「……なるほど、ビーストさんは生体保護の観点からフレンズとは原則話せないことになってる訳だね」
《ソウダヨ。タダシ、緊急時ハ特例デ話セルヨウニ権限ヲ変更スルコトモアルヨ》
「ふんふん」
あたし達は今、イエイヌちゃんのおうち(コテージ?)に併設されていた保険センターにいる。あの施設とは比べ物にならないほど、よく手入れが行き届いたきれいな建物だった。
「……よし、これでオッケーかな」
「いや〜、おてすうをおかけしました〜」
「んっ、いいってことよ!」
とりあえず、スローロリスちゃんの傷口を流水で洗って絆創膏を貼ってあげた。この絆創膏、サンドスターを使っていて保護・保湿・殺菌消毒・自然治癒補助まで全部行ってくれるスグレモノらしい。サンドスターのちからってすげー!
「イエイヌちゃんも大丈夫そう?」
「はいぃ〜……ヒンヤリしてて、とても心地がいいですぅ〜……」
うつ伏せでとろけてる彼女の背中には、湿布が数枚貼ってある。こちらもサンドスター配合で以下略。
《モトモト、ふれんず達ハさんどすたーノ慣性制御効果ヤ治癒促進効果デ怪我ヲシヅラク、怪我シテモフツウノ動物ヨリ遥カニ早ク直ッテシマウンダ》
「へえー」
赤ボスことメディックビーストさんが解説してくれた。そうは言っても、何もしてあげないのはあたしの心が許さない。自己満足だろうが偽善だろうが、『納得』は全てに優先するのだ。……誰のセリフだったっけ、これ。
「しっかし、何でサンドスターってそんなに万能なの?」
《一説ニハ、人ヤふれんずノ『意思』ニ反応シ、望ム現象ヲ引キ起コシテイルトモ言ワレテイルケド、詳シイコトハマダ分カッテイナイヨ》
「……それが本当なら、かなり凄いことだよね」
今の話を聞いて、素敵だなと思うと同時に少しの薄ら寒さを感じた。思うままの現象を引き起こす魔法の砂。その能力を完全に引き出すことができた時、人類は果たして何に使うだろう?平和と幸せのためか、それとも……
そこであたしもその人類の一人であることを思い出し、少し凹む。うぅ、つらい。
けど、そうはならなかったみたい。ここにサンドスターの研究をしてるヒトはもう、誰もいない。何があったんだろう……。
「ビーストさんは、ここからヒトが居なくなった理由、知ってる?」
《……エラー。データベースに情報がありません》
「……」
消えたのか。隠されてるのか。それとも、記録する暇すら無かったか。いずれにせよ、今のあたしに真実を知る術はないようだ。
「……あたしのルーツ、探さなきゃ」
決意を込めて、呟く。恐らくそれが、一番の近道。
「行こう、イエイヌちゃん。あの施設で、手がかりを探すんだ」
「……はいっ。イエイヌ、どこまでもお供します。」
彼女は真っ直ぐな目で見つめてくる。この子と一緒なら、きっと、どんな困難だって───
「あ〜、そうだ〜」
「んぉ?どうしたのスローロリスちゃん」
「きのうね〜、ともえっちがいってたたてものに〜、ちっこいセルリアンがはいってくの、みたんだよ〜」
「え゛」
「まだあそこにいるんじゃないかな〜」
……。
「いいいイエイヌちゃん、きき今日はあたしお家で一日ダラダラしてたい気分かな〜アハハ」
「大丈夫ですよ!ちっちゃいのなら私がズバーンとやっつけちゃいますから!」
「いやまあそこは心配してないけども」
トラウマスイッチは自分では如何ともし難い。うぅ、つらい。
「さあ出発です!ともえさんの記憶を取り戻しに行きましょう!おー!」
「お、おー……」
「いってら〜」
い゛ぎだぐな゛い゛……。
─────────
そんなわけで、廃墟までやって来たのだが……。
「もぉやだぁ……くらい……こわい……おうちかえってイエイヌちゃんモフモフしつづけたい……」
「探し終わったら存分にさせてあげますから……頑張りましょう!」
「ふえぇ……」
がたんっ!
「わあああああああ!!!」
「わあああああああ!!!」
がさっ……
「オワッーーーーーーーーー!!!」
「わあああああああ!??」
がしゃん!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
「わあああああああ!?!?!?」
「ともえさんっ、怖いのは分かりますけど!もう少し落ち着いて!!」
「ご、ごめん……」
怒られてしまった……。
……
「う〜ん……結構探したと思うけど……」
「それっぽいものは見つからないですねぇ……」
そこそこ色んな部屋を探したと思うけど、手がかりになりそうなものは見つからなかった。鍵がかかってて開かない部屋も多かったし、書類が入ってそうなラックはすべて空だった。あたしが目覚めた部屋も一応見てみたのだが、ポッドはうんともすんとも言わないし、他の情報も手応えゼロ。さんざ怖い思いしてこれって泣いていいです?
とりあえず、この少し広めのオフィスみたいな部屋が最後かな。ここは電気が生きてないから、持ってきた懐中電灯だけが頼りだ。しかし、光量が微妙で非常に探索しづらい。
「やっぱり懐中電灯だけじゃ無理あるよね……ホラゲじゃあるまいし」
「ほらげ?」
「んっ、こっちの話」
もう少しよく見えたら、細かく探索できると思うんだけど……。
「わふっ」びたーん!
「オアアーーーーーーーーーーッ!!?」
「あたた、何かにつまづいちゃいました」
もう!!びっくりさせて!!懐中電灯放り投げちゃったじゃないの!!
あわわくらいこわい、はやくひろわなきゃ……
ぷつん。
「は?」
少し先に落としたライトを拾いに行こうとしたら、ライトが突然切れてあたし達は暗闇に閉じ込められた。うそやん。
落ちた衝撃で壊れた?いや、
「い、イエイヌちゃん、これ」
「だ、誰かいるんですかっ!!」
まさか……スローロリスちゃんの言ってた……
「あ、れ、?」
「どど、どうしたの?」
「何か……変な音が聞こえませんか?何かこう、キーンという音が……」
「ぜんぜん聞こえないよ!怖いこと言わんといて!!」
あわわ、もう勘弁してえ!やっぱりお家でダラダラしてるべきだった!
「ねえ」
ぞわり。
「うふふ」
耳元で。
「見えないって」
何かが。
「こわいでしょ」
しゃべってる!!
「ばあ♡」カチリ
「ア゛」
「わああああああああ!!!」
「……なーんて、びっくりした?うふふ」
「食べないでくださ……あれ、もしかして、フレンズの方、ですか?」
(´-ω-)
「そうよ。私、ヒナコウモリっていうの。よろしくね?」
「わふぅ……怖かったですよ、もう」
(´-ω-)
「うふふ……こんな暗いところで見かけた訳だし、ちょっといたずら心が出ちゃったわ」
「でも、セルリアンじゃなくてよかったです。ね、ともえさん!」
(´-ω-)
「ともえって、そっちでのびてる子?」
「はい……あれ?ともえさん?」
(´-ω-)
フワーリ △
(´・ω・)?
( ∪∪
)ノ
(´-ω-)
「とっ、ともえさァーーーーーんッ!?」
「……ちょっと、やりすぎたかしら」