黄金体験のヒーローアカデミア   作:ジャギィ

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ファイアー・アンド・アイス その1

衝撃の1回戦が終わり、2回戦の準備が進められているその頃…

 

緑谷の脳裏に浮かぶのは先ほどの試合

 

(ジョルノくんは…心操くんの苦しんでる「何か」に気づいた…だからあんな行動も迷いなく、よどみなく取れた…僕だったらどうする?いや…そもそも心操くんの悩みに気づけるのだろうか?仮に気づけたとしても……)

 

待合室で終わらない思考を繰り返す

 

次の試合があるのに…それも相手はヒーロー科でもトップクラスの実力を持つ轟が相手なのに、緑谷はずっとその事ばかり考えていた。なぜか今考えるべきだと緑谷は思っていた

 

(ダメだ、いろんな事ばかり考えてしまう。オールマイトと約束したのに…「僕が来た!」って世の中に知らしめるって…)

 

ふと時計を見た緑谷は焦る

 

「あっ!そろそろ試合が始まる!」

 

部屋を出て、早歩きでステージまでの道を進む

 

そして入場口近くのT字路まで来たところで…

 

ザシッ

 

道の脇から出てきた人物を見て緑谷は目を丸くする

 

「………へ?」

「おお!!ここにいたのか!ようやく見つけた…」

 

それはヒーロースーツを着込んだ、()()()()()()()巨漢だった

 

メラメラと燃え上がる大きな炎のヒゲが特徴のヒーロー…その男はヒーローオタクの緑谷でなくとも、ヒーローを志していれば誰もが知っているほどの男

 

「エ…エンデヴァー!?」

「君を探していた。少し話がしたかったものでな」

「ぼ、僕と、はッ話ィ!?」

 

突然No.2ヒーローが目の前に現れたことに緑谷はこれでもないほどテンパるが、エンデヴァーはお構いなしに話を始める

 

「今までの競技…実にすばらしいものだった。騎馬戦の最後を見るに“増強型”の個性か?オールマイトに似ているな…それに策を弄する柔軟な思考、よくジョルノ・ジョバァーナを出し抜けたものだ」

「そ、そんな…僕1人だけ言われても…みんながいなければ僕なんて何も…」

「謙遜することはない。君自身が間違いなく勝利を勝ち取ったのだ、誇るべきだ」

 

超有名なヒーローからまさかのベタ褒め。よく分からないまま緑谷はエンデヴァーの言葉を素直に受け取り

 

「あ…ありがとうござい」

「だからこそ、君という強敵を破れば、焦凍はより強くなるだろう」

 

───そのセリフを聞いた時、頭の中が急速に冷えていくのを緑谷は実感した

 

「ムッ?気分を害してしまったのならばすまない…しかし私も1人の親…息子の勝利を願うのは、当然だと思わんかね?」

 

エンデヴァーの言う事はもっともだ。いかにヒーローといえど家族が…大切な者がいるなら、それも子どもならば親心で()()()してもおかしいことではないと、親に愛されている緑谷は考えただろう

 

『俺は、オールマイトを超えるという親父の野望の為に、産まされた存在なんだ』

「……ッ………」

 

轟焦凍の過去を知らなければ

 

「反抗期というヤツなのだろう…焦凍はかたくなに(左側)を使おうとしない…しかし、あいつが炎を解放すれば、このエンデヴァーよりも完璧な上位互換の個性となる…焦凍はオールマイトを超えられるのだ」

 

そこに轟の意思は存在しない…エンデヴァーの野望にあふれた目を見て、緑谷は理解したのだ

 

「騎馬戦の時は炎を一瞬出しただけに残念な結果に終わったが…オールマイトに似た君と、DIOの息子であるジョルノ・ジョバァーナとがぶつかれば、あいつの“個性”は完全に完成する!…試合、楽しみにさせてもらおう…」

 

それはきっと、轟の『半冷半燃』が完成する事を意味するのだろう

 

だから、背を向けるエンデヴァーに緑谷は言った

 

「僕はッ!」

「……………?」

「オールマイトじゃあありませんッ」

「何を言っている…?当然だ。君はオールマイトではない」

 

振り返ったエンデヴァーに対し、さらに言う

 

「ジョルノくんはDIOじゃあないし…轟くんもあなた自身ではない」

「……」

「轟くん」「轟くん」だ!!」

 

沈黙するエンデヴァーに言いたい事を言った緑谷は、歓声が聞こえてくるスタジアムに向かって歩を進めた

 

(ジョルノくん!!君もこうだったのか!?まるで爆発寸前の活火山が腹の底で燃え上がってくるのが分かるこの気持ち…!)

 

ザン!

 

『2回戦の組み合わせはコイツらだアアア──!!地味だが意外と良い戦績!「緑谷 出久」!!

 

見た目は超絶クールッ!ならば心はホットかァ!?「轟 焦凍───ッ」!!』

 

ステージ上で相対した緑谷と轟。2人の目は普段よりも一層変わっていた

 

緑谷はより鋭く。轟はより冷たく

 

「轟くん」

「………」

「試合前に、エンデヴァーが話しかけてきた」

「ッ……!!」

 

“エンデヴァー”というワードを聞いた轟の反応は劇的だった。憎しみに歪んだ表情と残酷なまでに復讐で燃え上がった目は、それほど父親を憎み、侮蔑しているのだというのがありありと表現されている

 

「君は…どうしても炎を使わないで勝つつもりなんだね…?」

「だからなんだッ…あいつに金でも握らされたのか?俺のやる事は変わらねェ…!!」

 

怒りに震え、内側に宿る感情を声に乗せる

 

「俺は“右側の力”だけで1番になって、エンデヴァーを完全否定してやる…!クソ親父の“()”なんざだれもいらねえって事を証明してやる!!」

『第2回戦、レディ〜〜〜…』

 

プレゼント・マイクの間延びした声が響く数瞬後

 

『ゴー!!』

 

 

 

ズオオ!!!

 

 

 

轟がいる場所以外を全て凍らせるほどの大氷結がステージ上を襲い

 

 

 

バキャア!!!

 

 

 

その氷山を砕くほどの衝撃がスタジアムに響いた

 

「な…!?」

 

それに1番の驚きを見せているのは轟だった

 

崩れる氷山の奥から姿を現す緑谷。デコピンをした形の左手の中指は歪に曲がり、赤紫色に腫れ上がっており、一目で骨折しているのだと理解できる

 

「ふざけるなよ…」

「!!」

「みんな必死で戦っているんだ…!なのに「右側の力」だけで勝つ…?僕たちをバカにしてるのか!」

 

轟を憎しみから救けてあげたい気持ちと自分を見ないで戦う轟に対する怒りの心。一見矛盾した感情は緑谷の中でひとつとなっていた

 

「今、心の奥底から、メラメラと沸き上がってくるこの気持ち………!」

 

それは、初めて緑谷が人をぶん殴ってやりたいと心から怒りを覚えた瞬間だった

 

「君は間違っている…!だから、殴って!勝って!君を止めてやる!!」

 

グググ…ガシィ!

 

折れた中指を無理やり動かし、握り拳を作り、轟に突きつけて、叫んだ

 

 

 

「───僕がぶん殴りに来たッ!!」

「ッ──ほざけ!!」

 

燃える怒りと凍った怒り…ふたつの怒りがぶつかり合う戦いが始まった




タイトルの元ネタは、イングヴェイ・マルムスティーンの「Fire And Ice(ファイヤー・アンド・アイス)」のアルバムの収録曲「Fire and Ice(ファイアー・アンド・アイス)」から取りました
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