自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

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邪悪を祓いし火(F)/斬り裂く黄金(G)

 

龍の爪と猪が衝突した瞬間に喰は足を呪符で固定する。

しかし、それで猪に勝てるわけも無く、足にヒビが入るのを感じる。

 

(こうなったらしょうがねぇ!!)

「強靭なる竜の足よ!!捧げし我が足を代価に我が元に来たれ!!」

 

言霊を唱えた瞬間に足に激痛が走る。

チラリ、と足を見ると黒い靄が足の皮膚を剥がし、喰らっていた。

そして、足を包む様に赤い竜の足が顕現する。

現れた竜の足で地面にしがみつき、爪を猪へと押し込む。

 

「ダラァァァァァ!!」

 

凄まじい衝撃波が周囲に放たれ、多量の土煙が舞う。

 

「やったか?」

 

「死ぬとこだ!!」

 

土煙を突き破って全身から血を流す喰が現れる。

よく見ると猪の姿は消えていた。

龍の爪がヒビ割れ、折れている事からしてほとんど相討ちの様な形だったのだろう。

全身の傷はおそらく猪の咆哮にやられたのだろう。

龍の足の方はまだ無事である。

喰は口にたまった血を吐き捨て、息を整え護堂を見る。

 

「さて、第二ラウンドと行こうぜ」

 

「まだやる気かよ……」

 

「当たり前だ。こっちはまだ戦える。このくらいの傷じゃ終わらないんだよ!!」

 

「そうかよ!!なら、これだ!!」

 

護堂が東の空を指さしながら言う。

 

「我が元に来たれ、勝利の為に。不死の太陽よ、我がために輝ける駿馬を遣わし給え。駿馬にして霊妙なる馬よ、汝の主たる光輪を疾く運べ!!」

 

「チッ!!“白馬”か、笑えねぇ!!」

 

“彼ら”は“白馬”の標的としては充分な事をしていた。

喰の赤い竜の権能であれに対抗する手は無い。

 

(何か使える物は……対抗出来る物は………ミカエルの権能はこういう時に使い道は…………あった!!)

 

思い付き、即座に行動に移す。

ミカエルの権能はあまり戦闘用じゃない。

しかし、ミカエルという属性があれば“ウルスラグナ”に対抗出来る。

 

「火よ。我が司りし四元素の火よ。創造と破壊、生命力と死、相反する物を司りし火よ!!我の生命を種火とし、燃え上がれ!!」

 

ミカエルから奪った権能、それは四元素の火である。

ミカエルは、四元素の火を司る。

火は“彼ら”に宿っていた“浄化”にも関わりがある。

邪悪を祓う魂の根源たる物が火なのである。

その火は“彼ら”の血を種火として燃える。

火は様々な力を持つが、今この場でその力を使うわけでは無い。

体中から流れた血が発火し、それを左手に集める。

そして、左手を東方に向ける。

 

「太陽を運びし、白馬よ。我は主なり。我が前にその光を霧散せよ!!」

 

ミカエルの前身とされるのが、光明神ミスラである。

そしてミスラはウルスラグナの主である存在。

喰に向かって天空から清めの焔が降ってくる。

周囲一帯が白い閃光に呑み込まれる。

その焔を喰は左手で受け止めようとしていた。

 

「ラァァァァァァ!!」

 

超々高熱のフレアに周囲の地面が融解する。

喰は叫びを上げる。

そして白い閃光が弾け、一際大きい光が放たれる。

護堂も思わず、目を瞑る。

光が収まり、護堂が目を開くと、目の前にはクレーターの様な大穴とその中心に立つ喰がいた。

 

「マジかよ……」

 

「さすがに全部は防ぎ切れなかったか」

 

喰は焼けただれた左腕を見ながら呟く。

幾らミカエルにミスラの属性があろうと、その権能を一つ所持しているくらいじゃ打ち消し切れなかった様だ。

それでも腕一本で済めばだいぶいい結果ではあるのだが。

焼けただれた左腕を四元素の火が包む込む。

四元素の火は生命力を示す部分もある。

それで包む事によって再生力を底上げしているのだ。

 

「さて、次は此方から行っていいよな?」

 

「待てと言っても待ってはくれないだろ?」

 

「ご名答!!」

 

言った直後に飛び上がる。

そして、その背後に龍の尾が現れる。

それなりに重症な体に激痛が加わり、顔を歪める。

だが、それを気取られない様に注意する。

 

「潰れろ!!」

 

「断る!!」

 

直後に龍の尾を護堂へ向けて振り降ろす。

結構な勢いで振り下ろされる尾は護堂には避けようが無いだろう。

普通ならだが。

 

「我は最強にして、全てを掴む者なり!!人と悪魔___全ての敵と、全ての敵意を挫く者なり!!」

 

護堂が“御牛”の権能を発動する。

無敵の剛力を手にした護堂は、振り降される龍の尾を横から殴り軌道をそらす。

 

「笑えねぇ……“御牛”の怪力か!!」

 

軌道をずらされ、護堂の真横に叩き付けられた尾を横薙ぎに振るおうとするがその前に尾を掴まれる。

 

「おい……まさか………」

 

「たぶん想像通りだと思うぞ」

 

「ふっ………ざけんな!!」

 

捕まれた尾はピクリとも動かない。

仕方なく直接攻撃しようとするが遅かった。

護堂は掴んだ尾をそのまま振り回す。

ジャイアントスイングである。

そして、そのまま投げ飛ばしたのだ。

“御牛”の剛力で投げ飛ばされる喰はかなりの距離を吹っ飛んでいった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ったくマジで笑えねぇ……」

 

喰は木々の中に倒れていた。

折れた爪も、足も、尾もまだ顕現していた。

そして投げ飛ばされる前の事を思い出す。

物陰をチラリと見た感じではエリカの拘束は解けていた。

そして、万里谷の様子からして自身の権能を視られただろうという事を察していた。

だが、完全な正体までは見れて無いと推測するが断片的な情報があればエリカ辺りが完全に察するだろう。

喰はウルスラグナの権能を思い出し、溜め息をつく。

 

「こりゃ“剣”が来るな。とはいえ、やる事は一つだ。何をしてこようが俺は戦うだけだ!!」

 

そして、翼をイメージする。

 

「我は翼を欲する。強大に広がりし竜翼よ、我が元へと来たれ!!我の身を喰い顕現せよ!!」

 

言霊を唱えると、背中に赤い翼が現れる。

途端に息が荒くなる。

どうやら翼は肺の機能を低下させるのが代価の様だ。

翼を広げ、護堂の元へと急行する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「待たせたな!!」

 

「いいや、此方は準備万端だ!!」

 

「だろうな!!」

 

目の前に護堂の姿を確認するなり、飛び付く。

が、護堂はまるで少し前までキスしていた様に密着していたエリカを後ろにやる。

物陰の万里谷は顔を赤くしている。

喰の攻撃が届く前に“それ”は始まる。

 

「お前が殺した存在。それは神に反逆した堕天使であり、神に敵対する悪魔であり、天より落ちた竜でもある!!」

 

光が煌めく。

神を斬り裂く言霊の“剣”。

黄金の猛々しい輝きが、無数の光の珠となって輝き出す。

 

「それはルシファー、サタン、赤い竜。様々な存在と同一視されている存在がお前の殺した存在だ!!」

 

黄金の“剣”が乱舞する。

護堂に放とうとした折れた龍の爪を斬り裂き、その身を浮かす翼を貫いていく。

 

「そもそもサタンも、ルシファーも、最初は特定の存在を指す固有名詞ですら無かった。元々は信仰を試す障害であり、金星の異名でしか無かった。それが転じた切っ掛けはキリスト教が誕生した事だ!!その過程で善悪二元論を抱えていた神が善性のみの唯一神に変質し、神の持っていた暗い側面を背負う事になったのが悪魔だ!!それを人々に永遠の責め苦を与える、地獄の支配者とされたのがサタンだ!!」

 

翼を完全に斬り落とされ、落下していく。

その間にも“剣”は、言葉は止まらない。

 

「本当に笑えねぇ……」

 

半分肉体とリンクしている為に“剣”の影響は喰も受ける。

 

「そして、ルシファーは人々がイザヤ書の記述を明けの明星の名を持つ天使が地に堕ちたと解釈した事で誕生した。そしてヨブ記に登場する敵対者、サタンと結び付けられたんだ!!」

 

「ハハハハハ!!これが“黄金”か。実際に見るとマジで笑えねぇ!!」

 

尾を数々の“剣”が貫き、自身の体も貫かれつつある。

それでも喰はその力に笑っていた。

 

「サタン、そしてルシファーは聖書におけるイヴを誘惑した“古き蛇”と結びつけられ、神に敵対する赤き竜とも結び付けられたんだ!!そうしてサタン、ルシファーと結び付けられた竜が、十本の角と七つの頭も持つ赤い竜がお前の振るう力の正体だ!!」

 

「はっ、やってくれるな………本当に!!」

 

爪を砕かれ、翼を裂かれ、尾を斬り落とされ、足を貫かれた神殺しは地に落ち、束ねられた一太刀に貫かれた。

黄金の光が周囲に放たれるのだった。

 

 





決着というわけでなくまだまだ続きます。

赤い竜の権能は体とリンクしているので権能だけでなく体に直接影響が出ます。

それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。


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