鬼滅の波紋使い
冬のある日だった。
「あのぉ、すいません。誰かいませんか」
遠慮がちに、山小屋の戸を叩いて声をかける。
すると、ちょっとの間を開けて玄関口に白い着物を着た女性が出てくる。
「あら、まあ。旅の方かしら、こんな遅くまで歩いていらっしゃったの? 寒かったでしょう、家に泊まって行ってくださいな」
「あいや、申し訳ない。出来れば隣村まで歩を進めて置きたいのです。道を尋ねたくて」
「夜の山道は危ないですよ。特に今の時期は雪が降り積もっているから」
「む、そう、ですな。しかし、失礼では? 俺は銭はそこそこ持てど、他に役立つものを持ってる訳では」
「お礼など結構ですよ」
「いや、しかし」
「お母さんどうしたの? 誰か来たの? 」
「禰豆子かい、旅のお人だよ。このまま、隣村に行きたいそうなんだけどね」
「え! 危ないからやめた方が良いですよ! 」
娘がいるのか。ふむ、この辺りでも『出る』という噂だった。ならば、彼女らを護るためにも、泊まるかな。これで隣村が襲われては面目も立たないが。
「そうだね。分かりました、お世話になります」
「えぇ、旅のお話を子どもたちにしてやってください」
「たち? そこな娘さん以外にもお子さんが? 」
「えぇ、一人長男が隣村に降りていますが、何処かに泊めて貰っているのでしょう」
「そうですか」
本当にそうであればいいが。
山奥に居を構えているというのに、思ったより子沢山であった。男が三人いや、長男含め四人か、女が二人。見たところ旦那はなく、女手一人で大変そうだとも思ったが、子ども同士で出来ることは自分達でやっているようだ。良い人たちに出会えた。
子どもたちに質問攻めに遭い、やや話疲れたので縁側にて煙管を吹かす。一息付いた所で、血塗れた臭いと殺気を感じた。
「全く、俺が居て良かった」
こうして、その夜この竈門家が、血に溺れるようなことはなく。旅の男はその長き旅の疲れからか、昼には少し早いほどの目覚めだった。
「いやぁ、一晩どころかお昼までご馳走になってしまって」
「いいえ、旅でお疲れだったのでしょう。ゆっくりしていってください」
「お気持ちは嬉しい。たが、そうもいかぬのです。先を急ぐ身でして、ですがそうですね。長男くんにあいさつをしてからここを出ようと思います」
彼らには、軽い怪異であれば払える程の
それに、俺の追っ手が後は何とかしてくれるだろう。全く、組織というやつは録でもないものが多いのだ。鬼殺だか記念だか知らんが、縛られたくはない。
そうして、旅の男は竈門一家におまじないを施してから、静かに山小屋を去ったのだった。
その数時間後、帯刀した気だるげそうな男がこの山に訪れ、この家に別の怪異が襲来し、一悶着あるのだがそれは別の話。