「同類って……あんたもカンピオーネって事か?」
「そうだ。名は上月 骸だ。まぁ別に覚え無くてもいいぞ」
よく分からない調子で骸は答える。
護堂はその言葉で、更に警戒を強める。
護堂の知ってるカンピオーネ二人とは雰囲気が違うがこういう場合は大抵戦いになる。
護堂としてはそれは避けたい所ではある。
エリカに言わせれば、別の事を言うだろうが。
「そう身構えるなって。“俺は”別に喧嘩をしようってわけじゃねぇんだから」
「では、御身は何故ここへ現れたのでしょうか?」
ここで万里谷が恐る恐る口を挟んできた。
「別にただ、先輩の顔を見たかっただけさ。俺はこの通り、一般人の気配を放てる権能があるから認識されてないが、あんたの次に産まれた八人目だからな。それと、俺に対しては別に畏まった感じじゃなくていいから」
最後の部分のみ、万里谷へと言う。
しかし、その言葉は何処か信用ならない様に護堂には聞こえた。
実際その通りではあるのだが。
「ん?信用ならないって?だろうな、俺も信用されるとは思って無いし」
なおも適当な調子で話を続ける。
「とりあえず………用が無いなら帰っていいか?あんまり遅いと妹がうるさいんだが」
「あぁ、今日の所はいいぜ。これを渡すだけだ」
そう言って骸は懐から手紙を取り出して護堂へと投げ付けた。
「じゃあな」
そして、用が済んだとの如く骸は去っていった。
護堂が手紙を見ると、内容は次の土曜にある場所に来る様に指定された内容であった。
そして、自身の事を誰にも言わない様にとも書いてあった。
エリカが駆け付けて来たのは直後であった。
◆◆◆◆◆
「さてさて、来るかどうか」
適当に見付けた森に囲まれた廃墟の放置されていたソファーに横になりながら呟く。
来なかったら来なかったで別にいいのだ。
今回のはお目当てのヴォバンが既にいなかった事によるお遊びである。
ドニと引き分けた神殺しの顔を見ておきたかったのも本音であった。
そして、ヴォバンを追い払ったとの情報もあり、喰も期待していた。
◆◆◆◆◆
次の土曜。
「よぉ……来たか」
「来ないと何するか分かったもんじゃないからな」
指定場所は人気の無い少し山に入った所にある湖だった。
「それで俺をこんな所に呼び出したのは何故だ?」
「いきなりそれか。それより少し話をしようぜ」
「話?」
「何、簡単な事だ。お前はどうやったら生きる意味が見付かると思う?」
「何のつもりだ?」
「別に深い意味は無いよ。ただ、聞いただけだ」
「何が聞きたいか知らないけど………そんな事を聞かれても俺が知るかよ。そんな物は人各々が生きてく中で見付けるもんだ」
護堂の答えを聞き、骸は予想通りといった感じの表情をする。
そして、頭を押さえるかの様な格好をする。
「そうだな。そうだよな。まぁそう言うよな。でも、どう足掻いても生きる理由が見付からず、死ぬ理由ばかり見付かる場合はどうしたらいいんだろうな?」
「は?」
意味が分からず、怪訝な顔をする護堂。
骸は頭を押さえつつ、顔を歪める。
頭痛が酷くなっているのだ。
「まぁいいや。それより、死なない様に気を……つけ……ろ……………グッ!?」
(そして……出来れば俺を殺してくれ)
意識が沈む中で骸は呟く。
そして、黒髪の中に一房の白髪が混ざる。
「おい、大丈夫か!?」
頭を押さえ、急に苦しむ様な動作をする“彼”に護堂が心配そうに近付いていく。
そして、その口が笑っている事に近付いてようやく気が付く。
いつの間にか“彼”の右手に握られていた抜き身の刀が護堂を貫く。
◆◆◆◆◆
「護堂!!」
「護堂さん!!」
物陰でそれを見ていたエリカと万里谷が思わず身を出す。
エリカに関しては直後に護堂の所へと駆け出していた。
“彼”は二人を見ると、近付いて来ているエリカに向けて左手に召喚したナイフを投げ付ける。
エリカは投げ付けられたナイフをクオレ・ディ・レオーネで弾く。
「な!?」
直後に何か触れたと感じた瞬間、目に見えないレベルで細い糸がエリカへと巻き付いていく。
更に、呪符が張り付きエリカの動きを縛る。
「誰か知らないが神殺し同士の戦いに手を出そうとするなよ。次は呪符じゃなくナイフだぜ?」
「くっ……………」
エリカは【縛】の呪符と糸により動かない体を何とかしようともがく。
しかし、糸も呪符に外れない。
エリカを縛った罠は“彼”がオウギグモという蜘蛛の巣を参考にして設置した物である。
その蜘蛛は扇状に網を広げ、自身も糸の端を持って罠の一部と化す。
そして獲物が掛かった瞬間に跳躍して包み込んで捕獲する。
この罠を応用し、呪符を蜘蛛の代わりとして対象を包み込み、更に呪符で縛るというわけだ。
「エリカ……大丈夫か!?」
「ん?」
突然した声に“彼”は護堂の方を向く。
「えぇ………体が動かない以外は大丈夫よ」
「そうか」
いつの間にか護堂は“彼”から距離を取っていた。
どうやら“彼”がエリカの方を見ている間に移動した様だ。
そして脇腹を押さえてはいるが、出血量から見て、貫いた傷では無く、薄く切った様な傷である。
「ハッ、ギリギリ避けて脇腹を掠めるくらいに傷を抑えたか。一瞬の殺気によく気付いたもんだ。まぁそうじゃなかったら面白く無いが。それから“糸”は切れない太さのにしてあるから安心しろ」
「そういう問題じゃないだろ。それとお前、骸じゃないな?」
「おっ気付いた?まぁそりゃ気付くか。確かに俺は“骸”じゃねぇ」
“彼”は心底楽しそうに笑う。
初めての同類との戦いが楽しみで仕方無いのだ。
「改めてこう言っておこう。初めまして我が同類、草薙護堂。俺の名は上月 喰。さぁ、殺し合おうぜ!!」
「俺は犯罪者になる気はねぇよ!!」
「何だよ……ノリが悪いな」
刀の刃についた血を指で拭いながら文句を言う。
(ん?)
拭った血を舐めた瞬間、自分の奥底で何かが脈打つのを感じた。
しかし喰にとってはどうでもいい事であり、刀を護堂へと向ける。
「まぁ何があろうが俺の相手はしてもらうが。その為にわざわざここまで来て貰ったんだからな」
「場所に意味があるのか?」
「いや、人気の無いのが重要だ。俺も骸も人の命をかなり軽く見てるが無駄な血は流したくねぇからな」
先日手紙を渡すだけだったのもそれが理由である。
命を軽く見るが無駄に流す気は無い、それが“彼ら”であった。
骸は[自分にやられて嫌な事は他人にするな]の逆パターンの思考を無意識にしており、自分の命が心底どうでもいいが故にその他のいと命に関しても扱いが軽い。
喰はただ単純に生き残る為なら他はどうでもいいという感じである。
「気を付けなさい、護堂。彼はかなり危険よ」
「知ってるのか?」
「直接会った事は無いけど、この筋じゃちょっとした有名人よ。その身に正体不明の力を宿し、それ故に狙われる事が多かった様だけど、襲撃者は全員消息を絶ち、小規模とはいえ魔術結社を幾つか潰しているわ」
それだけで大体の事は分かった。
大雑把だが、何となく危険人物という事だけは理解した。
「ハハッ。人聞きが悪いな。そもそもお前ら大手が危険視とかして無ければ俺も楽なんだがな。まぁとりあえずそろそろ始めようぜ?」
「いきなり戦おうと言われて、すぐそんな気になれるかよ!!」
どうして、こうカンピオーネって奴は血の気が多いんだよ!!と護堂は文句を言いたい所だが、喰はもう待つ気が無いのか普通に斬り掛かってくる。
「さっきの不意討ちと言い、何なんだよ、お前は!!」
「お前がノリ悪いだけだ!!」
次々と斬撃を放つが護堂は紙一重で避けていく。
それなりに実戦経験があるとはいえ、この刀を手にしたのは最近であり、実戦で使うのはこれが始めてあるが故に護堂でも反応が出来ている。
ついでに護堂は喰の左側へと避ける。
「死角をついてるくとは抜け目が無いな!!」
「何でそんなに楽しそうなんだよ!!」
「あぁ?戦いってのは楽しむ物だろうが!!」
「絶対に違う!!」
そんな感じのやり取りの間に万里谷が刀の正体に気付く。
「え?何故、その刀を貴方が!?」
「ん?何だ、お前霊視持ってるのか。この“鬼切丸”に気付くとは中々だな」
“鬼切丸”は正史編纂委員会が保管していた妖刀に類する代物なのだが、喰は呼ばれた様な気配を感じて強奪した。
そんな経緯を万里谷達は知るよしも無い。
ちなみに万里谷は縛られたエリカを物陰に連れていき、拘束を解けないか色々していた。
(にしても権能を使って来ないな。何か条件でもあるのか?それとも俺とマジで戦う気がねぇとか?その場合は笑えねぇ)
そんな事を喰が考え、聞いて見る事にした。
「お前、何でカンピオーネの癖に戦いがらねぇんだ?」
「俺は平和主義者なんだよ!!」
とか、言いつつ改めて見てみると此方の隙を探る様な動きをしている。
それを見て思わず呟く。
「なるほど。エセ平和主義者か」
「なんだと!?俺は正真正銘の平和主義者だ!!」
護堂が聞き捨てにならないという感じに反応するが放っておく。
エセ平和主義者ならやる事は一つ、焚き付けるまでである。
喰は一旦、護堂から距離を取り、左手の人指し指の爪を口で剥がす。
そして、代価を払う事により、龍の爪が顕現する。
が、距離を置いた事で護堂が予想外の行動に出る。
「さて汝は契約を破り、世に悪をもたらした。主は仰せられる__咎人には裁きをくだせ。背を砕き、骨、髪、脳髄を抉り出し、血と泥と共に踏み潰せと。我は鋭く近寄り難き者なれば、主の仰せにより汝に破滅を与えよう」
護堂が言霊を唱え、地が揺れる。
護堂の背後が歪み、何かが現れ様としている。
「猪は汝を粉砕する!!猪は汝を蹂躙する!!」
「ったく!!やっぱりエセじゃねぇか!!隙を見せた瞬間にこれかよ!!」
喰は鬼切丸を鞘に収めしまう。
そして、両手の爪を全部剥いだ。
「何してんだ、お前!?」
「こっちの台詞だ、クソッタレ!!」
両手分の龍の爪を顕現させる。
護堂の背後にも猪が顕現し、喰に向けて駆け出そうとしていた。
否、喰ではなく背後の山に向けてだ。
次の瞬間、猪は超音波を放ち小規模な地震を起こしながら突進する。
喰は猪に向け、地を裂く龍の爪を全力で叩き付ける。
vs護堂開始です。
“鬼切丸”に関しては本格的な活躍は後々。
まぁ茨木童子の腕を斬った刀と認識して貰えば。
龍の爪は別に全部一辺に剥がす必要なく、爪一枚ごとに一つ出てくる感じです。
それでは質問があれば聞いてください。
誤字を見付けたら言ってください。
感想待ってます。