『コーヒーカップだ』
どうして
『メリーゴーランドもある』
きてしまったの
『ジェットコースター……ではないかな、随分ゆるやかだし』
きみには
『あれは……ステージかな?ショーをするための』
まだ
『……そして、でっかい観覧車』
はやすぎる
『遊園地だ。あたしは今、観覧車前のカフェテリアで優雅にお茶をしております』
おもいだして
『さ〜て、楽しみだなー何から乗ろうかなー♪イエイヌちゃんも楽しみにして……』
きみの
『あれ?イエイヌちゃんがいない。』
いばしょを
『どうして?あの子をほっぽってあたしは何を?』
かえるばしょを
『あそっか、いる訳がないよねー。そりゃそうさ、ここは』
さあ
『……ここは?』
おうちにおかえり
─────────
「……う、う〜ん……?」
「あっ、ともえさん!よかった、目を覚ましたんですね!」
「あれ……いえいぬちゃん、ゆうえんちは……?」
「ゆうえんち……?」
おかしいな、さっきまで遊園地にいたと思ったんだけど。どうやらあたしは気を失ってどこかのベッドの上で寝かされていたみたいだ。まさか臨死体験的なサムシングだったり?
「あの……ごめんなさい、まさか倒れちゃうくらい驚くなんて思ってなくて」
「のわあ!さっきのおばけ!……じゃない?」
「フレンズさんですよ!ヒナコウモリさんと言うそうです」
「コウモリ?」
あらほんと。よく見たら普通のフレンズのようだ。反り気味の耳に、鳥類とは違う特徴的な羽。なるほど、確かにコウモリの特徴を持っている。
「そんな気にしないでヒナコウモリちゃん!ちょっと危なかったけどなんとか生きてるし」
「そう?……うふふ、優しいのね」
そう言って彼女はくすくすと笑う。曲者っぽい雰囲気とは裏腹にわりと素直そうな子だ。
「やー、セルリアンじゃなくてホントに良かったよ」
「あら、あんなのと間違われるのは少し心外だわ」
「それにはちょっとした訳があってですね……」
ヒナコウモリちゃんに事情を説明した。スローロリスというフレンズが、ここに小さなセルリアンが入っていくのを見たという話を聞いて、おっかなびっくり探索していた訳で。
「うーん……お昼頃からここにいるけどそんなものは見てないわよ?」
「あれ、そーなの?」
「その子の見間違いなんじゃないかしら?」
「うーむむ、それならそれでいいんだけど」
居ないならそれに越したことはないよね、うん。
「……もしかして、あの子あたしを怖がらせるために適当なこと言ったとか?」
「そんなことは……うーん、否定できないです……」
「できないんだ……」
イエイヌちゃんが苦い顔をする。似たようなからかわれ方をされたことがあるのだろうか。お気の毒に。
「それで、あなた達はこんな場所で何をしていたの?」
「いやあね、それなんだけれども」
再びの説明タイム。あたしは目覚めてから記憶がないこと、ここに記憶の手がかりがあるかもしれないこと、しかし暗闇とセルリアンにビビり散らしてロクに探索できてないことを伝えた。
「そうだったのね……邪魔しちゃって本当にごめんなさい」
重ね重ね謝ってくるヒナコウモリちゃん。やっぱええ子や。
「お詫びというにはなんだけど……私にもお手伝いできることは無いかしら?」
「お手伝い?ありがたいっちゃありがたいけど……」
何を手伝ってもらえばいいかな?探しものとはいってもこの暗闇じゃ何人いても……
暗闇?待てよ……もしかしたら。
「……いや、めっちゃありがたい!ヒナコウモリちゃんがいれば百人力だよ!」
「あら、そう?うふふ、頼りにしてくれて嬉しいわ」
「???」
イエイヌちゃんが不思議そうな顔をしている。まあ見ていたまえ。
─────────
取り急ぎ、さっきの真っ暗なオフィスまで戻ってきた。
「それで、私は具体的にどんなものを探せばいいの?」
「そうさねー……とりあえず薄いペラペラの物を探してもらえるかな?」
「うふふ、了解よ」
「……ともえさん、本当にこれで大丈夫なんですか?」
「たぶんねー。まあ見ててみ」
おそらく、彼女の能力なら、きっと。
「それじゃ、やってみるわね」
ヒナコウモリちゃんは目を閉じ、聞き耳を立て始めた。
「……あっ!さっき聞こえたキーンって音が!」
「んっ、それがキモなのだよ」
「うふふ……私達コウモリはこの音を使ってまわりにどんな物があるか知ることができるの。たとえこんな暗闇だって、私にとってはお日様の下と変わりないわ」
「わふ……凄いんですねえ」
「超音波っていうんだよ。ヒトの耳にはちょっと高すぎて聞こえないんだけど、イヌはもっと聞こえる範囲が広いからそれでイエイヌちゃんは分かったんだろうね」
この能力なら、きっと目の届かないような場所にあるものも見つけ出せるはず。頼んだよ、ヒナコウモリちゃん。
「……見つけたわ」
「おおっ、グッジョブ!」
「そこの『つくえ』?の下の隙間に入ってるみたいね」
ライトを点け、机の下を覗き込む。見えづらいけど……あった。なにかの紙がそこに落ちている。
手を突っ込み、取り出……狭い!ぬぬぬ、もうちょっとなんだけど……よし、届いた!なんとか指を絡め、引きずり出す。
「なんですかなんですかっ?私にも見せて!」
「ちょちょ、イエイヌちゃん落ち着いて!」
「うふふ、仲が良いのね」
どれどれ、光沢と厚みからして写真みたいだけど、何が写ってるのか、な……
「これって……ともえさんじゃないですか?」
「確かに、よく似てるわ」
その写真を見て、あたしは絶句した。眠たげな目をした女の子が、カメラに向けてピースサインをしている。問題はその隣に写っているものだ。
犬。それも、灰色の毛並み、ゴールドとブルーのオッドアイ、赤いハーネスにぶら下がった、犬の形のタグ。これは、まさか。
「……イエイヌちゃん、大事な話があるの」
「へ?どうしたんですか、ともえさん」
今まで曖昧にしてたけど、そろそろはっきりさせておかなきゃならない。緊張を抑え、言う。
「あたしの名前は、『ともえ』じゃないんだ」