自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

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仕組まれし純白(F)/されど静まぬ憤怒(B)

 

呪力はごっそり持っていかれた。

幾らカンピオーネになったとはいえ、神の召喚なんて無茶な儀式を一人で強引にやらされればこうなる。

目に入るのは巨大な純白の翼、光輝く鎧である。

喰はルシファーの言葉を思い出す。

ルシファーは喰達に宿る力を宿敵の力と言っていた。

それらの要素から推測される物は、

 

「テメェは……ミカエルか」

 

「いかにも。我こそ、唯一神の右に座る事が許されし存在、ミカエルなり!!」

 

高らかに名乗るミカエル。

やはりか、と納得する喰。

しかし、彼には別の問題が起きていた。

 

(今お前が出てどうするつもりだ……笑えねぇ)

 

頭痛で頭を押さえる。

この頭痛の原因は何となく察している。

骸が表に出ようとしているのだ。

 

「そういえば、礼を言って無かったな。感謝するぞ、小僧。貴様のお陰で私は再度地上に顕現出来た。今まで私が再度降臨する為の力の器としてよくやってくれたよ」

 

その言葉がトドメだった。

 

(チッ……頼むから死なねぇでくれよ………)

「……………テメェか…………テメェが元凶か!!」

 

骸が体の主導権を奪い返す。

その言葉には激しい怒気が含まれていた。

 

「はて、何について言っている?」

 

「テメェが俺の人生を狂わせた元凶だって言ってるんだよ!!記憶を失う前の事なんかどうでもいいが、テメェが俺に力を宿したせいで俺の人生は狂ったんだ!!」

 

「だが、あの時の貴様は私と忌々しい神殺しの戦いに巻き込まれ、死にかけていたのだぞ?私が力を宿させなければ死んでいた。むしろ、私の慈悲に感謝するべきのはずだが?」

 

「あぁ……“普通は”そうだな。だがよ!!それで散々な目にあってきた身としては怒らずにはいらねぇんだよ!!」

 

青筋を立て、叫ぶ。

普段無気力な骸からは考えられ無い程度にはブチギレていた。

確かに命は助かった、救われた。

だが、その場が救われたからいいという話では無いのだ。

 

「俺一人の人生が狂うならまだしも、テメェの余計な慈悲は俺以外の人生がも狂わせた!!」

 

骸の脳裏に浮かぶのは、六年前のある光景。

炎の中で血塗れで倒れる“育て親”とその側に立つ何も出来ない“自分”、そして返り血を浴びたまま泣く“彼女”、周囲に倒れる数人の子供。

八つ当たりだと言う事は自覚している。

あの時、悪かったのは何もできなかった自分だ。

例え襲撃者の狙いが自身に宿る力だろうと。

この怒りは自分にも向けられている物だ。

次いで思い浮かぶ醜い思惑、欲望の数々。

“まつろわぬ神”の力の一部なんて物が宿っている事によって起こされた数々の惨状。

それらを思い浮かべつつ、骸はミカエルをありったけの怒気を込めて睨む。

 

 

「だから、俺はお前を殺して俺の人生に区切りをつける!!」

 

 

「ふむ、元気な事だ。どうやら貴様は神殺しになっている様だな。まぁだからこそ、私が埋め込んだ術が発動したのだろうが。だが、ちょうどいい。再び地上に降臨した私の力の点検に利用させて貰おう」

 

余裕な雰囲気でその手に“黄金の剣”を出現させるミカエル。

骸も手元に多量のナイフを召喚し構える。

呪力はかなり削られた。

権能は理解出来ていない。

しかし、負けるわけにはいかない。

この因果は此処で断ち切る。

 

「折角なのだから貴様の力も見せてくれよ?」

 

言外に一瞬で倒されるな、と言い。

まるで試すかの様に斬り掛かってくる。

その剣速は目に捉えられる速度ではない。

しかし、骸は紙一重で避け、呪を込めたナイフを投げ付ける。

 

「ほぉ」

 

手は抜いたつもりではあったが避けられるとは考えていなかったらしい。

投げ付けられたナイフを軽々避けながら再度斬り掛かる。

結果は同じく紙一重で避けられる。

だが、今度は違う。

ミカエルは“種”に気付く。

 

「なるほど、“糸”か」

 

ミカエルは腕にまとわり付いた“糸”をつまみながら言う。

種は簡単である。

自身を中心に囲う様に“糸”を張っていたのだ。

常人では肉が斬られかねない“糸”も、“まつろわぬ神”は触れた事にも気付かずに破り、千切る。

骸は“糸”が千切れた方向から察知して斬撃を避けていたのだ。

かなりギリギリに。

紙一重に避けたのではなす紙一重にしか避けられなかったのだ。

 

「種が分かれば簡単の物よ!!」

 

「………ハァ、ダリィ」

 

骸は神速の斬撃に横からナイフをぶつける。

それだけで斬撃の軌道がズレ、骸の体には当たらない。

 

「例えどんな剣だろうと両断する“黄金の剣”だろうが、側面は斬れないだろ?」

 

「そうだな。だが、無意味だ」

 

「ガッ!?」

 

思いっきり腹に蹴りを入れられ吹き飛ぶ。

剣だけがミカエルでは無いのだ。

吹っ飛んだ先で骸は体の調子を確かめる。

擦り傷などはあるが、カンピオーネになっただけあって、骨は折れてない。

そして、試しに何時もの“後遺症”の力を使う時の感覚で右手に力を込める。

ドス黒い靄の様な物が右手の平に現れる。

 

「“聖なる浄化”の力が……“邪な穢れ”に変わったか」

 

とはいえ、これが権能というわけでは無い様だ。

八年間の間にまつろわぬミカエルの力を宿していた副作用的な物だろう。

しかし、ミカエル相手には意味無いだろう。

聖なる力は邪を祓う物なのだから。

とりあえず、立ち上がる。

何時までもグズグズしてられはいない。

ミカエルは近付いて来ているのだから。

 

「さて、“穢れ”は“浄化”と同じ様な使い方で大丈夫か?」

 

試しに木に向かって“穢れ”の力を放つ。

ちょうどミカエルの来ている方向である。

木は“穢れ”の力を受けた瞬間に黒く染まり、葉を散らし、枝が鋭く尖る。

そして、ミカエルに向かって枝を放つ。

 

「なるほど………“穢れ”ね」

 

それを見て、骸は納得する。

“穢れ”の力は存在を穢して堕す力という事を理解する。

ミカエルに襲い掛かった木は一撃で粉々にされる。

 

「これが貴様の力か?」

 

「いいや、これは前座さ」

 

「ふむ。弱々しいな」

 

「ゴハァ!?」

 

目の前に現れ、問答をするかと思いきや殴り蹴り、攻撃を放ってくる。

“糸”も、呪符も、ナイフも意味をなさない。

為す術なく攻撃を受け続ける。

戦闘が始まってから冷静な様にも見えるかもしれないが、骸は心中では怒りを燃やし続けていた。

 

(力がいる………こいつを潰すだけの力が!!)

 

(その為には何を犠牲にしようと、何を失おうと構わないか?)

 

ルシファーの力の様な物が問うてくる。

骸が力を求めるのに反応した様に。

 

(あぁ……何でもくれてやるよ。力を得る為だったらな!!)

 

(ならば覚悟を示し、身を捧げるがいい。さすれば力が手に入るだろう。逆に力を得る度に汝の身が削れゆくのを心せよ!!)

 

その言葉を聞いた時、骸の脳裏に赤い竜の、七首十角の竜のイメージが浮かぶ。

その間にも戦闘は続いている。

ミカエルは何故か“黄金の剣”を使わずに素手で骸を圧倒している。

骸はナイフで応戦するが、振れば避けられ、受け止められる。

魔術を発動すればかき消され、“糸”は警戒され罠には掛からない。

隙が出来れば拳を叩き込まれる。

ここまで圧倒されるのは骸が喰に比べて雑なのも原因である。

そんな中で脳裏に浮かんだイメージ、心中に響いた声から推察する。

 

(身を捧げれば力を得る。力を得る時、身が削れる。つまりは………)

 

「こういう事か?」

 

骸は躊躇無く両手の爪を全て剥がした。

いきなりの行動にミカエルもキョトンとする。

 

「我は身を捧げたり、捧げし身を代価に顕現せよ!!天に歯向かいし、その力を我の手に!!地を裂きし、爪を

我が元に現れよ!!」

 

言霊を唱える。

剥がされた爪と流れる血が黒い靄に包まれる。

黒い靄は形を変え、薄まる。

そして半透明の物体が現れ、徐々に実体化する。

まるで霊体の如く、“龍の爪”が顕現する。

 

「これが“権能”か」

 

「ほぉ……“悪龍”か。面白い!!」

 

骸は手の動きに合わせて漂う爪を確かめる様にし、ミカエルはその爪を面白そうに眺める。

骸の手から垂れた血の滴が地面に落ちた瞬間、両者は互いの武器をぶつけあう。

 

 





ミカエル降臨。
過去話の詳しい事はまたいずれ。

権能の詳しい事は次回です。
言える事はルシファー関連ではあるけど、かなり遠回り。


それでは質問があれば聞いてください。
誤字があったら言ってください。
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