カイトとアルフの模擬戦が終わった数分後、気絶したカイトは眼を覚まして自身が負けたことを理解して、次は凰花の番だったなと思い凰花を呼び出したと同時にクロノが医務室の扉を開けて入ってくる。
「身体の調子はどうだ……」
「ん~!! 久々の外だね♪」
「凰花なら大丈夫だと思うけど、あまり無茶しちゃダメだよ? あ、クロノ」
カイトに身体の具合を聞こうとしたクロノが、魔力反応も無しに呼び出されたアルフと同じ獣耳をした女性―――凰花を見て警戒心を強める。
それは、カイトと比べるも
そしてクロノは思った―――
―――戦力は理解したから騎士プログラムの凰花を測る意味はもはや無意味。というか、戦って負けたらどうなるかわからない―――と……。
第五話 破滅の序章
カイトが時空監理局でクロノ達と話してる頃、アリサは怒りを隠しもせずになのはとすずかの二人にThe Worldの遊び方をレクチャーしていた。
「モンスターはこうやって、こうやって、こうやって、こうやって、こうやって、こうやって、こうやって、こうやって、こうやって、こうやって、こうやって……こうやるのよ!!」
ザシュザシュザシュッ、と初心者エリアでモンスターをメッタ刺しにしているアリサ。
怒りの捌け口としてアリサの相手をしてるゴブリンのHPは0になっても攻撃の手を止めてもらえず、端から見ていたすずかは苦笑し、なのはは若干泣きそうなくらいガタガタと震えていた。
「よう! やってるか? って荒れてるな……」
「「ど、どうも……(アリサちゃんの友達かな?)」」
荒れてるアリサに物怖じせずに近付き、声を掛ける筋肉質で右肩のみ鎧を着けてる戦士。
なのはとすずかはオドオドしながらも返事を返し、アリサはちょっと振り向いた後、ふんっ!と顔を前へと向ける。
「何しに来たのよ、康彦」
「にゃ!?」「や、康彦くん?」
「おいおい、ここでリアルの名前はマナー違反だろ」
「康彦は康彦でしょうが!!」
「あ、まだ言うか。ここはThe World、素敵な自分。もう一人の自分。俺の名前はオルカ。リアル名呼び禁止。あと、オルカは居るか? ってのもダメだ。因みに職業は剣士な」
いきなりのアリサの暴露に驚く、なのはとすずか。
本来ならばこう言った場所でのリアル名は言わないアリサに康彦は、これは相当だな……と左右に首に振り、初心者の友人二人が真似してはいけないと思い、The World内での名前を名乗る。
「はぁ……改めて私も名乗るわ。フレイムよ。アリサ呼び禁止ね。あとバーニングなんて呼ばせないから!! 職業は重剣士よ」
「んで、お二人さんの名前は?」
「私はルナ、職業は剣士です」
「私はサクラだよ。魔法、、じゃないや……えっと呪文使いだよ」
「これで自己紹介してないのは、カイトだけだな」
「良いのよ! あんな恩知らず!!」
「あ、ははは……」
「う、うぅ~……」
自己紹介を終えた四人は、再びダンジョンの中を突き進んでいく。
時に罠が掛かってる宝箱を開けようとしたサクラを止めて説明したり、開けた場所でモンスター達に分断された時に、初心者二人を落ち着かせて勝利に導かせながら、自らの敵を殲滅したり、二人のHPを小まめに回復させたりと、
「此処がダンジョンの最深部にして、アイテム神像……冒険の最終到着地点よ」
「このアイテム神像は、各エリア毎に設置されていて、中の宝箱はレアアイテムが入ってるんだ」
「此処の宝箱は……そうね、サクラに譲るわ」
「にゃ!? いいの?」
「ああ、ネタバレするとこん中に入ってんのは、呪文使いの装備アイテムなんだよ」
「じゃあ、なの……サクラちゃんしか有効活用出来ないね」
「う、じゃじゃあ……」
そしてサクラが立ち上がり、オルカ達の方へ振り向いた時、エリア全体を揺るがす―――いや、リアルにいる自分も外が揺れてるんじゃないかと思うほどの揺れを感じた。
「何?」
「地震か? いや、違うな……」
「イベントとか?」
「イベント?」
「いや……」「それはないな」
ルナの言葉にサクラは首を傾げ、オルカとフレイムはソレを否定する。
何故ならThe Worldを管理してるCC社はプレイヤー達になんの知らせもなく、イベントを実行するなんて事はなく、突発的に始めたとしても運営からのショートメールが送られてくるはずで、さらに初心者が集まるようなこのエリアが古参が居るとはいえ、イベントに強制参加させることはないからだ。
「此処は初心者エリアだ。イベントが始まったとしても、初心者も参加させるなんてナンセンスだ」
「そうなるとサーバートラブル? 早く此処から出てタウンに戻りましょう」
言うが早いか、フレイムはインベントリから精霊のオカリナと呼ばれる、ダンジョンの中でも一瞬にしてタウンに戻れる帰還アイテムをルナ達に渡し、同時に発動させる。
転移の輪がフレイム達を囲って転移させる。
だがフレイム達が目にしたのはタウンのゲート前ではなく、ポツンと浮いてる小島くらいの大きさの地面のエリアだった。
「何!?」
「嘘……どういうこと!?」
「え? え?」
「なになに!?」
まったく訳のわからない場所に転移させられて、戸惑うフレイム達の前に一体の黒いモンスターが現れた。
それはどこか石のようで―――
それは本当に生きてるようで―――
それは黒く―――
それは赤い十字の杖―――
それはマジマジと自分の死を―――
―――――――――死を感じさせる程の化け物。
――――――其は、第一相
【ォォオオオオオオーーーーーーッ!!】
「なんだ、これ?」
「分からないけど、やらなきゃヤバイってのは分かるわ。なのは、すずかは直ぐにログアウトしなさい!! 経験値とかレベルとかアイテムとか言ってる暇はないわ!!」
「っ!! アリサちゃんと康彦くんは!?」
「俺達はお前達のログアウトが確認しだいログアウトするさ」
「だ、ダメだよ!! 私達でも分かるよ? あのモンスターは普通じゃないって!!」
「良いからログアウトしなさい!! 私達はね、The Worldの古参なの。初心者のあんた達を守る義務があんのよ!! 行くわよ、
「応!! 先に行くぜ!!」
地面を蹴り、一跳びでスケィスに近付いて剣を突き立てるフレイムとオルカ。
しかしスケィスに表示されるのはダメージ表示ではなくmissばかりで、当たったとしても文字化けしてるHPは正規の数字を表示されてなかった。
「こいつ、やはり普通じゃねぇ……」
「こうまで攻撃が効いてないなんて……チートね。 ――オルカ!!」
「応!! 任せときな!!」
フレイムの呼び掛けに長年の付き合いで瞬時に理解して、オルカはインベントリから大量のアイテムを放出する。
それはオルカとフレイムの移動速度、物理攻撃、物理防御、物理命中、魔法攻撃、魔法防御、魔法命中や一定時間HP、SPを小回復する強化アイテムだ。
オルカに合わせてフレイムもインベントリから、ありったけのアイテムを使用して目の前にいるスケィスに状態異常とステータスの弱体化を試みるが、スケィスにはまったくと言って良いほど効果がなかった。
「ッ……予想はしてたけど、少しくらいは効きなさい、よっ!!」
「でぇええええええいっ!!」
斬る、突く、逸らす、薙ぐ、オルカとフレイムによる波状攻撃がスケィスに攻撃させる隙を与えずにいた。
絶対に通すわけにはいかないと、後ろから感じる恐怖に呑まれた親友達を助ける為に、オルカとフレイムは自身を犠牲にしてまでもコレを打倒ないし撃退することを使命として立ち合う。
一合、二合、三合、四合とコントローラーを握る手は汗まみれで、いつコントローラーから手が離れるかわからない、もし離れたら取戻しが効かないと恐怖と戦う本能に刷り込むように刻むようにコントローラーを操作していき、そして―――
――――とうとう、アリサの手からコントローラーが滑り落ちた。
「しまっ!!」
「アリサッ!!」
「「ッ!! アリサちゃん!!」」
フレイムの動きが揺らいで、オルカは「まさか!?」と頭に最悪の考えが過り、フレイムを助けようと動こうとするが、先程使ったスキルの反動故に動けないでいた。
サクラとルナも初心者にもわかる程の隙を見せたフレイムに駆け寄ろうとするが、未だに根強く心にある恐怖で足がすくんで動けず、ただただ襲われてるフレイムを見るだけしか出来なかった。
「ガッ!! ぐっ!? ッハ!!」
先程のお返しと言わんばかりに、赤い十字の杖を振るうスケィス。
そしてフレイムの周りに緑色の膜が現れ、スケィスの一撃によってその膜は砕かれ、弾けた。
《PROTECT・BREAK》
「え、何……何よ、これ……私、こんなの知らな……」
フレイム―――アリサの視界にPROTECT・BREAKの文字が出現し、困惑するアリサ。
身体中を走る恐怖に駆られて、咄嗟にFMDを外してリアルへと戻った―――――いや、戻ろうとした。
「
「「アリサちゃん!!」」
しかし、アリサの目の前にはやけにリアルなThe Worldの今襲われてるエリアにアリサ自身がそこに居た。
オルカの必死の叫び、サクラ、ルナの涙声にアリサの頭は真っ白になり、次第に身体がガタガタと震え、口からは上手く言葉を出すことが出来なくなった。
そしてアリサの身体は宙へと浮かび上がり、背後には赤い十字の杖があるのか、アリサの視界の端に赤く光ってる肩が見え、腕は横に、まるで十字架に
前を見ると正面にスケィスと向き合い、スケィスの後ろには此方に駆けてくオルカ。
スケィスは片手をアリサに向けて、歪な腕輪のようなモノを広げて大きな砲身を展開すると、そこからエネルギーがアリサを貫いた。
「アリサァァアアアアアアアアアアアッッ!!!」
「「いやぁぁああああああああああーーーーーーーっ!!!」」
エネルギーによって貫かれたアリサは、炎を散らして完全に
大切な親友を目の前で失い、二人の少女は互いに抱き締め合い悲しみ、オルカは大きな虚無感が心を支配した。
そう、大切な親友を消去した化け物が居る前で……。
スケィスはその手に持つ赤い十字の杖でオルカに攻撃すると、先程フレイムを囲った緑色の膜が現れては弾けて、フレイムの後を追うようにオルカの身体にもエネルギーが貫かれた。
「あ……」
「やす、ひこ……くん……あぁ、、ぁ……」
二人の心の中に、大きな亀裂が走るのを感じ、瞳から光が消える。 次は自分達だという一つの確信めいたモノを感じてその時を待ち、スケィスも抵抗する気がない二人に赤い十字の杖を振り下ろそうとしたその時――
――『強制ログアウト』
男のような素っ気ない声がエリア内に響き、サクラとルナを強制的にログアウトさせることでスケィスを救った。
そのあとのケアも忘れずに、失った二人は必ず助けるというメールを送信して―――。
そして標的を失ったスケィスは、辺りを見渡した後、誰も居ないことを確認してエリアから消えた。
翌日の朝――海鳴市にゲーム中、二人のプレイヤーが意識不明の状態で見つかったと言うニュースが流れた。
そして聖祥大付属小学校に、アリサと康彦の姿は何処にも見られなかった。