なんだか友人からアイズ嫌いだと思われてるけど、特に好きではないだけで好きなイベリです。
これは、えみや飯を見てたら唐突に降って湧いた奴です。
ほのぼの。戦闘なんて一切ない。ベル君は弱いし、アイズは結構笑うしイチャイチャする。
ただ日々を楽しそうに過ごす2人の話です。よければ見てください。
「いただきます」と「ごちそうさま」を君と
階段を、一歩一歩踏みしめる。
もうすぐだ。もうすぐ地上。やっと、彼に会える。
「ん〜…っ!やっと帰れるね!」
「うん…」
隣に並ぶ褐色の少女。ティオナ・ヒリュテの言葉を空返事で返しながら、金髪を靡かせる少女────アイズ・ヴァレンシュタインは自宅の姿を思い浮かべていた。
彼女は、このオラリオ。ダンジョンという謎の迷宮が存在する巨大国家の中の派閥。この世界に降臨した神々が作り出したファミリアの中でも上位の派閥。ロキ・ファミリアの幹部。
だが、それはこの物語に関係することでは無いので、割愛するとしよう。
久々の地上。当たる斜陽。3週間という期間は、アイズをホームシックにする程度には長い期間だった。
早く、あの子に会いたい。
お腹が、くぅっ、っと空腹を訴える。
アイズは、ただ家で待っている白いウサギを思い浮かべながら、ひたすらに時間が過ぎるのを待っていた。
「アーイズ、なにぼーっとしてんのよ?」
「────!てぃ、ティオネ…そんなんじゃ…」
もう1人の褐色の少女、ティオナの姉。ティオネ・ヒリュテの言葉に、ボッ!と顔に熱が籠る。
彼のことを考えると、感情に少し乏しい表情が、一気に緩む。
あの優しい笑顔が、私の中の炎を、穏やかに見守ってくれている。
そんな気がして、つい微笑んでしまう。
「アイズ疲れてるの?でも、幸せそうな顔してるけど?」
「…そうだね」
正直な話、恐らくではあるがあの子はティオナのタイプだ。惚れられてはたまったものでは無い。だから、別に知らなくていい。
アイズは、心の中でその言葉をしまって、誰にも見られないようにドヤ顔をする。まぁ、ほとんどの人間がそれに気づいていたのだが。
「まったく…ホームシックには困ったものね…つい三日前なんて、ずっとブツブツ言ってたけど…何言ってたの?」
「それは…ごめん…」
「まぁ、別にいいのよ?」
「うん。────あっ」
ティオネにそんなことを言われて照れていると、視界の端。そこに、白いシルエットが見えた。咄嗟にそのシルエットを追うと
────居た。あの子だ
アイズは、走り出していた。2人の驚く声も無視して、一直線に彼の元へ。
「────────ベルっ!」
「────へ?アイ────えぇぇぇえっ!?」
渾身のタックル。いいや、ハグではあるのだが、Lv5の上位冒険者であるアイズの飛びつきハグは、もはや兵器なのだ。
そうして、白いうさぎに飛びつくと、うさぎは驚きながらも、確りと腕を回して倒れ込んだ。
こういう所が、いいのだ。
「いたたた…痛いよアイズ…遠征の度やられたら僕今度こそ死ぬ気がするんだけど…」
「…ベル、ベル…ベル…!」
「これは、聞いてないか…」
白いウサギの様な少年────ベル────は、しがみつくアイズを諦めたように見てから、頭を撫でていつもの様に呟いた。
「って、いいの?ファミリアの人達放ったらかして…」
「別に、平気。もう帰るだけだから。」
そっか、とベルが頷くが、念の為に遠くにいる、ロキ・ファミリアの団長と副団長、フィンとリヴェリアに会釈をする。2人は苦笑していたが、手を振って、行っていいよ。とベルに促した。
「…お許しも出たし、帰ろっか。」
「うんっ!」
立ち上がって、紙袋を拾い上げながら、ベルは右手を差し出す。当たり前のように、その手に指を絡めて、アイズはベルの隣を歩く。
ほかの団員達は、その光景を見て、驚愕の表情を浮かべながら固まっていたが…無視することにした。
そのまま、2人は街の喧騒の中に紛れ込む。
2人は、住宅街のある大きめの一軒家の前まで帰ってきていた。
そこは、アイズがホームに住み込むと関係者ではないベルが入れないという理由で、アイズの
ベルは、玄関前でしっかりとした扉を開ける。内装は豪華でも、派手でもなく。悪くいえば地味ではあるが、ベル達にとっては、これが丁度よかった。
2人が玄関に入った時。アイズの前にいたベルが、くるりと回り、アイズへと振り返る。
「さて────おかえり、アイズ。お腹、減ってるでしょ?」
そう言って、ベルは微笑んだ。
この言葉…そう、この言葉が聞きたかった。
この声で、この微笑みで。私は、彼に会いたかった。
アイズは、また、いつもの様に彼にこう返すのだ。
「────ただいま…うん。ペコペコかな。」
ベルは、ニッコリと笑って、リビングにあるエプロンをサッと腰に巻く。
「待ってて、すぐ作るから。何か食べたい物はある?」
「ベルの料理なら、なんでも美味しいから…でも、ジャガイモと…ダンジョンじゃ食べれないから卵料理食べたい。」
「OK、任せて!」
すぐ様キッチンの前に立ったベルは、棚からまな板と包丁を取り出し、料理を始める。
「さて…そうだな…野菜は…これだけだから、うん。ポトフにしよう。後は…よし、アレにしよう。」
「アレ…?」
「まぁ、見てて。」
ベルは、慣れた様子で野菜を取りだし、包丁を入れる。
「まず、キャベツを大きめに切って…その後に、皮と芽を取ったじゃがいもを半分に切る。玉ねぎは丸ごと。ブロッコリーは手で子房に分けてっと…」
料理をするベルの隣。アイズは目を輝かせながらその様子を見ていた。いや、料理をするベルを見ていたのだ。ベルは、料理をする時が、1番輝いている。アイズはそんなベルを見るのが好きだった。
「次に、鍋に水を入れて、火を入れる前にコンソメを入れる。鍋の周りに気泡が出来たら、野菜とウィンナー、ベーコンを入れて…ここで15分煮込む。さて、その間に別の料理を作ろうか。」
「凄い手際…やっぱり、ベルは凄い。ファミリアのみんなも、こんなに早くない…」
「ふふっ、慣れれば誰だって出来るよ。さっ、ほらほら!次だよ。」
ベルは照れ臭そうに笑った後、直ぐに調理に取り掛かった。
「はいっ、アイズご所望のジャガイモ!」
「じゃが丸くん…」
「でも、今回はオムレツにします!」
「オムレツに?じゃが丸くんじゃなくて?」
「1回揚げることから離れようね。」
若干あきれるベルを他所に、アイズは依然クエスチョンマークを浮かべていた。
「まっ、見てればわかるよ。まずはジャガイモを千切りにして水にさらす。」
ベルが包丁を操り、千切りを量産していく。もし、料理にLvがあるとすれば、ベルは恐らくオラリオ最強だろう。そんな事をアイズは思っていた。
「次は、熱したフライパンに油を敷いて、ジャガイモ以外を炒める。少し色がついてきたらひき肉をいれて…その間に卵をといて…卵は多い方がいい?」
「うん。ふわふわがいい。」
「OK。そしたら、卵を多めに使って、その中にチーズをたっぷりと、粉チーズを少々。水にさらしていたジャガイモの水気をきってと…ひき肉の色が変わったら、じゃがいもを入れて、透き通ってくるまで炒める。…透き通ってきたら、平にして溶いた卵を入れる。」
ジュウジュウと心地良い音がアイズの鼓膜を叩き、幸せな時間が訪れる。
そして、鼻をくすぐるこの匂い。この匂いが、この家に帰ってきた事を教えてくれる。
そっと、後ろからベルの腰に両手を回して、そっと寄り添う。
「そしたら…アイズ?どうしたの?」
「…ううん…帰ってこれたんだなって…」
ベルは、少しだけ微笑んでから。前を向いたままアイズの頭を撫でる。
「…僕が待ってるんだからさ。絶対に帰ってきて。兎は放っておくと寂しくて死んじゃうんだよ?」
「…知ってる。本で読んだことある。もうずっと前の事だけど…」
アイズは、昔。本当にずっと前、ベルと出会ったばかりの時を思い出していた。
あのころは、ベルが本当にまだ小さくて、愛玩動物位に見えていたのに。気づいたら
ベルは、戦えなかった。いいや、正確に言えば冒険者に向いていない。凌ぎを削り、野望や悲願があるから、冒険者は命を燃やせる。だが、彼にはそれが全く無い。「平和に生きられればそれでいいかな。」これがベルの口癖だった。
アイズは、それが嬉しかった。
好きな人が傷つかない。それは、アイズにとって────とても素晴らしい事だった。
「さっ、調理再開だ…えっと、オムレツの片面が焼けたから、裏っ返して…よし、反面も焼いて…よし!他には…あっ、そうだ。」
ベルは、何かを思い出したように冷蔵庫からあるものを取り出す。
「じゃーん!これ、アイズが帰ってくると思って作っておいたんだ。」
「これって…!
アイズのテンションが一気に上がる。
「そう!これを使ってデザートを作るから、楽しみにしてて!」
「うん!」
「さっ!もう出来たよ!後は、オムレツを切り分けて、盛り付け…ケチャップを付けて完成。ポトフも完成したから、丁度いいね。」
木皿に乗った料理が、食卓に並ぶ。二人分にしては少し多いのかもしれないけれど、腹ぺこのアイズからしたらこれくらいでちょうどいい。
「はいっ、完成!召し上がれ!」
「やっぱり、ベルの料理はいつ見ても美味しそう…!」
《今日の献立》
【ベル特製、玉ねぎ丸ごと具沢山ポトフ】
【ベル特製、チーズたっぷりジャガオムレツ】
2人は、手を合わせる。極東の文化だと言うが、妙にしっくりくるから、2人は習慣にしている。
「「いただきます」」
アイズは、早速オムレツを口に入れる。
ふわふわの卵、カリッとしたチーズ、千切りにした事で、食感が独特になったジャガイモが、アイズの舌を唸らせる。
「ん〜〜っ…!」
「美味しい?」
口いっぱいに入れたオムレツを出さないように、キュッと口を閉じながら、!ベルの質問に高速で何度も頷く。
美味しい、幸せ。
アイズは、幸せの絶頂にいた。
「良かった。あぁ、ほら。急いで食べなくてもいいじゃない。料理は逃げないよ?」
ベルは、アイズの唇に付いたケチャップを指で拭き取り、そのまま舐める。アイズは、頬を紅潮させて、紛らわせるように食べ始める。そんなアイズを見て、ベルはクスリと笑った。
次に、アイズは木彫りのスプーンでポトフを掬う。
肉の脂や野菜の旨味を吸って、ほんの少しだけ濁っているのが、美味しさの証拠。
口に入れると、優しい旨みがアイズの口いっぱいに広がる。オムレツがガツンとした美味しさなら、ポトフは安心する美味しさだ。
ほぅっ、とアイズが肺に溜まった息を吐き出す。
(なんだか…安心する味…)
正直な話、ベルは料理が上手すぎる。
料理ができて、優しくて、可愛くて。
アイズは、我ながら惚気けているとは思うが、ベルを恋人にして本当によかったと思っている。
本人は、料理だけが取り柄とか言っているが、アイズがベルに恋をした理由は全然違った。
ベルはアイズを個人として見ている。
冒険者アイズではなく、ただの少女アイズとして。ベルは、ただの甘えん坊な少女を見ているだけなのだ。
「美味しいようでよかった…よし、ちょっと待っててね!」
「…?うん。」
ベルがキッチンに再び消える。
ベルは、あるものを作るタイミングを見計らっていた。そして、ちょっと足りないだろうと言う量を、アイズに提供していた。
それは、アイズの好物を最高の状態で食べてもらうためだ。
冷蔵庫から、鉄のバットを取り出す。その中には、牛乳、砂糖、卵、隠し味に蜂蜜を混ぜた液と、その液に浸されたバケットがあった。
ベルは、サラダ油を熱したフライパンに落とし、フライパンに馴染ませる。そのフライパンの上に、バケットを6つ落とす。
ジュウ、ジュウ、と焼ける音を聞いて、ベルは満足気に蓋を閉じる。ポイントは、弱火でじっくりと焼く事。そうすると、中に染み込んだ卵がふわふわに膨れ、ふかふかの出来に仕上る。
焼き上がる匂いに、アイズが我慢できなそうに、リビングからキッチンを眺めている。その事に気づいたベルは、ちょっと待ってね、とウィンクをしてまた調理に戻る。アイズが湯だった事も知らずに。
焼き色が少し着いたら、ひっくり返して蓋をして。少し待つ。
「…もういいかな。」
蓋を開けると、砂糖と蜂蜜の甘い匂いがモワッと立ち上り、アイズの鼻腔をくすぐった。
フライパンから6切れバケットを皿に盛り付け、その上に作っておいた小豆クリームをたっぷりと搾り、その上から蜂蜜を注ぐ。
「はいっ!デザートのフレンチトーストお待ちどうさま!」
「…美味しそう!」
《デザート》
【ベル特製、小豆クリームフレンチトースト】
アイズは、早速フォークとナイフを差し込む。そこで、まず驚いた。
(柔らかい…!)
ふんわりとしたその感触に驚き、口に運んでは、また驚いた。
「────美味しいっ!」
表面はほんの少しサクッとしていて、その焼き目が蜂蜜をかけられたことによって、染み込んで、甘さが強調される。そして、極めつけは小豆クリーム。しっかりと、アイズの好きな分量だった。
「ハハハ、よかった。作ったかいがあったよ。」
「私の好きな「小豆マシマシ、クリーム多め!」」
その呪文の様な言葉を、2人で言って、笑いあった。
「あははっ、ベル、覚えてたんだ。」
「うん、君は甘いものが好きだからさ。」
2人は、好みの量のクリームをかけながら、食べ進めていく。
あっという間に無くなってしまったが、アイズは満足だった。
「この後、何かする?」
「うん、ソファーでオセロやろ。」
「あぁ、いいね。じゃあ負けた方がお皿洗いね。」
「………負けない!」
これから何をするか、2人が中睦まじく話していると、ベルがあっ、と声を上げて、また手を合わせる。アイズも思い出したように、2人で手を合わせる。
「「ごちそうさま」」
これが、2人の幸せな日常。
アイズの目の前にいる、英雄なんかよりも大事な日常だ。
はい、おしまいです。
Twitterで更新できないと言ったな。あれはこれのせいだ。
ごめんなさい、唐突に思いついて、誰にもやられないうちに書きたかった。
感想よろしくです。
希望があれば続き描きます。