魔法科高校ヒロインを救うのはお兄様でも魔法でも無くギャルゲーマーだった件   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。

進まない雫編。


雫編⑤

「エンディングが見えた!」

 

「神にーさま、雫さんを恋に落とす方法がわかったんですか?」

 

「後はエンディングに向けてルート作りを行うだけだ。エルシィ、明日からは積極的に北山雫に接触を図る」

 

「神にーさま、やっぱりすごいです。でも雫さんをどうやって恋に落とすんですか?」

 

「北山雫は完ぺきなお嬢様タイプのヒロインだといっていいだろう。プロフィールや交友関係などネットやデータ上の情報だけでは隙が見当たらなかった。さらに僕と北山雫は同じ学校の同じ学年の生徒だというだけで、接点はほぼない。千葉エリカの様な派手に動き回るタイプではなく物静か系だ。しかも今は夏休みで通常学校イベントは起きない。いきなり接触しルートを間違えると取り返すのが困難だったため、少々周りくどいやり方だったが、北山雫を直に観察し隙を伺っていた」

 

「隙ですか?」

 

「ゲームではどんな完璧なヒロインであろうと必ずなんらかの隙がある。隙とは要するに相手の弱点だ。相手の弱点を知るという手札はあらゆるゲームジャンルに共通する何よりも武器となるものだ。困難な敵だろうと弱い所や苦手な所を徹底的に攻めれば意外とあっさり倒れるものだ」

 

「弱ってる所を攻めるなんて、悪者みたいですね」

 

「ばかもーーーーん!!!覚えておけエルシィ、『隙とは、物言わぬヒロインが見せるSOS信号』ヒロイン攻略の最重要イベントの起点となる!命を張ってでも手に入れなくてはならない!」

桂馬はこんな訳が分からない格言風な事を言い出した。

 

「……神にーさま、何を言ってるのかわかりません」

エルシィがこう言うのも無理はない。

ギャルゲーマーにとって高度な格言なのだろうが、エルシィでなくとも一般の人間にとって理解に苦しむ類のものだろう。

 

「ふん。一見完璧に見えるゲームヒロインも、誰にも言えない悩みを抱えているケースが殆どだ。それを見極め、攻略を行っていくのがセオリーだ」

 

「そうなんですか。でも、雫さん悩みとか無さそうに見えますよ」

 

「このパターンはゲームヒロインの場合、78%の確率で本人も無自覚に悩みを抱え込んでいる」

 

「神にーさま、それはゲームでのお話ですよね」

エルシィの言い分はもっともだが……。

 

「確かにリアルとゲームとは違う。だが僕にはこのやり方しか知らない。今更路線変更など出来ようもない。ならば今迄攻略してきたゲームヒロイン1万人分の知識を総動員しリアル(現実)をゲーム(非現実)に置き換え戦えばいい。それで無理ならゲームオーバーだ」

桂馬は何時も自信たっぷりな言動を繰り返していたが、内心リアルで通用するのだろうかという葛藤を抱き続けていた。

だが、このやり方しか知らない桂馬は、それしか出来ないのであれば自分の領分であるゲーム(非現実)知識を武器にし、リアル(現実)に真っ向勝負を挑むまでだと腹を括っていた。

その腹の括り具合は一掃清々しくもあり、達観していると言っても良いだろう。

桂馬はギャルゲー界の神とあがめられ、その頂点に君臨する人物である。

あるジャンルを極めた人間だけが持つ悟りの領域に達しているのかもしれない。

 

「すみません神にーさま、にーさまならきっと大丈夫です」

エルシィは前回の千葉エリカ攻略を四苦八苦しながらも自分の道を突き進む桂馬の姿を思い出し、自身の失言を訂正する。

 

「ふん、話を戻すぞ。北山雫のプロフィールを覚えているか?北山雫の家は超が付く金持ちで、家族仲や友人関係も良好、魔法適正にも恵まれ、学業も優秀、容姿も幼さは抜けないが世間一般で言う美少女の部類に入る。いわば典型的な生まれた時からの負け知らずの人生勝ち組路線をひたすら歩んできた」

 

「私と全く逆ですね」

地獄で生まれてこの方300年以上、負け人生を送って来たエルシィは、あっけらかんとこんな事を言う。

 

「だが、高校に入り初めて壁にぶち当たった」

桂馬はそんなエルシィの言動をスルーし、話を続ける。

 

「壁ですか?」

 

「そう、司波深雪という壁だ。データを見る限り北山雫は魔法関連において中学まで一度も負けた事が無かった。だが、高校に入り初めて敗北した。魔法関連の実技、試合、勉学と全てのジャンルで司波深雪に完膚なきまでに負けた。その事実を表面上は認めているように見えるが、整理ができず理解が追い付かない。そんな状況が無自覚な悩みとなっている」

 

「もしかして、その悩みで心に隙間が出来て、駆け魂が入ったんですか?」

 

「可能性は高いだろう。まったく、千葉エリカにしろ北山雫にしろ、原因は司波深雪か。王道ヒロインの様なスペックなくせに、司波深雪は駆け魂を呼び寄せる悪魔か何かか?」

 

「という事は、エリカさんの時みたいに、雫さんを手伝って司波深雪さんと戦って勝てばにーさまと恋に落ちるんですか?」

 

「いいや、千葉エリカの場合は勝負と恋の好感度とリンクしていたが、本来別と考えるべきだ。……その前にエルシィ、一つ聞いていいか?」

 

「何ですか?神にーさま」

 

「恋で心の隙間を埋めて駆け魂を追い出すとお前は言ったが、恋以外で心の隙間を埋めた場合はどうなるんだ?」

前回はエルシィの言うがまま、恋で千葉エリカの心の隙間を埋め、駆け魂を追い出す事が出来たが、桂馬は疑問に感じていたのだ。

心の隙間を埋めるだけであれば、恋心でなくとも、別の方法でも埋まるのではないかと、それこそ喜怒哀楽の何らかの心で。

 

「え~?うーん。わかりません!」

エルシィは少々悩むそぶりを見せてから、堂々と分からないと言ってしまう。

 

「そんなことだろうとは思っていたが、まあいい。ではアプローチを変えよう。駆け魂が入り込んだ心の隙間を埋めるために、なぜ僕に女の子に恋をさせて落とせと言ったんだ?」

地獄の悪魔を名乗るエルシィが本当に悪魔なのかも疑いたくなるほど悪魔らしくないが、桂馬は実際に人の心の隙間に潜む駆け魂を追い出し、その存在を確認し、エルシィが現代魔法を使わずに空を飛んだり、地獄の羽衣の性能を体感し、確かに人間とは別で悪魔なる存在なのだろう事は認めはしたが、肝心の駆け魂については未だに疑問だらけであった。

 

「女の子は恋に落ちたら、幸せいっぱいになって、どんな心の隙間だって埋まるんですよ」

エルシィは自身満々にこんな事を言う。

 

「…………」

桂馬はエルシィの頭の中がお花畑で埋め尽くされてる様な理論に、突っ込む気力も湧きあがらなかった。

だが、千葉エリカを恋に落とし、心の隙間が埋まり、心の隙間に潜んでいた駆け魂が飛び出してきたのは事実だ。

恋に落として心の隙間を埋めるという方法は間違いではない事が証明されている。

駆け魂に関するエルシィの知識はどうもあやふやで頼りないが、桂馬にとって、今確実に心の隙間を埋める事が出来る方法は、今の所これしかなかった。

 

 

 

翌日。

「神にーさま、コソコソとこんなところで何をするんですか?雫さんに会いに行かないんですか?」

エルシィは、学校近くの小さな公園の街路樹の影からコソコソと駅から伸びる通学路の様子を伺っている桂馬に後ろから疑問を投げかける。

 

「王道に間違いなし。接点のない男女が出会うには偶然という演出が必要だ。普段北山雫は光井ほのかと共にここの通学路を通る。後は待つのみ」

桂馬は北山雫と接触すべく、王道の方法を実行しようとした。

通学路の曲がり角から始まる恋を演出しよう画策する。

要するに、雫と通学路の曲がり角の出会い頭に偶然を装いぶつかって、桂木桂馬という存在を認識させ、そこから関係性を温める作戦だ。

 

しかし……、

「神にーさま、雫さん車に乗ってますよ」

実は雫は夏休みに入り、高級車で学校まで送迎してもらっていたのだ。

 

「なにっ!?………ならば、車に体当たりするのみだ!これも王道、事故から始まる恋は攻略が早まる傾向がある!」

桂馬が雫の乗る車に向かって走り出そうとする。

 

「にーさま!ダメですっ!!危ないです~!!」

そんな桂馬を必死に止めるエルシィ。

 

「問題ない。ゲームでは主人公は滅多に怪我をすることはない!キングオブクソゲーの『病院から始まる高校バラ色生活』以外はな!!あのクソゲー、リアルを追及する斬新的なゲームだと名をうっていたが、事故で怪我をする個所によってルートが分岐するとかいうとんでもないゲームだった!オープニング始まって1分も経たずに車にはねられ、当たり所が悪くて死亡してゲームオーバーだと!!どんだけクソゲーだ!!」

桂馬はエルシィを振りほどこうともがきながら、とあるゲームに対して怒りのレビューを行う。

 

「神にーさま!ここは現実です。にーさまも死んじゃいますよ~!!」

エルシィは羽衣を使って桂馬を取り押さえる。

 

「離せエルシィ!校舎に入られると風紀員が目を光らせているため北山雫とイベントを起す機会がない!」

 

「普通に北山雫さんとお話しすればいいじゃないですか~」

 

「いいかエルシィ、ヒロインとの会話での通常接触とイベント接触では、ヒロインとの心象度はスタート地点から大きく異なる」

桂馬は急に冷静になりエルシィに眼鏡を煌めかせながら語りだす。

 

「神にーさま。お友達がいないから、女の子と普通にお話しが出来ないだけじゃ?」

 

「な、何を言っているエルシィ、僕は1万人以上のヒロインを攻略したのだぞ」

桂馬は少々口篭る。

どうやら、エルシィの言葉は核心を突いていたようだ。

確かに桂馬はリアルの女子と話等ほとんどしてこなかったが、会話が出来ないわけではない。

必要な連絡事項など事務的な会話程度は行っていた。

ただ、友人関係の構築や好感度の上がるような話し方など、学生らしい日常会話は一切してこなかったため、ゲームでやり方は凡そ理解出来ていたが、実際となるとどう接触すればいいのか測りかねていたのだ。

 

「神にーさま。ゲームの女の子とお話したのと同じ風にお話しすればきっと大丈夫です」

どうやらエルシィは桂馬の心情を理解し、珍しくアドバイスを送る。

 

「ゲームとリアルと一緒にするな!……僕にリアル女子は必要ない」

ここでいつものように、決め台詞を吐く桂馬。

 

北山雫の攻略は前途多難であった。

 

 




やっと次回から本格攻略です。
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