今回はフライングサーカスします!描写が下手なのには目をつぶってください
※誤字や細かな所を追記修正実質
───4年後 10月
side 晶也
あれから日本の………いや、世界のフライングサーカス、略してFCは変わっていった。いや、ルールが変わったわけじゃないんだ。変わったのは風潮。暗黙の了解とも言われていたもの………とでも言えばいいのかな。
FCをする上で必須なのがグラシュだけど、その原理はメンブレンと呼ばれる反重力子の膜で自身を覆い、その力で浮き上がる。飛行する時は反重力子によって浮き上がろうとする力と重力によって落ちようとする力を、メンブレンの厚みをコントロールしてやることで進む。各務先生も使った例えはリニアモーターだったかな。
基本的なところは競技用も一般用も同じだけど競技用はその感度が高いという違いがあって、より細かいコントロールが出来るようになっている。
そんなグラシュにはバランサーというものが備わっていて、基本的にはこれを入れた状態で使う。仮にこれを外せばメンブレンの感度は極限まで高まり、より細かくより繊細、かつ大胆な動きすらも可能とさせる。けど、誰もこれを外さない。それは何故か?答えは単純で、誰も敏感になりすぎたメンブレンをコントロール出来ないから。要はリミッターみたいなものだね。
練習中にグラシュの設定をいじって、間違えてバランサーを外したままにしてしまった真白がそうであったように、ほんの少しの動きでもメンブレンはそれを察知、反応してしまって制御を失う。安全装置は働くし、メンブレン同士は反発するから地面や周りの人に激突することは無いけど、危ないことに変わりはない。そんな理由があって、バランサーは外さない、がスカイウォーカー内での暗黙の了解だった。
それを覆したのはつい2ヵ月ほど前の四島で行われた秋の大会決勝。組み合わせは倉科明日香VS乾沙希。試合時間ラスト3分で乾が試合中にバランサーを解除(そういう操作の出来るグラシュだったらしい)、その後の延長戦では明日香もバランサーを解除。ぶっつけ本番の明日香は最初こそコントロールを失って海に墜落したけど、直ぐに立て直して完璧にコントロールしてみせ、結果勝利をもぎとった。それ以降、日本各地でバランサーを外す選手が増えていった。各務先生の話では世界単位でも増えていったらしい。かく言う俺も明日香に触発されて選手へ復帰して練習中。
今まで誰も見た事のなかったバランサーを外したもの同士の試合は、見た者全員の心を奪い、憧れさせた。当然、その後の全国大会でも明日香はバランサーは外したまま挑み、相手も何人かはバランサーを外した選手がいた。明日香以外は例外なく使いこなせておらず、むしろグラシュに文字通り足を引っ張られて普段の力を出せていなかったわけだが………。かと言ってバランサーを入れた状態では、外した状態の明日香に太刀打ちできるはずもなく、結果として明日香は順調に勝ち進んでいき、危なげなく全国大会を優勝した。
そして迎えた世界大会。今回の会場はイギリスのとあるビーチ。どうしても一緒に来れないという各務先生の代わりに、白瀬スポーツの白瀬隼人さんが同伴しての会場入り。開会式なども滞りなく終わり、先程1回戦が一通り終わったところ。さすが世界大会ともなると相手のレベルが違う。明日香や乾レベルとは言わないまでも、1回戦のカナダ代表の選手はバランサーオフを使いこなしていて、明日香もそこそこに苦戦。久々のバランサーを外した者同士のまともな試合となったが、結果は明日香の勝利。
「次の相手は………イギリス代表かな」
「優勝候補筆頭ですからね。間違いなく厳しい試合になりそうですね」
「晶也さん、白瀬さん、イギリスってそんなに強いんですか?」
FCの試合は1試合にそんなに時間は掛からないので、1人当たり1日に複数試合こなすのはよくあることで、次の2回戦は2時間後の16時頃。今日の最後の試合になる。これに勝てばベスト16。まだまだ先は遠いけどね。
で、次の明日香の対戦相手を確認していた白瀬さんがいち早く教えてくれた。横からひょこっと出てきた明日香はまだ分かってなさそうだったけど。
「前にも言ったと思うけど、イギリスはフライングサーカス発祥の地。つまりFCの原点だ。発祥ってことはそれだけFCに長く取り組んでいる。十分なアドバンテージだな」
「事実今までの
「なるほど〜」
俺の説明に白瀬さんが補足をしてくれる。とりあえずは明日香もイギリスが強いということはわかってくれたみたいだ。
「けど、明日香にはバランサーオフを完璧に使いこなしているって大きなアドバンテージがある。勝てないことは無い!」
「はい!頑張ります!っと、ところで、そのイギリス代表の方はどのような選手なんですか?」
「ぇ?ぁ、ちょっと待ってて。調べるから」
っと、いけないいけない。相手選手のこと、イギリス代表ってこと以外調べてなかった。俺は各代表のプロフィールや参考動画が載っている大会ホームページにアクセスしようと、スマホを取り出して操作をし
「イギリス代表はソラト·アマノ。スタイルはスピーダーだよ」
ようとしたところで白瀬さんから助け舟。白瀬さん知ってたんだ?
「1回戦の時、イギリス代表の試合と僕達日本代表の試合は同時に行われていたからね。晶也君はセコンドで動けないから、僕が代わりに見てきたんだ。個人的にも気になっている選手だしね。その時の試合、撮ってあるから控え室で見よっか」
「はい!」
この時、俺と明日香は知らなかった。そのソラト·アマノがどれだけヤバい相手なのか、ということを。
side out
side 沙希
一方の日本。今は23時をさっき過ぎた頃。イギリスでは15時過ぎだから明日香の次の試合まで1時間を切った。
「みさき先輩、そっち行きましたよ!」
「私も援護するので、やっちゃってください!」
「罠、置いておいた。ここで決める」
「よーっし、罠にかかった!爆弾置いて………ドーン!」
で、私はと言うと久奈浜FC部のみんなと高藤FC部の一ノ瀬莉佳をイリーナが招待して一緒に明日香の観戦。今は明日香の次の試合待ちで、久奈浜の有坂真白が持ち込んだモンスターイーター(略してモンタッタ)をプレイ中。家主のイリーナは久奈浜のマネージャー(兼部長)の青柳窓果と2人で調べ物。窓華は単純にゲームの輪からハブられただけなんだけど。4人マルチだから。
「なっ!?」
と、ちょうどこちらのゲームの方が一段落したところで、パソコンで調べ物をしていたイリーナが、なんでか顔を強ばらせて立ち上がっていた。一緒にゲームしていたみさき、真白、莉佳もビックリしてイリーナを見てる。
「ぁ、えっと、ごめんなさいね。少しびっくりする情報見つけちゃって………ぁはは」
「びっくりする情報?………っ!?」
「ぇ〜なになに?次の明日香の対戦相手でしょ?イギリス代表の………ソラト·アマノ?誰それ?」
そう、ソラト·アマノ。私とイリーナにとって、これは衝撃的な情報だった。
「その人イギリス代表ですよね?なんというか………あまりイギリスっぽい名前じゃないですよね?」
「だよね?どちらかと言えば日本人みたいな名前だと思う」
「正解。ソラト·アマノ………分かりにくいから天野空翔って呼ぶわね。天の野原で天野、空を翔くで空翔よ」
「がっつり日本人だよね?その人」
上から莉佳、真白、みさきの疑問で、途中答えてるのはイリーナ。まぁ、確かに最もな疑問だと思う。
「ぁ、そこは私が答えるね?えーっと、4年前………私やみさきと同い年だから………中1の時にイギリスに引越して、プロスカイウォーカーの神代龍月選手の元に弟子入り………だって」
「神代龍月選手!?!?」
窓果がスマホを覗き込みながら補足説明をしたところで、ガタッと音を立てて身を乗り出したのは莉佳。隣の真白がすこし引いてる。
「り、莉佳?どうしたの?」
「どうしたの、じゃないよ!神代龍月選手と言えば日本最強と言われるスカイウォーカーで、特にスピーダーとしては伝説!今はなんでかオールラウンダーに転向してるけど、それでもその強さは変わらない、着いたあだ名が蒼空の覇者!なんで真白は知らないの!?」
「いや、私FC始めたばかりだし」
「ちなみに私がFCに興味持ったのも神代龍月選手がきっかけだね〜」
訂正。ドン引きする真白をよそに興奮して熱弁する莉佳。みさきは興奮こそしてないけど、莉佳サイド。さりげなくタブレットで今やってる神代龍月選手の試合(明日香の出てるヤツと同じ会場でプロ部門の世界大会)を流してて、片耳イヤホンで音も聞いてる。ゲームしながら見てたの?このゲーム音もかなり重要なはずなのに、それを片耳で、しかもプレイングも凄かったのに?この子すごい。
知らなかったのは真白だけという事実に、真白は項垂れてる。同じ学生目線での目標が過去の日向晶也なら、誰もが憧れるプロ選手代表はこの神代龍月選手ってことになる。実際私もそうだった。
「私もイギリスにいた時に1年半程だけど、弟子入りしてたことがある。その時出会ったのが天野空翔。言うなれば私の兄弟子にあたる」
「当時はバードケージはまだ未完成で、完成してからも見せてはいないけど………恐らく彼には通用しないでしょうね」
「何でー?実際バードケージされた私が言うけど、それこそ私がしたように背面飛行するとか明日香みたいに背中取らせないように立ち回りながらバチバチするしかなくない?」
ごもっとも。私のバードケージの理論は単純で初動で相手より上を取って、そこから常に背中を狙える位置をキープしつつ水面まで誘導し、焦って上昇してもそもそも私のスピードなら急加速の上昇程度なら追い付けるから、無限ループに入る、というもの。みさきが言った2つの対応策以外なら初動で上を取らせない、というのもある。要は私にショートカットさせれば、不可能ではないにせよ、簡単にはバードケージにはハメられなくなる。けど、それは理論上不可能。そこの窓華の兄、青柳紫苑がそうであったようにスピーダーである私を超える速度を出せば簡単には曲がれない。結果、そこにつけいる隙ができる。単純な速度勝負なら私はそうそう負けることも無いし。
「えっと、つまり?」
「彼は私に初動でショートカットさせるだけの速度を出せて、バードケージにハメようとしても振り切られる。下手に上を取ろうと上昇すれば、その隙に置いていかれてブイタッチだけで大差をつけられる。ブイタッチによる得点を極めに極めたスタイル」
「補足すると、それならドッグファイトに持ち込めば、と思うかもしれないけど、彼はそれを振り切るのも上手い。この辺りは師匠の影響が出てるわね」
イギリスにいた当時、私の第1の目標だった空翔(最終目標は神代龍月選手)には私は何度も試合を挑んだ。けど、1度も勝ったことは無い。練習の為、とファイターやオールラウンダー用の設定にしたグラシュを使用していた時は普通に勝てるけど、それでも空翔は食らいついてくる。とは言っても、スピーダー以外は私達の年代の平均的な実力に毛が生えたくらいではあるけども。
「その圧倒的な速度とスタイルからイギリスで着いたあだ名が
「勝機があるとすれば………バランサーオフを明日香が使いこなしている点かしら」
明日香と言えども今までみたいに簡単にはいかない。バランサーオフのアドバンテージは確かに大きい。けど、何か嫌な予感がする。試合開始まで………あと5分。
side out
side 明日香
「………という訳だ。これが僕の知る限りの天野空翔の強さだよ」
「す、凄いな………まさかあの乾が勝ったことがないレベルとは」
「うぅ〜…………」
私と晶也さんは白瀬さんから次の対戦相手、天野空翔さんのビデオを見させてもらうついでに、彼について解説してもらいました。正直ビックリです。沙希ちゃんの兄弟子ってだけでも凄いのに、その師匠があの神代龍月選手!FC始めて、色々調べるうちに神代龍月選手のことを知ったんですけど、私、すぐに大ファンになってしまいました!もしかしたら神代選手来てないですか?サインもらえませんか?………っととと、いけないいけない。今は試合のことに集中しないとですね!
沙希ちゃんが敵わない程の相手、こっちも楽しみです!
「ワクワクしてきました!早く試合したいです!」
「そ、そんなに前のめりにならなくても試合は逃げたりしないからね?」
「あはは、そうでした。けど、そんな強い日本人選手でなおかつ神代龍月選手の一番弟子なんですよね?なんで日本では知られてないんですか?」
私が今の話を聞いて率直に思った疑問。なんで天野さんは日本では無名なのか………師匠さんがあんなに有名で、それ相応の実力も持っているのに。なんでなんですかね?
「簡単だよ。彼はプロに近い、ってだけでプロじゃないからさ。サッカーでもJリーグのジュニアチームがニュースになることはほとんどないだろう?それと同じだよ。プレーしているのがイギリスだから尚更ね」
「明日香のバランサーオフみたいに公の場で今までの常識を覆すようなプレーをした、とかならともかく、彼はそういうのはないからね」
「私ってそんなに有名なんですか?」
当たり前だ、とチョップを頭にもらってしまいました。痛いです。
「バランサーオフってのは今までのFCの常識を覆すレベルの大事件だ。その発端の明日香と沙希が有名にならないわけが無いだろう?今では全世界であの試合動画を研究されてると思うぞ」
「逆に言えば、今回の天野空翔選手との試合もそこが明日香の唯一の勝機と言ってもいいね。4年間プロから直接教えを受けているから、経験や技術で勝機はほとんど無いと言っていい。もっとも、それはこの試合に限った話じゃないけどね」
私はFC始めてまだ半年経ってないですもんね。仕方ないです。
「そんなことより、ほら明日香。もうすぐ試合だ。行くぞ」
「はい!晶也さんもセコンドよろしくお願いしますね!」
「任せとけ。必ず勝たせてみせる」
ちょうどそこで次の私の試合のアナウンスが入って、私と晶也さんは控え室を出ていきました。
「唯一の勝機、か。本当にそうだといいんだけど………」
私達を見送る白瀬さんの呟きが私達に届くことはありませんでした。
side out
「んっ、ふぅー………」
俺はイギリス代表の天野空翔だ。この4年間で色々と努力をして、丁度2年前の夏から師匠に弟子入りした沙希ちゃんとも一緒に切磋琢磨し、俺はこの場所に立つことが出来た。沙希は今年の6月に日本に帰っちゃったけど。
1つ予想外だったのはてっきり日本代表として上がってくるのは沙希ちゃんだと思っていたんだけど………動画によれば今隣でストレッチしている倉科明日香(明日香ちゃんでいいか)に負けたらしい。
「ぁ、はわわわ」
と、俺もストレッチしながら横目で明日香ちゃんを見てたら、たまたま目が合ってしまって明日香ちゃんはしどろもどろ。
「ぇ、えーっと?ないすとぅーみーつー?」
「よろしくね。それと、日本語で良いよ?とりあえず深呼吸しよっか?」
「ぁ、はい。すみません………すぅー………はぁ………」
うん、なんとか落ち着いたみたいだ。
「倉科明日香って言います!今日はよろしくお願いしますっ!」
「ぉ、おう。天野空翔だ。よろしくな、明日香ちゃん」
地面と並行になるんじゃないかってくらい深くお辞儀する明日香ちゃん。たぶん、真面目な子なんだろうな。
「明日香ちゃん、俺の妹弟子に勝ったんだって?」
「妹弟子………?あぁ、沙希ちゃんのことですか?はい、沙希ちゃんすごく強かったです。もしかして………恨んだりしてます………か?」
「ん?何で?」
「私が勝たなければここに立っていたのはたぶん沙希ちゃんですから………大切な妹弟子なんですよね?」
うん、訂正。真面目すぎる子だ。この子も嫌味とかで言ってるんじゃないのはわかるから、ついつい笑ってしまった。
「なんで笑うんですかっ!?」
「とと、ごめんごめん。別に恨んだりはしないよ。明日香ちゃん、反則とかしたのならともかく、正々堂々戦って、その上で沙希ちゃんが負けたんなら恨む理由はないよ。明日香ちゃんの方が強かった、それだけだね」
「ぁ、ありがとうございます!」
「ま、今は俺らの試合を楽しもうや。先に行ってるよ。クリアードフォー·テイクオフ」
明日香ちゃんに断りを入れてから、俺はグラシュの起動キーを発声して浮上。ファーストブイまで行く。途中、俺のセコンドから何を話してたのか聞かれたから、世間話とだけ答えて置いた。間違ってないしね。
ちなみに俺のセコンドは俺が通ってるハイスクールの同級生。FCの知識があって、FCクラブでセコンドの経験もあったから、イリーナの日本行き後は師匠が雇ったって形でセコンド頼んでる。指示とかもすごい的確かつわかりやすくて優秀な子。今回に限ってはイリーナ呼んでもよかったけど、わざわざ来てもらうのもアレだし、止めた。
これは余談だけど、俺は中学は日本語学校だったけど、今は普通のハイスクールで、私生活含め全部英語。
「待ってくださーい」
俺から少し遅れて明日香ちゃんもファーストブイへ。グラシュは見たところMIZUKI社の飛燕四型かな。白に赤のラインが可愛らしい。オールラウンダー用のグラシュで、かなり使い易いモデル。二型を俺も昔使ってた(今ではサイズが小さくなって履けなくなったから大切に保管してる)。
今俺が使ってるのはINVADE社のGáe Bolg(ゲイボルグ)。色は青メインで白のライン。バルムンクほどスピーダー特化ではないが、スピーダー向きのグラシュで、なおかつバランサーの幅がオールラウンダー並の自由度の高さを持つグラシュだ。これを加速と最高速度に極振りしてやれば、バルムンクをも超えるスピーダー特化のグラシュの出来上がり。最初は振り回されたけど、今ではもう使いこなした。
「ふぅ………」
俺はスタートの構えをとり、意識を集中させた。
side 明日香
(………スゴい、さっきまでとは別人みたいです)
隣で天野さんが構えてからというもの、微動だにしません。意識を集中してるんだと思います。私もそれに習って構えて集中します。
(天野さんはスピーダー………ファーストブイは確実に負けます。なら、すぐにセカンドラインにショートカットしてバチバチします!)
そして頭の中でスタート後のシミュレーション。1回戦の天野さんの試合(対ニュージーランド)では相手のファイターの選手を終始置き去りにして30-0という大差での勝利をしてました。けど、速度だけならそのファイターの人より私の方が速いです。なら、置き去りにされる心配はないです!晶也さんの指示でもそう言ってましたし。
「Are you ready?」
「Yes」
「ぁ、はい!っとと、じゃなくて、いえす!」
「セット!」
ぷぉぉぉぉぉぉぉぉぉん
もう聞き慣れたフォンの音とともに私は加速。すぐさまセカンドラインへショートカット
ブォン
「っ!?」
『速いぞ!急げ明日香!』
しようとしたところで私の左隣をものすごい風が吹き抜けました。一瞬何かわかりませんでしたが、晶也さんの指示で我に返り、私は理解しました。あれは空翔さんの急加速。確か加速に極振りしているから初速はほぼゼロでも最高速度までそんなに時間はかからない………このままだと置いていかれますっ!
「あぁぁ!!!」
私は気合を入れると同時に晶也さんに教わったメンブレンのショートカットによる加速、ソニックブーストで一気に私の出せる最大速度まで加速しサードブイに突撃するくらいの勢いでセカンドラインギリギリへ。対する天野さんはもうセカンドブイをタッチして、セカンドラインの半分手前くらい。ものすごい速さです。そのせいもあって、本来なら円を描く軌道で飛んで速度を維持するんですけど、今の私は最高速度で天野さんはもうセカンドラインの中央付近。円を描くような余裕は皆無です。なら、取れる手は1つです!
「んぅぅぅ!!!」
私は足を揃えて身を丸め、体の前後を反転させます。そしてメンブレンを足裏に集中させて空を蹴る、私の得意中の得意技エアキックターン。天野さんは真っ直ぐ飛んでますから、そのルートと軸は合わせたので、このまま突撃すれば止められます!
「やぁぁ!!」
そして私はこちらに真っ直ぐ突っ込んでくる天野さんへ向けて手を伸ばして攻撃………しましたが、軸をずらさずにバレルロールだけで避けられてしまいました。そしてそのままサードブイをタッチしてサードラインへ。
ただ速いだけじゃなく、上手い………スゴく巧いです!
「燃えてきました!負けませんよっ!」
私は再びターンしてサードラインへショートカットしていきました。
油断していた訳じゃないですけど、気合を入れ直さないとですね!
ちなみに天野空翔くん、ものすごい速度でぶっ飛ばしてブイを曲がれるのか?という疑問はあるかと思います。描写するのはおそらく次回以降ですが、ちゃんとタネはあるので大丈夫です!
では、今後ともよろしくです!