をかけられる。

 

「放っておいていいの?」

 

「別にこれからどうするかはあいつ次第だ。俺がとやかく言う事じゃねぇだろ?」

 

「それもそうねぇ………」

 

何か言いた気な表情をする半月。

喰はよく分からず首を傾げるだけだった。

そこで何かを思い出して懐から封筒を取り出す。

 

「そうだ。少し速いが今月分だ」

 

「毎月どーも♪」

 

半月がニッと笑う。

封筒の中身は金である。

こういう風に半月は毎月“彼ら”から小遣いを受け取っていた。

その他にもバイトをしていたりもする。

意外と金銭欲が強いのだ。

まぁ八割くらいは“院長”の教会へ匿名名義で寄付していたりするのだが。

 

「ああ、そうだ。一つ忘れてた」

 

「何だ?」

 

「________」

「っ!?」

 

喰が振り向いた直後に唇を重ねられた。

喰の頬が一気に赤くなっていく。

半月は満足という感じに唇に指を重ねている。

 

「いたたぎ♪」

 

「何をだよ…………」

 

他の事に対しては割と察しがいいくせに自分の事には察しの悪い喰であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その夜。

喰は住処のソファーの上で寝ていた。

そこでいきなり窓が割れる。

 

「もうちょっと他の入り方はねぇのか?」

 

「………………ハァ」

 

「ってウォ!?」

 

窓を割ったのはヴェーラだった。

ヴェーラは喰が話しかけると力が抜けた様に喰の上に倒れ込んだ。

 

「おい、どうした?」

 

「………大体、君のせいさ」

 

「?いや、何の事だ?」

 

「君が結社を潰したせいで僕が逆恨みを受けて襲撃されたじゃないか」

 

「そりゃ悪かったな」

 

それは本当に予想外であった。

まさか残党にそこまでする気力があるとは。

 

「おかげで宿が消えたじゃないか」

 

「なら、此処に住むか?」

 

「は?」

 

いきなりさらっと言われて唖然とする。

 

「どうせ部屋の余りならあるし、残党共も此処には手を出さねぇだろうし」

 

「ふふ、面白い事を言うねぇ……………」

 

「何処がだよ。で、どうすんだ?」

 

「お言葉に甘えさせて貰うよ。きみのせいで僕は今無職だからね。家賃無しでいいなら住ませて貰うよ」

 

「そうか、なら準備を進めておくか。まぁとりあえず…………そろそろどいてくれねぇ?」

 

「やだよ」

 

現在の体勢はソファーに寝転がる喰の上にヴェーラが乗っている形だ。

 

「何でだよ?」

 

「君がどいたら寒いだろ?」

 

結構本気で震えていた。

どうやらロシア人のくせに寒がりの様だ。

まぁ人種はどうあれ寒がりは寒がりなのだろう。

喰は仕方ねぇかと毛布にくるむ。

 

「ふふ、やっぱり一肌は暖かいね」

 

「そうかい。そりゃよかったな」

 

「そう言えば二回目に会った時に僕が君に言った言葉を覚えているかい?」

 

「あの分けの分からねぇ言葉か?」

 

「あれの意味は“確かめようか、君が僕の運命の王か否か”だよ」

 

「意味が分からねぇな」

 

「だろうね。僕も分かってないし」

 

「何だよ、それ」

 

「だってしょうがないだろ?前の標的の占い師に言われた事だし、“運命の王に出会いし時、汝の運命に転換が訪れる”ってね」

 

「それでお前的にはどうなんだよ?」

 

「確かに当たってるかもね。君は僕にとっては色々大切だ」

 

体を密着させながら言う。

そろそろ寝るかと喰が欠伸をしていると、ヴェーラは最後に一つだけと尋ねてきた。

 

「君は仮面被った状態か、素顔、どちらがいいんだい?」

 

「何だそりゃ?まぁ敢えて言うなら素顔かな。前にそれで後悔した事もあるからな」

 

「へぇ興味深いね。まぁでもそれが聞ければ僕は満足だよ」

 

そこでヴェーラが冷たい微笑みでは無く、暖かい微笑みをした様に見えるのだった。

そして二人は寝付く。

眠る少し前、“彼ら”は“間払”について聞いておけばよかったと思うのだが、すぐにまだいいと思い眠るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“彼女”は水面を眺めていた。

その水面には焔に焼かれるブリュンヒルデの姿があった。

 

「戦乙女でも駄目だったか…………でも、必ず仇を討つ。それが“間払”の名を継いだ“私”の悲願なのだから………………」

 

“彼女”は水面に向かって憎しみを吐く。

しかしそこには何処か悲しげな雰囲気も含まれているのだった。

 

 




戦乙女編終了!!

次回は日常回の予定です。

次章は中華編です!!
とは言ってもあの猿と戦うわけでは無いですが。

それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。

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