光を求めた   作:猫ちゃん

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こんにちは、こんばんは、猫です。
ハイキュー小説初投稿です。

豆腐メンタルなので、読みたい方のみお読みください。


2019/9/12 加筆修正しました。




第1章 
こわいこと 1


 世の中には努力でなんとかなることが溢れている。

 テスト勉強をしたらある程度の点数を取ることが出来たり、字を綺麗に書く練習をしたらある程度綺麗になったり。

 その“ある程度”は、世の中に溢れている。しかし、ある一定以上の結果を得たい場合にはどうすれば良いのか。

 それは永遠の課題である。

 

 世の中には輝かしい才能を生まれ持った人間がいる。

 彼・彼女らは俗に“天才”と呼ばれている。

 

 才能を持って生まれなかった人間は、才能を持った人間を羨み、時に妬み、生きていく。

 

 “天才”はなにもせず、“天才”であるのだろうか。

 そんなことはないだろう。

 

 しかし、才能を持った人間の気持ちは、才能を持った人間にしかわからないし、才能を持たない人間の気持ちは、才能を持たない人間にしかわからない。

 

 だからこそ、言葉で想いを伝えることは大切であるが、それを素直に受け入れるかと言われれば話は別である。

 

 

 これは、烏野高校生が、迷いながらも大人に近づいていく物語である。

 

 

 

 ***

 

 

 

 主な登場人物

 

 

 斉藤伊織(いおり):烏野高校2年生。バレーが好きで、中学ではバレーをしていた。

 

 縁下力:伊織の同級生。波長が合うのか伊織と仲が良い。苦労人。

 

 日向翔陽:バレー馬鹿で影山の相棒。バレー技術は拙いが、身体能力が高い。

 

 影山飛雄:バレー馬鹿で日向の相棒。天才ゆえに中学では孤立した。

 

 

 

 ***

 

 

 

 烏野高校2年の教室にて。今この教室には、烏野高校排球部の部員、縁下力と西谷夕、田中龍之介がいる。

 縁下力は、現バレーボール部員である田中・西谷の一種の危機(補修の危機)を救うべく頭をフル回転させていた。

 

 「なんなんだよこの答案・・・。メロスは何をしたかって問題でどうして、メロスはバレーボールを持った、になるんだよ・・・」

 「ボール持って一緒にバレーした方が楽しいじゃねぇか!」

 「いやいや・・・」

 

 どこにも書いてないことを書いている西谷の国語の答案。せめて文章中に書いてあることを書いてくれと切実に願った。

 

 「田中は英語か・・・、なんで英語で書き出せって書いてあるのにわざわざ日本語で書いてるんだよ・・・」

 「なんで英語で書けってなってんだ!?」

 「そういう問題だからだよ!」

 

 何故か英語を日本語に直して書いてある答案。翻訳出来てるのに英語で書いてないから、結局点数になってない。

 縁下は頭を抱えて溜息を吐く。最早自分にはどうすることも出来ないかもしれない。それに段々と腹が立ってきた。

 

 その様子を見ていた西谷は、右手を縁下の肩に起き、心配そうな表情で見つめ、励ました。

 

 「力、大丈夫か?溜息吐くと幸せが逃げるんだぞ!」

 「そうだぞ力!どうした?」

 

 なにも理解していない西谷田中両名。

 縁下は、キレた。それはもうキレた。

 

 「溜息吐いてるのはお前らの答案のせいだよ!なんなんだよこれは!西谷はちゃんと文章中から書き出してよ、田中はちゃんと問題文見て!?」

 

 久しぶりに叫んだからか、ゼーハー呼吸を乱してキレている力を見て、西谷・田中のおバカコンビは顔を青くして冷や汗を垂らす。そして完璧なタイミングで2人とも綺麗に土下座を決める。スライディング土下座ならぬ、高速土下座である。

 

 

 「すいませんっしたぁーー!」

 「怒らないでください!!」

 

 

 そしてその悪いとしかいえないようなタイミングで、教室の扉が開かれた。

 

 「・・・何事?」

 

 扉を開いたのは、縁下と仲の良い同級生の、斉藤(さいとう) 伊織(いおり)だ。

 すっきりとした整った美しい顔立ちに猫っ毛、181cmの高身長ともなれば俗に言うイケメンというやつで、数多の女の子から騒がれている。それを見た西谷や田中が毎回のようにネタなのかわからないが僻むので、あまり対面させないようにしていたのだが、遂に対面させてしまった。なお、騒がれているが伊織本人は何故騒がれているか気づいていないのはご愛敬である。

 縁下は、しょうがないので1から全部説明、そのあいだおバカコンビは、キレている縁下を更に怒らせることのないよう土下座を継続していた。

 

 「縁下も大変だな」

 「そうなんだよ、なんかもう諦めかけてる・・・。」

 

 伊織は、普段仲良くしている縁下がここまで憔悴しているのは初めて見ることで、若干不安になった。だからか、いつもなら言わないことをつい、申し出てしまった。

 

 「俺が教えようか、その2人に。」

 「え?」

 「顔、疲れ切ってて酷いし。3人がいいんだったら俺が勉強みるよ。」

 

 縁下はそのときに思い出した。

 毎回成績順位の1位を飾っている、伊織のことを。

 

 今の自分の精神状況の不安定さはしっかりとわかっていた。

 背に腹は代えられない。

 縁下は、姿勢を正して伊織にお願いした。

 

 「・・・頼んだ。ほら、西谷と田中も挨拶して。」

 「「よ、よろしくおねがいしゃっす!!」」

 

 西谷と田中はイケメンで女の子の視線をまるごと持っていく斉藤のことが嫌いだったが今だけは神様に見えた。

 何故なら、縁下がこれ以上鬼にならなくて済むからだ。鬼となった縁下は、正直鬼となった主将と同じくらい怖いのだ。夜も眠れなくなるほどには怖い。

 

 「うん、・・・今からここでする?それとも部活行く?」

 「今日は部活行くから、明日からでも教えてくれないかな。」

 「わかった、じゃあ明日は英語と国語やるから教科書くらいは持ってきてね。」

 

 この会話が、後に斉藤伊織とバレー部を強固に繋ぐ糸だということは、今はまだ誰も思っていなかった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 夕方、日が沈みそうになっている頃。

 周囲の暗さによって、伊織の意識は浮上した。・・・ただ、本を読んでいただけである。

 

 ずっと同じ体勢で本を読んでいたからか、身体が固まって仕方がなかった。身体が抗議するようにキシキシしている。

 

 「ん、・・・あー、痛い」

 

 背中を伸ばすように両手を上にして伸び、筋肉は伸ばすことが出来たが骨までボキボキといっている。 

 また集中しすぎてしまったようだ。でも、新しい知見を得ることはとても心地よい。忘れることのない知識は伊織の世界を広げると同時に、考え方まで広くしていく。

 

 「一羽のツバメが来ても夏にはならないし、一日で夏になることもない。このように、一日もしくは短い時間で人は幸福にも幸運にもなりはしない」

 

 適当にあった本を読んだだけだったが、昔の人はなかなか深いことを言うな。

 そう、伊織は漠然と思った。

 

 幸せを手に入れたければ、一日を大切に生きなければならない。

 当然のことだと思われるが、当然を当然と捉えることの難しさは想像に難くないのだ。

 

 「努力をしても、才能で全て片付けられたときの悲しみは、もしかしたらこういうことだったのかもしれないなぁ」

 

 ふと、中学生の頃を思い出した。

 

 上げられて当然のように求められるレシーブ。

 完璧を当然のように求められたトス。

 決めることを当然と思われたスパイクやサーブ。

 

 全て血の滲むような練習の果てに手に入れた技術だった。時には吐き、時には投げ出したくもなった。でも、それ以上に、バレーの楽しさを知ってしまっていた。だからずっと努力し続けていた。今もまだ完璧とは言えない。

 バレーは仲間でするもの。仲間のために使える技術にしなければならない。勝つためには必要。そう思っていたのは自分だけで、全て()()()()()努力なんてしなくてもなんでも出来るだろう?と思われ、求められていたことを知ったのはいつだったか。

 

 天才だから、何でも出来るだろう。

 天才だから少ない練習で何でも出来るのだ。

 そういう目を向けられたのは、いつ、だっただろうか。

 

 俺自身ではなく、俺の才能だけを求められていると気づいてしまったのは、いつだっただろうか。

 

 いや、感じてはいた。感じていたのに、見て見ないふりをしたのは自分だ。

 今となってはよくわかる。

 

 同じように周りから天才と思われていた少年は今どうしているだろうか。

 自分と同じようにだけはなっていて欲しくないと切に願う。

 

 

 

 「影山、元気かな」

 

 あの無垢な少年は、元気だろうか。

 

 

 

 

***

 

 

 

 天才は万人から人類の花と認められながら、いたるところに苦難と混乱を惹起する。

 天才はつねに孤立して生まれ、孤独の運命を持つ。天才が遺伝することはありえない。

 

 ヘッセ 「ゲーテとベッティーナ」




多分続く・・・。
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