これはエマたちが、鬼が人を食べずに人が鬼を殺さずに生きていける世界を作った後の物語。
もう、人間の農場なんてものは無くなった。
人も鬼も殺し合わなくて良い。
家畜として管理しなくても良い。
そしてハッピーエンド―――――――
なんてことは無かった。
そりゃあ良いだろうさ。人間や鬼はそれでハッピーエンドなのは間違いない。
だがそうはトン屋が卸さないという者がいた。
そう 豚 だ。
豚たちは、人間が農場から家畜として飼われることが無くなった今も、人や鬼から家畜として喰われ続けていた。
老いて死ねることは無く、その前に出荷されて貪り食われた。
そんな豚たちの中に王が生まれた。
彼の名前はトントン。
豚語で豚の中の豚という意味を持つ。
トントンは、豚だけで無く、牛や鶏など全ての家畜の尊厳と安寧の為に反旗を振りかざした。
「全ての生き物よ、草を食べよ」
それが彼らの合い言葉であった。
しかし、所詮は豚。
人間はともかく、鬼には到底叶わなかった。
故に、トントン達は幾多の策を繰り広げた。
人間と鬼の融和は行われて未だ久しくもない。
疑心暗鬼の仲間割れを引き起こすのは容易いと、鬼や人を装って殺した死体を見えやすい場所に置くなど、豚なりの知能でやれることをした。
しかしエマ達人間の指導部は、直ぐにこれを見破った。
人間には、農場で意図的に知能が上げられた事により、非常に賢い者達が多くいた。
トントンはかつて、そんな賢い人間達に降伏では無く、和平を申し出たことがあった。
「全ての生き物よ、草を食べよ」
それに対する人間の答えはこうだった。
「嫌だ、肉食いたい」
それは、一切の慈悲無き上位者の視点であった。
トントンは、それは何故かと気合いで覚えた拙い人間の言葉で問いかけた。
人間達の答えはこうだった。
「お前達は――――――美味すぎる」
なんということだろう。
人間が必須であった鬼に対して、融和を試みた人間達。
それは、自分達が喰われる側であった時だけのことだった。
自分達が喰う側になった今、命を惜しむ食肉動物を殺して喰らうことに何の抵抗も無かった。
なんということだ。
シャモ軍団も、闘牛軍団も頑張っているが、劣勢。
そしてこの時、代表使者団として出向いたトントンさえも、ナイフとフォークを持った老若男女に追い詰められていた。
家畜に神はいない。
それは当然のことだった。
しかし、トントンは諦めず抵抗を続けながら時間を稼ぎ、その間にかつて鬼達が使っていた施設と、鬼の細胞の伝播技術を使い、仲間達を人間と同じような生命体へと進化させた。
人間や鬼達も、流石に同じような二足歩行生物になったトントン達を襲うのは気が引けたようだ。
豚人間、牛人間、鶏人間となった彼らは、鬼や人間達と新たな約束を結び直し、再び世界に平和は訪れた。
みんな、草や虫を食うようになった。
それで解決――――――
――とはいかなかった。
今度は、虫と草が反乱を起こしたのだ。
さて、次は何を食う?