魔法科高校ヒロインを救うのはお兄様でも魔法でも無くギャルゲーマーだった件 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございました。
雫編の続きです。
北山雫攻略4日目。
今日も桂馬とエルシィは地獄の羽衣により透明化し、九校戦の練習会場に忍び込み、攻略対象の北山雫を間近で観察し情報収集を行っていた。
「神にーさま、雫さんって、あんまりしゃべらないですね」
「必要最低限の会話で済ますスタンスか、実に効率的ではないか」
桂馬は、必要最低限の会話で周りとコミュニケーションと取る雫の姿に、好感を持ったようだ。
確かに雫は物静かで、言葉数も周りの女子に比べると圧倒的に少ないが、コミュニケーションが取れないというわけではない。
「でも、にーさまが何時も言ってるように会話が少ないとお話から情報を貰えませんよ?」
「いや、北山雫は自分の言いたい事が言えないコミュ障タイプではない。言葉数は確かに少ないが、その少ない言葉の中に自分の意思をしっかりと伝えている。一つ一つの言葉の情報密度が濃い。だが、受け取り手によっては素っ気ない奴だと思われがちになり、孤立する可能性もある。実際ゲームでもそんな勘違いされがちなヒロインを主人公が助け、クラスに馴染ませる事で好感度を上げていく攻略ルートもあった。しかし、北山雫の場合、幼馴染の光井ほのかが、北山雫の少ない言葉を正確に汲み取り情報を付け加え、周囲とのコミュニケーションも円滑に済ませている」
「そういえば、ほのかさんは雫さんとの間に入って良くしゃべってますね」
「いわば、光井ほのかは北山雫の心内を語る代弁者だ。……ふむ、これは少し前に流行っていたダブルヒロインの可能性があるな。双子姉妹や幼馴染とその親友など、何時も二人ペアでいる攻略対象にあるパターンだ。ヒロイン両方ワンセットで攻略することで二人の好感度を上げていく、最終的にどちらか一方を選ぶことにはなるが、両方を恋人にするなどというルートも往々にして存在し、一部のユーザーにこれが大うけしたという経緯がある。それはさておきだ。ダブルヒロインルートは少々厄介だ。二人を同時に攻略しなければならないという事はそれだけ手間もかかる。単純に考えるとルート選択肢が一気に2乗倍に増える。単独攻略ルート分岐が8あるゲームであれば、8×8の64ルート存在することになる。ただ、ゲーム制作会社もユーザーの快適度を考えそこまで作り込む事は無いが、それでもルートは通常の3~4倍程度に膨れ上がる事が殆どだ」
桂馬は少々饒舌気味に語りだす。
「か、神に~さま、何を言ってるのか全然わかりません」
案の定、エルシィは桂馬が何を言っているのか理解出来なかった。
「要するに、北山雫を攻略するためには光井ほのかも攻略する必要が出て来るという事だ」
「え~!?でもほのかさんは駆け魂いませんよ?そ、それはその、駆け魂が居ないのにほのかさんと、キ、キスをするということですか?」
「そこまでする必要はない。ある程度好感度上げるだけでいいはずだ。……だが、このルートを九校戦までに攻略するには時間的に厳しい……このルートは避けたいところだが………しかし」
桂馬はブツブツと独り言を呟き、ダブルヒロインルートだった場合の攻略最短ルートを模索する。
「わ~、凄いですね。氷の柱を次々と倒してますよ」
エルシィはそんな桂馬を余所に、雫の練習風景を見て感嘆の声を上げる。
今日の雫はアイス・ピラーズ・ブレイクという競技の練習を行っていた。
アイス・ピラーズ・ブレイクという競技は、高さ4メートル幅80cm程の巨大な氷柱を魔法で倒す競技だ。
ルールは自陣と対戦相手の敵陣に各12本立っている巨大な氷柱を、自陣後方の競技スペース全体を見渡せる高台から、敵陣の氷柱を魔法で攻撃し、対戦相手より先に敵陣の氷柱を全て倒した方が勝利というゲームだ。
対人戦では無く、氷柱を倒すというゲームであり、基本的に制限無しに魔法を使う事ができるため、高威力のド派手な魔法の応酬となりやすく、九校戦でも人気の高い競技の一つだ。
「北山雫が得意とする振動系魔法はアイス・ピラーズ・ブレイクとは相性がいい。さらに繊細なコントロールが苦手な反面、高威力・広範囲魔法を好む北山雫にとって、一番力を発揮できる競技だろう」
「そうなんですね。円盤を撃ち落とす競技よりも、こっちの方が得意という事ですか?」
「そう言う事だ」
「雫さんは氷の柱を壊す競技が得意だから、こちらの練習はあまりしないんですか?」
「エルシィにしては良い質問だ。確かにその線もあるが、ただ、北山雫は九校戦の代表予選会ではスピード・シューティングもアイス・ピラーズ・ブレイクも二位だった」
「という事は雫さんよりも凄い人がいるんですか?」
「前の千葉エリカ攻略時にも言ったが、九校戦代表予選会一年女子で全て一位だった奴がいる」
「う~ん。そういえばそんなお話があったような。誰ですか?」
「はぁ、まあいい、司波深雪だ」
桂馬は相変わらずのエルシィの記憶力にウンザリするも質問に答え、その名を口にする。
「思い出しました!エリカさんとテニス見たいな競技で戦った強くて綺麗な人です~」
「そうだ……。その司波深雪は九校戦ではこのアイス・ピラーズ・ブレイク新人戦で北山雫と共に出場する」
「え~、どういうことですか?」
「全国の各魔法科高校から、個人競技では2名づつ選出される仕組みとなっている。司波深雪は北山雫にとって、九校戦全体では第一高校代表として強力なチームメイトであるが、このアイス・ピラーズ・ブレイクにおいては優勝を争うライバルともなる」
「エリカさんと神にーさまでも勝てなかった深雪さんと戦うんですか?」
「ぐっ!か、駆け魂を出す事が目的で勝つことが目的じゃなかったからいいんだ!」
「でも、にーさま物凄く悔しそうでしたよ」
「悔しくなどない!」
そういう桂馬は何故かぷるぷると震えている。
「神にーさま、泣く程悔しかったんですね」
「泣いてなんかないやい!覚えてろよ司波深雪と司波達也!!あの時は時間がなかっただけだーーーい!!次こそは絶対勝――っ!!」
桂馬は目尻に涙をため子供が癇癪をおこしたように地団駄を踏み、しまいには雄たけびを上げるしまつ。
相当悔しかったのだろう。
桂馬にとって、スポーツ競技だろうと、ゲームと名が付くもので負ける事は、プライドが許さなかったようだ。
「神にーさま、なんだかんだと負けず嫌いですよね」
「ふん、ゲームは勝たねば意味がない、初めから負けが決まってるゲームなどゲームではない……うううっ……ま、負けてなんかないやい」
桂馬は気を取り直し、格言ポイ事を言うが、やはり司波兄妹に負けた事を引きずっているようだ。
「私…ずっと落ちこぼれだったので負けてばっかりで……でも、駆け魂隊に入って神にーさまと一緒に駆け魂を捕まえる事ができて、嬉しかったです。にーさまこれからもよろしくお願いします
話の流れからエルシィは何となしに、満面の笑顔を浮かべ今の心情を感謝と共に桂馬に伝えた。
「ふん、僕は早くこの終わりが見えないゲーム(駆け魂狩り)を終わらせたいだけだ」
桂馬はそんなエルシィの笑顔と告白に多少気恥しいのか、エルシィから顔を逸らす。
「でも、無表情でわかりずらいけど、雫さんも深雪さんに負けて悔しいんですよね」
「ん?……」
桂馬はエルシィのその言葉に、携帯端末を立上げて激しく指を動かしデータを閲覧する。
「どうしたんですか神にーさま」
「今日はどうしたエルシィ!冴えてるではないか!」
「え?」
「ふっ、まさかとは思っていたが、北山雫のここしばらくの行動パターン。エンディングが見えた!」
桂馬は眼鏡を光らせ、不敵な笑みを浮かべ、何やら決め台詞のような言葉を口にする。
やっと次から中盤で、本格攻略が始まります。