魔法少女リリカルなのは//黄昏と薄明   作:悠畏

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第三話

 ある管理外世界の吹雪が荒れる山で、ピンクの髪をしたポニーテールの女性が愛剣を手に、熊のような生物と戦っていた。

 

「ガァアアアッ!!」

 

「悪いが、魔力を貰っていく」

 

「っ!!」

 

 しかし、今まさに襲いかかろうとした熊は、何かに勘づくと目の前の女性を無視して女性の前から逃げていく。

 女性も最初は首を傾げたが、折角の獲物を逃がしてはいけないと思い、熊を追い掛けようとするが――――――

 

 ――バシュッ!!

 

「!! 誰だ!?」

 

 ――――――突然、女性の目の前に何かが飛んでき、女性の足元の雪に着弾すると雪が煙を立てて蒸発した。

 女性は何かが飛んできた方へと睨むと、そこには蒼い炎を纏ったオレンジ色の冒険者風の男が浮いていた。

 

「ウウゥゥ……」

 

 冒険者風の男は、女性の問い掛けを無視して、両手を腰の後ろへと回し、ゆっくりと何かを抜刀するように腕を動かしていくと、両手に光が生じ、男の腕が前面に交差させた時、その禍々しい双剣が現れた。

 

「答えんか……なら、その剣で聞くとしよう。レヴァン……!!」

 

 ――ビッ!!

 

 愛剣へと声を掛けようとした時、女性の耳に空気を裂くような音が聞こえ、咄嗟に避けると先程まで女性が立っていた場所は、雪柱が立って一瞬にして蒸発した。

 

「くっ!! レヴァンティン!!」

 

『カートリッジロード』

 

 ガシャコン、ガシャコンと、2つの薬莢を排出して、刀身に魔力で変換させた炎を纏わせる女性だが、明らかに男の方の蒼い炎が勝っていた。それも圧倒的なまでに……。

 何故なら、男は蒼い炎を纏い攻撃にも運用するソレは、この吹雪の中で支障を来すどころか自由自在に動いており、女性は刀身にだけ炎を纏わせてるが、それでも十分に動けるように全身に熱の膜を被ってるが、女性は男と比べて自由自在にまでは動けていないのだ。

 

「…………っ」

 

「ハアァァ……」

 

 互いに睨み合い、女性はジリジリとゆっくり、慎重に男との距離を縮めて行く。

 吹雪が視界を悪化させるせいか、男を見失うような感覚あった。

 だが、幸いにも男はただ佇むだけだ。

 女性の動きを注視してるわけでもなく、警戒してるわけでもない。

 ただ、ジッと見てるだけ……。

 それが、女性にとって騎士の誇りを刺激する。

 自分は、警戒に値する価値はなく、いつでも捻り潰せると、古代ベルカの乱世の時代を生き抜いてきた自分を軽んじてる事に怒りを感じた。

 

 ――ザッ!!

 

 互いの間合いが重なり合った時、女性は足に力を込めて、レヴァンティンを一閃させる。

 

「紫電、一閃!!」

 

 渾身の一撃、最悪の環境の中にも関わらず、出せた一撃は女性自身満足出来る一撃だ。

 しかし、その最高の一撃を何ともないかのように、双剣を振る事で防ぎ、女性の愛剣を弾き飛ばした。

 

「な、に……」

 

 女性は何が起きたのか、男が何をしたのか、理解出来ず、理解しようとせず、ただ唖然とするばかりで、男は何も言わずに蒼い炎で女性を焼きながら飛ばす。

 

「っ!! ガァァアアアアアッアアアァァァアアアアッ!!! あつい、アツイ、熱いッッッ!!!」

 

 ゴロゴロと積もってる雪で炎を消そうとするが、女性が雪に近付くだけで雪は蒸発して、全く消す事が出来なかった。

 自らも炎を操る為、炎熱の耐性を持つ女性だが、耐性すらも越えて身を焦がす蒼い炎に、女性はとうとう恐怖し始めた。

 

「ハアァァ……」

 

 男は無様に転がる女性を見続け、ゆっくりとした動作で右手を女性に向ける。

 それと同時に、右腕を囲うように4つの魔力の棒状の塊が、腕輪のように展開して砲台と砲身を作ると、中心に凄まじいエネルギーが収束される。

 

「ッッッッッ!!!!!」

 

 すでに喉が焼かれて、声が出せないのか口を大きく開けて苦しむ女性に向けて、男は収束したエネルギーを撃とうとした瞬間、男の胸からリンカーコアを取り出した手が現れるが、男は気にせずにエネルギーを撃った。

 

 ――ドシュゥゥウウウウウウンッ パリィイイインッ!!

 

 

 

 

 

 第三話 蒼き葬炎を纏いし者

 

 

 

 

 

 女性がエネルギー砲に撃たれる少し前、女性の仲間が遥か遠くで男の魔力の源であるリンカーコアに干渉していた。

 

「捕まえ、た!! 今よ、蒐集して!!」

 

 自身の愛機が繋げた場所に躊躇いなく手を突っ込み、男のリンカーコアに触れた感触を感じて、傍らの本に蒐集するように命令するが、、、

 

『エラー。出来ません』

 

「……え、嘘…………なん、で?」

 

 本から聞こえてきたのは、蒐集出来ないという報告だった。それもその筈だ。

 本、闇の書は、同一個体から蒐集出来るのは一回きりであり、今、女性に止めを差そうとしてる男は、一度蒐集を受けた存在なのだ。

 いくら蒐集させようと、出るのはエラーのみ。

 そしてついに、仲間は男の砲撃に撃たれた。

 

「シグナムッ!!」

 

 ――パリィイ…ンッ!!

 

 何かが割れた音は、シグナムと呼ばれた仲間の方にも聞こえ、顔を真っ青にしてすぐに仲間の下へと転移をした。

 そこに仲間を圧倒的な力で倒した男が居ると言うことを忘れて、だが、シグナムの仲間、シャマルがシグナムの下へと現れた時、男の姿は何処にも見当たらなかった。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 とある一軒家。

 表札には八神と書いてあり、その一室に蒼い炎を纏った少年と戦ってたシグナムが静かに眠っていた。

 蒼い炎で焼かれた身は、シャマルによって癒され、いつ目覚めても良いはずだが、シグナムは目覚める事はない。

 そもそもあの戦いから数時間、数分の戦いとはいえ、あそこまでのダメージを受け、状況も戦乱の世とは違う為、自分達の主にシグナムの修復を頼む事は出来ない。

 それは主が、自分達をどうでもいいと思ってる訳ではない、むしろその逆で、頼めば修復してはくれるだろうが、頼んだが最後、自分達がやってる事がバレてしまう事を恐れてるのだ。

 

「シグナム……」

 

「……すまねぇ、アタシがもっと早く駆け付けていれば……」

 

「それを言うなら、私の方だ。 仲間を守れずして何が守護獣か、何が盾か!!」

 

 眠るシグナムを見詰めて、(おの)己が無力さを痛感する赤い髪の少女、ヴィータと青い狼のザフィーラ、二人の言葉に首を横に振ったシャマルは、自分の判断が間違ってた事を言う。

 

 シグナムが劣勢の時、すぐに二人に連絡を取っていれば――

 

 闇の書に蒐集を命令せず、自分も戦闘に参加してシグナムをサポートしていれば――

 

 ――こんな事にはならなかった、と。

 

「ん、……う、ここ、は……」

 

「シグナム!!」

 

「シグナム、気が付いた?」

 

 シャマルが自責の念に囚われてると、ようやくシグナムの意識が戻った。

 ヴィータやシャマル、ザフィーラがシグナムに寄ってくるが、シグナムは何故3人が自分を見て安堵してるのか、そして此処が何処なのか(・・・・・・・・・・・)分からないでいた(・・・・・・・・)

 

「シャマル、ヴィータ、ザフィーラ……聞きたい事があるのだが……」

 

「何?」「何だ?」「どうした?」

 

「此処は何処だ? ソフィア様は何処に居られる?」

 

「「「…………」」」

 

 3人はシグナムの言葉に固まるしかなかった。

 

 

 

 

 

 ☆☆

 

 

 

 

 

 カイトの目覚めはとても遅かった。

 病み上がりだから仕方はないが、蒼炎が独自に動き出した為に、身体が酷く疲労してるのだ。

 カイトの申告に正体不明の疲労感の原因を調べようと、アウラはカイトの体を検査するも何も分からなかった。

 

「3日も寝たっきりだったから、かなぁ?」

 

『多分、そうだと思うのだけど……』

 

 普通ならばカイトの言葉に一理はあるが、アウラはそう判断するのを躊躇う。

 それはアウラの中で、何かを感じているのだが、その何かが分からなかった。

 

 ――コンコン。

 

 アウラとカイトが考え事をしてると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

 カイトはチラリと時計を見て、短針が1を差そうとして、長針が9の所を差してるのを確認して、もう昼食の時間かと思いながらも、どうぞと声を掛けた。

 

「おはようございます、篠崎様。お食事をお持ちしました」

 

「あ、ありがとうございます、鮫島さん」

 

「いえいえ、では此方に置いておきます」

 

 そう言って鮫島は、夜にカイトが土鍋を置いた机の上に美味しそうな昼食を乗せていく。

 

「では、ごゆっくり」

 

 鮫島が部屋を出ると、カイトは静かに昼食を取り、The Worldにインしてこれから共に戦うであろう仲間とダンジョン攻略していった。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 

 夕方。

 アリサが昨日言ったように、なのは達が見舞いに来た。

 なのはが部屋に入った瞬間、何故かなのはは驚いたような顔をしたり、首を傾げてたり、いきなり念話で話し掛けてきたり、夜に公園まで来てくれと言われた。

 まぁ、変に隠すことでもないし、念話で答えれることだけ答えて、夜に公園なんかに行ったりしたけど、今は後悔してる。何故なら現在進行形で僕はミッドチルダという世界の魔法の軍だか警察だか、時空管理局という人達に囲まれてる。勿論、結界の中で……。

 

「…………あー、いい加減、説明してくれると助かるなぁ」

 

「君が所持してる黄昏の書というのは、文明が進みすぎて滅んだ世界の遺産、ロストロギアの可能性がある。悪いようにはしない、その黄昏の書を渡してくれないか?」

 

 あー、うん、えーっと、何を言ってるのか分からない。

 

 僕を囲ってる人達の代表として、僕と同い年くらいの男の子に、黄昏の書を渡せと言われても、はい、そうですかと渡せないし、黄昏の書―――アウラは僕を頼ってきたわけで、引き受けた事を中途半端というかまだ何も始めてない事を早々投げ出すわけにはいかない。

 世界の危機、聞けば闇の書は時間を置けば置くほど手が付けられなくなるし、スケィス達の動きがわからないのだ。

 

 だから――

 

「君達の要求を聞く気はないよ」

 

「なら、力づくになってしまうが、良いか?」

 

 男の子がそう言うと、僕を囲う人達はチャキッとデバイスを此方へと向ける。普通ならば、相手が行動を起こした時の為に、その行動は正解だ。何が起きても対処出来るように、ね。

 ――しかしだ。

 しかし、僕の中には主である僕を守護する蒼炎が宿ってるし、心の中にはアウラが居る。アウラの演算処理能力で、コンマ1秒で一帯を焦土にする魔法を放つ事が可能で、蒼炎はコンマ1秒~5秒で全員を気絶させる事が出来る。でも、此処で敵対しても意味はない。と言うよりも、敵対してしまえば今後にデメリットが有りすぎる。

 だから此処は妥協案といこう。

 

「黄昏の書が消失世界の遺産だったとしても、すでに契約は成されているし、この場で戦闘行為に入るならお互い無事ではすまない。だから黄昏の書を調べる事には協力するから、君達も僕の用事に協力して欲しいな」

 

「…………確かに、此処で戦ってまで黄昏の書を確保するには厳しいか。調査に協力してくれるなら、是非もない。危険性が無ければ、君が持っていても問題は無いしね。ただ、君が言う用事って?」

 

「世界を救う。今、世界を脅かす存在が9つ確認されてる。まぁ、これは黄昏の書から得た情報なんだけどね」

 

 僕が世界を救うと言って、全員が全員、何を言ってるんだ? という表情をした。まぁ、その反応もそうだよね、普通は誰もが子供の戯言(ざれごと)と思うだろう。

 だけど、そこに少量の情報と黄昏の書からの情報と付け足せば? 少なくとも子供の戯言とは思われない。

 現に男の子の顔が変わったしね。

 

「……君の言葉だけじゃ、流石に協力の約束は出来ない。だから黄昏の書を調べて、君が嘘を言ってなかったら、その時は協力しよう」

 

「ああ、それで構わないよ。じゃあ、ちょっと待ってね」

 

 アウラに頼んで黄昏の書に、今後の予言めいたページを作ってもらって、黄昏の書を体から出してもおうとすると―――

 

「いや、悪いけど一緒に来てくれ。こちらも少々ごたついててね。あまり時間がない」

 

「了解。んじゃ、なのは。ちょっと行ってくるから、アリサの説得お願いね」

 

「にゃ!?」

 

「いや、助かったよ。4日前から心配させてて安静にしなさいと昨日言われたばかりでさ」

 

「え?」

 

「僕から説明しても良いんだけど、説明する途中に怒りかねない」

 

「あの……」

 

「それだと時間がない彼らを待たせてしまう……それは頂けない。だから頑張ってね」

 

 ニッコリと笑顔でアリサの怒りの矛先になってもらうように頼むが、なのはは目に見えて慌て始める。それだけアリサの怒りは怖いのだろう。僕も、同じ気持ちだ。代わってあげたいけど、僕が着いていかないと駄目らしいから、残念で仕方ないよね。

 

「頼んだよ、なのは」

 

「クロノ君も!?」

 

 なのはに追い討ちを掛けるように―――まぁ、本人に自覚はないけど―――男の子、クロノはなのはの肩をポンポンっと置いて、僕達は公園から消えた。

 

「アリサちゃんになんて言えば良いの!? ううぅぅ、にゃ~~~~~~~~~っ!!」

 

 なんか、なのはの叫びが聞こえた気がしたけど、気のせいだ、そうだ、そうに違いない。

 

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