魔法科高校ヒロインを救うのはお兄様でも魔法でも無くギャルゲーマーだった件   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。

あえて今はまだ攻略相手の名前を出してません。


雫編①

「ふはははははっ!遂に来た!ギャルゲーマーのパラダイス!夏休みだ!!最低ノルマ120本はゲーム攻略と行こうではないか!!」

桂木桂馬は夏休みすべてを使って、ゲーム三昧としゃれこもうとしていた。

 

 

翌日、夏休み初日の朝。

 

桂馬はフラフラと自室を出て、飲み物を取りに喫茶店兼自宅のキッチンに向かう。

「……浮かれすぎて徹夜でゲームをやってしまった。その甲斐あって8本攻略コンプリートだ。このペースでいけば、夏休みだけで360本のゲームが攻略できる!」

どうやら桂馬は、昨日の夜から今迄、徹夜でゲームをやっていたようだ。

8本攻略と言う事は、何時もの如く同時に複数のゲーム攻略に勤しんでいたのだろう。

 

「あら、桂馬おはよう。起こしに行こうと思ったところよ」

桂馬の母はキッチンで朝ごはんの用意をしていた。

 

「おはよう。夏休みだしこんなに早く無くても……」

 

「桂馬にーさま、おはようございます」

エルシィは喫茶店の客席を自前の箒で掃き掃除をしていた。

しかも何故か制服を着ていたのだ。夏休みなのにだ。

 

「……エルシィ、なぜ制服を着てる。夏休みを知らんのか?」

 

「知ってますよ~。……私、普通の学校から転入したことになっていて、魔法科高校は独自の授業の単位があるそうで……夏休みに補習に行かないといけないんです」

 

「普通の理由だな」

桂馬はエルシィが学校に行くと聞いて内心喜んでいた。

エルシィに邪魔されずに自宅でゲームが出来るからだ。

 

「にーさま、一緒に来てくれませんか?」

エルシィは桂馬に同行をお願いする。

 

「断る!」

桂馬は当然の如く即答する。

 

「え~~、いいじゃないですか~」

 

「桂馬、どうせ暇でしょ?エルちゃんについて行って上げて」

桂馬の母も二人のその様子に口を出す。

 

「学校に行く理由が無い!」

 

「どうせ家に引きこもってゲームしかしないでしょ?学校で夏休みの宿題でもやればいいじゃない」

 

「ふん。そんなものはとっくに終わらせてる。僕にはゲームが待ってるんだ!夏休み中に360本攻略する使命がある!学校など行く暇はない!!」

桂馬は既に夏休みの宿題を夏休みの前日にすべて終わらせていた。

桂馬の天才的な頭脳をもってすれば、半日とかからない。

すべては夏休みの時間をゲームにつぎ込むために。

 

「エルちゃんこっちに来たばっかりで右も左もわからないでしょ、桂馬はお兄さんなんだから、ついて行って上げなさい」

桂馬の母は尚も桂馬の説得にかかる。

 

「お断りだ!なぜ僕がそんな事をしないといけない!子供じゃないんだ一人で行けばいい」

 

「桂馬!」

「にーさま~」

桂馬の母は注意気味に、エルシィは捨てられた仔猫のような表情で桂馬に訴えかける。

 

「知らん!」

桂馬はノーと言える少年だ。だが……

 

「け・い・まーーー!!」

 

母の怒りに触れた桂馬は、物理的制裁を受けた後、有無も言わさずに家から放り出され、エルシィと共に学校に行く事になる。

 

 

「くそ、あの暴力母親は!……」

桂馬はゲームをしながらブツブツ文句をいい、通学路を歩く。

 

「神にーさまは何だかんだと言って優しいです~」

エルシィはその横に楽しそうに歩く。

 

「無理矢理だ!僕のゲームの時間を返せ!!」

 

「え~~、でも神にーさま。学校は楽しいですよ」

 

「ふん。リアルに興味は無い。僕の現実はゲームの中だ」

桂馬はいつもの決め台詞を口走る。

 

エルシィはそんな桂馬の妄言など気にせずに、楽し気に通学路を歩いて行く。

 

 

エルシィは他の赤点補習を受ける生徒と共に、補習授業を受ける。

桂馬は学内にある個室学習ブースで、ヘッドマウントディスプレイと携帯端末を3台繋げ、桂馬がゲームを複数同時に外出先でも行えるようにプログラミングで自作作成した疑似仮想空間で同時に3つのギャルゲーを攻略していた。

無駄にスペックが高い桂馬だが、その能力はすべてゲームに捧げられている。

 

 

正午頃……

「う~~、にーさま~、授業に全然ついて行けません~~、先生が何を言ってるのかも全然わかりません~っ」

補習を終えたエルシィが、桂馬の元に泣き付いてきた。

魔法科高校の授業、しかも、エルシィが補習を受けなければならない授業は、普通の高校ではまず習わない魔法関連のカリキュラムばかりだ。

地上の一般常識の知識もあやしいエルシィは、地上の魔法の授業など、初めて触れる外国語同然であった

 

「ふん。予想通り過ぎて、面白みが全くない」

桂馬はエルシィが泣き付いてくることが分かっていたようだ。

 

「にーさま~~!教えてください~~」

 

「現代魔法の基礎知識教本が家にある。それでも読んでろ。基礎さえ理解できれば難しいものではない」

桂馬は意外にもエルシィにアドバイスを与えていた。

 

「にーさま!ありがとうございます。(ぐぅ~)……あっ、安心したらお腹が空きました」

エルシィは緊張感というものには無縁なようだ。

 

「もう昼か、リアルは不便だ。栄養を取らなければ死んでしまう。ゲームの中だったら、栄養摂取などボタン一つで一瞬なのに!リアルは何て非効率なんだ!!」

 

「にーさま、食堂に行きましょう。ここの食堂は美味しいって、クラスのみんなが言ってました」

エルシィは桂馬のいつもの妄言をスルーして、桂馬の手を取り、食堂へと引っ張って行く。

 

 

 

 

食堂に着くエルシィと桂馬。

「にーさま、お休みなのに結構みなさん、学校来てますね」

夏休みなのに、食堂はそこそこの人数の生徒が利用していた。

 

「夏休みでも食堂が開いてる……自配機だけの販売だと思ってた」

自配機とは定食などの食事の自動販売機(自動調理器)の事だ。

 

「でも皆さん、いつもの制服じゃないですね」

食堂を利用している生徒の8割は体操服やジャージなどのトレーニングウェアを着ていた。

 

「部活と、九校戦に出場するメンバーの練習もあるのだろう」

夏休み中ではあるが、部活で学校に来て居る生徒以外にも、九校戦に出場するメンバーの練習に来て居るようだ。

九校戦は出場するメンバー以外にも、サポートメンバーが大勢参加する。

各学校の威信が掛かっているため、生徒会や部活連なども積極的にサポートしていた。

また、エンジニアの存在も必須だった。

エンジニアとは魔法を発動させるためのCAD調整を行う魔工師の事だ。

魔法知識や構造、CADの調整技術など、幅広い知識と技術が必要な役割であり、魔工師がいなければ、魔法師は半分の力も出せない。

よって、選手及びサポートメンバーも含め100人以上九校戦に参加するのだ。

 

「ほえ、九校戦?」

 

「お前、千葉エリカ攻略の際に説明しただろ?その本番が8月初旬に有る。学校の行事表をちゃんと読んどけ」

 

「う~、忘れちゃいました。それよりにーさま。どうやってご飯を買うんですか?」

軽いノリのエルシィ。エルシィの頭には昼食の事しか無い様だ。

因みに、学内で購入する物はすべて、生徒に配られる生徒手帳代わりの情報端末の電子マネーで購入するシステムだ。

 

 

「ごはん、ごはん!にーさま、あそこの席が空いてます~」

エルシィは生姜焼き定食を手に鼻歌を歌っていた。

 

「………」

 

席を確保し、昼食を進めるエルシィと桂馬。

「にーさま、ごはんの時ぐらいゲームやめませんか?お母様も言ってましたよ」

 

「………」

桂馬は無言でゲームをしながらご飯を食べる。

 

「にーさま、このお肉料理美味しいですね。こんど私が作ってみますね」

 

「………」

 

「にーさま、ここの学校は広くて、綺麗ですね。毎日誰かが掃除してるんでしょうか?」

 

「………」

 

「にーさま、一緒に補習を受けた子とさっきお友達になりました~」

 

「………」

 

「にーさま、黙ってばかりです~。聞いてくださいよ」

 

「………エルシィ、お前は何のためにここに居るんだ?」

漸く桂馬は口を開く。

 

「学校に通うためです~」

 

「違うだろ!!」

 

「え~~?」

 

「駆け魂だ!!駆け魂!!お前は駆け魂を捕まえるために僕を巻き込んだんだろ!!何学校に馴染んでる!!」

 

「わ、わかってます~。駆け魂を捕まえるために、何時もにーさまと一緒に居られるためにですよ」

 

「本当か?」

桂馬にはエルシィが学校生活を楽しんでいるようにしか見えなかった。

 

「そそ、そうです!これでも駆け魂隊の隊員です~」

言葉に詰まるエルシィ。

実際エルシィは駆け魂の事を忘れ、学園ライフを楽しんでいたのだが……

 

ドロドロドロドロドロ~

そんな時、エルシィの頭の髑髏型髪飾りの駆け魂センサーが微妙に可愛らしい警報音を立て始める。

 

「来ました駆け魂です。にーさま!」

エルシィはキョロキョロと周りを見渡し、センサーが示した人物を探す。

桂馬も突然の警報音にゲームをする手を止める。

周りに生徒が沢山いるため、エルシィはセンサーを手で抑え、警報音の音を小さくする。

 

 

 

「奥のあそこのテーブルに座ってる右側の子です」

エルシィはそうやって、センサーが示した先を指さす。

 

そこには……

体操服姿の眠そうな目をした小柄な女子が、ゆっくりとごはんを口にしていた。

 

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