自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

51 / 53
知らない瞳(P)/面倒の種(T)

十月上旬の三連休、金角銀角との戦いからは既に一週間以上経っていた。

半月は何時もの如く骸の住処である廃墟に来ていた。

 

「ったく、本当に面倒くさいわね」

 

廃墟から一定距離離れた地点までは侵入者対策に“糸”が張ってあるのだ。

引っ掛かれば面倒な事、この上無い。

とはいえ、半月は“視て”覚えてあるので避けて歩くのは容易くはある。

だが、面倒なのは変わらない。

ちなみにヴェーラは配置を覚える事で避けている。

 

「寝ていても常に“糸”を張ってるとか……ほとんど蜘蛛よね」

 

文句を呟きながらも廃墟の中を進んでいく。

物音が聞こえた方へと行ってみると、そこではヴェーラが料理をしていた。

“臭い”は普通である。

 

「あんた、いつの間に料理覚えたの?」

 

「来てたのかい、半月。料理はたまに習ってるのさ」

 

「あぁ……そういえば最近裕理に色々教えて貰ってたわね」

 

「まぁ何とか食える物は作れる様になってきたよ」

 

言外に味はまだまだと示している。

とはいえ、インスタント食品中心の生活よりはマシだろう。

腕を上げれば喰の胃袋を掴めるかもしれない。

そんな事はどうでもいいと言った感じに半月は周囲を見渡す。

 

「今なら量に調節がきくけど、君は食べるかい?」

 

「朝食は既に食べてるからいいわよ。それよりも骸はまだ寝てるの?」

 

「そうだよ。たぶんサボる気満々だよ」

 

「あの馬鹿……………人には行かせてるんだから自分もちゃんと付き合えっての!!」

 

文句を叫びながらも、半月は骸の寝室へと向かっていくのだった。

 

「全く何時も騒がしいね」

 

ヴェーラは溜め息を吐きながらも調理を続けるのだった。

一方の半月は、骸の部屋の前まで来ていた。

 

「入るわよ」

 

ノックもせずに扉を開ける。

基本的にそんな物をする中では無い。

部屋は散らかり、家具も適当に置いてあるだけという感じである。

骸は基本的にソファーの上で寝ている。

半月はそちらを向き、呼び掛ける。

 

「早く起きな………」

 

言い掛けて途中で言葉が途切れる。

その目に写っているのは確かに骸ではある。

だが、少し違和感があった。

上半身を起こしているのは、たまには早く起きたかと思えるが“瞳”が違った。

何か根本的な違いをその“瞳”からは感じた。

少しの間、半月が固まっていると、その“瞳”が半月の方へと向く。

 

「…………ん…………んん?…………なんだ、半月来てたのか」

 

半月の姿を確認するなり、“瞳”の雰囲気は元の骸の物へと戻る。

同時に自分は何故起きている?と首を傾げ始める。

 

「(さっきのは……………)」

 

結局何かは分からない様子だった。

半月は面倒そうに頭を掻くと、何となく骸を一発殴るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その後、色々あって朝食を食べ終えると半月とヴェーラに引き摺られて学校に連れて行かれるのだった。

来たからには仕方無いので教室の自分の席に座り、眠る体勢に入る。

 

「お前…………それどうしたんだ?」

 

寝過ごそうと構えていたらいきなり護堂に話し掛けられ、骸は顔を上げる。

護堂は骸の頬を指さしていた。

それで大体察する。

今、骸の頬は殴られた様な跡がくっきりと残っていた。

 

「あー・・・・・・これは………」

 

「言いたくなら言わなくていいぞ?」

 

「いや、簡単な事ではあるんだ…………サボると言ったら半月にぶん殴られた」

(四、五度な)

 

言い難そうに言う割りにはしょぼい理由である。

喰が心の中から何か言ってくるが無視する。

 

「そりゃ………自業自得だな」

 

「いや、まぁそう言えばそうなんだが…………馨に振り回された後に学校とかダリィにも程があるんだよ」

 

「それは………まぁ少しは分からなくも無いが」

 

昨日までは馨に後処理の代価として色々付き合わされていた。

その後、適当に話しているとHRの時間になって互いに席に着くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「起きろ!!」

 

「アガッ!?」

 

放課後となり、人の姿がほぼ消えた教室で、ほぼ全ての授業を寝過ごした骸の後頭部に半月が思いっきり手刀を振り降ろす。

メキャと音を立てながら机には衝撃を伝えさせず、正確に骸だけを叩いた。

結果として顔を上げた骸の鼻からは血が垂れるのだった。

 

「普段は回復速いわけじゃねぇんだからもうちょっと手加減してくれねぇか?」

 

「それじゃあ、あんたが起きないでしょうが」

 

「そもそも何時もは放置して帰ってるじゃねぇか」

 

「今日は用事があるのよ」

 

半月から渡されたティッシュで血を拭きながら話す。

血自体は既に止まっている。

 

「あんたに仕掛けた盗ちょ………」

 

「おい、ちょっと待て。今結構不穏なワードあったぞ」

 

自分が似た様な事の常習犯である事は棚に上げて突っ込む。

しかし、半月は無視して進める。

 

「とにかく面白そうな話が聞けたんだけど、ちょっと手伝ってくれる?」

 

「何をだよ?」

 

「神殺しの尾行よ」

 

「帰る」

 

「いやいや、そこは乗ってよ!!身近にいる神殺しの弱味は握れるだけ握った方がいいでしょうが!?」

 

「嫌だよ。明らかにダリィ面倒事の種だろうが!!というか、そういう事なら俺じゃなくヴェーラの方が適任だろ!?」

 

「ヴェーラは裕理の所に遊びに行くから無理とか断られたのよ」

 

「もういっそ、お前もそっちの方に行けばいいだろうが」

 

「何でそうなるのよ!!」

 

二人は睨み合うがどちらも引く気配ではない。

とはいえ、骸は終始ダルそうにしているだけだが。

さすがに時間の無駄だと半月は考えたのか、奥の手を使う。

 

「あんたは私を守るんでしょ?なら、護衛って事でついてきなさいよ」

 

「いや、それ使うか!?」

 

「そういう“契約”でしょ?」

 

「っ!!」

 

半月は勝った!!とでも言いたそうにニィと笑う。

骸は本気で面倒そうに頭を抱える。

 

「…………ダリィがしょうかねぇな。付き合ってやるよ」

(まぁ暴論にも程があるが“契約”出された時点で負けだよな)

「(うるせぇ……)」

 

喰が内側から茶かしてくるが、骸はただただ面倒そうにするのだった。

対して半月は少しテンションが上がっている感じであった。

 

「そんな面倒そうにしてないで、私とのデート、とでも思って元気出しなさいよ」

 

その言葉に何となくまぁいいかと思える骸と喰であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方のヴェーラは、

 

「塩はこのくらいかな?」

 

「いえ、もう一匙多い方がいいかもしれません」

 

裕理に料理を習っているのだった。





一応日常回でした。
時系列的には八巻の第二話です。
ヴェーラは家事スキルを地味に上げていってます。
少なくとも神殺しすら気絶させるダークマターは出来ない程度には。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。