鬼滅の波紋使い   作:速川渡

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連載版第三話です。

遅くなりまして申し訳ない。
ちょっと出来が微妙だったり、話の筋がおかしかったりしたので
書き直しておりました。

今回は男が刀鍛冶を泣かせる話です。


男の刃

「刀なんぞ要らん、帰ってくれ」

「うるせぇ! オレが丹精込めて鉄を撃ち、造った刀を見もしねぇで要らねぇたぁ、どういう了見だってんだ! 」

 

 先日の柱合会議(ちゅうごうかいぎ)とやらから、数日。ひょっとこの面の声が甲高い者が(うち)に押し掛けて来て刀を渡そうとしてくる。

 男は刀剣術に縁がなく、さらに武闘術を極めているため、余計に刀剣の類いに手を出そうとは思わないのだった。この身一つで十分であるという自負が余計にそうさせたのである。

 

「押し売りなら、他所でやんな。廃刀令の世で売れるのかは疑問だが」

「がぁあああ、うるせぇ! とにかく受けとれってんだよ」

「要らんと言ってるだろうが、落ち着け」

「うー! けー! とー! れー! よー! 」

「落ち着けって」

 

 ひょっとこ面は刀を男の体に押し付け、引こうとしない。やれやれと男は、ひょっとこ面の肩に手を置く。すると軽く電流のようなものが走る。

 

「うわっ。ビリッって、なんぞ今の! 」

「少しは落ち着いたか? 」

「へっ? あ、あぁ、済まねぇ。興奮してたもんでな」

「じゃあ(けぇ)れ。刀は買わんぞ」

「違っ、オレは産屋敷様から頼まれて、あんたに刀を打った鉄崎(てつざき) (しのぶ)ってんだ。よろしくな」

「あん、なんだよ。産屋敷(あの坊主)の関係か。始めにそいつを言えよな。取り敢えず、上がってけ」

 

 大人しくなったひょっとこ面を囲炉裏まで、連れて茶を出してやり、改めて要件をまとめる。

 

「成る程ね、鬼殺しにはこれが必須と。それでお前さんがこいつを造ったわけだ」

「あぁ、渾身の出来だ。それで興奮しちまってさ」

 

 ひょっとこ面の刀鍛冶は、再びその刀を押し付けて来る。恐らくは、刀鍛冶の心血を注いで造られたそれを、突き返すわけにもいかず。受け取り、取り敢えず鞘から抜いてみた。

 美しい刀であった。刃の波紋は乱れなく、それでいて鋭い刃先は万物を断てるだろうと確信できる。そして、鈍い銀色であったそれは、小判のような小金色へと変色する。(驚いたが、そういう鉄を使ったらしい)

 

「いや、でも、金の日輪刀なんて聞いたこともねぇ。あんたはやっぱ特別なんだな」

「そうなのか? しかしなぁ、刀は修めとらんから、()()()()くらいしか出来ん」

「はぁあああああああ!? ()()()()()()()だぁ? ふざけてんのかぁ!! ちゃんと使えよぉ!! 」

「いや、とは言ってもな。世は刀剣を許していないし、確か鬼殺隊は政府非公認なのだろう? なおさら良くない。警察と揉めるのは御免だ」

 

 それに何より、と男は続ける。

 

「俺はこの身一つで、怪異(おに)を退治してきた。だから、逆に邪魔になる」

 

 男は何でもないように、そう言った。それが当然であるかのように。刀鍛冶は、その慢心も虚勢も感じられぬ男の言葉に、怒気が失せてしまった。

 

「分かった。だが、オレはお前を許さん。()()()()()()()を、()()()()()()()()()()()()()()許さん」

「そうだろうとも、だから()()()()。怨み言やらつらみを俺にぶつける権利をやる」

「ハァ!? ど、どうして女だって」

「その声に、体格からしたら年頃の(おなご)だろう。言葉遣いがずいぶん、男勝りだったがな。まぁ、気にするな。俺に呪言の類いは通じない。好きなだけ、吐き出すといい」

「っ───! なんだよ、何なんだよ!! どいつもこいつもオレを馬鹿にしやがって! 柱だからってテメェも調子に乗ってるんだろ!! エェ!? 舐めるのも大概にしろよコラ──」

 

 刀鍛冶には、才がなかった。淑やかなで慎ましい女子が好まれる当時の世で、生け花や楽器の才がなかった。性格も父親似で男勝り、さらには荒っぽく(すぐ)癇癪を起こすような、親が当世でいうノイローゼになるのにそう時間は掛からなかった。そのうちに、捨て子となり刀鍛冶に拾われた。

 刀鍛冶としての才があった。彼女の師(ようふ)は癇癪を優しく流し、荒っぽさを受け入れた。その師も他界し、辛かった。性格に難があった彼女は、嫌われものでしかして優秀だった。優秀でなければ、居場所がなかった。

 産屋敷に腕を認められ、今回柱の刀を造る大仕事を申し付けられた。

 面の下で半泣きしながら、そう怒鳴り続ける刀鍛冶。

 

「認め、られたのに、えぐっ、頑張、った、うぅ、のに。ふぅ、はぁ、はぁ。お前が、飾りモンにする、といった、それはなぁ。()()()()なんだよぉ!! 」

 

 男は黙って聞いていた。女の刀鍛冶等侍の世にも、ほぼ居ないだろう。であれば、当然闇を背負っていると考え、案の定であった。だから、刀鍛冶を()()()その闇を吐かせた。

 良いこととは言いがたい、しかし、荒療治でもそういうことは必要なのだ。怪異は心の闇に惹かれ、成るものであると男は知っている。

 必然か偶然か、刀鍛冶は心がスッとしていた。今まで、溜めに溜め込んだ怒りを、哀しみを、全て吐き出したためだ。そして、怒鳴り疲れたのか、嘔吐(えず)いている。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、ゲホッゴホッ、うぇ、ぇふ。ふぅ、はぁ」

「そうまで力説されちゃあ、飾りモンにするのは止めだ。腰に下げとくお守りとしておくよ」

(それに、()()()なら使えるだろう)

 まだ言うかと威圧を掛ける刀鍛冶。しかし、感情をさっき出し切ってしまったので、怒る気にもならなかった。

 

「はぁ、飾りよりは大分ましだ。いざってときに使えるようにしとけよ」

「考えとくよ」

「後、あんがと

「あぁ? なんか言ったか? 」

「うっせぇやい! 帰る! 」

 

 そうして、刀鍛冶は定期的に刀の手入れと称して、男の家に愚痴をこぼしに来ているそうな。それ故か、癇癪癖もほんの少し大人しくなったそうな。

 

 




明治コソコソ噂話
[鉄崎忍]
男の刀鍛冶だけど男が刀使わないっていうから、いつも会う度うがーってなっているよ。
刀を打つ腕はぴか一だけど性格が鋼鐵塚さんより、面倒くさくてうるさいよ。
刀の手入れに来るのは、自分の刀を使ってくれてないかなという淡い希望も交じってるよ。
因みに、鬼殺隊並ではないけどこの子もそこそこ剣術が使えるよ。

原作に女の子の刀鍛冶が居なかったから、オリジナルキャラとして出しました。
いや、刀鍛冶は男がやってるのが普通なので当たり前ではあるのですがね。


なお、作者としては今回の話が急展開すぎで、微妙なのではと若干心配だったり。

それはそれとして、この話投稿時点でUA数22000以上お気に入り登録406件と書いていない虚無期間中も膨れ続けており、嬉しいばかり(プレッシャーがおもい)です。

誤字脱字、講評批評、その他感想お待ちしております。

次の展開について中々決まらないのでアンケートで決めます。

  • 波紋による治療編
  • 各柱(原作)との絡み編
  • 各柱(本作)との絡み編
  • 以上全てダイジェストにして原作へ
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