METAL GEAR SOLID 3 : PREDATOR EATER 作:きゅっぱち
第二次世界大戦終結後、世界は東西に二分された。
冷戦 と呼ばれる時代の幕開けである。
「鳥になってこい、
その最中、人知れずロシアの原生林を駆ける男が一人。
アメリカ軍特殊諜報部隊"FOX"のエージェント、コードネーム、"ネイキッド・スネーク"。
後に"伝説の傭兵 ビッグボス"と呼ばれ、世界を相手取り勝負を仕掛け、世界を揺るがす男である。
…………が、そんな事は梅雨知らず、のんびり急いで快適な密林サバイバル生活を送るジャングルの王者スネちゃまだった…………。
《スネーク!またカニなんて食べてるの!?》
「いや、君は嫌いかも知れないが……」
《とにかく!任務を忘れないでよね!》
「どっちのセリフだか……」
《何か言った!?》
「いや、何も?」
《全く》
耳元の脳まで響くような喚き声に、スネークは頰をかきながらそう嘆息する。まったく…飯がまずくなるじゃないか。
相変わらずの"ヤブ医者"ぶりだ、とスネークはため息をつく。
彼女は物知りだが変な事にこだわり口うるさい。この前も聞きもしないルシフェリンだかアドレナリンだかの話を長々としていた。全く、他人に興味のない話をするなよと自分の事を棚にあげ、そんな事を考えながらシギント自慢の双眼鏡を覗く。
あんまり他の双眼鏡と変わらない気がするが、反射が抑えられているのがお気に入りだった。しかし、一番気に入っているのは、値段だ。
ガラスは光を反射し、光は昼間でもよく目立つ。砂漠で遭難した時際に、手鏡のみで存在を知らせ助け出された例もあるように、反射された光とはそれ程目立ち、遠距離まで届くのである。
スネークは今敵地に単独潜入している。痕跡を残したり、居場所を曝すのはあまりにも危険だ。少しの判断ミスが即死に繋がりかねない。そのリスクが下がるのを歓迎しないわけがない。
視界良好。風は無し。今日も肥沃なロシア大地は平和だ。青い空が目に染みる。こんな朝にはコーヒーが飲みたい、とびっきり濃いドロみたいなヤツを。
上手くいっている。
そう思った矢先、通信が入る。
《スネーク、気を抜くな。君は今敵地に単独潜入しているんだぞ?》
「分かっているさ少佐。そろそろティータイムの準備を始める時間じゃないのか?いいのか、またスコーンが無くなるぞ?」
《スネーク、君は少々…》
「分かった、分かったから、意味もなく通信しないでくれ…」
《いや………ところでスネーク、その矢は何だ?君は、本当に分かっているのか?それともふざけているのか?》
「……俺は真面目だ…それに……これは…勲章だ」
《全く、君というやつは……》
《スネーク!!あなた治療を疎かにする事ほど愚かな事はないわ!!これだからあなたは………》
「………………はぁ、
《あっ!スネーク!!ちょっと!!?》
何を隠そう、このエージェント、とある事情から頭に矢が刺さったままなのだ。狙い澄まされ放たれた矢は彼の頭に深く刺さり、本格的な設備がある病院ならともかく、野戦治療で下手に抜くとそのまま天国に召されるだろう。間抜けな事とこの上ない。まぁ、そのおかげでこの前、うっかり敵兵と鉢合わせた時、敵兵が幽霊かと疑い一瞬逡巡し、そのスキに投げ倒すと言う事があったのだが、本人はその事に気づいていない。
しかし、それはスネーク本人には重大な問題をもたらしていた。
──ワニキャップが被れないのである。
………………ワニキャップが被れないのである。大切な事なので二度言いました。
スネーク自身として一番の問題がこれであった。どうしても矢が干渉し被れないのである。せっかくワニに追われたり、ヒルに喰われたり、雨に濡れ風邪を引いたり、エルードを繰り返したりと苦労した末漸く手に入れる事が出来たのに………被ったまま戦えばよかったと激しく後悔していた。
………それより脳に矢が届いて色々ととんでもないことになってそうである。頭大丈夫的な意味で。それともその矢から怪しげな宇宙電波でも受信しているのだろうか?
「………居た」
スネークの目が鋭く光る。その眼光は獲物を狩る蛇のそのものであった。
ハンドガンを肩の高さに構え、力を抜く。獲物をアイアンサイトに捉えた。既に銃は身体の延長となってスネークと一体化している。呼吸を止め、手振れが消えた。絞り込む様に引かれる引き金。
愛用のコルト・ガバメントM1911A1は正確にその動作を受け与えられた役割を忠実にこなした。サプレッサーによって減音された何かが擦れた様な軽い音とともに、やや小さめなマズルフラッシュがスネークの視界を灼く。確かな手応えを残し放たれた.45ACPは正確に獲物を捉え、その脳漿を吹き飛ばした。
「…………よし」
「今日もご馳走だな」
獲物は比喩表現なくマジもんの獲物だった。
哀れ、何が起きたかすら知る事もままならず、ウサギはその命を散らした。そのウサギを満足気な表情で掴んだスネークは、サバイバルナイフを取り出し手早く捌き、皮を剥ぎ、血抜きをしてその胃を満たす。火を起こしたかったが流石に無理だ。それでも、まだ温もりを感じる生の肉は、彼に生の力をもたらしていた。
「美味い」
幸せそうである。ええ、ものすごく。
亡骸を埋めながら、この前パラメディックから聞いたウサギのフン、盲腸フンだったか?を夢想する。流石に食おうと思ったのは冗談であるが、便利だな、と思う。どこぞのSAS設立協力者の一人は大便は持って帰れと言っていたが、スネークは埋めていた。
信頼は出来るが、本当に優秀なのか?自分の"変わった"上司を内心バカにするスネークだった。
食事を終え、その場を片付け
手早く作業を終えると、スネークはゆっくりと移動を開始する。慎重に、慎重に。足音を消し、気配を潜め、周りと同化しながら、さながら蛇のように………
スネークは進路上の武器庫、食糧庫、最新兵器Mi-24A"ハインドA"ガンシップ、通信兵無線機、通信中継基地などを爆破を初めとする
迷彩により周囲に限りなく同化しつつ、時折、双眼鏡で索敵しつつ進んでいく。仮に敵兵を見つけても、スネークに戦闘を行うメリットは一切ない。ただやり過ごしていく。するりとすり抜け、先へと進む。小さな抜け道さえあれば、彼は蛇の様にその隙を突く事が出来る。
朝早くはまだ警戒が薄いものの、最近は何かがおかしい、まるでジャングルに殺気が満ちているようだった。先程のウサギの様子もおかしく、しきりに周囲を伺っていた。
──嫌な予感が………胸騒ぎがする。
「──流石に、派手に動き過ぎて目立ち過ぎたか?」
スネークは独白する。しかし、重要物の爆破は敵の兵站に大きな影響を及ぼすはずだ。もちろん士気にも。
軍隊とはただ存在するだけで大量の物資を消費する。前線で戦う兵士にとってもっとも重要なのはいかに敵を効率よく殺す兵器でなく、今日の飯なのである。
『腹が減っては戦は出来ぬ』とはよく言ったもので、冷戦下とは言え、平時における軍全体の士気を常に高く保つ事、それは軍にとっての永遠の命題なのであり、組織としてある軍の生命線なのである。
スネークはその生命線を断つ事で状況を有利に進めようとしているのだ。見えない敵によるサボタージュ、脅かされる今日の飯、破壊され残骸となった身を預け、身を守るはずの兵器類。それらはかなりのストレスを敵兵士達に与えているはずだ。
ストレスは集中力を乱し、ミスを誘発させ、体調を崩させ、運動能力を落とし、人間関係にヒビを入れそれが再びストレスとなるスパイラルに落とし入れる。小さなミスや厄介事などは積み重なる。それは大きな障害があればあるこそ顕著にあらゆる物事に悪影響をジワジワ与えていく。
それが長期に渡って続くとなるとその効果は絶大だ。そのために侵す多少のリスクは仕方が無い。スネーク一人に対し、敵は大多数なのだ。正面から殴り合う事は不可能に近い。ならば、敵の弱点を突く事は理にかなっている。戦術とは、強い敵を避ける事なのだ。
──近代戦において、戦力とは質×量×量で決まるとされる。いかに優れた兵士と言えど、数の暴力の前にスネークは無力だ。見つかるわけにはいかない。見つかる事は即ち死に直結する。UMA大好き英国紳士の好きな、やたら敵国女スパイ(美女)と関わるアクションスパイ映画の様にはいかないのだ。
「………それにしても、マズい。マズすぎる。何故こうもレーションは不味いんだ。ヤル気が著しく削がれる………
即席ラーメンにカロリーメイトが恋しいな………」
しけたクラッカーのような味のそれを齧り、スネークは毒づく。何度食べても慣れず、美味しくない物に、スネークは辟易していた。技術は日進月歩、特に軍事技術においてそれは顕著だ。しかし、どこの国のお偉いさんも、兵器のパーツの一つである兵士の維持には関心が無いようだった。
………………………味以外は。
──不味い!とにかく不味いのだレーションは!アメリカ、ロシア、イギリスなどは特に。
最近は
スネークはそれを食糧庫爆破に際し持ってきたのだが、やはりお気に召さなかったようだ。
因みに食べてもHPは回復しないし傷も治らない。当たり前である。 それはゲームの中だけのフィクションである。
…………が、10年後は定かではない。
味気ない食事を終え、スネークは気怠げに立ち上がると崖に寄り添いつつ周囲を伺う。隠れる時は常に大きなものに寄り添い、また空境線に身を晒さない事も重要だ。隠れる、という事は相手に自分が人だと判らせない事が一番重要なのだ。人間は眼を頼るが、その眼から通したものを処理するのは脳だ。脳を騙せればいい。その為には人のシルエットを隠すのが一番なのだ。
食事は取れる時に細かくとっていた。スタミナ不足は頭の回転や身体の動きをにぶらせる。しかし満腹時に腹に弾丸を食らうと胃や腸が傷ついた際の死傷率が爆発的に上昇してしまう。
そのため、常にスネークは腹6分目をキープしていた。生まれて初めての即席ラーメンは思わず腹いっぱい啜ってしまったが…………。
やはり何かがおかしい。騒がし過ぎる。兵士が走り回って、落ち着かないように噂話などしている。どうやら、騒がしいのはジャングルだけでないようだ。早急に情報が必要だった。
「………胸騒ぎがする……気の所為だと良いのだが……」
──スネークはまだ気づいていなかった。彼を注意深く観察する、光る一対の目を。
違和感は強くなっていく。しかし、時間もある。止まるわけにはいかない。歩き続け、スネークは遂に"スヴィヤトゴルニ"に到着した。「聖き山径」と言う意味で、ここは将校のための別荘などがある地域である。そのため交通の要衝であり、人の流れが激しく、警戒も厳しい。本来ならばあまり近寄るべきでなく、すぐさま離れるのが妥当である土地である。
「今の俺に必要なものは何より情報だ。
…………何かがおかしい。一体何が起きている?」
人が多く、良く行き交うという事と情報量は比例する。勿論誤情報も多いが。
"シャゴホット"は最重要機密の筈であるが、何か動きがあったかのかもしれない。仮にそうであれば、予定を早めなければならない。しかし、スネークの直感はそれ以上の"何か"を告げていた。
そう思った矢先、強い異臭が鼻を突いた。何かの腐敗臭だ。周りを見渡す。何もない。人が良く歩き回るので下草が少ないため、死体があったらすぐさま気づくはずだ。何より、すぐに回収され破棄されるはずだ。
しかし、見当たらない。言いようもない不安がスネークを包む。スネークの中で警鐘が鳴り響いている。確定的明らかに異常だ。
──やはり、おかしい。
「パラメディック、周りに死体が無いのに腐臭がする。何か分かるか?」
《いいえ……いや、あなた、お風呂入ってないでしょう!!》
「いや、そういう話じゃなくてな……」
全く使えなかった。その上不名誉だ。暖かいシャワーに食事、ふかふかのベッドは随分ご無沙汰だ。
………何だか腹が立ってきた。そういや前もこいつ適当言って毒キノコだのなんか眠くなるキノコだの食わせやがって………葉巻とタバコの違いも分からん癖にやれ迷惑だ身体に悪いだとギャーギャー言ってたな………。
あまり役に立ってないな、最後に役にたったのはいつだ?そんな事よりスシバーに行ってみたいな。日本、か…………
仕方なくUMA探求倶楽部副会長、"特別にスゴイ"専門家に聞いてみる。
《スネーク。多分、そいつぁビッグフッt》
聞くだけ無駄だった。
《ところでだなスネーク、前も言ったが、大b》
何なんだこいつ等は。
不安になってきた。
映画バカとUMAバカ。それにそれらが組み合わさったズレた指揮官。
無線連絡が全く役に立たない。敵地で孤立無援だ。主に味方の無能ゆえに。この無線機捨ててしまおうか。いやもういっそラジオ機にしよう。
ポタリ
肩に何かが垂れる。おかしい。雨は降っていない。手を当てて確かめる。
血だった。
驚き上を見上げるスネーク。そこには、歴戦の戦士をも絶句させる、恐ろしい"現実"が口、眼孔、腑を開けて待っていた…………………
多分次かその次くらいで終わります。拙い文書、短くてすみません。
ゲーム内とは違う内容もあります。矢が刺さっていようとワニキャップはかぶれます。因みに矢は全身に70本くらいまで刺さるらしいです。ほっとくと抜けなくなるのはバグではなく仕様だそうです。また、マズイ食べ物も食べ続ければスネークの味覚が変わります。