蒼の彼方のフォーリズム 天を翔く翼   作:八雲ルイス

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どもども、最近積みプラが増えてきたルイスです

最初に言っておきますが、私はファーストクラスなんて乗ったことはありません!普通にエコノミーだけです!


第3話 煉獄………完食???

───世界大会から約半年後 3月末

 

「………なんでこうなったんだろうな?」

 

今俺は飛行機のファーストクラスに乗ってる。師匠のツテで乗ってるんだけど、俺みたいな一庶民が乗って良いんだろうか?ってくらい豪華で快適。

 

………そんなことはどうでもいい。この飛行機、行き先は日本の鳴田国際空港。そう、今の俺は帰国している真っ最中ってわけ。ここ5年近くずっとイギリスで空を飛んできた俺がなんでこんなことになったかと言うと、それは数日前に溯る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───数日前

 

「んん………」

 

朝、自室で目を覚まし、時計を見ると7時を少しすぎたくらいだった。今年の分のハイスクールはもう終わっているので今日は休日。寝間着から着替えて自室から出る。

 

「おはようございま〜す」

 

朝の挨拶をしながらリビングに入るが、返事はない。代わりにソファに座ってスマホで電話していた神代龍月師匠が口元に人差し指を当てて「静かに」のジェスチャー。普段より真面目な口調だし、大事な電話なのかな?日本語で話してるあたり相手は日本の誰か?

見たところ朝食は師匠もまだみたいだったので、とりあえず2人分用の調理を始める。と言っても夜の内に作ったポタージュを温めつつ、コーヒーメイカーにろ過紙を張って(師匠が挽いた)コーヒー豆を入れてからお水をポットに入れる。クロワッサンは数個オーブンに放り込んで、チーズを入れたスクランブルエッグとベーコンを焼く。あとは生野菜を少し盛り付け。

師匠と暮らし始める前も、今は亡き両親は仕事で忙しくしていて家を空けることも多かったし、今にしても師匠が家を空けることもそこそこにあるので家事はそこそここなせるようになってる。余談だけど、イギリスではあるけど洗濯とかはガッツリ日本式で外に干してる。こっちだと乾燥機を使うことがほとんどらしいけど、日本人の魂が天日で干したがってる。市街にある集合住宅とかだと難しいけど、ここは郊外で師匠が買ったそこそこ広い敷地で庭付きの邸宅。外に物干し竿使って干しても誰の迷惑にもならないからね。

 

閑話休題

 

朝食の用意が出来てテーブルに運んでいると、丁度電話が終わった師匠も電話が終わったみたいでテーブルにつく。

 

「おはよう。悪いな、手伝えなくて」

「おはようございます、師匠。大して手間をかけた訳でもないんで大丈夫ですよ。大事な電話だったんですか?」

「ま、そんなとこだ。いただきます」

「いただきます」

 

ちなみにこんな邸宅に住んでても家政婦とかその類は雇ってない。師匠曰く自分でやりたいから、とかなんとか。さすがに家を空ける時とかは掃除とか庭の管理とかを日雇いで任せることはあるけどね。豪邸って訳でもないから広さもたかが知れてるし、休日の暇な時にせこせこやってたら終わるしね。建物の方もごく一般的な大きさの平面の建屋だから日々コツコツとやってたらそこまで苦でもない。

 

「で、さっきの電話だが」

「ん……っ。はい」

 

ある程度食べ進めたところで師匠から話を持ちかけてくる。とりあえず口の中にあったものを飲み込んでコーヒーを一口。

 

「日本行きが決まった。4月からは日本で暮らす」

「んぐぅ!?ゲホッゲホッ」

 

危ない危ない。もう少しで師匠に向けてコーヒーを吹き出すところだった。おかげで気管に少し流れ込んで蒸せたけど。

 

「大丈夫か?」

「ケホッケホッ………ふぅ。驚いただけなんで、なんとか。にしても急っすね?」

「理由は幾つかあるが………とりあえず久奈浜学院に転入してくれ。必要な書類は現地の人から受け取れるよう手配してある」

「………はぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───再び現在

 

とまぁ、そんなこんなで今日本に着いたところだ。日本時間で夕方6時前ってとこか。

数日しか準備期間がなかったのもあって、とりあえず最低限の日用品とフライングサーカス用具一式しか持ち出せなかった。その他大荷物は一昨日空輸して四島の師匠が昔住んでいた家に送ってある。着替えは現地調達でいいや的なノリで。

ちなみに師匠本人はもう少しイギリスで用があるとかで、数日遅れて来日するみたい。

 

「………現地案内の人と合流するのは明日、ホテルをチェックアウトする時………だったか?とりあえずホテル向かうか」

「それには及びません。もう着いてますから」

「どわぁ!?」

 

手荷物を受け取り、空港のロビーに出たところでスマホのメモ帳に書いておいた予定表を確認。そこに不意に背後から声が掛かる。

びっくりしたぁ………ん?今の声って

 

「もしかして………もしかしなくてもリーナちゃん?」

()()()()です。何度も言ってますが、その子供っぽい呼び方はやめてください」

「リーナちゃんはリーナちゃんだろ?」

「はぁ………全くもう」

 

そこに居たのは以前俺と一緒に師匠の元でフライングサーカスをしていた妹弟子、乾沙希(沙希ちゃん)の友達のイリーナ·アヴァロン(リーナちゃん)。黒の長ズボンに白の長袖のシャツ、その上からズボンと同じ素材の上着を着ている。薄黄緑の髪は頭の左側でサイドテールにまとめてる。

イギリスにいた頃からだけど、リーナちゃんは黒メインでコーデすることが多い。明るい色の服が似合わないわけではないんだけどね。あまり明るいのは落ち着かないらしい。気のせいでなければうっすらと化粧しているようにも見える。

 

「その服、大人っぽくてよく似合ってる。それにそのシュシュ、まだ使ってたんだ?」

「ぁ、えっと………ありがとう?こ、これはせっかく空翔がプレゼントしてくれたものですから………他に替えもありませんし、仕方なく。そう!仕方なくです!」

 

リーナちゃんの付けている黒のシュシュは3年前、リーナちゃん(と沙希ちゃん)に出会ってから最初のリーナちゃんの誕生日に俺からプレゼントした物(ちなみに師匠は今着ている服を贈っていた)で、それ以降ほぼ毎日着けてくれてる。師匠の贈った服はそこそこいいお値段らしいけど、当時俺はあまりお金もなかったこともあって、贈ったシュシュはかなりの安物。仕方なく、と言うのなら買い換えれば良いのにな〜とは思うけど、触らぬ神に祟りなしとも言うし、敢えて触れないでおく。

 

「………コホン。それはとりあえず置いておくとして、アレはどうします?」

「ん?………ぁー、アレか」

 

リーナちゃんは咳払いを1つ入れて落ち着いてから、空港のエントランスの方へ視線を送る。俺もそれを追って見てみると、恐らくアレは………マスコミだな。アヴァロン社の関係者らしきSPっぽい人のバリケードでここまでは来ないけど、かなりの人数がいる。

こっち来る時にイギリスの空港でも捕まったし。ま、世界大会8連覇の神代龍月の弟子たる俺が帰国するってことは師匠本人も帰国するってのとほぼ同義。どこから聞き付けたのかは知らないけど、商魂たくましいことだ。明日の朝のニュースと新聞は大騒ぎだな。

 

「無視するわけにもいかないだろ?軽く答えてから帰ってもらうさ。とりあえず荷物頼める?グラシュ以外はそんな重くないはずだから」

「空翔ならそういうと思っていたので大丈夫ですよ」

 

俺が何かしてもアクション何も無いのに、師匠が何かするとすぐこれだ。別にそれに嫉妬したりはしないけど、すごいなぁ、とくらいは思う。イギリスのマスコミもそうだったけど、恐らく今日師匠も帰ってくると踏んで待機してたんだろうな。

とりあえず30分ほどマスコミの相手をして「長旅で疲れてるから」と理由をつけてホテルへ退散することにする。

 

「そう言えば、師匠から現地の案内の人は明日合流って聞いてたんだけど………一応それってリーナちゃんで間違いないよな?沙希1人にして大丈夫なのか?」

「えぇ。私で間違いないですよ。明日の朝でも良かったんですけど、夜間バスは少し抵抗があったので。早めにホテルにでも入って明日合流なら、今日でも同じことでしょう?ちなみに沙希は倉科明日香さんのところに泊まりに行ってるので安心してください」

 

まぁ、確かにそれなら早いか遅いかの違いしかないか。ま、もう今の俺にとって日本はあまり縁のない国だし、そういう所に1人でいるより気心知れた友達がいてくれた方が助かるけどな。リーナちゃんにしても沙希ちゃんの場合は特に気兼ねしないし。

 

「この後の予定はどうしますか?先にホテルのチェックインだけ済ませておきますか?」

「そうだなー。そこまで量はないけどグラシュ持ち歩くのはかさばるし。その後は………そうだな。テキトーに着替えの服買って飯かな?」

「あぁ、服でしたら私が事前に買っておきました。空翔のことですから、どうせ着替えは現地調達と言うだろうとあたりは付けてましたから。好みもバッチリ把握してますから安心してください。食事は………候補に何店舗か挙げてますから一緒に決めましょう」

 

いや、リーナちゃん怖いわ。実際そう考えてたし助かるけどさ。ホテルに入ってから買ってもらった服を見ても本当に俺の好み通りの服だったしサイズもピッタリだったから嬉しいんだけどね?服代払おうと思ったら師匠から軍資金貰ってるって言ってたからそこは安心。

というかリーナちゃんの取った部屋、シレッと俺の隣にしてるのな。別に迷惑って訳でもないし、リーナちゃんみたく可愛い子に構ってもらえるのは悪い気しないから別にいいんだけどね。

とりあえず日本着いたことの報告と、リーナちゃんが来ることを教えてくれなかったことの文句をニャインで送信。ぇ?軍資金は渡してない?………晩ご飯はなにか奢ろう。

 

晩ご飯はリーナちゃんの希望もあって(回らない方の)お寿司になった。もちろん俺の奢り。一応それくらいのお金とクレカは持ってる。四島の方はこの手の店は意外と少ないらしいし、リーナちゃんみたく海外出身者だとお寿司とか天ぷらとかは日本食の定番なんだろうな。お店入った瞬間さっき空港で取材された映像が『FCトッププロ、ついに帰国か!?』の見出しでニュース速報が流れてたのは物凄く恥ずかしかったけどな。つかマスコミ仕事早いな!?おかげでサイン強請られたけど、サービスしてもらえたし良しとしておこう。お寿司美味しかったしな。

 

その後は俺の部屋で昔話や近況報告みたいなとめどない話に花を咲かせて、気が付いたら0時前。少し眠そうにしていたリーナちゃんもとうとう電池が切れたように寝てしまった、俺の部屋で。リーナちゃんの部屋は当然ロックがかかってて、さすがにリーナちゃんの着てる部屋着からカードキーを漁ったりする訳にはいかなかったから、俺の部屋のベッドに寝かせた。翌朝顔を真っ赤にして必死に謝まられたけど、別に怒るようなことでもないし、軽く流しておく。ま、そこそこ親しいと言っても異性の部屋で、無防備に寝顔晒してたって思ったらリーナちゃん的にはすごく恥ずかしいことなんだろうしな。大丈夫、間違いは起こしてないから。

ちなみに俺はベッドを背もたれにして床に座って寝た。流石にイスは寝るには硬かったからね。

 

翌日は飛行機の国内線と電車、最後に船で四島へ向かった。特に急ぐ旅でもないので、電車をあえて遅らせてリーナちゃん散策してみたり、食事したりと色々楽しんだ。あと船乗る前に日常生活用のグラシュを購入(リーナちゃんが何故か目をキラキラさせながら選んでた)し、四島行きの船に乗る。

四島は飛行可能な特区として認められてるらしく、日常生活でもみんな飛びまくってるみたい。イギリスにもそういう場所はあるにはあるけど、俺の住んでた所の近くにはなかった。くそぉ………もっと早くここに住みたかった。

軽い世間話をしながら飛ぶこと10数分。

 

「あぁ、空翔の荷物ですけど、もう届いていたので家に入れておきました。ある程度の片付けもしてあるので後で確認しておいて下さい」

 

リーナちゃんの仕事が早過ぎて怖いんだが?いや、ありがたいんだけどな。

 

「ちなみに空翔がこれから住むことになる神代さんの旧家、私も空翔の荷物受け取る時に知ったんですけど、あの子のお隣なんですよ」

「………あの子?」

 

俺が知ってる人でもいるんだろうか?四島に親しい人はいないはずなんだが

 

「覚えてませんか?去年の世界大会2回戦で空翔と戦った子です。倉科明日香」

「あぁ、あの子か」

 

いた。いや、忘れてた訳じゃないんだが、親しいって程じゃないし、まさかこういう偶然があるなんて思わないだろう?

 

「ちなみに沙希にも空翔が来ることは伝えてません。その方が面白いでしょう?」

「沙希ちゃんの場合、俺が来ることより師匠が来ることの方が喜びそうだけどな。師匠のこと尊敬通り越して崇拝くらい行ってるんじゃないか?」

「沙希ですからね、あると思いますよ」

 

その後、リーナちゃんの沙希迎えついでに倉科家に挨拶を………と思ったんだけど、両親不在。夜には帰るって言ってたし、何か持って挨拶しないとな。確か日本では引越し蕎麦だっけ?を渡す風潮があるとかないとか………イギリスからの引越しで蕎麦ってのも変だから何かお茶菓子的なものでも作ろうか、マカロンとか。アップルパイとか手間かかるから片付け片手間は難しいし。

 

両親は不在だったけど、明日香ちゃんと沙希ちゃんはちゃんといた。リーナちゃんの俺のことを話してないってのは本当だったみたいで、沙希ちゃんも明日香ちゃんも俺の顔を見て驚いてた。明日香ちゃんはさっきの俺と同じ理由で、沙希ちゃんはそれプラスで俺が帰国したってことは師匠も?みたいな感じで。片付けもあるからとりあえず少し話すだけにしておいて、この日は解散。俺も家に入る。

 

「………ある程度、とは」

 

リーナちゃん、片付けある程度したとは言ってたけど、ほぼ終わってね?流石に私物関連とかは残ってたけど、それ以外はほとんど良い感じに仕舞われてたし、レイアウトも良い感じ。リーナちゃんって何かとこう気が利くんだよな。将来いいお嫁さんになりそうだ。旦那さんになる人は幸せ者だな。

おかげでやることが最低限すぎて、暇だな〜とか、晩ご飯どうするかな〜とか考えながらひたすらマカロン作ってた………ら作りすぎた。ざっと100個くらい。さすがにこれ全部明日香ちゃんとこにプレゼントってわけにゃいかんでしょ?どうしよう………

 

「少し早いけど、晩ご飯の店探しがてら考えるか。一人分だけ作るの意外と面倒だし、ぁ、ついでに白瀬さんとこ顔出しとこうか」

 

というわけでマカロン30個くらいずつ3袋に分けて入れてから、1袋だけ持って外へ。そのまま停留所から繁華街へ向けて飛び立つ。

白瀬さんは師匠の幼なじみで、スカイスポーツ白瀬ってお店をやってる人。半年前の世界大会も日本代表の明日香ちゃんの付き添いで来てたらしい。俺も師匠繋がりで少しだけ付き合いがある。今日は挨拶だけのつもりだったから、挨拶は軽く済ませてマカロンをプレゼント。初めて会った白瀬さんの妹のみなもちゃんも、最初は白瀬さんの後ろに隠れてた(人見知りが激しいらしい)けど、マカロン1つあげたらすごく美味しそうに食べてくれた。ここ来る度に作ってこようかな?

 

というやり取りをスカイスポーツ白瀬でしたのが10分ほど前。今は晩ご飯を求めて空を飛んでるところ。白瀬さんとみなもちゃんオススメのアゴ出汁うどんが美味しいお店を探してる。一応今後お世話になるかもしれないし、例のマカロンを家に寄って1袋持ってきたし。

 

「白瀬さんの話だと確かこの辺………ましろうどん………あぁ、あれだ」

 

スマホの地図を頼りに探していると、ましろうどん、の暖簾をさげた趣のあるお店を発見。この雰囲気、当たりの予感!

 

「ご飯時はすごく混むって言ってたけど、まだ少し早いし大丈夫だよな?」

 

俺は最寄りの停留所に降りてお店に向かう。やっぱりこの手のお店って雰囲気あるよね。チェーン店とかだとそうでもないけど、初めてだとなかなか入りにくい感じ。お店の人は朗らかで優しいし初見さんウェルカムって言ってたから大丈夫だと思うけどな。

 

「こんにちわ〜…」

「ぁ、いらっしゃいませ〜」

 

とはいえやっぱり初めて入るお店は緊張するもの。おっかなびっくりと戸を開けて中に入ると、エプロンをした若い女の人が声をかけてくれた。20代半ばくらいか?かなり若い。

ご飯時を外したかいあって、客は数人のみ。とりあえず手近な机に座ってメニューの冊子を開く。おぉー、すごい品揃え。これは期待できそう。なら、最初に頼むのも決まりだな。

 

「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」

「かけをお願いします。並盛で」

「はぁーい。かけ1つ入りまーす」

 

定番中の定番、かけうどん。ざるやぶっかけ系も良いけど、基本はこれだよね。大抵のうどんはここから派生するから、かけの味がお店の味って言っても過言ではない(持論)。

 

結論から言おう。俺はこの店の虜になった。1口目を啜った瞬間体に走った衝撃、そこまで奇をてらったものでは無い。ごく普通のかけうどん。強いていえば出汁がアゴ出汁で、かつおとか昆布より少し癖があるかな?程度の違いだけど、このうどんには言葉では表せない何かがあった。

それから都合3杯。山菜、月見、あと少し趣を変えて山かけぶっかけ。どれも美味い。次は何にしようかな〜

 

「あらあら。よく食べるのね?若いっていいわね〜」

 

5杯目を何にしようかとメニューを見ていると先程の店員のお姉さんがこちらに声をかけてくる。まぁ、ここまで食べまくる客は滅多に来ないんだろうな。俺の場合、師匠が作り過ぎた時の量が物凄くて、これくらいならペロッと行けるって程度なんどけどな。フライングサーカスでよく体動かしてるからってのもあるけど。

でも、今日はまだ運動してないから食べ終わったら少し練習するかな。

 

「何言ってるんですか?お姉さんだってまだまだ若いでしょう?」

「あらあらまぁまぁ」

 

あれ?周りの人が一斉にお茶吹いたり蒸せたりしてる。何があった?

 

「嬉しいこと言ってくれるわね〜。お世辞でも嬉しいわ。これでも、あなたより1つ年下の娘がいるのよ?」

 

お世辞じゃないんだけどなぁ………ぇ”?子持ち?しかも俺の1つ年下!?てことは単純計算で若く見積っても30半ば!?女子大生って言われたら信じてしまいそうなくらいのこのお姉さんが!?

 

「ぇっと………冗談………とかではなさそうですね。どう見ても20代にしか見えないですけど」

「嘘じゃないわよ〜?口が上手いあなたには次の1杯サービスしちゃおうかしら?」

「本当ですか!?ぁ、ならそのお礼代わりと言っても何ですけど、俺が作ったマカロン差し上げます」

 

これ目当てで言ったわけじゃなくて紛れもない本心だった、とだけ付け加えておく。だって本当に見た目若いもん。

じゃあ、さっきから名前が気になり過ぎているアレ、頼んでみるか。ついでにマカロンを1袋渡しておく。

 

「じゃあ、この1つだけ異様な雰囲気漂わせてる煉獄味噌煮込みうどんを。辛さは………手始めに2で」

「「「!?!?」」」

「はぁ〜い。煉獄2番で入りまーす」

 

あれ?なんか周りの客が顔引き攣らせて急いで食べ始めた。ぁ、次々に会計始めた。ちゃっかり完食してるし。俺、なんかマズイことしたか?

その答えは数分後、煉獄味噌煮込みうどんが届いてわかった。唐辛子の匂いがきつい。唐辛子の鼻を刺すようなツンとする匂いが牡丹さん(他のお客さんがいなくなったのもあって煉獄待ちの間に名前を教えて貰った)がカウンターから持ってくる時点で既に俺のところまで匂ってきていたからな。そして丼の中を見ても赤い。とにかく赤い。マグマか?

この正統派のうどんのお店で何を間違えたらこれが出来るんだろう?考えても仕方ないか。とりあえず、逝くか。

 

「ズズッ………かっら!?でも美味い!」

 

麺を一啜りしてみて、まず思うのは辛い、これに尽きる。正直辛いものが苦手な人には無理だろうし、そうでなくてもこれを食べるのはキツイだろう。匂いもきついしな。

けど、食べ進めるとわかる。辛さの向こうにある旨みと風味。例えるならアレだ、本場四川料理の麻婆。アレも普通の中華店とかだと辛さを抑えてたり、激辛もただ辛いだけで美味しくないけど、上手い人が作れば激辛は激辛でもちゃんと旨味があってそれが魅力になるやつ。この煉獄味噌煮込みうどんはその後者のパターンのようだ。食レポみたいな言い回しをしたら、この辛さが旨味を引き立ててる、とかか?とにかく旨辛い。味噌と唐辛子のかなり強い風味をアゴ出汁が上手くまろやかにしてる………ような気がする。俺、そこまで味覚鋭くないし、それっぽく言ってみる。

 

「あらあら。うちの煉獄味噌煮込みをそんなに美味しそうに食べる人、空翔君が初めてよ?」

「この手のって、麻婆とかもそうですけど下手な人が作ったら辛いだけなんですよね。けど、この煉獄味噌煮込みはちゃんと美味しいです。箸が止まらないですよ!」

「元々はネタで作ったメニューなんだけれどね〜。メニューに載せるからには美味いものを、ってのがうちの人のモットーなの」

「俺も師匠の作った麻婆豆腐食べ慣れてなければ多分箸が止まってましたけどね。ところで1つ、牡丹さんに聞きたいことがあるんですけど」

「あら?何かしら?答えられることならなんでもいいわよ?」

 

狙った訳では無いけど、他のお客さんもいなくなったおかげで牡丹さんが俺につきっきり。なので、さっきから思ってた疑問をぶつけてみる。

 

「俺、牡丹さんの名前は聞きましたけど、自己紹介してないですよね?なのに牡丹さんは俺の名前も年齢も知ってた。何故なのかなって」

 

俺が牡丹さんの年齢を間違えた(実際は正確に何歳かは知らないが)時に『あなたより1つ年下の娘がいる』という言葉とさっきの『空翔君が初めて』の2つ。俺は世界大会3連覇してはいても、ジュニアなのと師匠が目立ちすぎて俺の名前はそこまで広まってない。活動拠点のイギリスではプロに最も近い日本人と呼ばれていても、日本では知る人ぞ知るレベルだからな。

 

「隠してたつもりじゃないのだけれど、龍ちゃんから連絡があったの。俺の弟子がお世話になるかもしれない、もしそうなったらよろしく頼む………って」

「龍ちゃん………まさか師匠!?ぁ、煉獄お代わり2辛で」

「そうよぉ?龍ちゃんが小さい頃はお姉ちゃんお姉ちゃんって私の後ろにいつもいたんだから。はぁーい」

 

うっそぉ………

 

「ぁ、それと牡丹さん。このお店の換k「おかーさん!煉獄出したんならちゃんと換気してよね!」」

 

………ん?

俺が言おうとした事と同じ様な言葉がお店の扉を開ける音とともに聞こえ、ふとそちらを見る。そこに居たのは………例えるならミニマム牡丹さんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 真白

 

「はふぅ………疲れたぁ」

 

FC部の今日の練習が終わり帰路に着く私、有坂真白は半分ぐったりしてフラフラ飛んでます。

 

「春休み入って練習がさらにハードになったからにゃ〜」

「晶也先輩、選手復帰して気合い入ってますもんね〜。今日は乾さんも来てましたしね、みさき先輩〜」

 

冬休みは寒い季節の関係であまり空を飛びまくる練習は出来なかったから、春休みこそは!と晶也先輩が変に気合い入れてるんですよね。今日は明日香先輩のライバル、海淩の乾さんが練習に参加していたので余計に気合い入ってました。明日香先輩のところに泊まってたみたいですよ、乾さん。

私は練習用フライングスーツと競技用グラシュを入れたバッグを下にぷらーんとぶら下げてそのままゆっくりと停留所へ。

 

「みさき先輩、今日はこの後うどん食べていきます?」

「ん?んー………嬉しい提案だけど、今日は遠慮するにゃー」

「わかりました!ではまた明日!」

「また明日〜」

 

脱力して手をヒラヒラと振るみさき先輩と別れ、私はすぐそこにある私の家、ましろうどんへと向かいます。ましろうどんのお店の2階が私の家なんです。

この後何しようかな〜。お店の手伝いは今日はないから、モンタッタで晩ご飯までくつろごっかな。

 

「で、ご飯食べたあとに少し自主練を〜ふぐぁ!?!?」

 

お店の扉に手をかけて開けようとしたその時。鼻を刺すような刺激臭がツーンと。それもかなり強いやつが。このお店でそんな匂いがするってことは………ぇ?まさかアレが出たの?

私はさっさとそう結論付けて勢い良く扉を開け放ちました。

 

「おかーさん!煉獄出したんならちゃんと換気してよね!」

 

案の定他のお客さん誰もいなくなってるじゃない!って………えぇ!?!?

 

「煉獄………完食???」

 

煉獄味噌煮込みうどんだったと思う赤いドロっとしたものが少し着いた器はほとんど空。あれを食べ切れる人いたんだ………

 

「………どうかしましたか?」

 

それを食べたらしき人、見たところ私と歳もそう変わらない男の人がこちらをキョトンと見つめて来てるので、無視するわけにもいかずに声だけかけてみる。

 

「ぁー、ごめん。何でもないよ」

「そうですか………えっと、ごゆっくり。おかーさん、私先に上行ってるね〜」

 

少し気まずくなった私は少しだけ言葉を交わしてから逃げるように2階に駆け上がりました。アレ?あの人どこかで見たことあるような………ないような………気のせい?まぁいっか。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

もう日も落ちて、隣の倉科家へマカロンのプレゼント兼挨拶も済ませて、夜の7時を過ぎた頃。俺は自室の部屋にいた。

あの後牡丹さんから謝られたけど、あれは不可抗力みたいなものだし、気付かなかった俺にも非はある。あの子の言い分は間違ってないしな。今思えば、頼んだ時の他のお客さんの反応で気付くべきだったのかも知らない。匂いもキツかったしな。でもまた食べに行きたいな。

 

「今度は人のいなそうな時間狙っていくか〜」

 

それにしても、ミニマム牡丹さん風の見た目と牡丹さんを『おかーさん』と言っていたことから察するに、牡丹さんが言ってた俺の1つ年下の娘があの子だろう。

ベージュっぽいロングヘアをツインテールにまとめていて、目は綺麗なアメジスト。欧米人と比べて童顔傾向のある日本人の中でも、かなり童顔っぽさのある顔立ちて背丈はだいぶ小柄。お世辞にも見慣れた欧米人女性みたいに大人っぽいとは言えず、子供っぽいという感想が真っ先に出てくる容姿ではあったけど、あの子の場合それが逆に魅力になっていて、素直に言って可愛かった。そういう意味だと白瀬さんとこのみなもちゃんもそうだけど、何故か俺はミニマム牡丹さん(そういや名前聞いてないや)の方が気になっていた。

その子の持ってたバッグからはグラシュが見えてて、多分練習帰りだったんどろう。ちらっとしか見えなかったけど、色と見た目から判断して恐らくスモールグルーヴ社のシャムだ。確かスピーダー向けで、俺のゲイボルグに比べて遥かに大衆向きで使いやすい女の子に人気のモデル………だったよな?

 

「ま、フライングサーカスやってるなら遅かれ早かれ会えるだろ。ましろうどんにも通いたいし、そこでも意外と会えるかもな」

 

とりあえず俺は小型のブイと競技用のグラシュ、予め買っておいたスポドリを持って家を出る。確か近くに海岸があった。食後の運動兼ねてそこで練習するか。

 

この時の俺は、この時の行動が生涯を決めるような事件?に繋がることをまだ知らなかった。




ダラダラと書いてたらなんか長くなっちゃいました!

書いてて思った。イリーナがすごいヒロインしてるな!(タグ通りヒロインじゃないけど)
私のSSってヒロインじゃない子が最初にヒロインっぽいことする宿命でもあるのだろうか?

最初の方でイギリスの生活云々書いてますけど、私自身イギリスは行ったことないんですよね。海外なんて10年くらい前にアメリカ西海岸のスターウォーズEP5だったか?やジェラシックパークのロケ地になった場所近辺行った程度ですよ

あと後半がなんか食レポっぽくなっちゃってますね。語彙力ないんであまり上手く書けなかった!

こんな私ですけど、今後ともよろしくです!感想や評価頂ければ励みになるので、もし良ければよろしくお願いしますm(_ _)m
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