魔法科高校ヒロインを救うのはお兄様でも魔法でも無くギャルゲーマーだった件   作:ローファイト

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エリカ編④

千葉エリカと桂馬との特訓が始まり3日が経った昼休み。

 

「神様、順調ですね。これで司波さんにエリカさんが練習試合に勝てば、エリカさんは神様に恋に落ちてキスを!」

エルシィは黙々とゲームをする桂馬に話しかける。

 

「既に、エンディングが見えた。しかし、その司波深雪に勝つのが問題だ」

 

「え?でも神様。エリカさんを絶対勝たせるって言ってましたよね」

 

「そうなんだが…司波深雪についても色々と調べた。……彼女は四葉だ。しかも四葉の後継者候補筆頭だ」

 

「はい?四葉って、四葉のクローバー?牛乳屋さんですか?」

 

「お前は知らなくていい。厄介だ。まさか十師族だったとは。しかもあの四葉家か。だったらあの魔法力も頷ける。兄の司波達也も不気味だが、今は司波深雪に集中しなくては。まあ、たかが学校の練習試合に四葉が絡んでくることはないだろう」

四葉家とは十師族でも異質な一族だった。所在地も正確には分からず、当主も滅多に表に出てこない。さらに、最強や最恐ともよばれ、世界中でも恐れられていた。

 

「それで、何時司波深雪さんとエリカさんは試合をするんですか?」

 

「まだだ、千葉エリカには魔法を覚えさせている。簡単な基礎単一系なのだが、バリエーションが必要だ。しかし時間がない。司波深雪は7月後半に入ると、九校戦の準備で練習試合どころではなくなる。タイムリミットは後1週間も無い……。そう言えばエルシィ、俺とお前の首が飛ぶ期限が後どのくらいなのかわかるか?」

 

「えーっと、分かりません!」

エルシィは堂々と言う。

 

「この駄目悪魔!!上司にでも聞いて来い!!」

 

「わーーーっ!神様~。怒らないでください~!駆け魂さえ捕まえれば大丈夫なハズですから!」

 

 

 

「桂馬!あんたまたこんな所で油を売ってる!早く来なさい!練習よ練習!」

扉が大きな音と共に開かれ、エリカがやってくる。毎度おなじみの光景となっていた。

しかし、エリカの顔は何時からか厳しい顔から明るい感じになっていた。

エルシィは相変わらず、隠れて様子を伺っていた。

 

「おい、放課後だけで十分だろ?」

 

「いいからいいから」

そう言ってエリカは桂馬の首根っこを掴み引きずって行く。

 

 

 

 

 

1週間後の放課後、屋内訓練所のクラウド・ボールのコート上で、テニスウェア姿のエリカと深雪はネットを挟んで対峙していた。

「深雪、忙しいのに練習試合に付き合ってくれてありがとう。でも前みたいに手加減はいらないわ」

「エリカ……分かったわ」

互いに挨拶を済ます。

 

 

観覧席では、エリカの友人達である柴田美月、西城レオンハルト、吉田幹比古、さらに風紀委員で忙しいはずの司波達也も途中抜けて、座っていた。

深雪の友人で九校戦出場が決まってる光井ほのかと北山雫も、練習の休憩の合間を縫って、練習試合を見に来ていた。

 

その他にも、深雪の試合に興味がある生徒や、生徒会や部活連の上層部などが見に来ていた。

 

そして、桂馬は、皆から離れ、全体が見渡せる位置に座っていた。

しかし、その頭には全方位型のヘッドマウントディスプレイを被り、両手には携帯端末をそれぞれ握っていた。

試合を観戦する姿にはとても見えない。

 

 

 

そして、試合開始。

 

中央コート外から機械でエリカのコートにボールが放たれる。

エリカが先行で始まった。

 

エリカはラケットを思いっきり振り切り、深雪のコートにネットギリギリの高さで飛ばす。

 

深雪はいつもの様に短銃型CADを構え、空気の壁を作り、ボールを跳ね返そうとした。

したのだが……ボールは急に角度を下に変化させ落ちる。深雪の魔法で作った空気の壁触れずにボールは自陣のコートに落ちる。

 

観客席はざわめいた。

達也は思わず立ち上がり、美月や友人達も驚いていた。

 

エリカはガッツポーズをとり、笑顔で観客席の桂馬に振り向いていた。

エリカは初めて、深雪から点数を取ったのだ。

 

深雪も驚いた顔をしていた。

深雪は確かに、ボールの軌道を読み、ジャストミート出来る位置で魔法で空気の壁を作り、跳ね返したはずだった。

深雪はエリカだけでなく、高校に入り、初めてこのクラウド・ボールと言う競技で点を取られたのだ。

 

 

 

 

10日前。

 

「お前は魔法以外では司波深雪に何も劣っていない」

あの深雪との予備選考会試合の後の林の中で、桂馬はエリカに深雪に勝たせると言った後、その続きを話していた。

 

「……そ、それは、でも」

 

「断言する。お前は魔法では司波深雪に勝てないかもしれないが、それ以外では勝てる!」

 

「か、勝てる……本当に?」

 

「そうだ。それにお前の方が運動神経は上だ。体の使い方もしなやかで丈夫だ」

 

「でも、試合じゃ魔法が物を言うのよ」

 

「ふん。だからお前は何もわかってない。お前も、この学校の連中も教師も全員間違ってる。魔法だけでは勝負はつかない。特にモノリス・コードなんてものは最たるものだ。僕が指示をだすのならば、魔法無しでモノリス・コードに勝てる」

 

「……でも、クラウド・ボールは」

 

「クラウド・ボールも一見魔法力が高く、発動時間が速い奴が有利な競技に見える。しかしそれはまやかしだ。そういう意図でこの競技は作られているため、皆そう思い込んでるだけだ」

 

「……」

 

「しかも、この競技は魔法については大きな制限がある。詳しくルールを読むと、魔法は自陣に来たボールにのみ発動可能だと書いてある。だから、事前に壁などは作れない。それに発動される魔法も制限がある。発動範囲はボールの大きさに対し、大凡4倍分のみ。要するに20㎝半径や20㎝範囲の物しか使えない。さらに、ボールを割ると反則だ。だから、空気砲や空気の壁などボールに負荷がかかりにくい魔法に限定される。そのルール内でしか魔法が使えないのならば、魔法以外の方法でそれらを打破すればいい」

 

「……そんな事が可能なの?」

 

「ああ、まずは……」

 

 

そうやって、エリカに覚えさせたのは変化球だ。

いや、正確には、ラケットでボールを打つインパクトの瞬間に発動させる魔法だ。

今エリカが持っているラケットはCADが搭載されてるラケットだ。

インパクトの瞬間、魔法でラケットのガット(網の部分)の形を変形させ、ボールの回転スピードや回転方向を変化させていたのだ。

それで、野球のボールの様に物理的に自由自在にボールの軌道やスピードを変化させていたのだ。

クラウド・ボールで使用されるボールはテニスのボールとは異なり、低反発のボールで普通に打っては変化をつけにくい。

だが、このように大幅に打点部の摩擦する面を変える事によって、野球の球以上に変化させることが出来たのだ。

 

しかも、特殊な機材などはいらない。ガット自体は既定の物を使用している。

ただ、ガットを緩めに絞め、魔法でガットの糸を変形させることで摩擦係数や反発力、回転数を調整を行っていたのだ。

 

 

 

 

試合に戻る。

一点を先取された深雪が先行する。

深雪は短銃型のCADを構え、機械から放たれたボールを圧縮空気を応用した魔法で、打ち出し、エリカのコートの端を猛スピードで狙う。

 

しかし、エリカはまるでその位置が分かったかのように、先回りをし、ラケットでそのボールを難なく打ち返し、弾は今度は右下に落ち、深雪が発動させた魔法をかすりながらコートに落ちた。

 

またしてもエリカに点が入る。

エリカは嬉しそうに、観客席の桂馬の方を見るが、桂馬はヘッドマウントディスプレイを付けて、両手で携帯端末を触りながら、ゲームをしていた。

いや……桂馬はゲームなどしていなかった。

桂馬のヘッドマウントディスプレイらしき、そのゴーグルヘルメットが一体化したものには、各種センサーと各種カメラが取り付けられており、それらはすべて深雪の短銃型CADに向けられていた。

そう、桂馬は深雪のCADの情報を盗んでいた。

CADが深雪と送受信する微細な信号を各種センサーで拾っていたのだ。

 

そうやって、桂馬はCADの信号や挙動などから、どんな魔法がどのようにこのコート上空間に影響するのかを算出し、どの場所にボールが来るかをエリカに伝えていたのだ。

今、エリカの耳には小型のイヤホンが取り付けられていた。

 

この競技、外部からの情報を遮断を規制するルールは載っていない。

普通、外からの声はボールの打ち合いをしている間、十分の一秒を争う競技では邪魔でしかないからだ。

しかも、コーチのアドバイスなどは、競技中受け答えしてもいい事になっていた。

 

桂馬がやってる相手の情報を拾って伝えるのは、いろいろと倫理的にまずいだろうが……現段階では規制はない。

桂馬は練習試合だし、バレなきゃいいぐらい思っていた。

しかも、CADの挙動をこんな形で抜き取り、瞬時に伝える事が出来るなど誰も考えもしていない。

普通の人間がこんな事が出来るはずがないからだ。

もしかすると、司波達也や藤林響子ならば可能かも知れないが、何れにしろ大がかりな装置が必要になってくるだろう。

今の司波達也では、展開した魔法式を読み取るのが限度だ。その前の段階でのCADの挙動を読み取る事等は出来ようがなかった。

 

 

そして、作戦は、コート上に20秒ごとに球数が増える前に、ボール、一つ一つを確実に相手のコートに落とすことによって、コート上に複数の球が存在しない様にすることだった。

せめて、コート上にボールが二つ以下であれば、体一つでボールを追いかけ、直接ラケットを振り、ボールを打ち返すエリカでも対処可能だからだ。

 

 

こうして試合が進み。

第一セットはエリカの圧勝だった。

 

 

『エリカ、よくやった』

「ふふん。どうよ桂馬」

『次もその調子だ』

「任せなさい」

桂馬とエリカは二人は通信越しに会話をする。

 

 

 

その間、司波達也はタオルで汗をぬぐってる深雪の元に駆け付け、アドバイスをしていた。

達也にはエリカがラケットのガットに魔法を掛け、変化球をうみだしていた事を見抜いていた。

達也は展開された魔法式を瞬時に読み取る特技があるからだ。

しかし、達也はエリカが、深雪が球をはじき返す場所を予想し先回りするカラクリにはまだ気が付いていなかった。

 

 

「桂馬、達也くんが深雪に何かアドバイスを送ってるわ。こっちの魔法がばれたんじゃない」

『その可能性が高いな』

「何?桂馬、達也くんを警戒してるの?」

『頭がいい奴だと聞いてるし、魔法式を読み取る技術があると噂で聞いた事がある』

「そうね。次はしめてかからないと」

 

 

そして、第二セットが始まる。

 

 

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