少年はツッコミに飢えていた…。

転生前も転生後も関西人な主人公が原作に関わらないようにしながらも、ツッコミどころの多すぎる原作に全力でツッコむお話し。

なお、序盤でやらかして周囲から勘違いされる模様。

※最初の方はあんまりツッコみません。

REBORNに関西弁キャラって居ないよねっていう友人との会話で思いついた話し。

関西弁は自らも使用する播州弁を採用しています。
続けられるように頑張るけどエタッたらごめんなさい。

R15とアンチヘイトタグは保険です。
誤字脱字は教えて下さればありがたいです。

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これは、一人の関西人が並盛町で生き残るために奮闘していく様を記録したものである。


すべての始まりと、風紀委員

綺麗な青い空を見上げながら、少年は慟哭する。

 

「REBORNとか聞いてないねん!!ボケ!!!!」

 

 

事の発端は、少年の父親の栄転だった。関西の片田舎の小さな支社から東京の本社への移動。前代未聞の大抜擢に周囲の人間は大層喜び、少年とてそれは例外でなかった。引越し先の街の名前を聞くまでは。

 

唐突ではあるが、ここで少年の秘密を話しておこうと思う。彼には友人はおろか両親にも言っていない、否、言えない秘密があった。それは自分が前世と呼ばれる記憶を所有しているということだ。

 

前世の少年、仮にAとでも呼ぼう。Aは概ね平凡な青年だった。しかし不幸にも25歳という現代日本の平均寿命としては若すぎる死を迎えた。死因は本人には知覚出来なかったために不明ではあるが、彼は確実に死んだ。だというのに神の加護か、はたまた悪戯なのかは判断しかねるが、前世の記憶を消されぬまま転生したのだ。

 

彼がその記憶を取り戻したのは、4歳の頃だ。やんちゃ盛りの幼稚園児だった彼は、飛行機型のジャングルジムから転落し、頭を強打した。後に一部始終を目撃した彼の両親はその事件を、「あれは感心するレベルで気持ちいい落ちっぷりだった」と語る。それはさておき、頭を強打した彼は1週間ほど微熱に魘され見事前世の記憶の一切を思い出した。

 

記憶を取り戻した少年は、幼いうちから「俺TUEEE!!!するぞ」と、前世の記憶を活かして創作小説でありがちな修行(笑)を行うも現実はそんなに甘くない。所詮素人が考えることで、せいぜい普通の子より体力がちょっと多めで元気な男の子止まり。運動神経も良い方ではあるものの、少年の夢想したレベルに到底及ばなかった。

 

小学校5年生の時に隣のクラスの吉田君にマラソン大会で負けてようやくその事を悟った少年は、将来迫りくる大学入試という大きな壁に立ち向かうべく素直に勉強し始めたのだった。(知識チートに走ったとも言う。)

 

そうして約2年が経ち、中学1年生の春休みに栄転の知らせが届き、冒頭の魂からの叫びに繋がる。

 

引越し先が並盛町だと知った少年は逃げ足を鍛え始めた。なんせあの街には風紀委員なるリーゼント集団が常駐し、将来的に凶悪なマフィアやら殺し屋が滞在するようになるのだ。何なら10年後には主人公同じクラスだったという理由だけで主人公と敵対するマフィア(名前は忘れたらしい)に殺される。少年の脳内には主要人物に関わる=死亡フラグという等式が出来上がってしまった。もともと修行(笑)をしていたお陰で体力だけは多めなので速さだけを追い求め、風になろうとする少年。突如としてガリ勉からフルマラソンでも始めるレベルで走り回るようになった少年を見た友人たちは、その鬼気迫る走りにちょっと引きながら「コイツ勉強し過ぎて頭おかしなった??」みたいな顔で様子を伺っていた。最終的に少年のアダ名は「ガリ勉陸上バカ」という不名誉なものになったが生き残ることに必死な彼が知ることはついになかった。

 

4月、多くの中学生にとっては期待に胸を膨らませるなか、少年は一人、死を覚悟する戦士のような目でジィーっと自分の転校先を眺めていた。まるで魔王の城に赴く勇者のようである。

 

ちなみにここに着くまでに学ラン姿のリーゼントとか重力を感じさせないような頭をした少年を見かけたようだが気にしないことにしたらしい。関わりたくないとも言う。

 

職員室めがけて一直線に進みながら、「どうか主人公たちと違うクラスですように」と今まで大して信仰していなかった、何なら、「こんな世界に転生させやがってダボ」と悪態をついていた神にすらも必死に祈る少年。職員室に行くと先生に所属するクラスの教室まで案内される。ゴクリと唾を飲み込みながら先生の合図とともに緊張した面持ちで教室に一歩足を踏み入れた。

 

教室に入った瞬間目に飛び込んできたのはハニーブラウンの無重力ヘアー。そしてベビーフェイスな主人公。

 

嗚呼、やはり神は死んだ。もしくはこの世の神は全部悪趣味な邪神やろ絶対。 とりあえず6年後ぐらいにアルゼンチンに高飛びしよ。

 

そんなことを思いながら少年は悟りきった修行僧のような顔で気絶し、保健室に担ぎ込まれた。修行(笑)の成果は残念ながら精神力には微塵も発揮されなかったらしい。ちなみに、この一件のせいで少年のことを病弱かつ繊細な人間だと教師陣含め、多数の人間から勘違いされる事を彼はまだ知らない。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「知らない天井だ」

 

一方、目をさました少年は周囲の心配をよそにネタに走った。残念ながら、ネタがわかる人間は画面の向こう側にいる読者だけだが。

 

 手を開いたり握ったりしながら医務室らしき場所を見回す。ちょっと離れた場所に派手なシャツを着た校医らしき人物が見える。

 

「おっ、ようやく目が覚めたか」

 

 胡散臭い雰囲気の少し草臥れたオッサン校医は、「転校初日に災難だったな。だが俺は野郎を診察しない主義なんだ」と苦虫を噛みつぶしたような表情で、必要最低限の確認を手早くしてから、目覚めたばかりの少年をヒョイッと摘み出した。

 

 起きたばかりの少年がその所業に抵抗できる訳もない。アッサリと摘み出された彼は「何やねん、あのオッサン‥」と言いながらも、とりあえず教室に戻ることにした。が、教室の場所が分からない。何なら現在地ですら不明だ。何せ自己紹介すらしない間にぶっ倒れたのだ。当たり前ではあるが、彼は校内の構造を一切把握していなかったのである。

 

 人っ子一人居ない静まり返った廊下。

 

「どうすんねん、これ」

 

 途方に暮れた少年の呟きがやけに廊下に響いた。

 

 少年はとりあえず校内を歩き回ることにした。歩き回っていればいつか教室に着くだろうという適当かつ安易な考えである。

 廊下まで漏れ聞こえる授業の声に、妙な背徳感を感じながら2階への階段を登っている最中、

 

「おい、そこの生徒何をしている」

 

 ちょっと老け顔な黒いフランスパン、もとい風紀委員に遭遇した。

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

「なるほど、そういう事なら教室まで案内しよう」

 

 事情を聞いた風紀委員もとい草壁 哲矢は少年を教室まで連れて行く。

 

「それにしても転校初日から倒れるとは大変だったな、体はもう大丈夫か?」

 

 優しく聞いてくれる草壁に、少年は心底感動しつつ(これは恐らく校医に問答無用で摘み出された直後だからだろう)

 

「もうべっちょないです、めっちゃ元気なんで!」

 

 草壁は少年の方言混じりの返事に混乱していたものの元気だと分かると、爽やかに「そうか、よかったな」と 言って笑った。

 教室の前まで少年を送り届けると、彼は「もう迷うなよ」と、少年に言い残し颯爽と去っていった。

 

「え、めっさカッコイイやん」

 

 少年は、最後まで草壁が自身の恐れる主要人物(キャラクター)だと気が付かなかった。つくづく残念な人間である。

 

 さて、教室に着いた彼は後ろの扉からそろりと中に入る。わざわざ後ろから入ったのは、転校初日に倒れたのでこれ以上悪目立ちしないためだ。にも関わらず、目ざとい教師は彼を見つけて席へ案内する。

 

「貴方の席は黒川さんの隣ね。黒川さん、ちょっと手を挙げてくれる?」

 

 教師の声に答え、一人の女子生徒が手を挙げる。クールで、その年頃の女の子にしては大人びていそうだと少年は思ったのは一瞬。コイツも主要人物(死亡フラグ)やん。少年はチベスナ顔と呼ばれるアンニュイな顔つきになりそうなのを必死に堪えた。(初対面の人間にそんな顔をされても不愉快だろうという少年の涙ぐましい気遣いの結果である)

 

 黒川は少年に「アンタも災難だったわね」と微笑みながら教科書を見せてくれる。(これは少年が使用していた教科書が並盛中学が使用している教科書と違ったためだ)

 

 倒れてからかなり時間が経っていたようで、もうお昼近い時刻となっていた。少年は自分のメンタルの弱さにヘコんだ。たかだか主人公と同じクラスになっただけで気を失うとは修行が足りない‥‥。少年は4歳から11歳までの7年間の修行(笑)の結果、脳筋気味になっていた。

 

 授業は、前世の記憶というアドバンテージと大学入試に向けた勉強(知識チート(笑))のお陰で無事に終えることができた。

 

「なぁ、転校生ってどこから来たんだ??」

 

 授業終わりの休み時間にワラワラと人が集まってくる。どうやら少年のことが気になるらしい。とりあえず適当に質問に答えていく。地元はどうせ聞いても何処やねんみたいな顔されるわ.とやさぐれた少年により適当に都会っぽい地域が挙げられた。(神戸とか姫路周辺である)これは関西人が東京23区を聞いてもイマイチ違いがわかっていないのと同じ現象だろう。

 

 どうやら先程の授業は4限目の授業だったようで質問してきた男子生徒(澤井くんというらしい)のグループと一緒にお昼を食べることになった。

 

 彼らの話しに適当に相槌をうちながら母親の愛情いっぱい手作り弁当を頬張る。今日も甘い卵焼きでうまい……。と頬を緩ませる少年の耳にとんでもない話が耳に入った。

 

「そういえば、この土日に風紀委員が誰かに襲われたって話知ってるか?」

 

「ああ、確か襲われた人間は何故か、『歯を大量に抜かれてるらしい』ぜ」

 

「それさー、隣町のヤンキーがうちの町をナワバリにするために並盛の強いやつを闇討ちしてるらしいぜ」

 

「うわ、まじかよ〜。まぁでも俺らの中学にはヒバリさんがいるからカンケーないよな!!」

 

「だよな!!ヒバリさんマジつえーし。」

 

黒曜編がはじまっとるとか聞いてないねんけどぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!! 

 

 少年は心の中のアルプス山脈に大声でそう叫ぶのだった。

 

 

 




《今回の播州弁解説》

ダボ:アホ、バカ。またはその両方を合わせた意味。服のサイズがデカイ時の擬音とは少し違う

べっちょない:大丈夫という意味。体調から落とした食べ物についてまで幅広く使える便利な言葉。筆者もよく使う。別に何かがベチャベチャということではない。

めっさ:めっちゃ、とてもという意味でよく使う。決して拳が顔面にめり込んだときの擬音表現ではない。

ちなみに標準語圏内の友人には全部伝わらなかった上に、↑のような勘違いされた。めっさは分かって欲しかった.....。標準語ツラ


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