メルロマルクは変わった――――――
貴族や王族のためではない。金や快楽のためでもない。
英雄に忠誠を誓った騎士団と、隣人を守る冒険者が、果てしない鍛錬を繰り返す。
体力(精神)を消費する鍛錬は、合理的かつ規則正しい軍隊へと変貌させた。
メルロマルクは変わった――――――
汚職を繰り返す貴族たちは、総統閣下とゲシュタポ長官が自らの過ちを理解させるための”授業”を受けさせた。
体表の奴隷刻印が彼らの正しい心を助長し、管理する。
貴族の制御、軍隊の制御、情報の制御。
上層部の汚職は一掃されクリーンに統制された。
メルロマルクは変わった――――――
時代は腐敗から優しい世界へと移行し、クリストファー・ヴァルゼライドによる粛清は回避された。
そして情報の制御は、甘粕のコントロールも可能にした。※期待薄
メルロマルクは変わった――――――
貴族が制御管理された時、王族は普遍のものとなった。
メルロマルクは変わった――――――
ひとつの時代が終わり、私たちの戦争は終わった。
だが私にはまだ、やらなければならない事が残っている。
最後に課せられた使命は、私の遺伝子、甘粕様とLAN直結する事。
それが、私に残された最後のミッション。
世の中には語り伝えきれないものがある。
伝えなきゃいけないことがある。
紡いでは繋げる命がある。
メルロマルク第一王女。王位継承権第一位。マルティ=S=メルロマルク。
四聖勇者が召喚され一つ目の波まであと数日。
彼らは自重しながら好き勝手に行動していた。
そんな四聖勇者のこれまでの日常に注目してみよう。
~剣の勇者=クリストファー・ヴァルゼライド~『犠牲者物語』
光が決して照らすことのない闇の牢獄。
手首に繋がれた手錠が石天井から吊り下がり、座ることさえ許されない。
静謐の空間。たまに聞こえるのは、虚しく擦れる鎖の音。
エクレール=セーアエットは無力だ。
セーアエット領領主であった父親が波によって亡くなった後、ルロロナ村で生き残りの亜人を襲った正規兵の奴隷狩りを制止しようとして捕らえられ王城の牢獄に入れられた――――――咎人として。
刻一刻と衰弱していく肉体。
水も食料も与えられない一人の時間。
絶望。怒り。落胆。空腹。
暗闇の中、無駄な自問自答を繰り返す彼女。
”これでよかったのか”
”誰か助けは”
”王は何故”
”民はどうなった”
”体が重い”
己の精神が己を追い詰める。
この問答に答えなどない。あるのはただの無限にはまる落とし穴。
意味もなく同じ問答を繰り返す。
それしか出来ないから。それしか考えられないから。
でも、それでも――――――
「……わたしは、あきらめない」
乾いた喉と唇。声を発する痛みに耐えながらも誓いの言葉を”宣誓”する。
挫けぬ為に、折れない為に、自分を見失わない為に。
――――――その諦めない意志が奇跡を呼び寄せた。
軍靴の音が鳴り響く。僅かに灯る篝火。
石作りの牢獄が、どもまでも音を浸透させる。
「……ぁ、」
視界に映る柵の向こう側で止まった男。
暗闇に慣れた目を気遣ったのか篝火を柵から離れた位置まで灯す。
――――――"この感情をどう表現すればいいのか分からない"
カチリと鍵を開けた男は、光を灯さずに入ってくる。
「……よく耐えたエクレール=セーアエット。君は自由だ」
手錠を外され、暖かな毛布が包み込む。
解放された安堵からか、疑問が浮上する。私を支えるこの男は何者なのだろうか?
「困惑しているだろう。大丈夫。私は剣の勇者。貴女の無実は証明されている。そして、こうなった原因を槍の勇者が対処している。貴女には見届ける権利がある。無理にとは言わない。辛いのならこのまま眠るがいい。だが、後悔しない道を選ぶのは貴女自身だ」
気付けばその手を握っていた。了承と受け取った剣の勇者は、優しく抱きかかえ立ち上がる。
負担を極力与えない歩き方。暖かく雄々しい腕。そして、篝火に照らされた双眸。
闇に慣れた目が篝火の光さえ拒絶する。
だがその眼は、光に焼かれようと瞬き一つすることなく黄金の炎を目に焼き続けた。
のちに彼女は、剣の勇者の右腕としてその腕を高めていく。
~槍の勇者=ラインハルト・ハイドリヒ~『爪牙誕生物語』
この男は――――――マジで容赦なかった。
剣の勇者も容赦ないが、アレはどちらかと云えば軍人気質。策略、政策はその道のプロより劣ってしまう。
なにより多数対多数の戦場で、
槍の勇者は約束通り、
確かにラインハルトは誰の邪魔もしていない。
彼は怒声が飛び交う環境で、耳元に囁くように語っているだけなのだ。
周りが五月蠅くて誰も聞こえない。槍の勇者が何故この様な場所に?と訝しむ者もいるがそれだけ。
そんないつもと同じ状況で、オルトクレイ=メルロマルク32世は酷く憔悴していた。
「えー勇者様方の要望により奴隷制度の見直しを検討する」
まあ当然甘い蜜を吸ってきた貴族と、今まで問題なく運営してきた制度を変えることに対する反対意見が出るわ出るわ。
「王よ。女王不在時に如何なものかと。せめて女王が居られる時に」
――――――ワシもそれがいい。うん。………………そうしたいなぁーはぁ~。
「そもそも王は甘いのです!とくに何故盾のあくッ……盾の勇者を一番甘やかしているのです!」
――――――ワシがにっくき盾の勇者にだだ甘だと?それこそ有り得ない。だってマシュは天使なんだから(お目目ぐるぐる
「勇者様も勇者様です。この国のことなど知りもせずこの様な提案を……ちょっとカッコよくて、完璧だからってッ///////」
なに糞ジジイが頬赤らめ気色悪いこと言っておるのじゃ。
そんなこんなで、議論はまたもや国王の一言により槍の勇者の案が可決された。
当然反発する者が大勢いる。
「お考え下さい王よ!そうポンポン変えられたら大変なことに!?」
「可決可決って、その仕事するの我々なんですからね!?」
「一つでも調整しながら各所に書類と話をつけなきゃならないのに……」
「王は人の心が分からない」
「王よ!」
『王よ!』
――――――うるさいうるさいうるさーい!!じゃあてめぇーらこのポジション変われよ!?
この場には国王、貴族、勇者、しかいない。ならば、アドバイザー呟き人件ラインハルトくんは一体何処にいるのか?
「……国王。次の議題に」
「う、うむ……」
王様は耳元で囁かれた声に胃がさらに痛くなる。
そう、ラインハルトはオルトクレイ=メルロマルク32世の右斜め後ろの直ぐ傍に自己主張しないよう控えている。
ただ彼は呟くのだ。国王だけに聞こえるように、静かに、適確に、脳を震わせる美声(諏訪部順一)をお届けする。
なにより常に抜刀状態の黄金の槍が近くにいる者の魂を震え上がらせる。※これが原因
何が口も手も出さないだ!
そしてラインハルトにとって有意義な時間が過ぎていった。
「——————本日はここまでとする!まずは奴隷制度から取り掛かれィ!これは勇者様の願いでもある!」
『ハッ!!』
「ならば私も手を貸そう。これで、奴隷狩りはなくなる。その被害者も救われるだろう。卿ら私の手足として励むがいい」
『ハッ!ありがたき幸せ!槍の勇者様!』
——————!!?しまった。ラインハルト殿はあくまで私に対する
王様は今日も胃を押さえる。ミレリア……早く戻ってきて!!
のちにこの数々の改革は、『英知の賢王』が復活したと喜ぶ女性の声が響き渡った。
地獄を体験した。
第一波でお母さんお父さんが死んだ。生き延びた私たちは復興を誓った。
死んだ人たちのために、家族のために。
地獄を体験した。
村の生き残りが騎士に殺され幼い私たちは奴隷として売られた。
地獄を体験した。
大きな屋敷の地下にある牢屋で、毎日鎖で宙吊りにされて鞭に打たれた。
地獄を体験した。
一緒に買われた友人のリファナちゃんは風邪を引いても毎日毎日鞭で打たれる。
そして――――――
――――――そして。
気を失っていた。
地下まで響き渡る破壊音。振動までも伝わってくる。地上が五月蠅い。いったい何が――――――
カツカツといつもの男と違う足音が聞こえてくる。
「あ……」
綺麗な人。痛みさえ忘れて私はその人を見つめていた。薄汚れた牢屋で幻想的で非現実的な出来事に、口が勝手に紡ぎ出していた。
「勇者……様ですか?」
叫びと渇きで枯れ果てた喉を懸命に動かす。
「わたしは……どうなっても構いません。だからッリファナちゃんを助けてくださいッ」
友達を……家族を助けたい。
「お……願いします。リファナちゃんを、リファナちゃんをどうかッ」
「いいだろう。もとよりそのつもりだ。だが、この状況で自分よりも他人を優先する破滅性。優しさともとれる行動。それは強さだ。……卿は、この世界で初めて出会う強き者だ。よいな、決してその感情を忘れるな。懐いた渇望の欠片を手放すな。それこそが卿の強さなのだ」
怪しく光る黄金の瞳がラフタリアを映し出す。
「私の手を取れ。その魂を成長させろ。卿が望むならば、もう二度とその手から零れる事はない。されど修羅の道。強制はしない。リファナ嬢とこれからも平和に生きていく事もできる。私は後者をオススメするが?」
差し出された大きな武人の手。
か弱く幼い肉体は繰り返された拷問と絶食でもう枯れ果てている。
肉体を動かすだけの燃料は失われている。
病魔にも侵された肉体に手を伸ばすだけの体力など――――――
「——————クッ」
血が足りない。肉が足りない。体力も失い。病魔が追い討ちする。
視界が霞む。
——————せ
頭が痛い。吐き気もする。
——————ばせ
体が痛い。力を込めた箇所が千切れそう。
——————のばせ
それでも。余命間近の限界を超えた肉体がエネルギーを燃やす。
——————のばせ!!
――――――パン―—――――乾いた音が木霊する。
ラフタリアは生物としての限界を超え、その強固な精神と魂の力から僅かに絞り出した雫をエネルギーに、手を届かせた。
「——————これにて契約は交わされた。今は安心して眠るがいい」
耳元で囁かれた諏訪部順一ボイス。その美声と吐息にラフタリアの肉体がビクンと快楽に喜ぶ。
そして、彼の物として初めて与えられた命令に魂が歓喜し、静かに眠りについた。
~弓の勇者=甘粕正彦~『魔王の犠牲者物語』
~盾の勇者=マシュ・キリエライト~『平和な物語』
「ワーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッッッ!!!!!!!!!!」
「弓の勇者様!此方ノルマ完了しやした!」
「おぉおおおお!!そうかァ!!ならば更なる開拓よオ!!この地は荒れ果てている。俺の力で良さげな土と改良したおかげでどうにかなるはずだ!!まずは耕すのだあああああああああ!!貴様ら俺に続けエエエエエエエエエエエエエ!!」
『オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
ムチムチ筋肉のマッチョ面たちが、熱く照らされた太陽の中上半身裸で汗を流していた。
汗は全身を濡らし、筋肉にデコレーションされた汗が太陽光によりテカテカと光り輝いている。
男たちは健やかに肉体労働に勤しんでいた。
これで国は豊かになる。誰も困ることがない。
男たちが汗を流すには十分すぎる理由だ。
さて、彼らが何をしているのか?
耕している時点でお察しかもだが、畑を耕している。それも広大に荒れ果てた大地を耕している。
甘粕は人のいない魔獣が住む上質な土と、この地の粗悪な土を改良。
全力で野菜造りをしていた。
「トマァトオオオ!!トウモロコシィイイイイイ!!イモイモイモイモイモオオオオオオオオオオオタルゥ!!」
弓の力で改良された種を蒔いていく。
勇者の武器を十全に使いこなしているのは、何気に甘粕だったりする。
え?空にあるのにどうやって素材を吸収させているかだって?
甘粕の神の杖なんだから甘粕が食べれば解決だろ(暴論
「アマカスさまぁ~此方準備完了でーす」
「おおマイン!!流石だな!!貴様らァ!!飯の時間だ!!飯の前の感謝の合唱を忘れるな!!」
『ありがとうございますマインの姉御!!いただきます!!』
「はいいただきます。しっかりと噛んで食べてくださいね」
一人一人に水の入ったコップを手渡していくマイン・スフィア。この地区担当は甘粕含め五十人。
他のところも弓の勇者に付き従う仲間たちが飯を炊いて元気づけている。
勿論、この地区担当マインが飯からキンキンに冷えた水まで用意した。
「飯を食いながらで構わん聞いてくれ。俺たちは明日の朝旅立つ。お前たちに教えられることは教えた。これで、この国の食糧問題は解決する。レジスタンスも解散だ!!」
「そ、そんな!?俺達にはまだ弓の勇者様が必要です!」
「あんたがこの国を引っ張ってくれよ!?」
「勇者様!!」
「喝ッ!!………………この国は弱い。小国として脆弱で、必要な軍備を整えるだけで民はここまで飢えてしまう。誰も悪くはない。この国の王に話を通し、国と民が強力してここまで作物が育つことができたのだ。ゆめこの事実を忘れるな。波がまであと二日……波の予測は困難を極める。やれることはやらねばな」
こうして弓の勇者御一行は、翌朝別れの激励をし勇者の力でメルロマルクに転移した。
小国の王から少なくない謝礼金を頂いた甘粕。
甘粕とマインで二人きりの街探索。他のメンバーは装備やら消耗品の買い物で別行動中。
甘粕は新しい発見はないかと眼光を走らせる。傍から見たらただの危ない人もマインにとっては「あぁ……アマカス様今日も素敵」ポイント。
「!!アマカスさんお久しぶりです。マインさんもお久しぶりです。城下町にいるのは珍しいですね」
「マシュではないか。久しぶりだな。なに、同じ"ぱーてぃーめんばー"の買い物帰りだ。終わり次第また旅立つ」
「それでしたら最近入手した情報にサーカステントのような場所でガチャが出来るというのをゲットしたのですが一緒に行きませんか?」
「"がちゃ"だと?ほお……面白そうだ。同行しよう」
「はい!それでは、マシュ・キリエライト行きます!」
――――――てくてくてけてけ――――――
「まさか奴隷商にガチャシステムがあるとは、驚きです」
「俺も"そしゃげ"で何度か十連"がちゃ"を回したことはある。リアルに考えればあれは金を払い。ランダムに排出された奴隷を従わせていたのなら納得だ。要らない仲間を売れば金になるのはまた奴隷商に売り飛ばしていたのだな」
「アマカスさん……夢がないです」
奴隷商に案内されお目当てのガチャを見つける。
「こちらが銀貨100枚で一回挑戦、魔物の卵くじです。ハイ」
「100枚か……相場の半額か。だが子育てを考えるとどうだ?」
「ですが、卵から育てた方が懐き易いはずですし……育成をやったことがないので少し楽しみです」
「ハハハ!!それもそうか。店主よ、一回挑戦だ。十連もいいが、単発勝負も醍醐味だ」
甘粕とマシュは好きな卵を一つ掴み取る。
「ああ店主よ、魔物使役は必要ない。男手一つで飼い慣らしてこその日本男児」
「それなら私もいいです。自分の手で大事に育てていきたいので」
「これはこれは変わったお客様ですね。ハイ」
奴隷商は孵化器らしき道具を開く。甘粕とマシュは卵を孵化器に入れた。
「孵る数字が刻み始めました」
「ますます育成"げーむ"ぽいじゃないか。ではな店主。商売繫盛するのだぞ」
「槍の勇者様の御蔭でそれは色々ありましたので、これからも健全にクリーンに商売していきます。ハイ」
「あ、そういえばラインハルトさんが手を加えたのでしたね。気を付けてくださいね」
「ありがとうございます。盾の勇者様」
そうして、卵を一つづつ抱えた盾の勇者、弓の勇者は二日後の波に備え別れたのであった。
~今回の犠牲者~
剣の勇者により、エクレール・セーアエット 光の亡者。
槍の勇者により、ラフタリア 爪牙。
弓の勇者により、マイン・スフィア なんだこれ?
盾の勇者により、本日も平和。
自分が書いている本編より、息抜きの盾の勇者の方が人気で嫉妬(ニッコリ
大丈夫、よくあるよくある。
それと感想を読みますとfgoは知っていても他の作品を知らない方が多くてビックリ。light作品って日本を代表するじゃんるですよね?(゚∀。)y─┛~~
後みんな保護者好きすぎ!!
原作読めば読むほど設定細かいよ!!(嘆き
卵に関するご案内※ある御方の感想を読み閃きました。IFか本編から改めて決めます
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原作通りフィロリアル
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空亡とプライミッツマーダー
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作者の思うがままにふざけた存在が孵る
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まだ常識のある生物のカテゴリー