自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

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仮面の男(M)/素顔(F)

 

突如現れたジョン・プルートー・スミスに喰は背負っていた半月をヴェーラに渡して身構える。

 

「そう、身構えないで欲しいな。幾つか質問するだけだ」

 

「そうかよ、話し合いで済むなら此方も助かるよ」

 

と、言いつつ右手は“糸”を絡めている。

 

「“話し合い”か。君は全然そんなつもりは無さそうではあるが」

 

「チッ、お見通しか」

 

右手を指差され、しょうがなく両手を上げる。

気付かれた所で仕掛けが見抜かれてるわけではない。

しかし、カンピオーネ相手では意味が無いだろう。

 

「(ねぇ、状況的に彼は喰達の正体に気付いてるよね?)」

 

「(おそらくね。じゃなきゃ現れ無いだろうし)」

 

「(でも、彼は今“権能が使えない”はずだよね)」

 

ヴェーラは孫悟空と三人のカンピオーネの戦いを喰の戦いを見ながらも観察していた。

半月の様に“視て”覚えるのは無理があるが、それでも価値はある。

そこでジョン・プルートー・スミスが全ての権能を使い切るのを見ていた。

 

「(あー・・・・・・・・それなんだけどね………ちょっとマズイかもしれないのよ)」

 

「(どういう事だい?)」

 

小声で話しながらヴェーラは首を傾げる。

半月は、ヴェーラに背負われながら顔をそらす。

そして、“視え”ている物について言う。

 

「(龍脈結界を解除した事で枯れてた土地に一気に流れ込んで来ているんだけど……………それが彼に影響を与えているようでね。視えるのよ、彼の銃に龍脈からの力の一部が流れ込んでるのが)」

 

「(………そりゃマズイかもね)」

 

この土地の龍脈がジョン・プルートー・スミスと相性が良かったのか、半月の力がジョン・プルートー・スミスと相性が良かったのか、それは分からない。

しかし、もしかしたら権能が使える様になるかもしれない、というのは十分に脅威だった。

 

「それで質問ってなんだよ」

 

「単刀直入に言おう。君はカンピオーネか?」

 

「(…………こりゃ、分かっていて聞いてるな)」

(ダリィな。面倒だし、変わってくれねぇか?俺に策がある)

 

「(殺される事とか言わないよな?)」

(安心しろ、俺の死に場所はこんな所じゃ無い)

 

意見が纏まり、喰の頭がガクッと下を向く。

そして、再び上を向いた時には骸になっている。

 

「答えはYesだ」

 

「やはり、か。何時なったかは知らないが今までよく隠れていたものだ」

 

「それで、それを聞いてどうするつもりだ?」

 

「分かっているだろ?情報を公開するに決まっている」

 

「なら………俺にも考えはあるぜ!!」

 

叫ぶと同時にジョン・プルートー・スミスへと向けて駆け出す。

スミスは魔銃の様子を確認する。

 

「(復活したのは三発か。まぁ……十分だな)」

 

魔銃の銃口を向けられるが骸は気にせず走る。

だが、スミスが他に何かしないか目を離さない。

 

(何するつもりだ!?)

「(仮面を剥ぐ。あいつはあいつで素性が不明なカンピオーネな様だし、正体を知れば交渉の余地があるだろ)」

 

(なるほどな。出来るのか?)

「(そこらへんはやらなきゃ分からねぇよ!!)」

 

走ると同時に赤い竜の翼と赤い竜の尾を展開する。

全身に走る激痛は骸にとってはどうでもいい物だ。

肺機能低下はこの距離ならば問題無い。

スミスが魔銃の引き金を引く。

放たれた魔弾が一直線に骸へと向かってくる。

それに合わせて体を軽く捻る。

もちろん走るのは止めずに。

その結果、魔弾は左肩に当たる。

左肩の肉が吹っ飛び、左腕は千切れ飛ぶ。

それだけでは魔弾の勢いは止まらず、左翼も纏めて千切られる。

だが、その程度で骸の突進は止まらない。

元より死を望んでいた者である。

幾ら痛みを感じ様と、幾ら肉体が欠損しようと動じない。

何より左腕と左翼程度ならば何の問題も無い。

二発目の魔弾は右足を掠めた。

その結果、右足の太股が大きく抉れたが千切れはしなかった。

だが、足は使えなくなった。

そこで竜の尾を地面に叩き付け、その勢いで一気にスミスへと突っ込む。

三発目、最後の魔弾か放たれる。

心臓を狙い放たれた魔弾が骸へと向かってくる。

だが、骸にブレーキは無い。

なので、仕方無く右翼を犠牲にして防ぐ。

魔弾に叩き付けられた右翼は粉々に肉片を飛び散らせるが、魔弾は止めれた。

あと、一歩で仮面に右腕が届く。

そんな時に、スミスは横へと飛んだ。

つまり、骸の突進を回避した。

だが、方向転換くらいならば、竜の尾を地面に叩き付ける程度でどうとでもなる。

もう少しで仮面へと届く。

 

「ッ!?」

 

だが、そんなに甘くは無かった。

右足を抉った二発目の魔弾は勢いを衰えさせずに背後でUターンしていたのだ。

その魔弾が竜の尾ごと、骸を貫いた。

腹に大きな穴が開き、上半身と下半身が別れかねないレベルである。

内臓が溢れそうどころか、チラチラと姿を見せている。

血も溢れる。

しかし、骸は笑っていた。

スミスが不気味に思うくらいに笑っていた。

口からも血を垂らしているというのに笑っていた。

 

「届いたぜ………その顔拝見させて貰おうかぁ!!」

 

右腕は無事に残っていた。

それだけで十分だったのだ。

右腕が届く距離まで、右腕が無事ならば。

骸は仮面をしっかりと掴み、スミスに反応する間を与えずに仮面を剥いだ。

 

「くっ………」

 

出てきた顔はアニー・チャールトンだった。

アニーは大層驚いた様な顔をしていた。

対して骸は酷くつまらなそうな顔をしていた。

 

「何だよ、お前かよ。薄々嫌な気配は感じてたがそんままかよ。つまらねぇな」

 

骸がそう呟いた直後に、アニーは無表情になった。

そして、強烈な蹴りが放たれ、骸の上半身と下半身は分裂し、内臓は溢れ飛び散るのだった。

 

(お前な…………余計な事を言うからこうなるんだよ…………)

 

意識の奥で、喰が呆れる様に呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

二十分後。

骸が一通りボコられた後に体の主導権が喰に移り、仮面をつけ直したスミスと今後について話すのだった。

体については元々吸血鬼性を高めていたのですぐに再生した。

 

「それで、“契約”の最終確認をするぞ」

 

「あぁ」

 

「[互いに互いの正体を公にしない]、[互いに過剰に干渉しない。今後は基本的に互いに不干渉とする]。主な内容はこれで構わねぇな」

 

「まぁそうだな。此方には何の利も無いが、互いに“損”は無いな。しかし、君が破れば私も破れぞ」

 

「そんな事は分かってる。それに俺達は“契約”だけは守るさ」

 

「なら、これ以上用は無い。私は帰らせて貰おう」

 

「その前に一ついいか?」

 

「何だ?」

 

突然の質問に振り替えるスミス。

喰としては一つだけ、どうしても聞きたい事があったのだ。

 

「“間払”について知ってるか?」

 

それを聞いた瞬間、スミスから露骨に嫌そうな雰囲気が出る。

それで大体何となく察する。

 

「知ってるも何も“絶対”に関わりたく無い相手だな。“あれ”は敵だろうが味方だろうが関わるだけで損しか無い。まぁ、六年前程からぱったりと噂は消えたがな」

 

「うん………まぁ大体予想通りかな」

 

「そもそもこのくらいは君レベルなら知ってると思うが?」

 

君レベルとはカンピオーネになる前の状態の事を指しているのだろう。

実際はそれ以上に詳しいのだが。

育て親なのだからかなり知り尽くしている。

それでも分からない所があるのが、あの育て親だが。

 

「まぁ何と言うか………“それ”が聞きたかっただけだ」

 

「……よく分からんが君は変わっているな」

 

「よく言われるよ」

 

その返事を最後にスミスは姿を消すのだった。

とりあえず“間払 零”を知らないのなら用は無い。

 

「結局何だったのかしらね?」

 

「ああいうのには僕らじゃ分からない物でもあるんでしょ」

 

「そういう物かしら?」

 

「そういう物だよ」

 

「まぁそんな事はいいだろ。帰ろうぜ」

 

「そうね」

 

「そうだね」

 

そうして、四人は住処へと帰路につきのだった。

そんな中で喰は一つ気になっている事があった。

それは“糸”の結界から雷の様に離れていった者である。

何者かは分からない。

しかし、ただ者では無いだろう。

そんな気配を読み取るのだった。

何はともあれ、正体に気付いてたようなら口封じをしなくてはならない。

今バラされるのは困るのだ。

だが、喰にはそんな余裕が無かった。

二柱を同時に相手にした後のカンピオーネ戦である。

疲弊するなというのが無茶なのだ。

とりあえず次に出会ったら殺ると心に決めるのだった。

まぁ雷の様に消える相手など大体絞られるのだが。

 




金銀編終了でした!!

今回のvsスミスは時間にしてもかなり短い戦いです。
最短距離で仮面を剥ぐ為に突進というのがメインなので。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

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