「で、何この惨状?」
十月上旬の土曜日。
半月は暇なので骸達とヴェーラの住処である廃墟を訪れていた。
別に平日は叩き起こしに毎日来ているので似た様なノリであった。
半月が起こしに来ないと骸とヴェーラは学校を平気でサボるのだ。
ヴェーラは学校でも素を見せ始めていた。
周囲から見ればキャラがガラリと変わったような物である。
初めの内は驚かれていたがさすがにもう慣れて来ていた。
そんなこんなで割りと平和に過ごしていたわけではあるのだが、廃墟を訪れた半月の目の前には惨状が広がっていた。
「何って……………見ての通りだけど?」
相変わらずよく分からない表情のヴェーラが適当に答える。
直後にタイマーの音が響く。
ヴェーラはタイマーを止めると机の上にあったカップラーメンの蓋を開き、麺をすすり始める。
目の前の惨状には無関心というわけである。
「いや、明らかに見て分かる状態じゃないでしょ…………」
「そうかい?」
食べながら首を傾げるヴェーラ。
彼女の座る向かい側では骸が机に突っ伏していた。
その右手にはフォークが握られ、その先には黒い物体が刺さっていた。
そして頭の横には何か黒々しい物体が盛り付けられた皿があった。
その光景はまさしく惨状であった。
フォークに刺さる物、皿に盛り付けられた物、各々黒々しい物体としか言えなかった。
とても食い物とは思えない、思いたくない。
そんな感じのおぞましい雰囲気をかもし出していた。
「……………」
「……………」ズズッー
無言になる二人。
ただヴェーラの麺をすする音が響くだけだった。
どうしてこうなったか、半月には大体想像出来ていた。
ヴェーラは最近祐理やエリカ達とよく話していた。
何やらそれなりに親しくなっていたようである。
おそらくその関係でヴェーラが料理でも作ったのであろう。
話に聞いた感じではヴェーラはインスタント食品ばかりの生活で家事経験はほぼ0である。
ヴェーラの部屋の惨状を見ればそこらへんは大体察せられる物だがそこは今は関係無い。
問題は家事スキル0が料理なんてすればどうなるかという事である。
その結果が目の前の惨状だ。
「ハッ!!俺は何を!?」
しばらく沈黙が続いていると骸が意識を取り戻した。
頭を勢いよく上げると、記憶を探る様に額に手を当てた。
「えーと、現在地から推測するに……………寝惚けてここまで来たはずだ」
(やっぱり寝惚けてやがったか………)
「(朝は苦手なんだよ)」
(そりゃ俺もだが)
骸と喰は言い合いながらも記憶を確認していく。
そうしていく内に結論を出す。
「寝惚けてここまで来て、ヴェーラが何かを作っていて、差し出されたから朝食として食べた所で意識が途切れた………………はずだ」
「大正解」
向かい側に座っていたヴェーラが呟く。
ちょうどカップラーメンを食い終わった所のようだ。
「よかったら残りも食べたら?」
「……………いや、遠慮しておく」
黒々しい物体を横目で見ながら断る。
再び意識が飛ぶのが目に見えている。
「ったく、何をやってんのよ。あんた達は」
「ん?半月いたのか」
「えぇさっきからね」
「で、何の用だ?」
「暇潰しに来たのだけれど……まぁいいわ。ポストにこれが入ってたわよ」
そう言って封筒を骸に向けて投げ付ける。
ポストとはこの廃墟までの道にあるボロポストである。
見た目としては廃墟な上に人避けの結界内にあるので普通の郵便物が入ってる事は無い。
とは言っても役割はある。
そこに入っている郵便物のほとんどが投函の術によって入れられた物である。
そういう事で封筒の差出人の目星は付いている。
骸が差出人を見ると案の定正史編簒委員会からであった。
それも沙耶宮 馨からである。
“彼女”からの場合は大体、委員会からとしてではなく、個人的な用件である。
そもそも上層部には骸の事を隠す“契約”なのでどの道、個人的な話にはなるのだが。
封筒を開き内容を確かめる。
「どういう用件だった?」
「呼び出しだな。明日来いってさ」
「ふーん。用件はそこでって事ね」
「だろうな。ダリィがあいつの場合は断ると後で面倒だ」
「“王”のくせにそこら辺気にするんだ」
「あいつらとは対等って事にしてるからな。じゃないと正体広められる可能性があるからな。護堂の奴とも良好な関係の様だし、力業でどうこうも出来ないからな」
何はともあれ明日行くのは決まりである。
明日は日曜日で、特に用事も無かったのでちょうどよかったのだが。
「お前らはどうする?」
「面白そうだし、私は付いて行くわ」
「僕はパス。何か面倒事の臭いがするし、バイトもあるし」
半月は同行。
ヴェーラは行かない。
という方向で話は纏まった。
「それで今日はどうするつもり?」
「……………寝る」
即答した直後に蹴り飛ばされる骸であった。
一言で言うのであれば自業自得である。
◆◆◆◆◆
「相変わらず“あの方”の為に色々してる様ですね」
「あなたの方から来るとは珍しい事もある物ね」
魔教教主と話を終えたグィネヴィアの背後に一つの人影が現れる。
それはグィネヴィアの知った顔であった。
「そうですかね?私としては私の方が貴女に避けられてると思っていたのですけど?」
「それは貴女の方でしょ?わたくしが呼んで貴女が来ない事は何度あったかしら?」
「別に応じる必要が無いですから。私は貴女たちと“似た”存在であって、“同一”では無い“らしい”ので。心配しなくても魔女王たる神祖と敵対するつもりはありませんので、“目的”さえ果たせれば私はいいんですよ」
「そちらこそ相変わらずですわね。何でそんなに“一途”になれるのか不思議ですわ」
グィネヴィアと女は特に仲間というわけでは上下関係というわけでも無い。
女は一応“神祖”というカテゴリに入る存在である。
しかし、彼女自身は“同一”では無いと言う。
そこらへんはグィネヴィアにとっても興味深い話ではあった。
彼女達の関係は利害が一致した時に協力するくらいである。
それ以外は互いに不干渉である。
女としてもグィネヴィアに付いている“あれ”を敵に回す気は無いのだ。
どちらが避けてるというより互いにそこまで意識を向けてないからこそすれ違っていた。
それよりも本題である。
「さっきまで話していた事、私にも一枚噛ませてくれませんか?」
「何故です?」
「私に答えてくれる方々に協力して貰っていたのですがどうにも決め手にかける様でして、あの神殺しが目覚めさせ様としている存在を利用したいと思ったんですよ」
「下手に干渉すれば貴女が殺されますわよ?」
「“直接”は干渉するつもりはありませんよ。ちょっと“力”の一端を利用したいだけです」
「それだけなら何故私の許に?」
「一応事前に確認を取って置きたかっただけですよ。邪魔したと勘違いされても困りますので」
「それもそうですね」
条件を確認し合い同意する。
交渉は成立である。
交渉と言うよりは事前通知の様な物だが。
女が去ろうとした時、グィネヴィアは興味本意で尋ねた。
「貴女の“悲願”はそこまで手を尽くしてでも叶えたいのですか?」
「別に“悲願”なんて大層な物じゃ無いですよ、私の“目的”はね。ただの“復讐”ですよ」
何処か悲しそうで乾いた笑みを浮かべて女は姿を消して行った。
“復讐”と聞いてグィネヴィアは納得するのだった。
“悲願”であったのならば理解出来ると思っていて、理解出来ないのを不思議と思っていたが“復讐”ならば理解出来なくて当然であった。
グィネヴィアの中では“復讐”より“悲願”の方が大きいのだから。
そして“復讐”ならば“一途”なのも分かるのだった。
久しぶりの投稿でした!!
準備回的な!!
後半に関してはいままでちょくちょく出てきたあの人とグィネヴィアの会話です。
“復讐”とは言っても最後の表情を踏まえると違う意味が出てきたりします。
それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。