此処最近、骸と喰の両方が表に近くなっていった。
互いが入れ換わろうと思えば、片方を簡単に押し退けて主人格になる程度には。
では、それを突き詰めたらどうなるだろう?
骸と喰、各々が各々に持っていない物を持ち、互いに違う欠点を持つ。
ならば、互いが補えばいいかもしれない。
だが、現実はそう上手くいかない物である。
「合わせろよ!!」
(知るか!!)
言い合いをしながらも二人は極限まで表に近付く。
その状態を維持し、“あの時”の感覚を思い出す。
歯車がはまる様な感覚と共に真紅の両目が濃く輝き始める。
◆◆◆◆◆
「出てこい、神殺し!!我は金炉童子なり!!我が力を持って銀角の仇をとってくれる!!」
金角は姿を隠した神殺しを探し吠えていた。
かつての名を名乗る事によって一柱として存在を安定させていた。
だが、こんなものは一時的な物だ。
気休め程度でしかない。
しかし、その間に神殺しを殺す自信が彼にはあった。
その背後から“黒”、“灰”、“白”の混ざりあった髪をなびかせ“彼ら”は現れた。
「お望み通り「出て来て「やったぜぇぇ「ぇぇぇ「ぇぇぇぇ!!
声質が酷くズレていた。
入れ換わりが激しくなった事により、声そのものが途切れ途切れの繋ぎ合わせになっていた。
金角は、芭蕉扇を構えた上で振り返る。
“彼ら”の刃が届くよりも炎が放たれる方が速いだろう。
(避けるぞ!!)
(いいや、このくらいなら対処出来る!!)
骸が主導権を握り、龍尾で炎を防ぐ。
防ぎ切れずに左腕が炭化するが、顔色一つ変えない。
それ所か、龍尾で炎を払い飛ばし、岩融で突きを放ち、金角の左目を抉る。
金角も気にせず、七星剣を振り上げてくる。
骸は無視して追撃しようとする。
(こんくらいなら再生はすぐだ)
(馬鹿!!避けろ!!)
喰が主導権を奪い、紙一重で回避する。
完全には避け切れず、左腕が斬り飛ばされるが既に炭化してるので気にしない。
むしろ、斬り飛ばされた左腕が七星剣が纏っていた妙な呪力によって粉々になったのを見て、顔をひきつらせる。
念のために斬られた部分を更に斬り落としておく。
そこから左腕が生えてくる。
龍尾を地面に叩き付け、金角と距離を取る。
「「…………ったく、」」
「笑えねぇ……」
「ダリィ………」
二人同時に呟く。
互いに心底面倒そうである。
(試しにやって見たが面倒なだけで笑えねぇ)
(そもそもお前と合わせるというのがダリィ)
どうもどうやら互いにスタイルが合わないらしく、適材適所でサポートをし合うというより、互いを押し退け、“自分の最善手”を優先してるようである。
だが、そんな事を言い合う間も無い。
「隙だらけだ、神殺し!!」
「「うるせぇんだよ!!ダルくて笑えねぇから黙ってろ!!」」
飛び掛かってきた金角を無駄に息を合わせて迎撃する。
振り降ろしてきた七星剣を、岩融を口にくわえ、両手の竜の爪で防ぐ。
芭蕉扇を振られるより速く、竜の尾で芭蕉扇を持つ手を跳ね上げる。
そして、芭蕉扇ごと二つの竜の頭で噛み砕く。
骨の砕ける音が響き、肉が千切れる様に血が滴る。
が、何故か七星剣を振るう力が大きくなり、竜の爪が折られる。
咄嗟に喰が表に出て、背後に飛び退いたので薄く袈裟斬りされる程度で済んだ。
骸なら深く斬られていただろう。
他殺志願ゆえに死に場所では無いとはいえ、敵の攻撃の回避に積極的ではない。
その分、捨て身の攻撃が出来はするがデメリットはある。
(だから、避けろって!!)
(うるせぇ!!避ける必要ねぇだろ!!)
そこらへんは生存欲の塊である喰には合わない。
生存欲の塊で戦闘狂という矛盾を抱えている喰ではあるがそこらへんの線引きはしている。
「ぬぅぅぅ!!」
雄叫びを上げながら金角が突進してくる。
“彼ら”は面倒そうにため息をつくと、指を少し動かす。
それだけで張ってあった“糸”が左右の木を倒す。
金角は気にせず突進を続ける。
だが、木々の幹には呪符がびっしりと張られていた。
「【爆】」「【煙】」
喰と骸の各々が呟くと呪符の半分が爆発し、もう半分が煙を吐いた。
呪符程度ではまつろわぬ神には意味が無い。
当然である。
だから、目的は視界を潰す事である。
「何処に消えた………神殺し!!」
金角は周囲を見渡す。
だが、左目が抉れているので発見が遅れる。
金角の左側に回り込んでいた“彼ら”は木々に足場にする。
「【縛】」「【跳】」
木々を地面に縛り付け、倒れない様にして跳ねる。
金角の斜め上に跳ねる。
「上空では攻撃が避けれないのではないか!!」
「「そうでもないぜ?【崩】」」
金角が、上空の“彼ら”に気を向けた瞬間を狙って地面に撒いていた呪符で地面を崩壊させる。
完全には不意をつかれた金角は、体勢を完全に崩す。
「ぬぅんんんんん!?」
そこへ左右から銃弾が放たれる。
普段なら銃弾など気にする筈も無いが、先程傷口から心臓に向かおうとする魔弾を受けたばかりである。
最大限に警戒し、噛み潰された筈の腕で無理矢理芭蕉扇を振るい、灼熱を持ってして銃弾を消滅させる。
だが、それすら囮である。
「ぐぉぉぉぉ!?」
銃弾を排除し、“彼ら”に向き直った金角は突如足を撃ち抜かれ崩壊した地面に着地するタイミングがズレ、完全に体勢を崩し倒れる。
「「チェックメイトだ、金角!!」」
脇腹から血を流しながら金角の所へと落下していく。
◆◆◆◆◆
「全く、無茶を言ってくれるよね。“喰の体を貫いた”上で金角が着地する直前にその足を撃ち抜けなんて、さすがの僕でも“この状態”じゃなければ無理だったよ」
無茶振りに対して愚痴るヴェーラ。
喰の体を撃ち抜くという部分についてはどうせ再生するし、あの程度じゃ死なないという事で気にしてない。
◆◆◆◆◆
真の魔弾によって体勢を崩し、倒れた金角の脳天に向けて“彼ら”は岩融で突きを放つ。
「なめるな!!」
さすがにそんな単調な攻撃はギリギリ七星剣で弾かれる。
同時に龍頭の角が金角の腕の関節へと突き刺さる。
更にもう一つの龍頭の角によって腕は完全に千切られた。
「ぐぉぉ!?」
噛み砕かれた腕は折れたままの左の龍爪で弾き飛ばす。
そして、修復されていた右の龍爪で横薙ぎに斬る。
「「これでトドメだ」」
「おのれ………神殺しぃぃぃ!!」
恨み言を叫ぶ金角を他所に爪を振るった勢いのまま、体を回転させ、龍尾を振るう。
加速された龍尾を叩き付けられ、金角の上半身と下半身が裂け、真っ二つになる。
裂け口から内臓がボトボトと落ちていく。
そこからどんどん砂の様に体が崩れていくが、その前に龍頭で完全に喰らい尽くすのだった。
「「ったく………二度とやりたくねぇな、これ」」
全く同時に今の状態に対する愚痴を吐くのだった。
それと、同時に体に何かが流れ込むのを感じるのだった。
◆◆◆◆◆
「…………で、揉み消しは大丈夫そうか?」
『そこらへんは大丈夫だよ。君達の戦いより護堂さん達の方がよっぽど派手に戦ってるからね。その被害の一部としておけば楽な物さ』
金角銀角を倒した後、喰は報告を兼ねて馨と話していた。
どうやら物見の術で護堂達の戦いを見物していたらしい。
「じゃあ、俺達は護堂達の方に巻き込まれても面倒だし帰るがいいよな?」
『構わないよ。此処から僕たちの仕事だから』
それで電話を終える。
背後では半月とルーシャが傷を軽く処置していた。
喰とルーシャは吸血鬼の力で再生しているが、半月はそうもいかない。
既に龍脈結界は解いてある。
気配消しはしてあるので見付かりはしないはずだ。
日が昇ってはいたが日除けの術でどうにか対応している。
とはいえ、今回は吸血鬼性をかなり高めたので日除けの術を使っていても日差しが痛い。
「さて、感付かれると色々面倒だし帰るか」
「そうだね」
「分かったけど……一ついいかしら?」
「何だ?金か?」
素直に思い付いた物を聞いて見る。
だが、半月は首を横に振った。
では、何だと言うのだろう。
「金はあとで貰うとして……………そ、その言いにくいんだけど体が動かないから背負ってくれない?」
「何だ、そんな事か。そんな事なら幾らでもやってやるよ」
気が抜けた様に半月に背を向け、しゃがむ。
半月は少々顔を紅くしながら喰の背に乗った。
おそらく呪力を使い過ぎて体力が切れたのだろう。
龍脈結界の規模からして不思議ではない。
そんな喰の考えは間違えでは無いが、完全に当たりなわけでもない。
半月は自慢する様にルーシャに顔を向け、ルーシャは吸血とかを思い出し、無理矢理納得するのだった。
「さぁ準備も出来たし帰るか」
神との戦いを終え、“間払 零”等の不安要素を抱える事になったが一段落して帰路につこうとする。
「少し待ってくれないか?幾つか君に聞きたいんだが」
しかし、それは突如現れた黒い仮面の男によって崩される。
ジョン・プルートー・スミス、アメリカのカンピオーネが彼らの前に現れるのだった。
vs金銀終了!!
ただし、一難去ってまた一難。
今度はジョン・プルートー・スミスが現れるのでした。
彼だけが現れた理由については次回。
それでは、質問があれば聞いてください。
感想待ってます。