どうもどうやら猿が凶暴化したらしい。
いつの間にか護堂はアニー・チャールトンと携帯番号を交換していたらしく連絡が来たのだ。
「で、お前らはどうするつもりだ?」
「大聖に近付くつもりだ」
「そうか。じゃあ、俺らも動くとするか」
「大丈夫なのか?」
こっちの件は言ってないがそんな事を訊いてくる。
察したという所か。
「まぁ………互いに死なない様に気を付けようぜ」
「そうだな」
だから、答えは曖昧に帰しておく。
喰としては生き残るつもりだが、そこに確証などないのだ。
互いに背を向けて動き始めるのだった。
◆◆◆◆◆
「全く……何で僕が君の護衛なんだか」
「しょうがないでしょ。“中心点”は金角、銀角の近くに設置するしか無いんだから。というか…………これの操作はこうでいいのよね?」
「ハンドルを変な方向に向けなければ大丈夫だよ」
半月とヴェーラは喰と分かれて行動していた。
彼らのしていた“準備”を完成させる為である。
設置にはヴェーラが手を空けておく必要があるので現在は半月がバイクを走らせている状態である。
その後ろにヴェーラが“立って”いる。
半月としては“視て”覚えたつもりだが、ヴェーラとしてはかなり不安である。
修道服がバイクに股がり、その後ろに狐面の黒コートが立っている光景はかなりシュールではあるが童子達は構わず襲ってくる。
それらは全てヴェーラが撃ち殺していく。
「さて、“あそこ”よ」
「分かってるよ。“五重召喚”五行杭“火” “土” “金” “水” “木”」
ヴェーラは五本の杭を召喚すると“ポイント”へ、正五角形になるように打ち込む。
半月がその中心へと飛び込み、ヴェーラは入れ換わる様にバイクのハンドルを握る。
そのままハンドルを切って童子達をひいていく。
「さて、準備は完了。あとは起動させるだけね」
言いながら“鬼切丸”を正五角形の中心点に突き刺す。
それに手を置き、言霊を唱える。
「“木剋土”、“木”は“土”を吸い上げ、枯らす」
“木”の印が刻まれた杭から“土”の印が刻まれた杭へと線が結ばれる。
同時に半月達が予め打ち込んで置いた他のポイントでも同様の事が起こる。
半月達がしていた“準備”とは、とあるポイントに杭を打ち込む事である。
打ち込んだ杭は“中心点”である半月を囲む杭とリンクしているのだ。
「“土剋水"、“土”は“水”を制御し、塞き止める」
「“水剋火”、“水”は“火”を消し、冷やす」
「“火剋金”、“火”は“金”を溶かし、勢いを上げる」
「“金剋木”、“金”は“木”を斬り倒す」
杭と杭が繋ぐ線が五芒星を描く。
半月は地の流れを身で読み込んでいく。
「五行の“相剋”よ。個々を剋する力を持って龍の如く地の流れを断ち切らん!!」
言霊を唱えた直後に各々のポイントで杭が描いた“陣”が光り、その真下を流れる龍脈の流れを断ち切った。
それだけの規模の魔術であれば当然負担も大きい。
半月の口の端からは血が流れている。
半月はそれを拭う。
断ち切るだけでは駄目なのだ。
この術はまだ完成していない。
「“木生火”、“木”はその身を持って“火”を起こし、肥大させる」
「“火生土”、“火”より生まれし灰は“土”へと帰る」
「“土生金”、“土”の中に眠り、掘られ“金”は得られる」
「“金生水”、“金”が冷えし時、その表面に“水”が生じる」
「“水生木”、“水”はその身を持って、“木”を養う」
言霊を重ねる事で杭は別の陣も描く。
循環する輪の様に線は繋がる。
「五行の“相生”よ。個々を生み、循環し、巡りに巡る力を持って断ち切られし、龍の如き地の流れを繋げ!!」
半月の足元の“陣”も光り輝く。
その中で半月は両手の平に五行の“陣”を血で描く。
「“龍脈結界・五行式”、起動!!」
言霊を唱え、両の掌を重ね合わせる。
“中心点”とリンクする“陣”に意識を向け、“入口”と“出口”を設定する。
そして、“陣”と“陣”、“点”と“点”で繋ぐ。
まるで破れた布を縫う様に、“陣”を繋げる事により、龍脈が流れるのを再開する。
だが、間を省略した為に本来流れる場所に流れないという事が起こり、“空白”が生まれる。
端から見れば“正常”に流れている様に認識されるだろう。
だが、生まれた“空白”は認識から外れる。
つまり、気配や呪力の流れすら遮断するのだ。
これによって金角銀角、骸喰の存在はどれだけ暴れ様と結界外のカンピオーネ、まつろわぬ神に探知される事は無い。
「ゲホッ………チッ、やっぱり負担が大きいわね………五行を同時に扱う上に相剋相生を両立させたのも無茶だったかな?とはいっても四属性だと不具合が起きかねないし」
吐血し、それを拭いながら呟く。
五行ではなく四属性を利用する手もあったが、その場合は“四元素の火”と干渉する可能性があるのでやめた。
“龍脈結界・五行式”は簡単に言えば、半月が地脈の力を自身の力に変換する術の規模を大きくしただけに過ぎない。
術自体に必要な呪力は半月の呪力も微量に使ってはいるが、ほとんど龍脈から吸っている。
吸う分と別の部分は一旦“陣”によって別の物に変換される。
そして、変換された物は相生に繋がっている先の“陣”に送られ、龍脈に戻される。
この過程に置いて半月と半月を囲う“陣”は中心点であり、格であり、中継点でもある。
その負担は全て半月に掛かる。
いくら魂の半分が神の物でも、さすがに耐え切れる負担では無い。
今も体が悲鳴を上げている。
結界が発動している間は“負荷”は掛かり続けるのだ。
ほとんど寿命を削っているような物である。
「場は整えたわよ。さっさと倒しなさいよ。それと、この分は後でたっぷり返して貰うから」
鬼切丸を杖代わりにしながら、金角銀角に仕掛けているであろう男へと呟くのだった。
◆◆◆◆◆
「兄者……」
「分かっている。どうやら外界と遮断されたようだな」
金角銀角も当然変化に気が付いていた。
力を蓄えるのを切り上げて二体は立ち上がる。
その時、二体の頭上がいきなり暗くなる。
二体が見上げる。
「よぉ、殺しに来たぜ!!」
そこには、龍の尾を生やした喰がいた。
そして、影を作っていたのは“星”だった。
出会い頭に不意討ち気味に二体に対し、喰は星を墜としたのだった。
だが、その量は何時もの三倍だった。
「いきなり豪快にやってくれるじゃないか、神殺し!!」
「……………」
「さすがに引っ掛からねぇか」
相手の呼び掛けには無言で答える。
何故なら瓢箪の蓋が開いてるからである。
答えれば吸い込まれる。
金角は七星剣で墜ちてくる星を斬り飛ばした。
破片は金角銀角から離れた所に着弾し、地を抉る。
「やっぱ単純にはいかねぇよなぁ!!」
喰が一旦距離を取ろうとすると銀角が縄を放ってきた。
喰はそれを軽く避ける。
「“ ”」
「なぁ!?」
銀角が何かを呟くと避けた筈の縄が独りでに動き、喰の右足を縛る。
そのまま銀角は怪力で縄を引っ張る。
「ぬぅん!!」
「うぉぉぉぉぉ!?」
振り回されながら“岩融”を取り出し、縄を斬ろうとするが体勢が悪いのと単純に縄が硬いのもあって中々斬れない。
(何ダリィ事してんだ、こんなものは簡単だろうが)
「うるせぇな」
(もういいから代われ!!)
「うぉい!?」
文句を言う間もなく喰は奥に引っ込まされて、骸が表に出てくる。
そして、“岩融”の刃を縄ではなく、足の方へと向ける。
「こんな物は縛られてる部位そのものを斬り離せばいいだけだろうが」
言いながら骸は躊躇い無く右足を斬り落とした。
直後に切り離された右足が地面に叩き付けられ肉片に変わる。
どうやらギリギリだったようだ。
御返しに龍の尾で銀角を薙ぎ払って吹っ飛ばす。
「ったく、これだから生にしがみつくやつは………どうせ再生手段があるのによ」
喰の事を愚痴りながら懐から輸血パックを取り出す。
一気に飲み干すと、髪の三分の一が白く染まる。
同時に右足も再生する。
吸血鬼性を上げた直後は大体の傷は再生する。
動きに異常が無いことを確認してから金角と起き上がった銀角に向き合う。
「さぁ、第二ラウンドと行くか」
開戦でした!!
龍脈結界に関してはそれっぽい物と思ってもらえればいいです。
大雑把に言えば川にワープゾーンを設置して本来流れる所をショートカットさせ、本来流れる所を干上がらせて空白を作った感じです。
それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。