人間は、徒党を組みひたすら逃げ延びることに全力を注いで生きている――――らしい。
それが、エスペランサの見た人間の生態だった。
人間は他種族の目にはつかないような洞窟を住処とし、他種族に見つかることを徹底して避けている。
食糧事情は当然のように切迫しており余裕など欠片もない。しかし生存者の数が少ないかといえば決してそうではなく、土地さえも圧迫されている。
それでも、滅多なことがなければ人間は洞窟から姿を現さない。
まるで、引きこもり閉じこもり、あらゆる干渉を拒むかのように。
否――――まるで、ではないのだろう。
引きこもり閉じこもり、あらゆる干渉を拒んでいるのだ。
他種族からすれば埃より軽い命――――だからこそ、軽はずみにその命を奪われぬよう最善を尽くしているのだ。
なるほど、それは確かに有効な戦略だ。
だが、そんな最善を選んでただ泥をすすり砂を噛むばかりでは――――希望など生まれるはずがない。
逃げ続けるということは、つまりそういうことだ。絶望から遠のいたところで、それは希望に近づくことと同義ではない。
絶望からは最も縁遠い神霊種ですら、希望など知らないように。
希望と絶望は――――単純な数直線の上で語れる関係ではないのだ。
ならば何故、人間は希望に溢れている?
絶望から遠のいてなお絶望の中にいる人間が、どうして希望を抱ける?
エスペランサの疑問は、なおも膨らむばかりだった。
――――天の上から覗き見るだけでは、これ以上の情報は集まりそうにない。
力を持つ他の神霊種ならいざ知らず――――最弱の神霊種である自分に限れば、はるか遠くの小さな集落の情報など視認しかできない。
ならば――――次に取る行動は決まったようなものだ。
人の話を盗み聞きしたいが、声が聞こえないときはどうするか?
当然、もっと声の主に近づく――――そうすれば、声が聞こえるようになる。自明の理だ。
それと同じだ。
人間の情報をもっと知りたいとき――――だが知ることが出来ないときはどうするか?
単純にして明快すぎる答えだ。
エスペランサは、そう結論付けるや否や――――
人間の住処である洞窟から多少離れた地点、そこを着地点に定めて。
人間の住処である洞窟から多少離れた地点、そこを目標と見定めて。
自由落下に身を委ね――――希望の待つ新天地へと、終端速度で落ちていく。
奇しくもそれは、遠い未来に訪れる二人で一人の人類種の旅路と全く同じ行程だったのだが――――それはまた、別の機会に話すことにしよう。
要約:調べ物するのにネットだけじゃ不十分だよね。しっかり現地に赴かなくちゃ。