魔法少女リリカルなのは//黄昏と薄明   作:悠畏

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第七話

 私が目を覚ますと、そこはダンジョンの最深部であるアイテム神像の前だった。

 何故此処に居るのか……私は寝惚けて(もや)が掛かってる頭を左右に振り、脳を無理矢理叩き起こす。

 

 未だに状況処理が追い付かない頭で、学校が終わってからの行動から思い返す事にする。

 アリサちゃん達の見舞いを終えて、家に帰り、The Wordに入った……此処までは何とか思い出せたが、問題はどうやって初心者の私が一人で、ダンジョンの最深部しかもアイテム神像の前に居たのか……。

 

「………………?」

 

 ひと、り?

 

 そんな筈はないと、また寝惚けているであろう頭を振る。

 すると今度は自分がフィールドを駆け、ダンジョンの中へと入った記憶が甦る。

 そして自分の他にももう一人居たのか、記憶の中の自分は不機嫌ながらも誰かのチャットに反応して返してる。

 それが誰なのかまだ思い出せず、すずかはまた記憶を遡らせる。

 フィールドに着いた所よりさらに前へ、ログインした後だ―――そう、私は誰かに声を掛けられた。

 男に耳元を(くすぐ)るような声、彼は私にこう言った筈だ―――

 

 ―――――Welcome to The Word(ようこそ、The Wordへ、歓迎するよ、ルナ).

 

 

 

 

 

 第七話 伝説の都

 

 

 

 

 

 

 カイトが苦しみだした少し前――

 

 カイトの中では、カイトとアウラが困惑していた。

 

「アウラ、これは!?」

 

「わからない。進化プログラムが主の体の主導権を取るなんて……今までこんなことなかった」

 

 アウラは周囲に半透明の画面を出して、黄昏の書、蒼炎の進化プログラムを隅々まで調べると、主進化プログラムの案件の所でアウラの指が止まる。

 

「並行、並列世界からの主の可能性摘出。蒼炎の武神、蒼炎の魔導師、蒼炎の勇者、蒼炎の守護神……嘘、こんな進化許可出してない」

 

「どうなってるの?」

 

 青ざめたアウラの顔を見たカイトが、事の重大さに察してアウラに問い詰めると、アウラは静かに答えた。

 

 パラレルワールド……SF映画なので昔使われていた設定。

 ifの世界、もしもの世界、可能性の世界の事で、一つの世界に付き縦と横にずっと続く限りなく近く限りなく遠い世界。

 

 蒼炎の進化プログラムは、そんな世界から僕の可能性をそれも未来の僕のステータスを今に反映してるらしい。

 それが人の形をしていない姿の僕でさえ……。

 

「え? っと……もしかしてヤバい?」

 

「今から進化プログラムを停止させる。けど、完全停止は出来ないからカイトがあの子を抑えてないといけない」

 

「アウラは出来ないの?」

 

「既に私の手から離れてるから、私の干渉は表面程度の干渉くらいしか出来ないのごめんなさい」

 

「…………まぁ、早い段階で異常が見つかっただけ良しとしよう。とりあえず早く進化プログラムを止めないと」

 

「今、身体の主導権をカイトに戻してる」

 

「ありがとう、アウラ」

 

 カイトがアウラにお礼を言うと、アウラは顔を左右に振って自分が悪いと言ってカイトを送り出した。

 

 

 

 鋭い眼光は突如として力を無くし、カイトの姿も継ぎ接ぎだらけのバリアジャケットから、元のノーマルなオレンジの冒険者風の服へ戻った。

 

「奴からの圧力が消えた?」

 

「ヴィータ、今のうちに撤退をするぞ」

 

「あ、ああ」

 

「させない!」

 

 カイトという脅威が無くなり、転移して去ろうとするザフィーラとヴィータに、フェイトが肉薄するがあと一歩という所でザフィーラ達の体は消えた。

 それと同時に街を覆っていた結界は消え、フェイトらも一時撤退をせざる得なかった。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 猫型呪文使いPC、マハ。

 彼との出会いは普通だった。

 現在のThe Wordでは、絶対にエディット出来ないPC。

 異常な光景なのに彼は堂々としており、彼と会話してるプレイヤーは彼の姿を驚く事なく受け入れており「猫の獣人型PCですか」と言ってるし、運営側のNPCとも商談が成立し、GMからも注意されてなかった。

 異常だけど異常と認知されない異常。

 だからだろうか? 異常だったあの出来事を経験した私は、異常すぎる彼とメンバーアドレスを交換した。

 

「ルナ? おーい、ル~ナ~」

 

「え、あっ何? マハ」

 

 私が彼の出会いを思い出してると、横からマハが顔を出してきて少し驚く私をマハはクスリと笑って「驚かせてゴメンね」と言ってきた。

 マハが笑う仕草に、マハの優しい声に心が落ち着くのがわかる。

 マハも落ち着いた頃合いを見計らい、もう一度謝った後に「どうしたの?」と聞いてくるのを私は首を左右に振って「なんでもないよ」と答える。

 

「それでどうする? 黒いモンスターの手掛かりだけど、BBSにもないし、ルナが書いたスレにも荒らしが沸いてるだけだ」

 

「情報がないなら無いで良いよ。私達みたいな思いをする人がまだ居ない証拠だからね。それに今の私なら時間に囚われる事なくエリアを攻略出来るもん」

 

「……わかった。じゃあ、次のエリアに行こう! Δ(デルタサーバー)失われし 次元世界の 黄金郷へ!!」

 

 失われし 次元世界の 黄金郷か……なんだろう? 他のワードに比べると異質な気がする。

 

 カオスゲートに、マハが言ったワードを入力して私達はタウンから転移した。

 

 

 

 転移した先は滅びた世界と言っても過言じゃないようなエリアで、黄金郷の名に相応しいとは思えなかった。

 まぁ、別にワードとエリアの関連性なんてないんだけどね。

 でも此処って……

 

「ロストグラウンド……だよね?」

 

「そうだよ……此処は『隠されし 禁断の 』が付かないCC社が発見した新たなロストグラウンドさ。このエリアの名前は『伝説の都・アルハザード』」

 

 アル、ハザード……。

 

 頭の中でアルハザードと繰り返し呟き、マハと共にエリアを調べる。

 数時間経過してもなにもなく、タウンに戻ろうかとした時、カチャリという音が聞こえて振り返ると、先程まで閉じてた筈の教会の扉が開いていた。

 

「どうする? ルナ」

 

「……行ってみよう」

 

 マハの問いに答えながら、恐る恐る慎重に教会へ向かう。

 教会の中に入ると、扉から少し離れた所で母娘(おやこ)と思わしき人が倒れていた。

 私はすぐさま駆け付けて、マハに最上位の回復スキルを使うよう指示を出す。

 

「マハ! ファラリプスとリプメインを!!」

 

「任せて! リプメイン、ファラリプス~」

 

 杖を二、三回程頭上で回して振り降ろすと、倒れてる母娘が光に包まれる。

 正直、母親の方は助かるとして、娘さんの方は手遅れだと勘めいたモノが囁くが、気持ちとしてどうしても助けたかったのだ。

 

「体力はどうやら全快したみたい」

 

 光が収まり、母親の方を調べると病魔に侵されてる事と、体力が一桁台だったのが一気に全快してるのを確認する。

 流石は最上位の体力回復スキル、ファラリプスだ。

 マハに母親の病について、全ての状態異常の治療スキルであるリプパラムで治るか試してみるように言い、私は娘さんの方を見るとかなり驚いた。

 

「フェイ、ト……ちゃん、だよね?」

 

 そう、倒れていた娘さんは、以前友達に教えて貰い、ビデオレターまで見せてもらった画面の向こう側に居た子と同じ容姿をしていたのだ。

 他人の空似と言われればそれまでだし、私もフェイトちゃんと直接会ってないから確証は持てない。

 

「ルナ、何か……聞こえる」

 

「え?」

 

 マハの言葉に思考の海から戻ってくると、何かの鳴き声が確かに聞こえた。

 

「此処は危ないかもしれない。外に出よう! ルナはその子を抱えて!」

 

「うん!」

 

 マハが黒髪の女性を抱えて、私は金髪の女の子を抱える。

 女の子の体は濡れているが、仄かに体温が感じられ、体が小さく動いてる事から蘇生に成功したことに初めて気が付く。

 

「喜ぶのは後にした方が良いかな……」

 

 マハと一緒に教会から急いで外に出る。

 

 《ポーン》

 

「「ッ!!」」

 

 エリア全体にハ長音のラ音が響いた。

 

【キュイッ! キュィイイ!!】

 

【ウオオオォォォォォォ……】

 

【コォォオオオオオオオ!!】

 

「「!!」」

 

 教会から出ると私達の目の前から存在を主張するかのように半透明の海月(くらげ)みたいなモンスターと、緑色の斑点が着いたワイバーン、紫色の海月モンスターが現れた。

 

「なに、これ?」

 

「…………」

 

 見たことも聞いたこともないモンスター。

 この三体がアリサちゃん達を意識不明にした黒いモンスターの仲間だとして、私とマハにはこの三体のモンスターを倒す(すべ)はない。

 仮に私達が抱えてる人達が目を覚ましていたとしても、目の前のモンスターを倒すことは不可能だろう。

 ゲームという枠から抜けた今の私達では……

 

《ポーン》

 

 三体のモンスターにどうするか迷ってると、ハ長音のラ音がまたエリア内に響いた。

 最初はモンスター達の援軍かと思ったが、新たなモンスターが一向に現れない。

 そして透明の海月が動き出すと、突然空から一筋の光が透明の海月を突き刺した。

 

【キュァァアアアアアアアアアッ!!!】

 

「なんだ!?」

 

 透明の海月モンスターを裂いた光の先を見ると、そこに居たのは蒼い剣を降り下ろした純白の翼を(たずさ)えた銀髪の男の人が居た。

 

《ポーン》

 

【コォオアアアアアアアアッ!!】

 

「今度は何!?」

 

 またエリア内にハ長音のラ音(あの音)が響き、すぐさま紫の海月モンスターの真下―――地面から光が沸いてモンスターを切り裂き、そのモンスターは断末魔を上げて消えた。

 そして紫の海月モンスターが居た場所には、緑色の肌をした屈強なバーバリアン風のオルカに似た人が佇んでいた。

 

「ハアァァァァァァッ!!」

 

「ディイイイイイヤッ!!」

 

 モンスターが現れて、二人の戦士が現れて一瞬。

 瞬く間の内に二体の海月モンスターが崩れ掻き消え、最後のワイバーン型のモンスターを上と下から斬撃で倒す。

 二つの剣線はゆっくりと右側と左側に()れて行き、十字(クロス)を描いてワイバーンと共に消滅した。

 

「……なんとか倒せたな」

 

「ああ、完全にあの因子が回っていたら、司とあいつしか倒せないからなぁ。それはさておき、御嬢さん(がた)は御無事ですか?」

 

「あ、はい……」

 

「うん、僕らは平気だけど……」

 

「ん? 君は……」

 

「?」

 

「いや、何でもない。 きっと気のせい……だろ」

 

 純白の翼を持つ騎士が私の方を見て小さく言葉を漏らし、暫くして首を左右に振って何でもないと言ってきた。

 私としては何が何でもないのか、人の顔を見て首を左右に振って否定とか失礼ですと言いたかったが、先ほど命を助けてもらった為にグッと我慢する。

 そして私は隣のバーバリアンの戦士を見て、泰彦くんを思い浮かべる。

 緑の肌に蒼い肩の鎧、手に持つは泰彦くんのとは違うけど泰彦くんと同じ職業の片手剣。

 そして何よりも彼の声……似ているなんて言葉で片付けて良いものではない。

 偶然なんてもっての他だ。

 似すぎている。

 泰彦くんとバーバリアンの戦士。

 オルカと彼が……。

 

「僕はマハ。呪文使いだよ」

 

「私はバルムンク。此方がオルカだ。見ての通り剣士をしている」

 

 ッ!!

 

「つっても今じゃ傭兵みたいなもんだがなって、どうした? 俺の顔に何か付いてるか? もしかして……俺に惚れ」

 

「ないな。あまり自惚れない方が良いぞ、オルカ」

 

「んだと、この野郎。自分はイケメンだからって……これでもなぁ」

 

「はいはい、わかったから……続きは……聞い………」

 

「な…………。 ……、まぁ……」

 

 彼、オルカの名前を聞いて思考が、息が止まる。

 泰彦くんに似たアバター、私の今の現状、泰彦くんのアバターと同じ名前、泰彦くんと私のリアルの現状は? ぐるぐると答えが出そうで出ない問答が出ては消える。

 そして次第に薄れ行く意識の中、私は――――…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………―――倒れた。

 

 

 

 

 

 ☆☆

 

 

 

 

 

 なのはをアースラに招き入れて、僕はすぐに取調室へと連行された。

 今、取調室に居るのは執務官のクロノと僕だけだ。

 

「君を此処に連れてきた理由はわかるね? 単刀直入に言うよ……アレはなんだ?」

 

「んー、主進化プログラムの暴走? 僕もよく分かってないんだよね。魔導書の管理プログラム曰く、ヴォルケンリッターに襲われた事で恐怖心が芽生え、その恐怖心を癒そうと蒼炎の進化プログラムが原因を排除しようとした……んだと思う」

 

「ああ、その話を聞いて僕もそう思うよ。あのプログラムが守護騎士達に向けた目はそう言う目だった」

 

 はぁ……と息を吐いて頭を抱えるクロノ。

 多分彼の頭の中では、闇の書と高い確率で安全だった黄昏の書が実は暴走してましたって事で頭が一杯のはずだ。

 実際、僕でもこんな状況じゃなかったら頭を抱えたい。

 

「とりあえずその進化プログラムが勝手に暴走しないか、監視する必要があるな。問題なければ前線に復帰してくれ」

 

「りょーかい」

 

 やはりと言うかなんと言うか、当分は前線に行けないみたいだね。

 まぁ、此方としてもラッキーかな? あっちで少し困った事になったからね。

 

 海鳴市の月村家の次女である月村すずかが、The Wordをプレイ中に意識不明になった。

 そして次元世界の一つに、月村すずかが使用していたアバターに似た剣士と猫型の呪文使いが居たという報告。

 

「何がなんだか……なのはには言っとこうかな? いや、でも……」

 

「? どうしたんだい?」

 

「あ、いや……守護騎士達の報告でね。まだ詳しく調べる必要がありそうなのが何件か……」

 

「そうか、何かわかったら報告をくれ……闇の書であれ、禍々しき波の情報であれ」

 

「わかってるよ。僕も一人でどうこう出来るなんて思ってないからね」

 

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