「アイズさん、あの男は何なんですか!?」
「あの男…?」
今日は、ベルの朝ごはんではなく、アイズはファミリアの食堂で朝食を食べていた。
「あの白髪のヒューマンのことです!それに、遠征が終わってから3日もホームに顔を出してませんでしたよね!?まさか…!泊まってたとかいいませんよね!?」
「………な、何のこと?」
「アイズさんがとぼけて…!?っ教えてください!あのヒューマンは誰ですか!?」
今、アイズに詰め寄るどこからどう見ても美少女のエルフ。ちょっとだけそっちの気がある少女は、レフィーヤ・ウィリディス。御年15歳の冒険者。そんな少女に、アイズは何故か慕われていた。
そして、何故か今、ロキ、リヴェリア、フィン、ガレス以外に秘密にしていたベルとの関係が、バレているのだ。まぁ、三日前のアイズの飛びつきのせいでファミリア中の噂にはなっていたのだが。
「……知らない…」
ぷいっと明後日の方向を向いて、汗をダラダラと流しながら、アイズは必死に恍ける。フィンにも注意されていた。
「恋人を作るのは自由だ。彼はどこの派閥にも所属していないわけだし、君がそう言うことに関心を持ってくれたのが素直に嬉しい。だけど、自分の影響力を加味して、情報は遮断するんだ。でないと、彼に迷惑がかかるよ?」
今更になって、フィンの忠告が頭に響いていた。
このままでは、ベルとの生活が、あの安らぎの時間が奪われてしまうのではないか?
アイズの頭の中に緊急警戒アラートが鳴り響いた。
「アッ、ワタシダンジョンニイカナキャ。」
「えぇ!?待ってください!」
「ハナシテレフィーヤ。ワタシイケナイ。」
「なんでそんなに片言なんですか!?」
アイズのごまかしに、レフィーヤは更に詰め寄る。しかし、アイズは顔を青くさせながらずっと片言のままに眼をそらし続けていた。その問答に、加わる者たちがいた。
「あれ?アイズじゃん!昨日までどこ行ってたの?」
「ダンジョンに行ってるかと思ったら、街で見たって人もいたし…しかも、手をつないで男と歩いてたそうじゃない?」
脇腹をこのこの〜と小突いてくるのは、ティオナとティオネ。しかも昨日のお出かけを噂されるなんて思いもしなかった。アイズはオロオロと焦る。
「ねぇねぇ?その子誰なの?」
「…黙秘権使う…」
「なんでアイズがそんな難しいこと知ってるのよ?」
「ベルが教えてくれた。────…あっ。」
アイズは、しまったと思った。昨日、ベルに教えてもらった事について自慢げに使ってしまって、ベルの名前を出してしまった。
(…ベルに、迷惑かかっちゃう…)
アイズが思うが、時すでに遅し。レフィーヤはアイズに詰め寄った。
「アイズさん。」
「れ、レフィーヤ…?」
「案内してください。」
「でも、ベル今……ヒッ…!」
「アイズさん。案内してください。」
眼が、やばかった。
「わ、わかった…」
そうして、面白そうだとの理由で、二人もそれにくっついていった。
そんな中で、アイズは
(ベルに…怒られるかも…)
そんな不安を抱えたまま、ベルの仕事場に向かった。
アイズ達が向かったその場所は、小綺麗なレストランが並ぶ街道。冒険者の街オラリオでも、なかなかに上品な空気を醸し出している場所だ。
「あ、アイズさん?本当にこっちなんですか?」
「うん。こっち。」
スタスタと慣れた様子で歩くアイズとは反対に、慣れない様子で歩く3人は、どこか居心地が悪かった。
暫くすると、アイズが立ち止まり、指を指した。
「あれ。ベルのお店。」
「ここって…ほ、本当にここですか!?」
「まって、待って!ここって…!」
「うっそ…私でも知ってるわよ…ここ。」
3人は、一様に驚いた。
アイズが指を指した店は、この街に住む全ての人が読むであろう雑誌【月刊オラリオ】で特集を組まれ、今1番ホットな場所。
「うわー!可愛いー!あっ、今日のランチタイムは〜なになに…?シチューとバケットのセットだったみたいだよ!」
白い兎の傍らに、金髪の女性が寝っ転がっている絵がデザインされた看板。この様に、女性受けが高そうな外観だが、男性も気軽に入れるように、メンズタイムも充実していることを、外出しのメニューで教えてくれる。
【トラットリア─風の通り道─】
可愛い外観で、主に主婦や女性冒険者に今人気の店である。後は、店主が可愛いとかなんとか。
何よりも、出す料理が評判であり、内装もオシャレだという。レフィーヤも、1度は行ってみたいと思っていた場所だったから、予想外だった。
扉を開けると、カランコロンと音が鳴る。
中は綺麗に装飾され、狭くもなく広くも無いが、丁度いい広さだった。壁の一角にはあらゆる本がびっしりと詰まっていて、料理を待つ間の暇潰しにも利用できるように、無料で貸し出されている。因みに、ワンドリンク制でフリータイムで本を読める喫茶店代わりにもなっている。
3人が評判通りの見た目に圧倒されていると、奥から白い影がヒョコッと顔を出す。
「ごめんなさーい!今休憩中で…あれ、アイズ?それに…ファミリアの方々…で、いいのかな?」
「あっ、ベル。」
白いコックコートと、黒いバンダナ。手にグラスを持った少年────ベルが登場した。
その瞬間に、アイズの固い表情が和らぎ、ただの少女の様に笑顔を浮かべて、トトトトッとベルに駆け寄って行った。
3人は、驚きすぎて固まった。何が驚いたって、店主が自分たちよりも何個か下だった事とか。アイズがあんなに笑っている事とか。情報量が多すぎて頭が追いついていけなかった。
「えっと…紹介、するね?私の…その、恋人。ベル、ベル・クラネル」
「あ、どうも。【風の通り道】の店主やってます。ベル・クラネルです。アイズがいつもお世話になってます。」
ベルが礼をとりながら、自己紹介をして、3人は漸く硬直から立ち直った。
「え、えぇぇぇえっ!?こ、恋人!?」
「もう友達とかそう言うの吹っ飛ばしてきた!?」
「あばばばば」
ティオナとティオネは驚くだけだったが、レフィーヤはぶっ壊れた。
「えっ、ちょっ、怖…平気?」
「多分、平気。」
「いつも通りっちゃいつも通りね?」
「まぁねぇー」
「あ、そうなんですか…」
目を回しながらあばばばし続けるレフィーヤを無視して、ティオナは早速質問をぶつけた。
「はいはーい!2人はいつから付き合ってるんですか!」
「えっと…今年から、かな?いや、それが正式に付き合い始めた時期、だよね?」
「うん。合ってる。正確には3年と8ヶ月前から同棲してる。ここから付き合ってるとも言える。」
「…まぁ、そこは僕が意気地無しで告白もしなかっただけだから。…いじけてる?」
「……ノーコメント。」
ぷいっと明後日の方向を向いて、いじける。
謝るベルを見て満足気にドヤ顔を晒す。久々にベルよりも優位に立てていることに満足しているようだ。
その姿に、3人はまた驚く。
普段ファミリアで見せるアイズの表情や笑い方が、全部嘘だったと言われても、疑わないだろう。
2人が見た事のあるアイズの笑顔は、いいとこ微笑。しかし、今笑っているアイズは口角を上げ、目を細めて声を出して笑っているのだ。
それだけで、ベルがどれほど大切であり、アイズの中で大きな存在なのかが、手に取るようにわかった。
そうして、3人は呆気に取られながら、無意識のうちにベルに敗北感を叩きつけられた。
そうしていると、ベルが思い出したように3人に声をかける。
「あっ、そうだ。お昼まだですか?良かったら食べていきます?」
そう言われた瞬間。4人のお腹が、一斉に空腹を訴えた。
「あははは…お願い出来る?」
「えぇ、任せてください!」
あたし楽しみー!と、ティオナが席に座りながら、本を手に取って懐かしそうに読み始めた。そんな中、立ち直ったレフィーヤだけは
(アイズさんに相応しいか…見極めてやります!)
こんな感じで、全くベルを認めていなかった。そんな事はつゆ知らず、ベルは厨房に立つ。
「さて…作るかな!」
早速、ベルは材料を冷蔵庫から材料を取り出し、調理を始める。
ベルが野菜を切っていると。すると、様子を見に来たのか、アイズが厨房に顔をだす。
「…入っても良い?」
「うん、良いよ。あっ、手は洗ってね?」
わかったと頷き、アイズはベルの傍にトコトコと近寄る。
「何作るの?」
「オムライスかな。ちょうど昨日のが余ってるし。」
「なにか手伝う?」
「じゃ、人参と玉ねぎ、ピーマンを微塵切りにして貰える?」
「わかった!」
エプロンを付け、アイズも手伝いを始める。そんな様子を、ベルは感慨深く見ていた。
「しかし…アイズに手伝ってもらう日が来るなんて…僕ちょっと感動しちゃうなぁ…昔は料理なんてからっきしだったのに…」
「…馬鹿にしてる?」
「あはは!冗談だからその手に持ってる包丁を置いてくれないかな?いや、割と本気で。」
拗ねた眼をしながら、包丁を手に持つアイズをなだめる。
なんとか機嫌を直したアイズに一息付きながら、ベルは包丁を手に取る。
「さて…まずは鶏肉を切らないと。」
まず、鶏胸肉をまな板に置き、ミートハンマーで均一に叩く。
「…おっと、叩きすぎないようにしなきゃ…」
鶏肉の場合、他の肉と違い元が柔らかいために叩きすぎると焼いた時に旨味が逃げてしまうのだ。
叩き終わった鶏肉を、一センチ台のブロックにカットしていき、胡椒と塩をふりかけ、下準備は完了。
「次は…っと…」
アイズが、微塵切りにし終えた野菜を差し出す。
「ベル、野菜切り終わった!」
「ありがとう、アイズ。────アイズ?ピーマンは?」
ピクっと、アイズの肩が揺れた。ベルが、アイズの顔を鷲掴み、問い詰める。
「ピーマンは?」
「…た、食べた…」
「へぇ?そっか、食べちゃったのかぁ…ピーマンいっっつも残すアイズが食べちゃったかぁー…なんて言うと思ったか!」
「ムギュっ!はなしぇ〜!」
「離しません〜!」
ベルが、アイズの頬を摘んで詰め寄る。まぁ、イチャイチャしていた。しかし、アイズのピーマン嫌いに悩んでいたことも事実。
「まったく、子供じゃないんだから…マリアさんの所の子達ですら食べるよ?」
「よそはよそ、家は家!」
「ロキ様だな…このアイズの無駄な知識は…!」
「絶対、食べない。」
「そんなこと言う子には、ピーマン3倍ね。」
「うそ、食べる。さっきのは冗談に決まってる。ベルの料理は美味しい!」
「じゃあピーマン3倍でも平気だね!」
「ピーマン切ってくる!!」
トトトトっと足音を鳴らしながら、アイズは逃げるように冷蔵庫からピーマンを取ってすぐ様微塵切りを開始した。
「さて…この間にデミグラスソースに火を通しちゃうかな。」
奥のコンロにある大鍋に火をかける。中には、ベルが厳選して選んだ牛肉、香味野菜、小麦粉、バター、トマト。そして、手作りのフォン・ド・ボーを加え、じっくりコトコト毎日煮込んでいるデミグラスソースがあった。
そうこうしていると、アイズがピーマンを微塵切りにして持ってきた。
「こ、これで3倍無し!」
「はい、わかりました。今度からは、ちゃんとしてね?」
「うん!」
ベルがアイズの頭に手を置くと、アイズは嬉しそうに体を寄せて、ベルの背中に擦り寄る。そんなアイズを愛でたベルは、ほっこりとしながら調理に戻った。
「さて…あとは僕がやるから…みんなと話してていいよ?」
「ううん。ここで見てる。」
「そっか…そんなに楽しい?」
「うん…ベルが、一番かっこいいときだから。」
「…な、なかなか恥ずかしいこと言うね…」
ベルは、照れ隠しに頭を掻いて耳を真っ赤にする。そして、アイズも自分の言ったことに気付き、アイズも顔を赤くした。
「あはは…!」
「んふふ…!」
照れる二人を影から見ていた三人が、ニヤニヤしていた。いや、訂正。レフィーヤは唇を噛みながらやばい眼をしていた。それを見て、アイズが冷や汗を流す。
そんな事はつゆ知らず、ベルは調理を再開する。
「野菜に火が通ったら、肉を入れて…塩、胡椒を加えて炒める。この時、炒め過ぎないくらいの所で、ご飯も一緒に入れて、軽く炒める。」
ジュウ、ジュワァ
この音が、4人の空腹感をさらに刺激する。
クキュウッと、お腹が鳴る。
嗚呼、お腹が減った。
ベルは、その音を聞いてクスリと笑った
「それで、いい感じに炒められたら、僕自家製のトマトケチャップを投入!」
トマトの爽やかな香りが、火を通すことによってマイルドな香りに変化する。
我慢できずに、アイズが指を加えていると、ベルがクスリと笑ってスプーンでフライパンからご飯をすくい取り、アイズに差し出す。
「はいっ、あーん」
「えっ!?いや、えっと…!」
アイズが、赤くなりながらアタフタする。ベルからすれば、いつもの事である筈なのに、何故か焦っているのだ。
「どうしたの?いつも強請ってくるのに…?」
「ね、強請ってない!き、今日は…いい…の…」
「…変なアイズだなぁ…?」
3人に見られていることに気づいていないベルは、首を傾げながら、不思議な様子で見ていた。
見ている3人は三者三様の反応を見せている。
「ちょっとちょっと!凄いイチャイチャしてるよ!」
「バカっ!声が大きい!それにしても…アイズってデレるのね…」
「アイズさんがぁ……!」
アマゾネスの2人は、微笑ましいふたりの様子をニヤニヤと見守り、レフィーヤだけはぐぬぬ…!と悔しさを噛み締めていた。
「さて、もう少しでできるから待ってね。」
「うん!」
皿にチキンライスを盛る。
その後に、フライパンをクッキングペーパーで拭き取り、卵を4つと少しの生クリームを加えて、素早く混ぜ、バターを敷いてある熱したフライパンに、卵を垂らす。
「この時、強火で素早く混ぜる!」
ベルがフライパンと菜箸を操り、素早くフライパンの卵を混ぜる。卵がぷくぷくと泡をたて、徐々に固まっていく。
「半熟状態になったら、菜箸で輪郭を浮かせて…フライパンを傾けて端に寄せる。そしたら、フライパンの柄の部分を叩いて、卵を丸くする。そしたら────ほっ!」
「おー!」
ベルが、ふわふわの卵を浮かせてひっくり返す。その様子を見ていたアイズは、ぱちぱちと手を叩いた。
「そしたら、これをチキンライスに乗っけて…真ん中に切込みを入れる。」
切込みを入れると、ペロンっと卵が裏返りキラキラとした半熟の面が顕になる。
「そしたら、ここにデミグラスソースをたっぷり…あとは、生クリームをほんの少し垂らして…完成!」
《今日のお昼ご飯》
────ベル特製、ふわふわデミオムライス
「相変わらず、ベルのご飯は本当に美味しそう…!早く食べよ?」
「じゃあ、運んでくれるかな?」
2人は仲良く、3人の元にオムライスを運んだ。
「うわぁ!すっごい美味しそう!」
「本当ね…コレくらいできたら私も団長に…!」
「本当に美味しそうです!…ハッ!あ、味はわかりません!」
「どうぞ、召し上がってください!」
ベルに促され、4人はスプーンを取ろうとした時、アイズが手を合わせていることに気がついた。
「アイズ?何してるのよ?」
「私たちが、いつもご飯を食べる前にしてること。極東の文化で…手を合わせて、食事を作ってくれた人、食材に感謝を示す礼儀なんだって。」
「へぇー!そんなんだ!じゃあ、私たちもやろっか!」
そうして、3人はアイズの真似をして手を合わせる。
「「「「「いただきます」」」」」
4人が、スプーンで卵とデミグラスソースを絡ませ、口に含んだ。
その瞬間に、4人の口の中で革命が起きた。
((((お、お────))))
4人は飲み込んだと同時に、同じ感想を口にした。
「「「「美味しい────!」」」」
フワッとした舌触りの卵が、トロッとしたデミグラスソースと合わさり、そこに爽やかなトマトの酸味を含んだチキンライスがさらなる美味しさを運んでくる。こんなにも美味しいご飯は食べたことが無い!そう言っても過言ではない位の味だった。
「美味しすぎるよこれ!ほんと美味しい!」
「本当に、料理って作る人が違うだけでこんなにも美味しいのね!…でも、なんか…何処かで食べたことあるような味…?」
「美味じぃ…!悔しいくらいに美味じぃ〜…!」
「ベルの料理は…至高…」
「あはは、そう言って貰えて嬉しいです。えっと、ウィリディスさん?なんで泣いてるんですかね?」
あまりの美味しさと、ベルを認めてしまった悔しさで涙するレフィーヤに、若干引き気味に問いかけるベル。
だが、美味しいという言葉を聞けて満足だった。
アイズは、無言でオムライスを口に運んで、んーっ!と唸り、美味しさを全身で表現して喜んでいた。
「美味しい?アイズ。」
「うん!美味しい!ベルの料理は、本当に美味しい!」
「────よかった。君にそう言って貰えるだけで、作った価値があると思える。」
そう、アイズに微笑みを向ける。その微笑みが、あまりにも眩しくて、アイズが顔を赤くさせる。恥ずかしさを紛らわすように、アイズはオムライスをかき込んだ。
「ごふっ────!?」
「あっ、アイズ!?何してるの!水水!」
「────ふーっ…ありがとう、ベル。」
気を抜いていたら、気道にオムライスが思いっきり詰まった。胸をトントン叩きながら、アイズはベルに貰った水を口に流し、事なきを得た。
そんな二人を見て三人は、やはり勝てない、と心の中で呟いた。
きっと彼は、何よりも特別なのだ。自分たちも、自惚れではなく確実にアイズの心の位置を占めている。しかし、ベルだけは、その更に奥の奥にいる。
そこで、レフィーヤに疑問が浮かんだ。
この2人、どちらもが仲がいい。そう見えるし、実際そうなのだろう。しかし、一体全体どこで出会った?いつ出会ったのか?片や第1級の冒険者。片やプロの料理人。まるで接点が浮かばなかった。
レフィーヤは、そのまま口を開いた。
「…あの、お二人の馴れ初めって…なんですか?その、全く接点が浮かばないんですけど…?」
そう言うと、2人は顔を見合わせた。そうして、何故か首を傾げた。
「いつだっけ?」
「…私もあんまり覚えてない…」
「でも、僕がアイズとロキ様に拾われた時からだから…8年前?かな?」
「それはそうだと思う。」
「えっ、ロキ・ファミリアにいたの!?」
「えぇ、数年前まで…と言っても、恩恵は刻まれなくて、ずっと食堂の調理を担当していました。」
3人は、ベルがロキ・ファミリアにいた事を聞かされ、酷く驚いた。しかしまぁ、食堂担当ならば会うことは無いだろう。そう3人は納得した。
「昔は、ベルが甘えてきて…凄く大変だったけど、可愛かった。お姉ちゃん〜って。ね?ベル。」
「今は真逆だけどね?」
「う、うるさい…」
「そ、それっ!聞かせてもらってもいいですか?」
2人の空間を作り出す所を、なんとか割って入ったレフィーヤは、言いたいことをいえたようで満足気に胸を張った。
2人は、また顔を見合わせてから、柔らかく微笑んだ。
「えぇ、構いませんよ。」
「いいよ。話してあげる。」
そうして、ベルは馴れ初めを語り始めた。