【天使らしきまつろわぬ神とカンピオーネの戦闘跡地の調査書より抜粋】
彼らの戦いに巻き込まれたと思われる少年に奇妙な症状が見られた。
その少年が倒れていた周囲には致死量と思われる血溜まりがあった。
にも関わらず、少年にあったのは大きな古傷のみであった。
目を覚ました少年に話を聞いてみたが詳しい事は分からず。
少年は記憶を失っている様だ。
身元も分からず。
年齢は八歳くらいだと思われる。
記憶喪失の原因は、やはり胸の傷が原因だと思われる。
この傷を受けたショックで記憶を失ったと推測される。
更に詳しく解析しなければ分かりませんが、少年に奇妙な能力が確認されました。
この力が元々持っていた物か、戦いに巻き込まれ得た力かは分かりませんがかなり貴重な物だと思われます。
後日、詳しい解析結果を提出致します。
それと興味深い話がもう一つ。
目撃者によると、まつろわぬ神が少年に近付き、何かをしたとの事です。
真偽は分かりませんが、もしかすると少年の能力に関わりがあるかもしれません。
◆◆◆◆◆
鮮血が舞う。
龍の爪は綺麗に斬られ、右肩から左腰に掛けて薄く斬られる。
皮一枚より少し深いくらいではあるが、既にボロボロだった上着はほぼ消えた。
「そういや、その“剣”は神々の武器庫から出された敵の武器ごとでも敵を真っ二つに出来るとか言う代物だったな。ダリィ事に」
「ふむ。よく知っているな。それに竜など私にとって恐れるに足らぬ存在だよ」
「そうかよ……」
苦々しそう表情で呟く。
霧散する爪を眺めながら、ミカエルが自身の権能を倒した存在だと改めて確認する。
ルシファー、サタン、赤い竜、同一視される三体全てをミカエルは打ち倒した。
自身の権能は身を削り、捧げる事によって竜の部位を召喚する物と、骸は推測している。
しかし、これではあまりにも不利過ぎる。
とはいえ、この程度で諦める骸では無いのだが。
「我は力を欲する。天の星を履き寄せ、地に落とす尾よ!!我が元に来たれ!!」
言霊を唱えると、骸の背後に黒い靄が現れ、そこから巨大な龍の尾が現れる。
「っ!?」
尾が顕現した瞬間に全身に激痛が走る。
まるで深い斬り傷にタバスコをかけ、その上を紙やすりでこするかの如くの痛みが襲う。
(なるほど。これが欲した力を手にし、身は削れるという事か)
のたうち回りそうになるのを耐え、真紅の竜尾をミカエルへと叩き付ける。
「我を前に竜など無意味なり!!」
「な!?」
叩き付けた竜尾が黄金の剣によって輪切りにされる。
ミカエルはそのまま竜尾を斬り裂きながら骸へと近付いて来る。
「駄目だ……こりゃダリィにも程がある」
「諦めたか?」
「あぁ……テメェに“勝つ”のは諦めた」
「ならば、我が主の元へと逝くがいい!!」
既に目の前にて迫っていたミカエルが斬り上げの体勢に入る。
骸はあえてそれを受けるかの様に、むしろ身を前に出す。
剣が振るわれ、神速の剣は骸の右脇腹を抉る。
そのまま、骸を真っ二つにする勢いであったが振り切る前にミカエルの手を左手で掴み、動きを止めさせる。
「悪いがそりゃ無理だ。俺が死んだら魂は堕ちる所に堕ちるだけだろうだからな」
口から血を垂らしながら適当な調子に言う。
しかし腕を離さないどころか、更に“糸”を巻く。
逃さない様に念入りに仕掛けていく。
「何のつもりだ?」
「だから言ったろ?“勝つ”のは諦めたって。だから“相討ち”だ」
「なに!?」
言った直後に骸は右手を左目に突っ込む。
そして、躊躇無く眼球を抜き取る。
左目の空洞から血が溢れるが気にはしない。
眼球に付いた血を舌でなめとり、宙に投げる。
「我は身を捧げたり。神を穢す名を刻まれしその頭よ、我の前に顕現せよ!!王を喰らえ!!聖人をも打ち倒せ!!」
言霊を唱え、黒い靄が蛇の様に宙に投げた眼球を喰らう。
それだけでは喰らい足りないのか、骸の肉が少々抉れ、舞った血液と共に靄に飲まれる。
眼球を、肉を喰らい、血を飲んだ靄は広がり歪みを作る。
歪みから現れたのは真紅の竜頭。
「ゲリャアァァァァァァァァ!!」
現れたし龍の首は雄叫びを上げ、轟かせる。
己の存在を示す様に叫んだ龍はミカエルを見付け、その顎を開く。
「いいぜ、存分に喰らいな」
その言葉を合図に龍は身動きの取れないミカエルに噛み付き、千切り喰らう。
ミカエルは左半身を、体の半分以上を喰らわれる。
「ガッ……おのれ…………」
「やっと顔を歪めたな、ミカエル!!だが、もう遅せぇ!!」
ミカエルの半身を喰らい満足したのか、龍はその口に呪力を口に貯める。
貯められし呪力は禍々しい光の塊を形作る。
「流石にこの距離で“龍の息吹”を受ければ、テメェでも死ぬだろ?その傷じゃ尚更にな」
「くっ……だが、この距離では貴様も巻き込まれる事になるぞ?」
「言ったろ?“勝つ”のは諦めた、“相討ち”だってな。別に構わないんだよ!!」
必死に逃れ様とするミカエル。
しかし、半身だけでは骸の拘束からは抜けられない。
「これがテメェの末路だ。しっかり受けて、しっかり逝きやがれ!!」
「主よ………我に救いを!!」
光が瞬く。
“龍の息吹”が放たれ、超圧縮された呪力が解放され、ミカエルの体を消し飛ばす。
下に向けて放たれた“龍の息吹”はミカエルを貫いても勢いを衰えさせず、地を抉り、吹き飛ばし、クレーターを作る。
骸もその余波に当然巻き込まれ、吹っ飛び海に落ちる。
(これで…………やっと……因果が断ち切られた……………)
吹っ飛びながらも“骸”は満足した様に笑っていた。
傷付いた体は海中で動かず、ただ流されるままになり、溢れる血は海を紅く染めた。
◆◆◆◆◆
【バルレッタ周辺の海岸にて確認された、まつろわぬ神についての報告書より抜粋】
まつろわぬ神はおそらく二柱現れたと目撃情報から判断する。
その正体は不明。
我々が来た時にはどちらも消失していた。
残っていたのはクレーターくらいである。
現場の激しい戦闘跡から見て、二柱は争い、相討ちになったと推測される。
しかし、怪訝な事に二柱を両方見たという目撃情報が無い。
目撃が遠方から、しかも短時間の目撃しか無い事から情報不足である。
目撃情報では黒い流星と白い輝きが多かった。
同時刻、ガルダ湖にてカンピオーネ、サルバトーレ・ドニと同、草薙護堂と決闘が行われていたが関連性は不明である。
かなり距離が離れていたとはいえ、二人のカンピオーネの決闘にまつろわぬ神が引き寄せられた可能性もあるかもしれない。
何にせよ、まつろわぬ神の正体も不明である為にこの件は判断出来ない。
この件は保留にしておくのが妥当と思われる。
また、別のカンピオーネが二柱を倒した可能性については否定される。
サルバトーレ・ドニと草薙護堂以外のカンピオーネは同時刻にイタリアにはいない事が確認されている。
そして、最後の可能性。
二柱を倒し、新たなカンピオーネが生まれた可能性も低いだろう。
現場の周囲にそれらしき人物は見当たらなかった。
姿を隠したにせよ、逃亡したにせよ、それらしき痕跡は無い。
及び周囲にカンピオーネらしき気配も無い。
この可能性に関しては無視していいだろう。
以後の問題は現れた二柱が本当に消滅したかの確認である。
◆◆◆◆◆
誰も気付きはしない。
この時、生まれし神殺しの存在を。
海を漂い流れる神殺しの存在を。
ミカエル戦終了!!
八人目の存在は誰にも知られず、行方不明に。
気付かれないのは新たな権能に関係あったり。
さて、ルシファーより奪った権能ですが、簡単に言えば“赤い竜”そのものです。
代価を払って力を得るかんじです。
部位によって身を捧げて力を得るタイプ、力を得た後に代償が来るタイプがあります。
現在は、
龍の頭→顔のパーツ
龍の爪→爪を剥がす
龍の尾→全身に激痛
と言った感じです。
それでは質問があれば聞いてください。
誤字があれば言ってください。
感想待ってます。