魔法科高校ヒロインを救うのはお兄様でも魔法でも無くギャルゲーマーだった件   作:ローファイト

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エリカ編③

さらに一週間後、一年生の九校戦代表予備選考会が開かれる。

九校戦。正式名称は全国魔法科親善魔法競技大会。

全国9つある魔法科高校が魔法を使ったスポーツ競技で争う全国大会だ。

確かにスポーツ競技ではあるが、戦闘を意識したスポーツ競技が多い。

魔法科高校は優秀な魔法師を育てる機関である。イコール優秀な軍人を育てる機関でもあるのだ。

 

第一高校の九校戦代表予備選考会は各クラスの数名の代表が選出され、争われる。

また、優勝したからと言って、必ず代表に選ばれるとは限らない。後程行われる選考会議で決定されるのだ。選手の能力のお披露目会と言ったところなのだ。

ただ、例年、優勝者、準優勝者は代表に選ばれていた。

そして、昨年までは一科生のみで行われていた。

今年は生徒会長七草真由美の尽力によって、二科生からもこの予備選考会に出られるようになった。但し、各競技で二科生全クラスから二人だけ、チーム戦は一チームのみ。

七草真由美は、一科生も二科生も平等な権利を主張する改革派の生徒会長だった。

今まで、このような事例が無いだけに、反発もかなりあった。

だが、参加させる所まで、こぎつける事が出来たのだ。

七草真由美自身、優れた魔法師であり、全国でも同世代で1.2位を争う程だ。

さらに、日本の魔法師を牛耳る十師族の一つ、七草家現当主の長女でもある。

 

 

 

桂馬は無理矢理レオに連れられ、予備選考会のクラウド・ボールが行われる屋内競技場に連れてこられた。

千葉エリカが二科生の代表として参戦するからだ。

 

桂馬はレオに連れられ、観覧席二階のとある場所に座らされる。

桂馬は相変わらず携帯端末でゲームをしながらだ。

 

「桂木君こんにちは、エリカちゃんがいつもお世話になってます」

すると近くに座る眼鏡をかけた大人しそうな女子に声を掛けられる桂馬。

桂馬は、軽くお辞儀をする。

彼女はエリカの親友で柴田美月、クラスメイトでもある。

 

「何時もエリカに絡まれてる桂木君だっけ、君も大変だね」

レオの横に座り、草食系イケメン風の吉田幹比古に声を掛けられる。

桂馬は頷くのみ。

因みに幹比古もクラスメイトだ。

 

「……司波達也だ。よろしく桂木」

幹比古の横にすわる雰囲気のある地味目であるが顔の整った男子から声を掛けられる。

桂馬はやはり頷くのみ。

司波達也もクラスメイトだ。

 

「はっはっはーー、まあ、こいつはこんなだが、面白い奴だぜ」

レオはそう言って桂馬の背中をバンバンと叩く。

桂馬はうっとおしそうにしながらも、ゲームを続けていた。

 

 

「凄いですね。深雪さん。全部の試合に出るなんて」

柴田美月は司波達也に話しかける。

 

「ああ、ただ九校戦は1人2種目だけだからな」

達也はそれに答える。

予備選考会は、1人で数種目出られる。

但し、本番の九校戦は1人2種目と制限があった。

さらに、予備選考会と言えでも、1人で全種目選ばれると言うのも珍しい。

それ程、司波深雪の魔法力が優れている。いや、最早高校生レベルの物ではないのだ。

そのまま、実戦に出ても十二分に活躍できるレベルである。

学年で頭一つどころか、圧倒的に飛びぬけた存在だった。その美貌と共に……

因みに達也の妹でもある。

 

「エリカ大丈夫かな?緊張してたり」

幹比古がボソっとこんな事を言う。

 

「緊張!?彼奴がそんな玉か?はっはっはーーー!」

レオはそれに対して豪快に笑い飛ばす。

 

「西城君。エリカちゃんは女の子なんですよ」

美月にレオはたしなめられていた。

 

 

第一試合

いきなり、千葉エリカは司波深雪と当たる事に……

 

「うわっ、エリカくじ運なさすぎだよ。司波さん相手は流石に」

「おい達也。お前はどっちを応援するんだ?妹かエリカか?」

「表面上はクラスメイトのエリカだな。だが心の中では深雪を応援するつもりだ」

「それって、深雪さんを応援するという事ですよね」

幹比古、レオ、達也、美月はその様子に口々に会話するが……

雰囲気的にエリカが勝つことは無いだろうと察していた。

 

『クラウド・ボール』

テニスコートとほぼ同じようなコート上で、ボールをラケットや魔法を使い、相手のコートに落とす競技である。

但し、魔法には制限がある。魔法が使えるのは自陣に来たボールに対してのみだ。

1セット3分、3セットマッチ制で試合が決まる。

ここまでだと、魔法を使う以外、普通のテニスとほぼ同じだが、この競技サーブは無く。コートの外中央から、機械を使って先行にボールが放たれる。更に20秒ごとにボールが追加され、1セット3分で最大9個のボールがコート上に追加される。

魔法を使わずにその数のボールを制することはほぼ不可能と言っていいだろう。

 

深雪は右手にラケット、左手に短銃型のCAD(魔法をコントロールする機器:これが無いと魔法の発動が困難である)を持つ。

対するエリカは手に一本のラケットのみ。左手首にはブレスレット型のCADを装着していた。

 

そして試合が始まる。

 

まずは先行のエリカの元に、機器からボールが放たれる。

エリカはラケットを振り、鋭い打球で深雪のコートに返す。

深雪はラケットを使わず、短銃型CADを構え、魔法で空気の壁のような物を生成しボールを弾き飛ばす。

 

エリカは加速魔法を使い、それに追いすがって、ボールを返し、一進一退の攻防を繰り広げられていた。

 

しかし、ボールが1球、2球と追加されて行き、コート上にボールが4つになった時、エリカは捌ききれずに、点数を奪われて行く。

 

その間、司波深雪は殆ど移動していない。短銃型CADを構え、来るボールを魔法で空気の壁で角度を付け押し返しているだけだ。

 

二人の魔法力の差が余りにも大きかった。

エリカには空気の壁等、ボールを弾き飛ばすような魔法を素早く生成できない。

だから、剣術で鍛えた身体能力と加速魔法を使うしかないのだ。

 

一方深雪は、空気の壁やボールを弾き飛ばす魔法を同時に何個も操る事が出来る。

しかも、エリカが返すボールの速さに対抗できるスピードで余裕で魔法を発動できるのだ。

通常魔法の発動にはタイムラグが生じるが、深雪の発動スピードが凄まじく速いため、それを感じさせない。

通常、このようにこの競技は魔法同士の戦いとなると、魔法の発動スピードが物を言うのだ。

 

 

 

最早、勝負にならなかった。

2セットめが終わり、エリカの惨敗で試合が終了する。

エリカは深雪と握手を交わし、コートを後にする。

 

 

しばらくして、エリカがテニス着姿で、観客席に現れる。

「あはっ、あははっ、負けちゃいました。惨敗だわ。やっぱり深雪にはかなわないわね」

エリカは明るい笑顔で皆にそう言ってから美月の横に腰を下ろす。

丁度、コート上では深雪の次の試合が始まっていた。

 

「エリカちゃん、お疲れ」

「まあ、仕方ないよね。一試合目から司波さんだし」

そんなエリカに美月と幹比古は声を掛ける。

 

「そうだよな。なんだあれ?お前の妹凄すぎないか?」

「まだまだだ。深雪の魔法発動スピードは七草先輩にはまだ負けるだろう。まだな」

「あれで、まだ遅いっていうのかよ」

レオと達也は深雪の試合を見ながらそんな会話をしていた。

しかし、深雪の魔法発動スピードはエリカとの試合に比べ、1、2段階早かった。

 

エリカは深雪の試合をしばらく見た後……

「ごめん。汗かいちゃったし、ちょっとシャワー浴びてくるわね」

観客席を離れる。

 

そう言った直前のエリカの目にはいろんな感情が入り混じっていた。

桂馬はエリカのその目を見のがさなかった

 

 

 

 

エリカは観客席を離れ、競技場内の更衣室のシャワールームではなく、競技場を出て傍の林の中に居た。

俯き加減で大きな木にしなだれていた。

 

「悔しいのか?」

 

「桂木桂馬!?……試合に負けた私をバカにしに来たの?何時もの仕返しのつもり?私が落ち込んでるとでも思った?残念ね。お生憎そんな感情は無いわ」

エリカはその声に、振り向き驚くが、エリカは大きな木に持たれかかり何時もの調子でそんな事を言う。

 

「そんな事はしない。する意味もない」

桂馬は何時もの様に携帯端末のゲームをやりながら答える。

 

「そうでしょうね。負けて当り前だもの。一科生の深雪と私じゃ、比べものにならない」

 

「そうだな。魔法力の差が如実に出た試合だった」

 

「そうよ。あの子と私じゃ最初から勝負にならない」

 

「でも、お前は悔しいと思った」

 

「当り前じゃない。試合に負けたら誰でも少しは悔しいわよ。しかも手加減されてのよね」

エリカは淡々と会話をする。

 

「それだけじゃない、お前は司波深雪を羨ましいと思った。そして妬んだ。違うか?」

桂馬は携帯端末のゲームを止め、エリカの目を直視する。

 

「あんたに何がわかるのよ!!言われっぱなしの負け犬根性!!強くなろうとする努力すらしないあんたに!!私は……私は!!」

エリカは桂馬のその言葉で急に感情剥き出しに、桂馬に迫っていた。

どうやら桂馬の言っている事は図星だったようだ。

 

「僕にはわからない感情だ。ただ悔しいと言う感情は僕にもある。先に新作ギャルゲーを攻略された日にはどんなに悔しいか!!誰よりもヒロインを先に攻略したいんだ!!誰かの手垢がついた二番煎じなど断じて許容できない!!」

桂馬は力説して断言していた。

 

「……あんたバカなの?」

 

「ふん。お前は間違っている。司波深雪とまともに勝負するからだ」

 

「何よ!わかってるわよ!私が深雪と勝負しても勝てないって事は!!でも悔しいじゃない!!同じ年なのに!私だって努力して、自信もあったわ!!でも私のチンケな魔法力じゃ……かなわないのよ……」

エリカは勢いよく桂馬に怒鳴っていたが、最後は俯き消えるような声だった。

その目には涙が溜まっていた。

 

 

「だから、お前は分かってない。間違ってると言っているんだ。お前は司波深雪にすべて負けてると思い違いをしている。が、そうじゃない」

 

「な、なによ」

これも図星だった。

エリカは深雪に何もかも勝てないと思っていたのだ。

司波深雪は勉学成績優秀、品行方正、魔法も万能。絶世の美少女ときたものだ。

 

「お前はそう捨てたもんじゃない。見た目も負けてない。人によってはお前の方が好まれる。素の運動神経はお前の方が上だろう。勉強もそれ程悪くないだろ?性格は……おいておこう」

 

「な、なによ!性格は悪いって言いたいわけ!!」

 

「好みだ!性格なんてものは、完全に好みで別れる!!………僕はどちらかと言うと、お前の方が良いかな……」

桂馬も顔を真っ赤にしてそう答えた。

いくら攻略のためとはいえ、面と向かって女の子にこんな事を言うのは流石の桂馬でも恥ずかしい様だ。しかも何気に桂馬の目には涙目のエリカが可愛らしく映っていたのだ。

それもそのはずだ。エリカはドイツ人とのクオーターとあって顔立ちも整っており、誰もが認める美少女なのだ。ただ、その性格が足を引っ張ってるだけなのだ。

 

「な!?あんたに褒められてもちっとも嬉しくないわよ!!このゲームオタク!!」

エリカも顔が真っ赤だ。

 

「僕の事はどうでもいい!お前が司波深雪に劣っているのは魔法力だけだと言いたかっただけだ!」

 

「それが問題なんじゃない!!」

 

「それ以外は捨てたもんじゃない!!」

 

「な…なな!?」

 

「お前は、司波深雪に勝てる。僕だったらお前をクラウド・ボールで、司波深雪に勝たせてやることが出来る!!」

 

 

 

 

翌日から、千葉エリカと桂馬の特訓が始まった。

 

 

 

 

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