前回からこんなにも時間が経ってしまい、土下座どころではすまないと思っています。
"週末に更新"と書いておきながら週末に更新ではないのも目標達成できてませんね・・・
と、謝罪の言葉を述べつつ(述べてない)反省しています(反省はしてる)。
10
「うるさいよ」
伊織は辟易しながら言った。
目の前には黒いまん丸な頭、髪はさらさら、目つきは悪い男が立って、机に両手を置いていた。
名を、影山飛雄という。どうして俺が知っているかというと、元部活の後輩だったからである。唯一俺に懐いていた可愛い後輩だが、今はただのうるさい塊にしか見えなかった。許せ、影山。
「なんでですか!なんでバレーしてないんすか!!」
「何でと言われても、やりたくないからだよ」
「あんなにバレー楽しそうにやってたじゃないですか」
影山は、悲しそうな、それでいて怒っているような表情で俺を見つめている。そんな顔で見られると逆に申し訳なくなってくるからやめて欲しい、そう心から思った。
どうして俺が烏野高校にいることがばれたかというと、時は数日前に遡る。
_(数日前)
好物のひかえめヨーグルトを求めて自動販売機へと向かった伊織は、見覚えのある頭を見つけた。因みに、ひかえめヨーグルトとは、その名の通りひかえめなヨーグルトだ。世間では捻りがなくて面白くない、と話題になっている新発売ヨーグルトである。
あれはもしかして、と思ったときにはもう遅く、まん丸な頭を持った人物がこちらを振り返った。
「あれ・・・」
「・・・」
伊織は目を逸らしつつ、ちょっぴり冷や汗を流した。
なんで見つかった、ひかえめヨーグルトを求めて散策したのが間違いだったのか。そんな風に思考していると影山は更に近づいてきた。
「伊織、先輩っすか?」
「や、やぁ、久しぶりだね、影山」
「烏野高校だったんすね!!」
「・・・うん」
きらきらした眼差しで曇りなく俺を見つめる影山。
それに対し、後ろめたいような雰囲気を出して答える俺。
この違いはきっと、知ってしまったか、知らないままかということには左右されず、ただ1人になってでもバレーをしたいという強い意志を持てるか持てないかに左右されるのではないか。
「先輩、バレー部にいないですけどなんでっすか?」
「やってないから」
そう、無駄に良い脳は、考えた。
____
俺はこうして影山に見つかり、それからずっと付き纏われているわけだ。というかここ2年の教室だぞ。
「大体ね、俺はチームスポーツはもうやりたくないの。わかってくれないかな」
片手で前髪を掻き上げながら影山の方を向く。
影山は、今まで大体逸らされ続けていた目を伊織から向けられ、少し怯んだように見えた。
「・・・先輩はバレー、嫌いになったんすか」
伊織は、ふい、と目を逸らし呟いた。
「大好きだよ」
11
部活終わり、黒い空に爛々と静かに輝く星がたくさん浮かんでいる。縁下は色々とタイミングが合って、共に帰ることになった影山と2人、歩いていた。
「ねぇ、影山」
「・・・?はい」
「伊織のこと最近ずっと誘ってるだろ?どうかな、あいつ」
縁下は、眉を下げながら現在の親友の状況を、影山に聞いた。
「えっと、断られてるっす」
「まぁ、そうだよね」
「でも・・・」
「でも?」
影山は、何かを決めたかのような表情で告げた。
「伊織先輩は、バレーを大好きって言いました」
「・・・そっか」
縁下は、ずっと思っていたのだ。自分が誘ってしまえば伊織は俺に“応えるため”にバレーをするのではないかと。それは本当に起こることなのか縁下には判断が出来なかった。縁下自身は伊織と仲が良いと思っている。信頼関係も築けている。そこまで深い部分まで繋がりがある人間が何かを頼んでしまえば、相手は苦しくても無理にでも頑張ろうとしてしまうだろうと思った。
だから、伊織に、バレーを一緒にやろうと声を掛けることが出来なかったのだ。
チームで、みんなでバレーをやればどれほどに楽しいか。
伊織と、チームになってみたい。
ずっと、縁下が思ってきたことだ。そっと、心の奥底へと沈め込ませていただけで。
これから、伊織とバレーをすることが出来れば嬉しいな。
そう、縁下は光り輝く星を見上げながら、呟いた。
***
『伊織先輩!!ゴールデンウィーク最終日、音駒高校と練習試合するので来てください!!!』
お願いシャッス!
そう言って消えた影山の背を見送った伊織は、廊下で1人、立ち竦んだ。
そうして伊織は今、体育館に来ていた。
この日までずっとずっと、考えていた。行ったらバレーをやりたくなってしまうのではないか。
やりたくなったところで、出来ないのに。
そう思っていたのに結局来てしまったのは、バレーに対してまだ捨てきれていない部分が確かに存在しているからなのであろう。バレーを嫌いになるには、バレーの良いところや好きな部分を知りすぎてしまっていた。
「それになんだ、あの速攻」
セッターがボールに触る前に、スパイカーが助走・踏切まで完了している。世界バレー、日本バレー全ての録画を見ている伊織が知らない速攻の形だった。
セッターの針で糸を通すようなコントロールとコート全体を脳内に展開し采配する能力と、スパイカーのセッターを100%信じて飛ぶことと驚異的な運動能力、反射神経がないと出来ないプレーだ。
「セッターを100%信じて飛ぶなんて、すごいな」
少なくとも、俺には出来ない芸当だ。
ただあの速攻は使うタイミングと数がまだなってない。音駒高校の方はレシーブが並外れてレベル高いし、速攻を見せ続けることで逆に攻略されてしまう。
囮のおかげで決まっていた他スパイカーの攻撃も止められ始めている。
烏が殴り続けるチームであるならば、音駒の方は粘って繋いで攻略して相手を倒すチームらしい。
「このままいけば、音駒高校が全勝だ」
そう呟いたとき、烏の陣地にボールが落ちた。
その時の伊織の表情は、面白いものを見つけたような表情だった。
****
片付けの時間になり、ゆっくりと観戦席から降りてくる伊織に、縁下は近寄った。
「伊織、来てたの?」
相も変わらず眠たげな眼差しをしているが顔はいい男と言われているだけあって、どこかかっこいい。
伊織は、縁下を見つけ、話しかけた。
「力。烏野、すごかったね」
宝物を見つけた小学生のようにきらきらとした眼差しを向ける伊織に対して顔を綻ばせる縁下。
「もしかして、日向影山の速攻かな」
「そう、それだよ!あんなの今まで1度も見たことない、世界でも初めてのことなんじゃないかな。ミリ単位の精密なトスに100%トスを信じて飛ぶなんて純粋な心と驚異的な運動能力を活かした速攻だよね。そしてそれを囮に他のスパイカーも機能してた。とてもすごかったよ」
「そっかそっか、チームの良いところを見せれて良かったよ」
「うん、楽しかった」
伊織はあまりの興奮に語彙力を失っているようだったがそれはそれで嬉しかった。だって、あの伊織がこんなにもバレーに興味を持って頬を少々でも染めて、話しているのだから。
だからか、言おうと思っていなかったことを口に出してしまった。
「伊織さ、もう一度だけでも俺らとバレー、してみない?」
それを聞いた伊織は、目を見開いてその後、目を伏せた。
言わない方がよかったか。そう思ったが、結局俺は伊織とバレーがしたかった…いや、したいんだ。
縁下は何かを決めたように、話を続けた。
「俺はね、このチームで伊織を裏切るようなやついないと思ってるんだ。…一度逃げた俺でさえ、また受け入れてくれた。だからさ、もう一度だけ、」
バレー、してみないか。
右手を伊織の方へと向け、言った。
「…俺ね、最近やっと、縁下と一対一ならバレーできるようになったんだ。チームになると、手が震える。ボールを見るだけで動悸が止まらない、苦しいんだ」
伊織は自分の手を自分の手で強く、強く、握りしめた。
「でも、俺だって、バレーしたい。もっと、したいんだ」
伊織は伏せた目を上げて、縁下を見つめる。
あぁ、光の篭った強い、目だ。
「だから、もう少しだけ、…もう少しだけ、待ってほしい」
ちりちりとした、緊張感。それが伊織から発せられている。
こんな身が竦むような威圧感を持って、決意を固めようとしている男の前に余計な言葉は不要かな、なんて思った。
だから、縁下は伸ばしていた右手を下げて、言った。
「わかった、待つ」
伊織は、顔を綻ばせて言った。
「…ありがとう、力」
一連の流れを見ていた部員たち、もとい代表したのかはわからないが代表して西谷が突っ込んできた。ついでに田中も便乗してきた。
「うぉい!なんかわかんねぇけど一緒にやろうぜ!待ってるからよ!!」
「そうだぜ水くせぇ!伊織は俺らに勉強教えてくれた恩人だしよ、もう友達だ!」
裏表なさそうなやつからの言葉は心にぐん、と染み込むものだ。
連行されていく伊織を眺めて、きっと大丈夫かななんて楽観的に思う。
言って良かったなと縁下は思い、顔を緩めた。そして、自分も輪に加わったのだった。
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過去の記憶を思い出し、出来ないと自分が信じ込んでしまってはそこに留まったままである。
何かを変えるためには、何かを犠牲にしなければならない。
犠牲にしてまで、成し遂げたいものなのか。
それを考え行動することが大切である。
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伊織の手が俺の手に重なる時が近いのではないかと、この時漠然と思ったのだった。 縁下
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何故自分が書くと縁下と伊織の距離がこんなにも近く感じるのか、疑問ですね…。でも決してこの2人をくっつけたいなんて思っているわけではないのです。
次いつ投稿出来るかな。シリアス続きだったので次の話は楽しい感じで書きたいですね。