ヴェーラの放った銃弾は黒髪の少女によって弾かれた。
ヴェーラはもう一丁召喚し、連射する。
だが、それも避けられ、太刀で斬り飛ばされる。
「うわぁ……」
ヴェーラは相手が苦手なタイプだと悟る。
こういうタイプは此方が姿を見せている状態では不利だ。
何か顔に見覚えがあった気がするがそんな事を考えている場合では無い。
“奥の手”を使えばどうにかなるかもしれないが、おいそれと使える物では無い。
考えてる間にも連射は続いている。
しかし、それらは全て避けられるか斬り飛ばされるかしていた。
距離を詰められ始めていた。
「こりゃちょっと面倒だね」
現在使っている銃は銃声が響かないタイプだ。
猿や童子が寄ってきても面倒なのだ。
その為に連射精度は落ちている。
いつの間にか目の前に迫られていた。
「ハァァ!!」
「くっ……」
慌てて飛び退く。
ヴェーラの代わりにバイクが真っ二つに斬られる。
地面を転がりながら発砲するが紙一重で避けられ、銃身を斬り飛ばされる。
その余波で頬が斬られ、血がたれる。
新たな銃を構える前に太刀を首に押し付けられた。
「恵那の勝ちって事でいいかな?」
少女が聞いてくる。
ヴェーラはその顔を見て思い出す。
彼女は確か草薙 護堂の女の一人にして、神憑きの使い手たる太刀の媛巫女、清秋院 恵那だった。
ヴェーラは両手を上げて苦笑するよ。
「降参だよ。どうやら僕の早とちりだったみたいだ」
「早とちりも何も確認もせずに発砲してくるのはいきなり過ぎると思うけどね」
確かにそれもそうだが、ヴェーラにとっては癖に近いので仕方無い。
警戒状態だと変な気配を感じると反射的に発砲してしまうのだ。
互いに苦笑しながら二人は武器を引いて情報を交換するのだった。
◆◆◆◆◆
「半月さん、どうして此処に!?」
「色々あったのよ…………少し休ませて………」
骸の肉体を抱えた半月は偶然出会ったアニー・チャールトンに甘粕の知り合いと言って、怪しまれながらも車に同乗させて貰った。
そして、彼女達を乗せた車は護堂達がいるキャンプ場に辿り着くのだった。
裕理が半月達がいるのに驚いていたが、軽く説明をすると話は後で聞くと、馨達に言ってログハウスへと入っていった。
金角、銀角の事は面倒になりそうだから言わず、妙な神祖の事だけを話した。
骸の肉体をソファーに投げ捨てて、自身は冷蔵庫から飲み物を取り出して椅子に座るのだった。
「ったく、本当に面倒くさい……………」
本来はこういう時はカンピオーネである骸か、喰が主体で動く物だろう。
しかし、今回苦労するのは半月ばかりであった。
やっと休めたので半月は思いっきり息を吐く。
「にしてもあの人、“善の魔術師”らしいけど妙な気配を感じるのよね………」
だから、とりあえずは距離を置きたかった。
半月は地脈の力を扱う。
ゆえにそういう物には敏感であった。
しばらく休んでから、軽く話を聞き、これから自分達はどうするのか?と聞かれた。
「どうするって言ったって此方のリーダーがこれだしね…………」
リーダーと呼びはしても本心では全くそんな事は思ってない。
そういう事にしといた方が色々と都合がいい。
日光市街に残る事も考えたが、一つの事を思い出す。
「中国のカンピオーネにだけは絶対に会いたくねぇ」
何時かは忘れたが骸がそんな事を呟いていた。
此処には中国のカンピオーネが埋まってるらしい。
ならば、方針は決まった。
「私達も貴方達についていくわ。こいつ、憑き物に憑かれてるから此処にいると体調が更に悪くなりそうだし」
骸を悪霊憑きと言う事にして、適当な理由をでっち上げた。
護堂が苦笑いしてるがとりあえず合わせろ、と視線で伝える。
この場で骸の正体を知らないのは下っ端とアニー、鷹化くらいであるが後者二人は各々アメリカと中国のカンピオーネと繋がっている。
はっきり言うと面倒くさいので隠しておく。
「貴女達はどういう立場なの?委員会のメンバーでも無いようだし、ゴドーのチームの一員でも無いようだけど」
「どう言ったものかしらね………」
どういう立場と聞かれたら正直困るところだった。
はっきり言ったらどういう立場ですら無いからだ。
そんな事を言えば、アニーに警戒されるのは間違いない。
ならば、此処は適当に言っておくのが吉だ。
「私達は簡単に言えば、馨の個人的な傭兵みたいな物よ」
その答えにアニーは納得はしてないようだがそれ以上追求しないようだった。
もしかしすると、骸の正体に感付き始めているのかもしれない。
「(まぁバレたらバレたで、どうにかなるでしょ)」
そこらへんは自分の担当では無い。
半月は適当に考えながら骸を抱えてSUVに乗り込むのだった。
◆◆◆◆◆
「そもそもお前は何を悩んでるんだ?今更あいつの事を気にしてるのか?」
「今更でも何でもねぇよ。親父の“遺言”とはいえ、零姉の意思を無視したのは確かだ。恨まれて当然なんだよ」
意識の奥底で喰と骸が話している。
「だからってそこまでなる程か?」
「まぁ………今までは会っても何時も通りの対応が出来るつもりだったけどな。だが、直接言われたらダメだったよ。“守る者”も“生きる意味”も関係無い。ただ、単純に死にたくなったよ」
「馬鹿らしい。過去を気にして命を捨てるとかくだらねぇんだよ」
「言ってろよ。俺は“あの日”からずっと気にしてるんだよ。零姉以外の“家族”が死んだ“あの日”を」
「“あれ”はお前のせいじゃねぇだろ」
「俺のせいだよ。俺が呼び込んだ悲劇だ。俺の体に宿る物が寄せた物だ」
「本当に面倒だな…………」
「もう俺はそこから目を背けてはいられなくなったんだよ」
それはまるで“呪い”だった。
間払 零の“言葉”が骸のトラウマを浮き彫りにした。
義理とは言え、姉から向けられた“恨み”に骸が耐え切れなくなった。
記憶を失い、妙な体質によって狙われている状態から初めて得た家族と呼べる物。
空っぽだった“心”を染めた物。
即座に思い起こす顔は四つ。
親父、剣のおやっさん、刃兄、零姉。
そして、数人の弟妹達。
誰も血は繋がって無いし、兄弟は皆、親父の「面白そうな人材がつまらない奴らに潰されるのは勿体無い」とか言うふざけた理由で集められた者達だ。
それでも家族ではあった。
しかし、それらは“あの日”、零姉以外は炎に消えた。
零姉は生き残らせてしまった。
“遺言”とはいえ、一緒に逝きたがっていたのに生き残らせてしまった。
“炎”の原因は分からない。
しかし、推測は出来た。
「俺を狙った奴らの仕業だろう。他に理由が無い。親父達は確かに悪名が轟く存在だったがわざわざ襲撃する馬鹿はいない。だから、これは俺の“罪”だ」
「いや、おかしいだろ。何でそうなる」
その話だと例え骸狙いだろうと襲撃する理由にはならない。
まるで“事実”なんてどうでもいいような。
まるで“罪”を全て自分で背負う様な。
まるで、死ぬ理由を無理矢理作っているような。
何か“後悔”を別の理由で誤魔化しているようであった。
そして、喰は理解する。
記憶にも合致する。
「そうか、そういう事か。お前はただ大層な“罪”をでっち上げて単純な“後悔”から逃げてるだけか」
「何を?」
「お前はあの時、何も出来なかった自分を許せないんだろ?家族を死なせ、姉に“恨み”を抱かせた“あの日”、何も出来なかった自分が許せないんだ。だって、何が起きたかすらお前は知らないからな」
“あの日”、骸は騒ぎが始まった直後に意識を失った。
原因は不明だ。
気付いた時には周囲は炎に包まれ、親父は死にかけ、その傍らで姉は泣いていた。
「何も出来なかったどころか、何が起きたかすら知らない。それをお前は激しく後悔した。それで自分が全ての原因とし、“罪”とする事で後悔から目をそらした。それがあいつの言葉で誤魔化し切れなくなったんだろ?」
姉からの恨みによって思ってしまったのだ。
何も知らない癖に生き残らせた事を恨まれてるんじゃないかと。
実際は違うだろう。
姉は姉で思う事があるのだろう。
だが、思ってしまえばあとは吹き出すだけだ。
吹き出す後悔で押し潰され、骸は身動きがとれなくなったのだ。
「ハハ「ハハハハハ「ハハハハハハハ「ハハハハハハハハハ「ハハハハハハハハハ「ハハハハハハハハハハ!!
骸はただ、狂った様に笑うだけだった。
何もかも投げ出す様に、諦めた様に笑う。
喰はそれを黙って見ていた。
笑い終わり何を言うかで対応は変わる。
精神世界の方は大詰めです。
過去は後々詳しく語ります。
そこらへんは姉関連と共に進めていくつもりです。
“罪”とか“後悔”とか出てきますが、それらが“あの日”以降の荒んだ暮らしと合わさって“自殺志願”が形成されました。
大体重要なのは四人です。
それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。