ドリフターズの島津入れたかっただけ。
※pixivにもあげています

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一発ネタ。ドリフってほしいから続かない。薩人マシーンVS鬼fight!!


プロローグ

 西暦1600年、場所は関ヶ原。国は2つに、徳川率いる東軍と石田率いる西軍に別れていた。戦場では鉛玉が飛び交っている。その中を駆け巡った誰かの首が飛び、腕と足を切り落とし、何処かでは阿鼻叫喚の光景が繰り広げられ、また何処かでは勝利の咆哮を上げていた。

 

 時は戦国、天下分け目。一世一代の大勝負の真っ只中、集団は駆けていた。掲げる家紋は丸に十文字。薩摩を根拠地とした武士である。既に西軍は東軍に敗れ、西軍の各部隊は敗走を始めていた。敵中に孤立した島津の武士たちもまた、退却することを心に期した。

 

 300の兵は薩摩へと走り出し、それを追いかけるのは東軍の軍勢だった。馬の(いなな)きが、(ひづめ)の音が徐々に、確実に近付いた。近付く相手に立ち向かったのは一人の若者だった。赤い衣を身に纏った若武者は、太刀を鞘から引き抜いた。もう逃げ出すつもりはないようだ。若武者を呼び止めようと声を上げた。

 

豊久(とよひさ)っ!退くのじゃ……ッ!豊久!豊久ッ!!豊久ぁ……ッ」

 

 逃げて逃れて 烏頭坂(うとうざか)。軍勢は今や目の前だった。豊久は相手に聞こえるように叫ぶ。

 

「お退きあれ!!おじ上!!お 退()きを」

 

 ここはお(とよ)におまかせあれ、豊久は振り返ることはない。覚悟はとうに決めていたようだった。だが、 血縁(叔父)はそれをよしとしない。叫ぶような互いの会話が繰り広げられる。

 

「お前も帰るのじゃ、薩摩へ帰るのじゃ!!豊久ッ!!」

 

「帰りたかです、死ぬるなら薩摩で死にたか。でもおじ上一人薩摩に戻られたなら、おいも 兵子(へこ)もここで死んでも、こん(いくさ) 島津(おいたち)の勝ちなんでごわす」

 

 誇らしげに、胸を張って、独特の訛りで叔父を諭した。もはや敵が追いついた。兵士たちは目の前に迫りくる敵に、火縄銃を向けていた。豊久は周囲の兵士を鼓舞する。

 

「兵子ども!!射ち方構えぃ!!死ぬるは、今ぞ!!敵は最強徳川井伊の赤構え、相手にとって不足なしッ!!命捨てがまるは、……今ぞ!!」

 

 生かして薩摩に帰せば恥となる、相手もまた死に物狂いだった。けれども、相手の思惑に対し豊久の思うことはただ一つだ。一刻でも長く、一人でも多く、敵をその場に留めて捨てがまる。ただ、それだけだ。背後からは叔父の声が轟いた。

 

「待っておるぞ、豊久!!待っておるぞ、薩摩で!!まっておるぞぉお!」

 

 死んだら許さぬぞ、坂を上り切って見えなくなるまで、優しい言葉が降りかかる。豊久は笑う。いい 御養父(おやじ)だったと、自分は幸せだったと、よし、ここは一番武者働きをせねば、気持ちを改めて、兵士どもに命ずる。

 

「放てェ!!」

 

 火縄銃から放たれる鉛と共に豊久は走り出す。鉛を喰らった馬たちは倒れ、砂煙と共に豊久は躍り出た。太刀を一閃。馬の首は離れて、それに(またが)る兵士の胴体もまた半分になった。見事なり、軍勢を率いる将、井伊直政が豊久の武功を褒め称えた。豊久は名乗りを上げた。

 

「島津中務小輔豊久、推参!!」

 

 また一人、兵士の首を切り落とした。死兵め、貴様らはもう負けたのだぞ、直政は馬から豊久を見下ろした。豊久は直政を睨む。

 

「その首、俺の手柄になれい」

 

「何言いやがる、クソボケが!!首になるのは(おい)じゃない、貴様よ!!」

 

 阿呆が、直政は罵って槍を振るが豊久は太刀ではじき返す。刀と槍の重い打ち合いが繰り広げられる。殿を守れという敵の声、直政の周囲には槍が構えられ、どうやったって近づけない。よか、豊久は頬に散った返り血を舐めて、その槍に飛び乗った。重力に従って落ちてくる胴体に、槍の先端が突き刺さる。阿呆が、また直政は呟くも豊久は笑う。口元から血を出しながらそれでも不敵に笑って見せた。左手が動く。何かを探り当てたかと思えば直政の前に出されたのは銃だった。

 

「あほうは お前(うぬ)じゃ、井伊侍従直政!!」

 

 引き金が引かれ鉛玉が銃口から出ていく。行先は直政へと直進していった。直政からとめどなく血が溢れ出す。命中だった。やったど、豊久は豪快に笑った。同時に、直政は落馬し豊久もまた槍が折れて地面に落ちる。直政様、殿殿、配下の兵士どもが直政を拾い上げてしまう。「退け!!退くのだ!!」家臣の言葉で豊久から一気に馬で走り去る。今まで追いかけていたのにあっさりと戻っていく。待て、ふざけるなよ 手前(てめぇ)、豊久の罵倒も直政には聞こえない。距離が離れていく。追いかけるが満身創痍の肉体では追い付かない。夕日を浴びながら、豊久は吠えた。喉がガラガラになるまで、叫ぶ。

 

「首置いてけ……!!首置いてけェ!!直政ぁ!!」

 

 日は暮れて、雨は激しくなる。叔父の下へと帰るため、足は薩摩へと向けられていたが身体は槍で穴だらけだった、血を失いつつある。泥で足を取られ、雨で 幾許(いくばく)もない体力は削られる。足元に転がる兵士どもの死体と同じように俺もここで死ぬのか、豊久は思う。太刀ももう重くて仕方ない。木の根元に引っ掛かり転げてしまう。もう起き上がる気力はない。そのまま行き倒れた。

 

―――――

 

 長い長い暗闇の中、豊久は身につけたものを見る。身に着けた甲冑が懐かしい。初陣したばかりの頃だった。豊久、豊久と褒める声がする。顔を見れば右顎から鼻筋にかけて一閃切られた古傷のある男が自分に微笑みかけていた。よく見ていた顔だ。この顔は、父だ。驚愕して声が上がる。

 

親父(おやっど)!!」

 

 がばっと上体が飛び上がる。目が覚めた。そして夢だと、理解した。そして何処かに違和感を感じていた。何が違う、首を傾げて豊久はようやく気付いた。怪我がないのだ、穴だらけの身体が塞がって、身に着けた篭手込みの服も直っているのだ。どういう訳が持っていた刀は見当たらない。何が起きたのだ、物の怪か妖術の類か。見渡せば藤の花が咲き乱れた山に居た。此処は何処だ。先程までいた場所ではないのは確かだった。分からない山にいるのなら見下ろせる場所に行きたい、豊久はそう判断して山頂へと足を運ぶことにした。

 

 藤の花が続いていたがある時から見かけなくなった。そして、よく分からないにおいが鼻孔をついてくる。血の、血の匂いがする。合戦の匂いではないが血の匂いが香ってくる。そして何かの匂い。獣の匂いとは違う、もっと何か別の匂いだった。匂いの下へ走り出せば。人型の何かが、人の腕を、足を、首を食い荒らしていた。角が生えている。……鬼のようだった、豊久は鬼のすることが許せなかった。ようもやってくれたのう、豊久の言葉が重く周囲にのしかかる。鬼が襲い掛かってくる。

 

 動作は単純で読みやすい。避けて樹を垂直に走り上り、飛んで鬼の真後ろを陣取った。刀がない、……ならば拾えばいい。豊久は無残に食い散らかされた死体のそばに落ちていた刀を拾う。鬼はまた襲い掛かれば刀を鞘から引き抜いて首に向かって薙ぎ払う。胴体の離れた鬼は炭になるように黒ずんで、四散した。消えた、豊久は驚愕して食い入るように鬼の消えた場所を見ているとまた何かが近づいてくる気配を感じた。

 

 現れたのはまた鬼だった。形相は人間のそれでなく、爪が鋭く伸び切って、こちらを見ている。一匹だけではない。複数が徒党を組むように現れたが俺の獲物だと言い争っていた。此処がどこでどうなっているのか、何も分からん。これが夢か現か何も分からん。さっぱりだ。だけど俺は突っ張ることしか知らん。やることはいつだって変わらない。豊久は笑う。

 

 なあ、首、置いてけ、彼は鬼に向かって刀を振った。

 

―――――

 

 返り血を浴びて、首をはねて、刀を振って首をとる。消えてしまうから手柄になりえない。気付けば朝が来た。もう鬼の気配はない。気付けば鳥居の前に立っていた。鳥居をくぐれば、少年少女が四人いた。おかえりなさいませ、白髪と黒髪のおかっぱの童あらわれる。刀は、頬に横一線に傷のある少年が問いかけるが、手順を説明し始める。無表情に何かを話していた。隊服、階級。分からない単語ばかりで最後にカラスが下りて来た。豊久の肩に乗り、くすぐったいのうとつぶやいた。

 

「ふざけんじゃねぇ!!」

 

 

 刀を求めた少年の怒声が響く。少年は白髪の少女のような童に近づいて髪を引っ張り上げている。その手を止めているのは赤の入り混じった髪と瞳を持った少年だった。手を放さないと腕を折る、そう宣言するや否や、呼吸を整えて力を込めていた。バキリ、乾いた音と共に少年は呻き声を上げて手放した。お話は済みましたか、片割れの黒髪は相変わらず無表情でこちらを見ていた。玉鋼を手に取って豊久は童たちに問いかける。

 

「そいで、此処は何処なんじゃ?」

 

首も消えるから、手柄にもならん。カラスを撫でながら豊久はつぶやいた。




首消えちゃうから満足しないし、多分続かないんだろうなと思う。書いてて楽しかったけど原作の部分多いから警告されたら消します。


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