自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

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開き直る者(B)/呆れる者(D)

「いや、まぁ………言われるまでも無かったが」

 

「は?」

 

笑い終わった骸がそんな事を言う。

喰は思いっきり、何言ってんだこいつ、という顔である。

ようは自覚はあったのだ。

それでも言われて思う事はあったから狂ったように笑ったのだ。

 

「もうダリィんだよ。ダルくてダルくて仕方ねぇんだよ。“後悔”も、“罪”も分かってるんだよ、そんなもん。だが、でも、どうすりゃいいんだよ、俺は。考えるのも………ダリィんだよ」

 

「ったく、笑えねぇ…………そういやそういう奴だったよな、そういや!!本当に笑えねぇ!!」

 

さすがにこれは対応に困ると喰は頭を抱える。

だが、骸は勝手に結論を出していた。

 

「今さらながら、再び死にたいと思ってきたよ。だが、自殺するには“関係”を作り過ぎた。“契約”を破る事はしないのが不変の主義だからな。だから、運命の流れにでも身を任せようと思う」

 

「何が言いたい?」

 

「因果を断ち切るだの、運命に抗がうだの、疲れたんだよ。だから、流れに身を任せ、やるだけやってその上で果てる事にする。その時は無駄に生き汚く抵抗したりしねぇ。例え殺される事になろうと受け入れよう」

 

それはもう、投げ出したに近い結論だった。

思考停止した様な話だった。

 

 

「馬鹿か、お前は」

 

 

だから、喰は当初の予定通りぶん殴るのだった。

骸は意識の底とはいえ、感覚的には肉体を持って対面していたので漆黒の空間を回転しながら吹っ飛んでいった。

 

「馬鹿か?じゃねぇな、馬鹿だな。諦めてんなよ、思考停止してんなよ。本当にどうしようもねぇな。ちょっとでも期待した俺が馬鹿だったよ。つーか、根本的に変わってねぇな、この死にたがりが!!」

 

「ガフッゲフッ!?」

 

もう本当に笑えなくなって喰は転がってる骸に蹴りを入れていく。

 

「いや、自殺志願から他殺志願程度には変わったろ」

 

「……………本当に駄目だな、お前!!開き直ってんなよ、この野郎!!どんたけ俺を苦労させる気だ!?一回死ぬか!?いや、お前の場合は生かしておいた方が効果あるか!?」

 

「じゃあ、まぁとりあえず今は生きるって事で…………ガボァ!?」

 

さすがに我慢出来ずに本気の蹴りを一発入れるのだった。

死にたがりの骸と生存欲の塊の喰では、やはり根本的に本当の意味で分かり合う事は出来ないようだ。

だが、それでも、二人は同じ体の同居人である。

何処かで折り合いを付けるしかないのだ。

どちらもこの体の本来の人格ではない。

そんなものはとっくの昔に死んだ。

骸と喰は本来の人格が死んだ後に産まれたようなものだ。

産まれる“過程”は別として“双子”ようなものなのだ。

 

「ったく、本当に笑えねぇ」

 

「こっちにとってもダリィ事だ」

 

喰のイライラも収まり、一段落付く。

骸はボロボロであったが、そこは精神世界、既に元通りになっている。

 

「とりあえず、当面は今の状態で生きていくとして、最後に一つだけ確認しておくぞ」

 

「なんだよ?」

 

「お前は次に“姉”にあったらどうするつもりだ?」

 

「零姉か。出来れば争いたくはないけどな…………でも、零姉には殺されてもいいと思ってるよ」

 

「よし、もう一回蹴られてぇみたいだな」

 

「まぁ、それも“流れ”次第だ。ただ、一つ言える事は俺が零姉を殺す事はねぇよ」

 

「そうかよ。なら、俺が殺すさ。“俺”の命を脅かすようなら容赦はしねぇよ」

 

「それは俺も許容出来ないな。零姉が死ぬくらいなら俺が死んだ方がいいんだよ」

 

意見が食い違い、睨み合う。

しばらくして、二人の視線は離れるのだった。

今、それを争っても意味は無いと同調したのだった。

 

「さて、そろそろ目覚めるとするか」

 

「本当に勝手だな。笑えねぇ」

 

二人は意識の底から上昇していくのだった。

死にたがりと生存欲、対極に位置する二人。

だが、何らかの繋がりは感じるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、半月達は巨猿に襲われていた。

前後左右の四方向から襲われていた。

二匹は護堂、エリカ、リリアナが対処していた。

そして、一匹は半月が相手をしていた。

骸の肉体は車に放置していた。

 

「さすがにこれはキツいわね」

 

ちょうど現在地は地脈から離れている座標であった。

これでは引き出せる力もそう多くない。

仕方ないので回避に専念している。

巨猿の拳をヒラリヒラリと避ける。

その間に残りの一匹が車に突撃しているがそれは放置しておく。

何故なら、さっきから気配を感じているからだ。

 

「“二重召喚”RPG!!」

 

RPG×2を構えたヴェーラが巨猿の前に立ち塞がる。

同時に恵那が、護堂達の方に加勢していた。

先程から二人の気配を感じていたので、半月は一匹放置していたのだ。

爆音が響き、巨猿がガードレールを巻き込んで吹っ飛んでいく。

呪力を加えた特別製RPGは倒すまでは至らなかったが一匹排除する事には成功した。

 

「ちょ!?」

 

しかし、爆音によって半月の意識が一瞬それた。

その隙を巨猿が付いてきた。

半月に向かって巨猿の拳が迫る。

 

「ったく、ダリィ。何で起きたら戦闘状態になってるんだ?」

(お前が面倒な状態で沈むからだろうが!!)

 

いつの間にか目が覚めていた骸が巨猿の動きを止めていた。

同時にヒュンと言う音が響く。

そして、護堂達を狙っていた二匹の巨猿も見えない何かに拘束されたように動きを止めた。

 

「これは………」

 

アニーは何かに気付いた様に呟く。

その間に恵那が護堂を抱えて車に乗り込んだ。

 

「半月さん達も早く乗り込んでください!!」

 

「いや、俺達は後から行く。だから、先に行っててくれ」

 

裕理の叫びに、半月が答える前に骸が勝手な事を言う。

裕理は食い下がろうとするが、エリカ達は意図を理解してアニーに出す様に言う。

車が遠ざかった後に周囲からヒビが入る様な音が響く。

実際に周囲の地面にヒビが入っていく。

この現象は巨猿を拘束する“糸”のせいである。

骸は一瞬で巨猿達を拘束した。

蜘蛛が常に糸を出している様に、育て親がそうしていた様に、骸も常に糸を張っている。

それを利用し、拘束したのだ。

“糸”の強度は巨猿が千切れるレベルでは無い。

一定以上の細さと強度を持つ糸は刃物と変わらない。

しかし、巨猿達は糸に切られるほどでは無かった。

“糸”も猿も切れずに巨猿が抵抗を続ければどうなるか。

答えは簡単である。

“糸”が幾ら強度があっても、根元はそうではない。

つまり、周囲の“糸”の起点としている部分が巨猿の怪力によって崩壊を始めているのだ。

 

「で、目覚めたはいいけど。これはどうするつもりかしら?」

 

「僕としては彼らと共に逃げた方がよかった気がするけど?」

 

何故残ったか半月とヴェーラが訊ねてくる。

骸はそれには答えずに呪符を放ち、結界を張る。

気配を遮断する為の結界だ。

それで二人も大体察する。

骸は“岩融”を取り出すと掌を薄く切る。

そして、血を刃の側面に塗り付ける。

 

「火よ。我が司りし四元素の火よ。創造と破壊、生命力と死、相反する物を司りし火よ!!我の生命を種火とし、燃え上がれ!!」

 

言霊を唱えると塗った血が燃え上がる。

それを“糸”に触れさせる。

火は“糸”を辿り巨猿をも燃やす。

巨猿の悲鳴が結界内に響く。

 

「お前達の生命力を貰うぜ」

 

巨猿を燃やしていた炎が元の位置に戻るように収束していく。

巨猿が塵となって散っていく。

巨猿から生命力を絞り取ったのだ。

仮にも孫悟空が使役する存在である。

それなりの体力回復に使える。

吸血鬼を使えば楽に回復が出来はするのだが、さすがにアニーの前で使うわけにはいかない。

カンピオーネである事がバレると色々と面倒なのだ。

金角、銀角と戦うまでは力はなるべく温存しておきたかった。

 

「さて、それじゃあ護堂達と合流すると…………ガバァ!?」

 

振り向いた瞬間に半月とヴェーラから蹴りを入れられた。

鉄に近い骨とか関係無く骸は、のたうち回る。

 

「まぁ色々と言いたい事はあるけど」

 

「これでスッキリしたし許してあげるよ」

 

「お、おう………色々と面倒をかけたな。悪かった」

 

腹を押さえながら謝罪をする骸だった。

喰は、自業自得だと密かに思うのだった。

何はともあれ三人は護堂達と合流する為に歩き出すのだった。




開き直った骸と呆れる喰でした。
喰は喰で生存欲が強い癖に戦闘狂な面があったりと矛盾を抱えていますが、骸とは対極です。
骸は死にたがりではありますが、守る物とかが出来た影響で意味も無く死ぬ事に抵抗が出た感じです。
二人の違いは“過程”です。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。

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