魔法科高校ヒロインを救うのはお兄様でも魔法でも無くギャルゲーマーだった件 作:ローファイト
第二セットが始まる。
先制点はまたしてもエリカが取得したのだが、深雪がエリカの変化球に対し徐々に対応しだしたのだ。
達也のアドバイスにより、深雪はボールの軌道が大きく変化する前ネット際ギリギリに狙いを定め魔法を発動し、ボールを弾き返したのだ。
これは、魔法展開スピードが速い深雪だからこそ出来る方法だ。
このゲームルールにはボールが自陣に入ってからしか魔法が展開出来ない。だからボールが自陣のコートに入る前に魔法は使えないのだ。
このルールを逆手に取った作戦が変化球だったのだが……それすらも司波深雪は優れた魔法の力で克服してしまうのだ。
「さすがは深雪ね」
『エリカ、ボールが増えても、追うボールは2球までだ。それ以外は捨てろ』
「わかったわ」
(くそ、魔法を二連続だと、これでボールの変化に二つの魔法を併用することにより対応出来たのか、なんて対応力に魔法力だ。これは、フラッシュキャスト?いや違う、ただ単に演算能力が非常に高いんだ。司波深雪!チートもいいところだ。だが負けん)
(あのCAD設定は化物か、まるで司波深雪の手足の様に自由自在に動かせる。司波達也め!)
桂馬は深雪のCADの挙動を監視し、情報を収集分析しながら、舌を巻いていた。
そして、第2セットは接戦にもつれ込み。司波深雪が制した。
「ごめん桂馬」
『いや、僕の予想も甘かった。司波深雪がこれほどの魔法師だとは計算外だ。CADの設定をした司波達也もな』
「そりゃそうよ。私が知ってる同世代の中で、深雪と達也くんは最強よ。その2人を相手にしてるのよ……でも負けない。私にも桂馬が居る」
『!?……何を言ってる試合に集中しろ』
桂馬はそのエリカの通信の言葉に思わず顔が赤くなる。
「次で決着をつける……桂馬ありがと」
エリカは通信で最後に小声でそう言いながら、コートに入って行く。
最終セットが始まる。
コート上では一進一退の攻防が繰り広げられていた。
桂馬は観覧席から、深雪のCADの挙動解析に注視し、エリカに音声ではなく音信号で、次にボールが来る位置を知らせていた。桂馬とエリカはこの連携を3日前から訓練を重ね、漸く物になったばかりだった。
「桂木桂馬、お前はここで何をやってる」
桂馬はこのタイミングで不意に声を掛けられる。
司波達也だ。
「僕はゲームを楽しんでる。邪魔しないでくれ」
「……エリカと特訓していたと聞いていたが……あの変化球はお前の差し金か?」
「………」
桂馬は達也の質問に沈黙を守る。
「まさか、あんな単純な魔法術式でこんな効果的な事をやってくるとは、見事としか言いようがない。……CAD調整や魔法開発に興味があるのか?」
達也は桂馬の横に立ち、こんな事を聞いてきた。
「いいや」
「そうか残念だな。お前と一度、その方面で話をしてみたいと思ったのだが……一つ聞いていいか、今お前がやっている事と、エリカが深雪の動きを先回りをしている事は関係があるのか?」
達也は桂馬を疑っていたが、それがどんな仕組みなのかが分からなかったのだ。
深雪のCADに何か仕込まれた可能性があると疑い、第一セットと第二セットの合間に深雪のCADを確認したが、何も問題が無かったのだ。そして、今もこの挙動不審な桂馬だ。
「僕はゲームをやってると言った。このゲームを」
「……食えない奴だ。後でどういうカラクリか教えてくれないか?」
達也は桂馬の隣に座る。
「さあ、何のことだか」
「まあいい、何時か聞き出してやる」
そして、目の前では試合が終了する。
僅差で深雪が最終セットを制し、深雪が勝ったのだった。
「エリカ、強かったわ。何度も負けるかもと思ったわ」
「次は勝つわ。深雪」
コート上では二人がかたい握手を交わしていた。
観覧席からは熱戦を繰り広げた二人に惜しみない拍手を送っていた。
桂馬はヘッドマウントディスプレイを外し、エリカと深雪の様子を一瞥してから隣の達也に問う。
「おい司波、妹を労いに行かなくていいのか?」
「お前こそ、エリカを慰めなくていいのか?」
「それは本来僕の役目じゃない」
「そうか」
達也はそう言って立ち上がり、どこかに歩いて行く。
その後、この学校の制服を着たエルシィが桂馬の下に現れる。
「神様~、エリカさん負けちゃいました。もうダメです~。私達の首が飛びます~」
「そうでもない。お前は駆け魂が出た時の用意をしてくれ」
桂馬は何時になく真剣な眼差しでエルシィに言う。
「え?」
「行ってくる」
桂馬は静かに席を立ちあがる。
屋内競技場の傍にある林の大きな木の下に、練習試合を終えたばかりのエリカが立って居た。
「あーあ、負けちゃった」
「ああ、負けたな」
「でも、あの深雪を追い詰めたのよ!凄くない?」
嬉しそうなエリカ。
「そうだな」
「……でも負けちゃったか。行けると思ったんだけどな」
「すまん!あんな啖呵を切っておいて、お前を勝たせることが出来なかった」
桂馬はエリカに対し深く頭を下げる。
「桂馬……いいっていいって、ここまで出来たんだから」
「……いいって、お前泣いてるだろ」
桂馬はがそう指摘するのも尤もだった。
エリカは笑顔だが、その目には涙が溜まっていたのだ。
「泣いてなんかないわよ!でも悔しい、やっぱり負けると悔しい」
「僕も負けると悔しい……だから、次に頑張れる。次こそ絶対負けないと」
しばらく沈黙の後、エリカは桂馬に近づき、潤んだ目で桂馬を見つめる。
「その……桂馬、次も一緒に戦ってくれるよね?桂馬とならどこまでも強くなれる気がする」
「次……か」
桂馬は何か迷ったような顔をしていた。
「そう、次もよろしく桂馬。これは今回のお礼よ」
エリカは背伸びをして、桂馬の唇にキスをする。
すると、エリカの全身から蒸気のような物が一気に噴き出し、雲のような塊となる。
駆け魂だ。
エルシィが何時もの着物のような恰好で現れ、人が一人入れそうな大きなビンを抱え、その駆け魂を吸い込む。
そして、全部吸い込んだ後、ビンに蓋をした。
「駆け魂勾留!」
エルシィは満面の笑顔だった。
エリカは気を失いその場で脱力する。
桂馬はエリカを支え、大きな木の根元に横たわらせ、その場をエルシィと共に去って行った。
翌日……
1-Eの教室に元気よく入ってくるエリカ。
「昨日の試合すごかった」
「惜しかったね」
「あの一科生の司波さんといい勝負だったよ」
クラスメイト達は口々に昨日のクラウド・ボールの練習試合についてエリカをもてはやしていた。
エリカは嬉しそうに対応する。
いつもの様に、自分の席でゲームをする桂馬に、エリカは声を掛けた。
「桂馬、おはよう!」
「ああ」
「……あれ?私って、いつからあんたを名前でよんでたっけ?まあいいや」
そう言って、友人達の輪に戻るエリカ。
エリカは駆け魂が抜かれたと同時に、攻略中の桂馬との記憶はすべて消え、都合の良い記憶とすり替えられたのだ。
それはエリカだけじゃない。それにかかわった人間も同じくだ。
エリカの友人達も、桂馬と関わった日々を忘れ去るのだった。
桂馬は元気そうなエリカを一瞥してから、ゲームを再開する。
その心には、どこか寂しさが残っていたのだが……今の桂馬にはそれが何なのかが分からなかった。
その後……
「エルシィ!駆け魂、出してやったぞ。この首輪何時外してくれるんだ!?」
「え?この街に居る駆け魂を全部駆らないと、契約終了しませんよ?」
「そう言う事は最初に言えーーーーー!!」
「すみませんすみません」
「で、駆け魂ってどのくらいいるんだよ!」
「えーっと……分かりません!」
「このダメ悪魔!!上司に聞いて来い!!」
桂馬の受難はまだまだ続くようであった。
エリカチョロイン化……ごめんなさい。
このシリーズは気が向いたら、誰かでやって見たいですね。
だから、今は未定です。
真由美さんとか深雪とかもおもしろそう。
一押しは、響子さん!!いや、遥先生!!