今年度も、イベリをよろしくお願い致します。
シャニマスにドハマリして今までずっとやってました。
千雪さんはいいぞぉ…
これ見てお正月気分を懐かしんでください
「う〜、寒っ……はいアイズ、ココア。」
「ん、ありがとう…あちっ…ふーっ、ふーっ…」
「あはは、気をつけてね……もうすぐ、みんな来ると思うから。」
寒い寒いと、自然に手を絡ませる二人は、水筒のココアをチビチビ飲みながら、すっかり恒例になった行事に参加するため、オラリオの市壁にまで足を運んでいた。
今日は年明け、ロキ・ファミリアでは毎年新年に集まって市壁で挨拶をする習慣ができた。珍しいことに、この企画は娯楽好きのロキではなく、リヴェリアが持ってきた。ベルの教育目的での異文化交流という形で、極東の文化を学んできたそうだ。
他の幹部にニヤニヤされたのはご愛嬌。
そんな困ったように照れるリヴェリアを、アイズと眺めながら子供らしく笑ったものだ。
「おーい!お二人さーん!」
「噂をすれば…だね?」
「ふふ、ホントだね。」
暗がりの中、大声で手を振る影が、階段を駆け上がってきた。ようやくお出ましのようだ。
「二人とも元気だった?なんだか久しぶりな気がする~!」
「2週間じゃそんなに変わらないと思いますけど…」
「私はここ最近ベルの顔を見ない日はなかったが…アイズ、お前この頃ダンジョンどころか家から出てないだろう。休むのはいいが…ダラダラするのは感心しないぞ…?」
「ひっ…だって…年末だし、ベルのお休みも多かったから…」
「まーまー!ええやないか!なっ!去年の怠惰は今年取り返せばええんやし…な!アイズたん!」
「ロキ…たまには、いいこと言う!」
「『たまには』が余計すぎるわ!?なぁ、ベル!」
「のーこめんとで。」
「んな殺生な!?」
一頻り区切りがついた会話の後に、ベルは全員の格好を薄暗い中目を凝らして眺めて、ようやくその姿を見ることができた。
ティオナ、ティオネはアマゾネスらしい、派手な柄の着物を少し露出度が高めに着こなし。何でも極東や歓楽街に分布しているというオイランというものを真似たものらしい。
リヴェリアにアイズ、レフィーヤは正統派の鮮やかな着物だ。元がいい分より映える。
今日は元旦。極東の文化に有る、初日の出を見に来たのだ。いつもここで新年の挨拶をして、家に帰って新年に見合った料理を二人で食べるのだ。明後日はヘラに会いに行くし、こうしてもらうのが丁度いい。
「いやー…去年は色々あったなぁ…」
「あぁ…本当に…激動の一年だった気がする。何歳か老けた気が…。」
「そんな事ありえません!私は…もっと強くならなきゃなって…強く思う一年でした。」
「うん…確かに!あたし、今年こそアイズとフィンを超えるんだ!」
「レベル2つ差はなかなか厳しいけど…そうね。せめて追いつかなくちゃ。後…私は団長をあのチビ共から死守しなきゃいけないのよね……っ!!」
「でもあの二人って、最近上がって7と5でしょ?あそこは仲いいから結託されたら勝てなくない?」
「…今でも…もうだいぶ、勝ち目は…」
「アイズ…知らないほうが幸せなことも有るんだ…けど……」
なんとなく、今年はいろいろな意味で激動になりそうだなぁなんて思いながら、此処にはいない勇者の愚痴を思い出した。
「ふふ……色を好んでるというより、好まれてる、だよなぁ。フィンさんの場合。」
「…まぁ、フィンはその…女難の相というか…なんというか…」
「下手しなくても三回くらい式に参加しそうですよね…あはは…」
「レフィーヤ……笑えんぞ。」
どうにも現実になりそうなその発言に、リヴェリアは少しげんなりとしながら、遠くに見える地平線から、薄っすらと見えてきた白い光を眩しそうに眺めた。
そうして、皆がその光を見つめた。失った物もあった、その代わりに得たものも多い一年だった。
アイズは、その光を眺めながら少し昔を振り返った。
心に巣食っていた黒い炎。感情のままに剣を振って、気絶するみたいに寝る生活。今じゃ絶対に考えられない。ベルと出会ってからはもう、そんなことはなくなった。それから調子も上がって、順調にレベルも上がって順風満帆といった感じだった。
(ベルが、ここに来てくれたから…でも、ベルは……)
暗黒期と呼ばれた、地獄のような数年間。冒険者たちは、多くを失って、そして英雄が数多く生まれた。けれど、ベルだけは全部を失った。アイズは今でも鮮明に覚えていた。いつもの快活で溌剌とした元気な声が、嗄れた鳴き声に変わってしまって。彼の白い心が真っ黒に染まってしまった事もあった。
隣で眩しそうに朝日を眺めるベルを見れば、そんな心配は微塵も感じさせない、しっかりと微笑んでいた。ベルは、色々な面で自分よりも大人だから、きっと何かがベルの心を軽くしたのだろう。
そう結論つけて、アイズは日に照らされながら、ベルの肩に頭をあずけた。
「ん、どうしたの。」
「…ううん。なんでも。」
「……そっか。」
別に、彼の悲しみを、共感しようだなんて思わない。酷く境遇は似ているが、彼の悲しみは彼だけのものだ。頼まれたわけでもない物を、一緒に背負おうとするほど傲慢にもなれない。
だから、彼がまた苦しくなったなら、なにも言わずに隣に腰を下ろして。私が隣にいれば、きっとそれだけでいい。
彼だって、きっと同じことをする。
こうやって支え合えるのが、私たちであるから。
「…今年も見れたね~…色々あったけど。」
「うん。また、ベルと見れた。」
また笑い合って、登る朝日を眺めた。
「はぎゅ〜……着物、疲れた…重いし、苦しい…ベルは着てくれないし…」
「あはは、お疲れ様。憧れは有るけど、あれ僕みたいに童顔だと着てるってより、着られてる感が強い気がして…」
「……そこが可愛いのに…」
「もうなれたけど、君にはあんまり言ってほしくないんだよなぁ…」
家に帰ってから、アイズはだらしなくソファーに倒れ込み、干物ジャージを着こなして、着疲れを存分に癒やしていた。
今更なことを言い出したベルに対して、子供のように背伸びするところも良き。ベルは永遠に私のかわいい嫁。なんて思って、ニュフフと笑ったアイズは、ストーブと炬燵でぬくぬくしながらみかんを食べてくつろぐベルに纏わりついた。
「ちょーっと、どしたのさアイズ?」
「んー…お腹へった…?」
「なんで疑問形?」
「そろそろ…あれ、作って欲しい、な…」
「わかった…作ろっか!」
「やった…!」
そうして、アイズのワガママを笑って流しながら、年の初めに食べるアレを作る。
ソレは、極東の文化である『おせち』の中の一品。まぁまぁ、というか好き嫌いの激しいアイズが、『おせち』の中で数少ない食べられる1品。一時期、ソレを食べすぎて結構ガチでベルとリヴェリアに怒られたのに、尚やめることができなかった禁断の甘味。
バサッとエプロンを腰に巻いて、ベルはキッチンに立つ。それにひょこひょこついていくアイズは、さながら餌を待つひよこといった具合だ。
「チャチャッと作っちゃおうか。まずは、さつまいも。包丁の面で潰したクチナシと一緒に、水煮にする……箸がすんなり入るようになったら、火を止めて、サツマイモを玉にならないようにペースト状に濾していく。この時、繊維が気になるから、裏ごし器を使って丁寧に濾す。」
「ここでもう、いい匂い…」
鼻をヒクヒク動かして嗅いだアイズは、ウットリとした表情でこれからの期待を瞳に輝かせた。
「そしたら、鍋に裏込したサツマイモと、砂糖を入れて中火にかける。焦げ付かないようにしっかりと混ぜてやることね。」
「あ、味見役は…平気?」
「…じゃあ、お願いしようかな。はい、あーん。」
また鍋全部食われるよりも、こういってきた時に発散させたほうがいいと判断して、ベルはアイズに軽く掬って差し出す。
「…んむ…!美味しい!コレだけでもうデザート…!新メニューにしよう…!それとあともう一口。」
「あはは、流石にソレは無理かなぁ…。だめです、完成したら食べていいから我慢して。」
「むぅ……」
本当に、人形姫とまで言われていたアイズはどこに行ったのかというほどの、満面の笑み。美味しそうに頬張ったアイズの催促を軽く交わして、ベルはどうにも擽ったい気持ちだった。けれど、こうして彼女の笑顔を独り占めできると思えば、そう悪くないのかな、なんて思いながら、アイズに木べらを渡した。
「そしたら、塩、みりん、そして…自家製の栗の甘露煮の蜜を加える。そしたら、火を弱火にしてしっとりと練るように混ぜていく。ほかのも準備するからこっちはやっておいて。砂糖が完全に溶けたら教えてね!」
「わかった…!」
むんっ、と力こぶを作ったアイズに笑って、ベルは冷蔵庫の中のタッパーに手を伸ばした。
「さて…お正月には、これを食べないとね。」
いつも元旦に二人で食べているそれは極東では鏡開きという行事として伝わっている餅と小豆の極東の甘味。
タッパに詰まった粒餡を掬い上げて、味を確認。
「完璧!」
一つ呟いて、つぶあんを鍋に投入。水、塩を加えて弱火でゆっくりと温める。
「ベルー、お砂糖溶けたー!」
「はいよー!」
ちょうどいいタイミングで仕上がったようで、アイズの声が響いた。
「ありがと、アイズ。」
「ん、仕上げは任せた…!」
「はい、任されました。そしたら、汁気を切った栗の甘露煮を加えて、優しく混ぜながら温まったのがわかったら、バットに広げて冷ます。さて、お餅の方も準備できたみたい。」
「あ、すごく膨らんでる…」
ストーブに置いた餅はぷっくりと膨れ、食べごろを教えてくれる。いい塩梅の焦げ目のついた餅をトングで掴み取って、そのままつぶあんを煮立たせる鍋に入れる。
「で、ひと煮立ちしたら…完成!うん、こっちも良さそう!」
「じゃあ、私お茶入れてくる!」
「ふふっ、お願いね。」
そうして、楽しみを隠せないアイズはパタパタとキッチンを駆けて、極東の緑茶を入れる。
「さっ、食べよっか!」
「うん!」
──今日の献立──
おせちの一品、栗きんとん
毎年恒例、ベルお手製のおしるこ
『いただきます』
いつものように声を揃えて、手を合わせて。二人揃って食べ始める。
アイズは黄金に輝く栗を、キラキラろ輝く瞳で見つめて、一息に頬張った。
「───ほいしいぃ……!」
「ふっ、ふふ……良かった。」
柔らかな栗が、口の中でホロリと崩れ、サツマイモとはまた違った香りと、香ばしい甘さを教えてくれる。とんでもなく美味しいのだ。しかし、やはりベルのものは別格だとアイズは思った。市販にも売っているから、ソレを食べたことは有るのだが、どれを食べてもベルのものを超えた試しがない。作り方はきっと一緒。なのにどうしてここまで違うのだろうかと首をかしげたが、ベルのだから美味しいんだ!と簡単に結論づけて、その疑問を無限の彼方に葬り去った。
「ちょ、アイズ早い早い!」
「あれ……もうない…」
いつの間にかなくなった栗きんとんの皿を淋しげに眺める。そうすると、ベルはため息を吐いて、自分の皿を差し出した。
「ほら、もう少し食べな?」
「いただきます!」
「はぁ…味占めてるなこれ。」
ここ数年で、アイズも自身の武器をわかってきたのか、こうすればベルがしてくれるということを覚え始めた。甘やかすのは良くないとわかってはいるが、仕方あるまい。惚れた弱み、そういうものなのだ。
「おいしい?」
「うん…!すっごく!」
「なら、良かった。」
そうして優しく微笑めば、アイズは顔を赤くして動きを止める。ちょっとした仕返し。ベル自身も、アイズに有効な己の武器を理解しているのだ。
いたずらっぽく笑えば、アイズは顔を更に紅く染めて、自棄のように食べ始めた。そうすると、ついになくなってしまった栗きんとんの代わりに、お汁粉が差し出される。
「ありがと…」
「はいはい、拗ねてないで温かいうちに食べてね。」
「むぅ……!」
やや拗ね気味なアイズは、緑茶を啜って味覚をリセットして、ホカホカのお汁粉に箸をつけた。
「…ん、こっちも…美味しい。お餅も、もちもちで、あんこも、美味しい。」
「そう、良かった。」
口に入れた餅は、1から作ったからか、とても柔らかく美味しい。粒餡も粒の一粒一粒が際立って、しっかりと豆の味を損なわない甘さと、ほんのりとしつこくない甘さで、ゆったりと味を楽しめる。
お椀の中をキレイに空にして、一息ついたアイズは、おもむろに炬燵から立ち上がって、ベルの隣に潜り込む。
ベルも、そのアイズの甘えを当たり前のように受け入れて、身を寄せ合う。
大変だったこの一年は、きっとこういうなんでもない瞬間のために、頑張ってきたんだ。手を握って、この小さなぬくもりを、ずっと感じられるように。また、頑張ろうと思えるんだ。
「ねぇ、ベル。」
「ん、なぁに?アイズ。」
「今年も、これからも、よろしくね。」
君は、手を握れば当たり前に笑ってくれるから。
「うん、今年もよろしくね。アイズ!」
私は、頑張るよ。君とこうして一緒にいられるように。
おまけ
─庶民派ベルくん─
「ほら、ベル。お年玉だ。」
「母さん、毎年ありがとね。けどね、お年玉は気持ちであって、財産の相続じゃないんだよ?小切手渡すのやめて?何この金額、僕の年収の6倍くらい有るんだけど?」
「……それが気持ちだろう?」
「…そんな心底何言ってんだみたいな顔されてもさ…高位冒険者って金銭感覚おかしくない?アイズもだけど、最近リリもやばいし。」
「逆にソレだけでいいのか?もっとあるぞ。」
「うん、平気かな。そうなると暫く働かなくなりそう。」
「そうか…別に休むのはいいんじゃないか?」
「うーん、色々お客さんもいるし、長い間はなぁ…でも、母さんが世界を見て回るときは、僕も行きたいな。アイズもきっと行きたいだろうし。」
「ははは、それは豪華な旅になるな。なんでも美味くしてくれるベルがいるなら、旅もきっといいものになる。」
「ふふ、うん、約束。」
「あぁ、そのためには、さっさとダンジョンを攻略しなきゃな。」
「頑張って!上で、美味しいもの作って待ってるから。」
「それなら、私も頑張れそうだ。」
「リヴェリアは、ベルと喋る時、いつもより口調が砕ける…?」
次回は…
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寝正月!
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実家回っておせちを喰らう!